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経済成長が著しい東南アジア各国では、それにともないエネルギー需要も増加しています。域内の多くの国では、気候変動対策としてカーボンニュートラル目標を掲げていますが、エネルギーの多くを、CO2を排出する化石燃料(石炭や石油など)に頼る割合が高いのが実情です。今後、経済成長と脱炭素化を両立することが必要な東南アジア諸国の、現在のエネルギー事情についてご紹介します。
近年、高い経済成長を遂げている東南アジアの国々ですが、産業構造やエネルギー事情は、国によって異なります。下の円グラフは、各国の電源(電気を生産する方法)構成を示したものです。製造業や鉱工業、建設業などが盛んなインドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアといった工業国や、サービス業がGDPの6割を占めるフィリピンなどでは、電力の大部分を石炭や天然ガスの火力発電に依存しています。その一方で、まだそれほど開発が進んでいないラオスやカンボジアなどでは、水力発電が高い割合を占めています。
(出典)IEA(いずれも2021年のデータ、資源エネルギー庁作成)
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これらの国の多くは、経済成長にともない電力需要が増大しており、今後も伸びていくことが予想されます。下のグラフは、発電電力量と電源構成の変遷を示したものです。上の4つはASEAN全体と、タイ、インドネシア、ベトナム、下の4つはアメリカ、EU(英国を含む)、日本、オーストラリアのグラフです。先進国と比較すると、ASEANのエネルギー需要が年々大幅に増加していること、またそれに比例して石炭や天然ガスなどの化石燃料の需要も増加していることがわかります。
先進国とASEAN諸国における電源別発電量
(出典)“Energy Balances”,IEAを元に経済産業省作成
こうした実情を抱えてはいるものの、多くの国が気候変動対策として、2050年から2065年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。
東南アジア各国が掲げるカーボンニュートラル目標
(出典)各国提出のNDCなど
東南アジア諸国は、その成長を妨げないよう、経済活動や生活に打撃を与える停電リスクを防ぎながら、増大する電力需要をまかなう必要があります。それと同時に、脱炭素化も着実に進めていかねばならないという課題に直面しているのです。
脱炭素化を進める上では、再生可能エネルギー(再エネ)の導入がひとつのカギとなります。しかし、東南アジアでは、太陽光発電や風力発電のポテンシャルは、自然条件から見てそれほど恵まれていない実情があります。下の世界地図は、太陽光発電のポテンシャルに関係する、世界の日光照射状況を示したものです。赤い部分が照射の高い地域、青い部分が低い地域ですが、東南アジア地域では黄色~水色が多く、それほど高いとは言えません。また、国によっても差があります。
年間平均水平面日射量
(出典)“Global Atlas” https://globalatlas.irena.org/
同様に、風力発電のポテンシャルを見てみましょう。風力発電には、風況、つまり風の吹き方が非常に重要です。効率的な発電をおこなうには、1年を通して風速が大きく、風向が安定しているなどの条件を満たしていることが必要です。下の図は、各地の風速を比較したもので、赤が大きい地域、青が小さい地域を示します。洋上風力発電の開発が進む欧州の沿岸では赤が多く、風がよく吹いていることが見て取れますが、東南アジア地域では、緑~青となっており、風速が大きいとは言えない状況です。
高さ100mでの年間平均風速
このように、東南アジアでは自然条件から見た再エネのポテンシャルは必ずしも高いとは言えず、また国によっても条件が異なります。脱炭素化を進めるためには、さまざまな角度から、適切な方法を考える必要があります。日本は、火力発電の燃料に水素・アンモニアを利用する「混焼技術」(「アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先」参照)や発生するCO2を回収し、貯留する技術である「CCS」(「CO2を回収して埋める『CCS』、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)」参照)など、再エネだけでなくの多くの脱炭素技術を開発しています。これまでも、こうした技術やファイナンスを活用し、政府系の機関などを通じてアジアの脱炭素化支援をおこなってきました。こうした経緯も踏まえ、日本は今後もアジアと協力し、世界の脱炭素化の加速化に貢献しようと、2022年1月、「アジア各国が脱炭素化を進めるという理念を共有し、エネルギートランジション(移行)を進めるために協力する」ことを目的に、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想」を提唱しました。AZECの枠組みについては、別の記事であらためてご紹介します。※6月4日追記 AZECの枠組みについては、以下の記事で紹介していますので、ご覧ください。
長官官房 国際課
長官官房 総務課 調査広報室
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