成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
「エネルギー安全保障」とは、エネルギーが安定的に、また低廉な価格で供給される状態を達成しようとする取り組みのことです(「石油がとまると何が起こるのか? ~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク? 」参照)。もしもエネルギーの供給が止まると、経済活動や市民生活に重大な影響がおよぼされます。ですから、「エネルギー安全保障」の取り組みは、すべての国のすべての国民にとって、とても重要で実現されるべき取り組みであるといえます。変化の激しい現代の国際社会において、その取り組みは時に困難を極めますが、各国が、自国の地理的条件や経済状況、国際情勢などをかんがみながら、エネルギーによって成り立っている生活を守ろうと努めています。 今回は、世界各国と日本の「エネルギー安全保障」について、その違いや変化を定量的に比較してみましょう。
資源エネルギー庁が、数値で表すことが難しいエネルギー安全保障という概念について、定量的に評価する試みをおこなったのは、「エネルギー白書」の2010年度版である「エネルギー白書2010」でのこと。世界の主要7カ国を対象に、1970年代以降のエネルギー安全保障について、その強化の取り組みを定量的に評価したのです。
この評価に使用した「定量的評価指標」は、その後2015年度版の「エネルギー白書2015」でも使用し、米国で起こった「シェール革命」に伴う主要国のエネルギー安全保障の変化を評価。2010年度版の評価値との比較をおこないました。
資源エネルギー庁が2017年度(平成29年度)に実施した「国内外のエネルギー動向に関する調査・分析」では、再度この定量的評価指標を使い、最新の統計などから「2000年代」と「2010年代」を比較。エネルギー情勢をめぐる環境の変化を定量的にとらえることを試みました。その内容の一部を見てみましょう。
調査対象国は、2010年度版と同じ、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、日本、韓国の7カ国です。評価項目および評価手法などは原則として2010年度版を踏襲しています。評価項目は、以下の7つです。
これら7つの指標について、主要国の2000年代と2010年代のエネルギー安全保障の状態を比べたところ、改善している国はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国。後退した国は日本と中国でした。
この調査では、日本について、東日本大震災前後のエネルギー安全保障の状態も比較しています。震災前の2010年と震災発生後の2011年では、需要家1件あたりの停電時間の増加と、それにともなう、「電力の安定供給(電力供給信頼度)」が大きく後退しています。また原子力発電の停止で「一次エネルギー自給率」も後退しました。
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2015年は、2011年と比べてさらに「一次エネルギー自給率」が後退しています。再生可能エネルギーの促進もかなり進んだものの、原子力発電所の停止の影響まではカバーできなかったためです。また、原子力のシェアが低下した分を石炭と天然ガスの増加で補ったため、「エネルギー源多様化」も後退しました。しかし、2011年と比べて改善した点もありました。まず、省エネルギーがさらに進展したことで、一次エネルギー供給量が減少したため、「エネルギー消費のGDP原単位」が改善しました。また、計画停電の終了にともない、停電時間は減少。 「電力の安定供給(電力供給信頼度)」が改善しました。さらに、ロシア原油の輸入が増えたため、「チョークポイントリスク」も低減しました。
今後、このほか、評価指標となった7項目それぞれについても、2000年代と2010年代の評価を比較してご紹介する予定です 。ぜひご覧になって、エネルギー情勢の変化を感じとってみてください。
長官官房 総務課 調査広報室資源・燃料部 政策課
長官官房 総務課 調査広報室
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