成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
エネルギー政策でもっとも大事な点は、「安全性(Safety)」を前提とした上で、「エネルギーの安定供給(Energy Security)」を第一に考え、「経済効率性(Economic Efficiency)」の向上、つまり低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に「環境への適合(Environment)」を図ることにあります。この「3E+S」の追求は、各国のエネルギー政策に共通しています。さまざまなグラフを通して、世界各国の「3E」の状況を見てみましょう。2回目は、ひとつめの「E」である「エネルギーの安定供給(Energy Security)」に関わる、「輸入先の多様化」の状況を紹介します。
「グラフで見る世界のエネルギーと『3E+S』安定供給① ~各国の自給率のいま」でご紹介したように、エネルギーを安定的に供給するためには、「エネルギー源となる燃料などを安定的に調達する」ことと、「継続的にエネルギー供給を確保する」ことが必要となります。このような「エネルギーの安定供給」において、世界各国がどのような状況にあるか、比較する場合に役立つのが、①エネルギー自給率、②エネルギー輸入先の多様化、③停電時間、という3つの指標です。前回は「①エネルギー自給率」について各国の状況を見ましたが、「②エネルギー輸入先の多様化」、中でも「化石燃料の輸入先の多様化」についてはどういう状況にあるのでしょう?
日本のように自給率が低い水準にある国(「グラフで見る世界のエネルギーと『3E+S』安定供給① ~各国の自給率のいま」参照)は、エネルギー資源の調達先(輸入先)が特定の国・地域にかたよらないようにすることが大切です。調達先を分散させることで、政治、経済、社会情勢の変化に過度に左右されるリスクを減らし、エネルギーの確保を安定的にすることが可能になるからです。こうした「輸入先の多様化」は、「エネルギーの安定供給」を実現するためにきわめて重要なポイントのひとつです。では、主要国のエネルギーの調達先はどのようになっているのでしょうか。資源エネルギー庁では、原油・天然ガス・石炭の3種のエネルギー源それぞれについて、主要国の輸入先を調べ、どの産出国がどれくらいの割合を占めているのか(寡占度)を算出。0点~10点までの点数に換算して評価をおこないました。なお、計算にあたっては、輸入量のシェアなどの数値のほか、輸入先である産出国の「カントリーリスク」も数値化して折りこみました。「カントリーリスク」とは、対象国の政治・経済・社会環境が混乱したり不安定になったりすることで、価格が変動するといった何らかの損失をこうむるリスクのことを指します。その結果、2014~2016年のデータでは、安定供給の評価の高い順から、フランス、日本、ドイツ、英国、米国となりました。
主要国のエネルギー輸入先に関するリスク評価
(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成
主要国のエネルギー輸入先に関するリスク評価順位
(出典)OECDカントリーリスク評価などを基に資源エネルギー庁作成
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では、それぞれの国の評価の要因について、見ていきましょう。以下のグラフにおける0~10の点数は、10に近づくほど輸入先が多様化し、リスクが少ないことを表しています。また、各エネルギー源の横にある数字は、化石燃料の輸入量を100%とした時、各エネルギー源の輸入量がどれだけを占めているのかを示しています。赤字は2014年~2016年の平均値を、青字は2008年~2010年の平均値を算出しています。
(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成 | %は化石燃料輸入量に占める当該燃料のシェア。上段が2014年~2016年、下段が2008年~2010年。
フランスでは、2014~2016年の輸入化石燃料の6割を原油、3割を天然ガス、1割を石炭が占めています。
日本では、2014~2016年の輸入化石燃料の5割を原油、2割を天然ガス、3割を石炭が占めています。
ドイツでは、2014~2016年の輸入化石燃料の4割を原油が、3割を天然ガスが、3割を石炭が占めています。
英国では、2014~2016年の輸入化石燃料の4割弱を原油が、5割弱を天然ガスが、2割を石炭が占めています。
米国では、2014~2016年の輸入化石燃料の4割強を原油が、3割を天然ガスが、3割弱を石炭が占めています。
輸入先の多様化をいかにして図るかは、各国の課題です。輸入先のカントリーリスクを考えつつ、輸入先がかたよらないよう、最適なバランスを模索していくことが求められます。次回は、3つめの指標「③停電時間」についての国際比較を紹介します。
長官官房 総務課 戦略企画室
長官官房 総務課 調査広報室
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