脱炭素化に向けた国際連携のさらなる一歩、「東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク2021」②

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温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」、さらには過去に大気中に排出されたCO2も削減する「ビヨンド・ゼロ」。この大きな目標を実現するために、さまざまな議論をおこなう国際会議を集中して開催するのが「東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク」です。2021年から新しく追加された2つの会議についてご紹介した第1回に続いて(「脱炭素化に向けた国際連携のさらなる一歩、『東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク2021』①」参照)、第2回は資源エネルギーに関連する3つの会議をご紹介します。

これからの資源エネルギーに関する3つの会議、その注目ポイントは?

エネルギー・環境関連の国際会議を10月の1週間に集中しておこなう「東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク」。2021年は10月4日から8日にかけて8つの会議が開催されました。

今回は、資源エネルギーに関する課題や挑戦すべき取り組みについて議論をおこなった3つの会議の内容を見ていきましょう。

「第3回カーボンリサイクル産学官国際会議」

CO2を資源として捉え、これを分離・回収して多様な製品として再利用する「カーボンリサイクル」。大気中へのCO2排出を抑制する方法のひとつとして、さまざまな分野で先端技術研究が進められています。

その実現に向けて2019年からおこなわれている「カーボンリサイクル産学官国際会議」は、世界各国の産官学の第一人者を招き、革新的な取り組みや最新の知見、国際連携の可能性を確認し、各国間の産官学のネットワーク強化をうながす会議です。

スタート当初は「カーボンリサイクル」というコンセプトそのものが新しいものでしたが、回を重ねるごとに認知度も高まってきたことから、今回の会議は「カーボンリサイクル」で何ができるのか、より実務的な内容にフォーカスしたものとなっています。オンライン形式で32カ国・地域から約2800名が参加登録し、サウジアラビアやインドネシア、ノルウェーの閣僚級をふくめた各国・機関の代表者が、講演やパネルディスカッションに参加しました。

第1部の閣僚講演では、国内外の要人がスピーチをおこないました。その中では、アジアの国々にはコストが安く豊富な石炭が存在しておりこれを利用しない選択肢は現実的ではないこと、化石燃料を使い続けながら発生するCO2を削減し脱炭素化を目指すべきだという声があり、カーボンリサイクルの重要性があらためて認識されました。

第2部のパネルディスカッションでは、日本がこれまでに「カーボンリサイクル協力覚書(MOC)」に署名した米国やオーストラリアの国立研究所からカーボンリサイクル技術の第一人者が初めて集いました。そこでは、先進的な技術開発の取り組みを紹介するとともに、国際的なオープンイノベーションを加速することも合意されました。また、コンクリート・セメント、燃料・化学品、研究開発・投資各の各分野におけるカーボンリサイクルについて、産官学の第一人者が国内外から参加し、社会実装に向けた今後の方向性を発信しました。

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パネルディスカッションのテーマI「カーボンリサイクルによるCO2を利用した鉱物(コンクリートやセメント)の動向」の様子

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パネルディスカッションのテーマⅡ「カーボンリサイクルによるCO2を利用した燃料・化学品の動向」の様子

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パネルディスカッションのテーマⅢ「未来につながる技術、投資への期待」の様子

今回の会議の成果のひとつに「プログレスレポート」の発表があります。カーボンリサイクルの社会実装に向けた直近1年間の取り組みとして、日本では「グリーン成長戦略カーボンリサイクル実行計画」の策定や、「カーボンリサイクル技術ロードマップ」改訂などがおこなわれましたが、プログレスレポートはその進捗をまとめたものです。

今後も国際連携を強化し、カーボンリサイクルの社会実装に向けた技術開発・実証の取り組みを加速していく方針です。

「第4回水素閣僚会議」

エネルギーとして使用する際にCO2を排出しない水素は、エネルギートランジション(エネルギー転換)や脱炭素化を実現するキーテクノロジーとして、世界的に注目を集めています。

「水素閣僚会議」は、関係各国の歩調を合わせて水素の利活用を進めようと、2018年に日本で初めて開催されました。日本は議長国として、水素社会実現に向けて「東京宣言」およびその行動指針となる「グローバル・アクション・アジェンダ」を発表するなど、世界各国での水素関連の取り組みを促進し、国際的な連携のさらなる強化に貢献しています。

2021年は前回と同じくオンライン開催となりましたが、オーストラリアの産業、エネルギーおよび排出削減大臣やニュージーランドのエネルギー・資源大臣、欧州委員会のエネルギー担当委員など18人の閣僚を含む、29の国・地域・国際機関等の代表者、各企業・自治体の代表者が登壇し、参加登録者は約3200名を記録しました。これは過去最高の参加者数で、世界での水素への関心の高まりを表わしているといえます。

会議は閣僚セッションと、企業による民間セッションの2部制でおこなわれました。閣僚セッションでは広瀬経済産業審議官が冒頭挨拶に立ち、多くの国で水素戦略が策定され水素に関するさまざまな取り組みが実施されていることをふまえて、水素が実装段階へ移行していることを認識するとともに、水素社会の実現に向けては国の明確なコミットやコスト削減、さらには世界の連携が必要になることを述べました。

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広瀬経済産業審議官

また国際エネルギー機関(IEA)からは、水素に関する最新の世界動向やアドバイスを政策決定者に提供する「Global Hydrogen Review 2021」が発表されました。各国の代表者からもさまざまな発表があり、グローバルでの水素利活用を一層推進するために、各種の課題や政策の方向性を確認しました。

民間セッションでは4つの分野に分かれ、日本の川崎重工業株式会社やENEOS株式会社、トヨタ自動車株式会社/技術研究組合FC-Cubic、旭化成株式会社、福島県浪江町、やまなし・ハイドロジェン・カンパニー(YHC)など、世界各国で水素の供給や利活用に取り組むリーダー企業や地域のリーダーが意見交換をおこないました。セッションのテーマは、①水素サプライチェーン、②Hydrogen Valleys(地域水素社会モデル)、③燃料電池モジュール、④水電解です。それぞれ水素の供給や利活用には重要なテーマで、世界の先進的な事例や動向を知るとともに、水素の利用拡大に向けた展望も共有しました。

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民間セッションのテーマ②「Hydrogen Valleys(地域水素社会モデル)」の様子

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民間セッションのテーマ③「燃料電池モジュール」の様子

水素はすでに技術開発の段階ではなく、実装の段階に入っています。世界ではさまざまな取り組みが始まっており、その最新の知見を共有する場を持つことは重要です。日本としては、今後も水素の大規模需要の創出や国際サプライチェーンの構築を主導していく方針です。また、水素に関する幅広い議論をおこなう国際会議として「水素閣僚会議」を引き続き開催していく予定です。

「第10回LNG産消会議」

「LNG産消会議」は、東日本大震災後の2012年からスタートした歴史ある会議です。エネルギーの安定供給において液化天然ガス(LNG)が果たす役割の重要性を考え、LNGの産出国と消費国がwin-winの関係になることを目指して開催されています。

節目となる第10回会議は、世界57カ国・地域から過去最多の2200名以上が参加登録し、オンラインで開催されました。日本企業では、日本郵船、三菱重工がセッションに登壇。また、当日の登壇者以外にも、25カ国以上の閣僚級や70以上の企業・国際機関のトップからビデオメッセージがよせられました(下記の産消会議Webサイトにも掲載されています)。

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資源エネルギー庁・保坂長官

近年はアジアでの供給不足やヨーロッパでの需要増など、LNGの必要性がますます高まっています。LNGはCO2を排出する化石燃料の1つではありますが、エネルギー移行期を支える資源として重要な存在なのです。そこで今回は、エネルギートランジションのカギとなるLNGの位置付けを明確化し、①“トランジション・エナジー”として重要性を増すLNGの役割、および②LNGをよりクリーンに利用する、という2つのテーマで議論をおこないました。

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セッション③「Increasing role of LNG as “transition energy”」の様子

会議の成果としては次の4つがあげられます。

リストアイコン ① アジア各国の脱炭素化を支援する、日・米・豪・韓の民間企業の新たなイニシアティブ「Asia Natural Gas and Energy Association(ANGEA)」設立を発表
リストアイコン ② 国際排出権取引協会(IETA)と、日本企業を含めたLNG産業界による、CCS(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)やカーボンクレジットのあり方の国際的な議論・検討をスタートすることを発表
リストアイコン ③ 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、LNGバリューチェーン上の温室効果ガス(GHG)排出量を算定するため、簡易で精度の高い方法論の策定に取り組む。また近い将来に実際のLNGプラントでの実データによる検証も目指す(2020年に発表した日本政府の方針“Make Clean LNG Cleaner”の具体化)
リストアイコン ④ これまで議論を続けてきた、「仕向地制限」の撤廃に関するJOGMECの調査結果とその成果を発表

「仕向地制限」とは、LNGの輸送先をあらかじめ決め、他国への転売を禁じる契約です。日本による制限撤廃に向けた取り組みは、流動性の高いLNG市場をリードするものとして、IEAからも高く評価されています。近年では、仕向地制限無しのLNG契約が増えています。

仕向地制限が課されている契約数量を公取委調査(2017年6月)前後で比較
LNGの契約数量のうち仕向地制限があるものの量を、公取委調査(2017年6月)前後で比較した円グラフです。調査以前は71%、調査以降は57%と減少しています。

2020年度の全契約のうち、新規契約と改定した契約のみに絞ってみて見ると、仕向地制限ありのものは23%まで減っています。

2020年度の全契約のうち、新規契約と改定した契約のみに絞って仕向地制限がある契約の数量を見た円グラフです。

また、LNG産業界では、早くから民間主導で「カーボンクレジット」(CO2排出削減効果を証券のように取引する制度)が活用されており、近年は、採掘から燃焼までの工程で排出されたCO2をカーボンクレジットで相殺(カーボン・オフセット)した「カーボンニュートラルLNG」の導入が進んでいます。日本ではオフィスビルなどで導入されており、2021年3月には日本企業15社が「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」を設立しています。


今後は世界でもカーボンニュートラルLNGの導入が進むと考えられ、日本のLNGにおけるカーボンクレジットのルール整備が、その基準となることも期待されています。LNG産消会議ではこうした民間の取り組みを歓迎するとともに、新しい時代の要請にこたえて脱炭素化を実現すべく、次の10年に向けてLNGに関わる官民の新たな連携の必要性を呼びかけました。

次回は、環境金融やイノベーションに関連する3つの会議の内容をお伝えしましょう。

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