高いポテンシャルのあるアジア地域のCCUSを推進! 「アジアCCUSネットワーク」発足

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「2050年カーボンニュートラル」に向けて、さまざまな技術開発が進められています。そのひとつが、排出されるCO2を回収・利用・貯留する技術「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)です。2021年6月、アジア全域の持続的な経済成長とカーボンニュートラルの同時達成を支援する目的で、「アジアCCUSネットワーク」が立ち上げられました。今後のアジア地域におけるCCUSの可能性はどのようなものでしょうか。ネットワークの概要とともにご紹介します。

化石燃料の需要が増加するアジアではCCUSが不可欠

今、アジア地域では、将来のエネルギー環境に関して大きな課題に直面しています。経済発展がいちじるしいことから、エネルギー需要が拡大。しかも一次エネルギーミックス(エネルギー源)の80%を、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料が占めています。世界的な「脱炭素化」の潮流の中で、今後アジア地域においてもCO2排出量の少ないクリーンテクノロジーを導入し、エネルギーシステムを段階的にトランジションしていくことが必要です。

そこで、化石燃料利用と脱炭素を両立するCCUS技術が、アジアにおける脱炭素化の切り札のひとつとして注目されているのです。

CCUSを実施するためには、CO2を貯留するのに適切な場所が必要です。その条件とは、「CO2を貯留するすき間のある地層があり、その上がCO2を通さない地層でおおわれている」場所。古い油田やガス田も、そうした貯留に適した場所のひとつとなります。

このような油層(ミクロン単位の孔のある、石油が貯留された岩の層)にCO2を圧入すると、従来の方法では回収しきれずに残っていた原油の流動性を高めて原油回収率を向上することができます。これは「二酸化炭素原油増進回収法(CO2-EOR)」と呼ばれる、米国などではすでに実施されているCCUSの一種で(「未来ではCO2が役に立つ?!『カーボンリサイクル』でCO2を資源に」参照)、CO2削減と石油増産という一石二鳥の効果を生むことができます。

アジア各国には、こうしたCCUS貯留ポテンシャルが100億トン以上ある国が多くあることがわかっています。たとえば、インドネシアではCO2の排出源が集中するジャワ島付近に、古い油田や深い塩水層(貯留に適した地下深部の塩水性帯水層)がありますし、マレーシアにも枯渇油田があります。またマレーシアにはガス田が多く存在していますが、これらのガスは高濃度のCO2を含んでいるため、ガス田の開発をおこないつつ、CO2を分離・回収し古いガス田に圧入するといった手法が必要とされています。

アジア地域のCO2の貯留ポテンシャルを地図に表しています。中国は1兆2100億~4兆1300億トン、日本は1400億トン、韓国は1000億トンなどとなっています。

※単位は10億tonCO2
(出典)Global CCS Institute

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日本がリードして立ち上げた「アジアCCUSネットワーク」

こうした背景を踏まえ、アジアでCCUSを推進する意義は大きいと判断した日本は、2020年11月に開催された「東アジア首脳会議(EAS)」のエネルギー大臣会合で、梶山経済産業大臣から「アジアCCUSネットワーク」の立ち上げを各国に提案しました。

そして、2021年6月22〜23日に開催された「第1回アジアCCUSネットワークフォーラム」で、アジア全域でのCCUS活用に向け、知見共有や事業環境整備をめざす国際的な産学官プラットフォームとして「アジアCCUSネットワーク」が立ち上げられました。「アジア地域におけるCCUSの発展普及のための協働・協力を通じて、地域の脱炭素化に貢献する」というビジョンに賛同するASEAN10カ国とオーストラリア、アメリカ、日本の計13カ国がメンバーとして参加し、100を超える企業・研究機関・国際機関がサポーティングメンバーに名をつらねています。

梶山経済産業大臣の写真

第1回アジアCCUSネットワークフォーラムであいさつをおこなう梶山経済産業大臣

これまでASEAN各国において、CCUSは技術面や制度整備で課題があり、その普及は進んでいませんでした。しかし、「カーボンニュートラル」という明確な目標に向けた取り組みとなれば、投融資の呼び込みが期待できます。また、枯渇油田にCCUSを活用することで、原油の増産が見込める国もあります。このような経済的インセンティブがはたらけば、今後アジアにおけるCCUSの商用化が進むとみられます。

気候変動問題は、一カ国では解決することができないグローバルな問題であり、国際的な連携が不可欠です。日本は、CCUSに関してASEAN各国をリードできる技術や知見を持っていることから、ネットワーク発足では主導的な役割を果たしました。これをきっかけに、今後、拡大が見込まれるアジアCCUS市場における日本の研究機関や日本企業のプレゼンスを高めるとともに、アジアの脱炭素化に貢献することが期待されます。

「2030年のCCUS商用化」をめざして

アジアCCUSネットワークは、今後、次のような取り組みを通じて、2030年ごろの商用化をめざしてCCUSの普及を促進します。

リストアイコン ①ワークショップや年次フォーラムを通じた知見の共有
リストアイコン ②地域特性を考慮したCCUSに関する技術、経済および法制度に関する調査
リストアイコン ③人材育成・キャパシティビルディング
リストアイコン ④JCM(二国間クレジット制度)を活用したCCS実証事業の推進(「『二国間クレジット制度』は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策」参照)

CCUS展開イメージ
2020年、2025年、2030年のCCUS展開イメージを図で説明しています。

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第1回のフォーラムでは日本のCCUSの取り組みも紹介されました。参加各国は、日本をはじめ先行してCCUSに取り組む国から技術や知見、経験を学び、自国の政策整備や制度整備に生かすことになります。

アジアCCUSネットワークで、世界のCO2削減に貢献を

現在、世界で実働しているCCUS施設は、北米・欧州・オーストラリアを中心に26カ所ですが、開発段階なども含めると、65の商用CCS施設があります。

また、国際エネルギー機関(IEA)はCCUSによるCO2削減量を、2030年までに全世界で年間16億トン(1.6Gt)、2050年にはその約5倍の年間76億トン(7.6Gt)にまで増やすことを見込んでいます。

CCUSの削減ポテンシャル
2020年を基準とした、2050年までのCO2削減量(年平均)の内訳をグラフにしています。

(出典)IEA “Net Zero by 2050 A Roadmap for the Global Energy Sector” Figure2.4

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アジアCCUSネットワークは、その立ち上げ以降、すでに具体的な活動を開始しています。たとえば、米国エネルギー省の担当課長が米国のCCUS政策動向について、またIEAの専門家がアジアのCCUSの導入見通しについて、それぞれ説明をおこない、参加者と議論するワークショップを開催しています。このように、メンバー、サポーティングメンバーがそれぞれの知見や技術を共有しあう場の提供を通じて、まずはアジア全体でのCCUSの知見の底上げをはかっています。こうした活動に参加するサポーティングメンバーは、アジアCCUSネットワークのウェブサイトで随時、募集しています。

今後もアジアCCUSネットワークの活動を通して、アジア圏での脱炭素化を実現に貢献することが期待されます。

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