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日本のエネルギー自給率は1割ってホント?
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エネルギー政策でもっとも大事な点は、「安全性(Safety)」を前提とした上で、「エネルギーの安定供給(Energy Security)」を第一に考え、「経済効率性(Economic Efficiency)」の向上、つまり低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に「環境への適合(Environment)」を図ることにあります。この「3E+S」の追求は、各国のエネルギー政策に共通しています。さまざまなグラフを通して、世界各国の「3E」の状況を見てみましょう。今回はまず、ひとつめの「E」である「エネルギーの安定供給(Energy Security)」について紹介します。
エネルギーを安定的に供給するためには、何が必要でしょうか?それは、「エネルギー源となる燃料などを安定的に調達する」ことと、「継続的なエネルギー供給を確保する」ことです。日本を例にこの2つを考えてみましょう。日本は、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っています。このため、もし海外でエネルギー供給上、何らかの問題が生じた場合には、資源を確保することが難しくなるという、「エネルギー源となる燃料などを安定的に調達する」ための弱点を抱えています。事実、1973年と1979年に起こったオイルショックでは、原油価格の高騰で日本経済がおびやかされました(1973年当時、石油の一次エネルギー比率は75.5%)。エネルギー消費を抑える省エネルギーの取り組みも進められてきたものの、それだけではこの弱点は解決されないため、石油に代わるエネルギーの模索を進めてリスクを分散する、国産エネルギー源を確保するなどの努力が重ねられてきました。一方、「継続的なエネルギー供給を確保する」ことについては、近年、国内では自然災害がひんぱんに起きており、その影響でエネルギーインフラに問題が生じることも増えていることが注目されます。もしそうした問題が生じて、発電所や送電線などのエネルギー供給システムが被害を受けた場合には、経済活動や日常生活に大きな影響が出てしまいます。このような「エネルギー源となる燃料などを安定的に調達する」「継続的なエネルギー供給を確保する」ことについて、世界各国はどのような状況にあるのでしょう?①エネルギー自給率、②エネルギー輸入先の多様化、③停電時間、という3つの指標で比較してみましょう。
「エネルギー自給率」とは、必要なエネルギー資源のうちどのくらいの量を自国でまかなっているか、その割合を示したものです。自給率は、国内にある石油や石炭など化石資源の豊富さや、再生可能エネルギー(再エネ)など非化石エネルギーの導入量に関連して変動します。また、省エネの取り組みが進めば、使用するエネルギーの総量が減るため、相対的に自給率の上昇につながります。自給率が低いと、他国にエネルギー資源を依存することになります。すると、国際情勢の影響を受けやすくなり、海外で何か問題が起きた場合に、安定したエネルギー供給ができなくなる可能性があります。エネルギーの自給をある程度実現することが、エネルギーの安定供給のためには大切です。
一次エネルギー自給率の変化
(出典)IEA World Energy Balances を基に資源エネルギー庁作成
上のグラフは、主要国のエネルギー自給率と、その変遷を示したものです。この10年近くだけ見ても、かなりの変動があることがわかります。この変動はどのような要因で起きたものなのでしょうか?
資源のとぼしい日本のエネルギー自給率は、2011年に東日本大震災が起こる前までは、20%前後の水準となっていました。しかし、震災以降、原子力発電の発電量が減少したため、一時は6%まで悪化しました。近年は、「固定価格買取制度(FIT)」(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)の導入による再エネの発電量の増加や、原子力発電所の再稼働、省エネルギーのさらなる進展などによって、自給率は少しずつ高まってはいるものの、いまだに10%程度にとどまっています。
2000年代後半に起こった「シェール革命」(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」参照)により、米国では化石燃料(原油と天然ガス)の国内生産量が大きく増加しました。さらに再エネも増加したことで、米国のエネルギー自給率は、直近の10年間で約20%も上昇しています。しばらくは、このような自給率の高い傾向が継続すると考えられます。
北海にある海底油・ガス田(北海油田)を開発したことにより、英国は1980年頃、一次エネルギー自給率が100%を超え、エネルギー輸出国となりました。しかし、北海油田の枯渇によって原油生産量がだんだんと減少、自給率を下げる要因となっています。しかし、現在でも、自給率は約7割程度を維持しています。
フランスのエネルギーは、電力の7割以上を原子力発電によって供給しているという特徴があります(「『パリ協定』のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑥ ~非化石電源比率がすでに9割のフランス」参照)。原子力発電は、万が一海外からの燃料調達が途絶えた場合でも、国内に保有する燃料だけで数年にわたって生産が維持できるため、IEA(国際エネルギー機関)においても自給率の計算に算入されています。このため、自給率は50%前後で安定して推移しています。
エネルギー自給率だけで見ると変化がないように見えますが、構成が異なります。かつてのドイツは、国内で産出される石炭の利用と原子力により4割程度の自給率を達成していました。近年では、再エネ導入促進政策による再エネ発電量の増加によって、自給率が増加しています。しかし一方、原子力発電所の稼働停止を進めているため、結果として自給率は同じ水準で推移する傾向になっています。
*****このように、主要国のエネルギー自給率は、その時のさまざまなエネルギー状況に応じて、移り変わっていることがわかります。とはいえ各国の自給率はいずれも4~5割以上を維持しており、資源にとぼしい日本の自給率の低さが際立っています。次回は、2つめの指標「②エネルギー輸入先の多様化」についての国際比較を紹介します。
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