CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(後編)

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北海道・苫小牧市のCCS実証試験 プラント全景

CO2削減に必要な革新的な技術として注目されているのが「CCS」(CO2の回収・貯留)と、CO2を利用する「カーボンリサイクル」(CO2の利用)です。前編の「CO2を回収して埋める『CCS』、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に」でもご紹介したように、2019年、北海道の苫小牧でおこなわれた日本初の大規模なCCS実証試験で、貯留量の目標を達成しました。シリーズ後編では、CCSと次の実証であるカーボンリサイクルの今後の方向性についてご紹介しましょう。

2030年までのCCS商用化を目指して

CCS技術の実用化を目指しておこなわれた苫小牧実証試験は、目標であったCO2の30万トン圧入を達成しました。今後はCCSの実用化に向けた取り組みを進め、2030年までの商用化を視野にCCSを導入することを検討しています。今回の実証実験を通じて得られた知見と課題を活かして、今後は以下の4つの方向で、技術の実証や商用化に必要なしくみの整備を推進していきます。

①苫小牧でのCCSとともにカーボンリサイクルを推進

CCSはCO2の大気中への放出を大量に削減できる技術ですが、コストがかかるという問題があります。そこで、CO2を“資源”としてとらえ、再利用する「カーボンリサイクル」も併用するしくみ作りを推進していきます(「未来ではCO2が役に立つ?!『カーボンリサイクル』でCO2を資源に」参照)。今後は、苫小牧のCCS設備を有効に活用してカーボンリサイクルに取り組み、CCSとカーボンリサイクルの連携を実証して、CO2を削減・資源化するCCUS(CO2の回収・貯留・利用)へのあらたな可能性を探っていきます。

②CO2の船舶輸送実証を進める

文献調査によると、日本の沿岸域には約1500~2400億トンのCO2貯留ポテンシャルがあるとされています。また貯留地点ごとに見た場合では、数億~数十億トン級のCO2貯留が可能な(適した地質条件を持つ)地点が全国に複数あるということが、現在進められている調査から推定されています。しかし、CO2を多く排出する工業地帯などがおもに太平洋側の沿岸域にあるのに対し、貯留に適した場所は日本海側に多く位置しています。両者の位置が遠い場合は、パイプラインなどの陸上輸送ではなく、船舶などを使った長距離輸送が必要です。長距離輸送手段を検証するため、現在、舞鶴の石炭火力発電所で分離・回収・液化したCO2を苫小牧まで運ぶ長距離輸送の実証を計画しています。低温・低圧にした液化されたCO2の船舶輸送については、まだ世界で実証されたことがなく、日本では世界に先駆けて2024年の実証開始を目指しています。

③法規制に対応し、事業環境を整備

日本にはCCSに特化した法令がありません。そのため、CO2の分離・回収設備については、「高圧ガス保安法」や「労働安全衛生法」などを適用し、CO2の海底下の地中貯留については「海洋汚染防止法(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律)」を適用しました。一方、圧入井を掘削することや、圧入時の安全基準などは存在しないため、「鉱業法」、「鉱山保安法」などに準拠しました。今後、産業化を目指すにあたっては、これらの法規制をととのえ、事業環境を整備することが必要です。

CCSの地上設備に適用される法制度
CCSの地上設備にそれぞれどんな法制度が適用されるかを図解しています。ガス事業法、高圧ガス保安法、消防法、電気事業法、労働安全衛生法など、さまざまな法制度が適用されています。

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すでにCCSプロジェクトが実施されている海外では、国や自治体政府の法令などによるCO2貯留に関する法的枠組みの整備が進んでいます。また、税控除や補助金など、CCS導入を促進する制度も整備されています。日本でも、今後、そうした制度整備をしていくことが課題です。

世界の主なCCS関連法規制・政策
世界の主なCCS関連法規制・政策を表にまとめています。表にはEU、英国、オランダ、豪州、米国、カナダ・アルバータ州、カナダ・サスカチュワン州、日本が入っており、2008年から2012年の間に施行されています。

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④国際連携の推進

日本はCCUSの普及促進のため、「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」、「クリーンエネルギー大臣会合(CEM)」などの国際会議における日本の取り組みの積極的な発信や、米国、カナダ、豪州、サウジアラビアやインドネシアなどとの二国間での協力を進めています。インドネシアにおいては、日本の優れた脱炭素技術などの普及を通じてCO2削減の成果を分け合う「二国間クレジット制度」(「『二国間クレジット制度』は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策」参照)を利用した、共同プロジェクトに向けて調査を開始しています。

アジア全体に目を向ければ、各国で100億トン以上のCO2貯留ポテンシャルがあるとされているものの、各国の政策や制度整備は十分ではありません。そこで、2020年11月に開催された「東アジアサミット(EAS)」エネルギー大臣会合において、日本からの提案で、地域全域でのCCUS活用に向けた環境整備や知見を共有するプラットーフォームとして「アジアCCUSネットワーク」の構築を提案し、各国から歓迎の意が示されました。今後、こうしたネットワークなども活用し、世界の脱炭素化のためのCCUS普及に向けてさらなる貢献をしていきます。

アジアのCO2貯留ポテンシャル
アジア地域のCO2の貯留ポテンシャルを地図に表しています。中国は1兆2100億~4兆1300億トン、日本は1400億トン、韓国は1000億トンなどとなっています。

※単位は10億tonCO2
(出典)Global CCS Institute

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実用化がせまるCCSについて、もっと深く知ろう②

前編に引き続き、CCSについてよくある疑問にお答えしましょう。

Q:CCSの安全性はどのように確認されているのでしょうか。

苫小牧でのCCS大規模実証試験では、圧入したCO2が漏れていないか、また地層や海洋に影響しないかについて、①地中に圧入したCO2の温度・圧力の観測、②圧入したCO2の地中での広がりの把握、③貯留地点の周辺における地震発生状況の把握のモニタリングを実施し、その安全を確認しています。また、その結果は、苫小牧市役所に設置した情報公開モニターで常に公開しています。現行のモニタリング計画は2021年度3月末までですが、圧入後の2021年度以降のモニタリング計画も策定しているところです。

現行のモニタリングシステムの概要
苫小牧のCCS大規模実証試験でのモニタリングシステムを、断面図で表しています。地中に圧入したCO2の温度や圧力、流量、貯留地点周辺での地震発生状況などを計測するセンサーの設置状況などが示されています。

(出典)JCCS

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苫小牧での大規模CCS実証事業の成功により、CCUSの発展に新たな可能性が開かれました。今後、社会実装を目指し、さらには世界への普及展開へとつなげていくことが期待されます。

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