水素社会の実現に向けて、世界で目標を共有した「第2回水素閣僚会議」

「水素閣僚会議」の集合写真です。

2019年9月25日~26日の2日間にわたり、日本でエネルギー関連の国際会議が集中的におこなわれました。2019年で8回目となる「LNG産消会議2019」(「これまでの50年とこれからの50年を考える、『LNG産消会議2019』」参照)、2018年から開催されている「水素閣僚会議」の第2回、そして2019年に初めて開催された「第1回カーボンリサイクル産学官国際会議」(「日本発の革新的なCO2削減対策を世界へ~『カーボンリサイクル産学官国際会議』」参照)、の3つです。今回はその中の「水素閣僚会議」の内容とともに、世界各国で進む水素の活用状況についてもご紹介します。

日本だけじゃない、世界で進む水素の利活用

水素は、水や化石燃料(石油、天然ガスなど)、廃プラスチックなどのさまざまな資源からつくることができ、エネルギーとして利用する際にCO2を排出しないという特徴を持っています(「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」参照)。そのため、再生可能エネルギー(再エネ)とならぶ新たなエネルギーとして注目を集めています。

日本では「エネファーム」に代表される、水素と酸素を使って電気と熱をつくる「家庭用燃料電池」が約30万台普及し、燃料電池自動車(FCV)などに水素を充てんするための水素ステーションも世界最多の100カ所以上設置が進むなど、水素の利用に積極的な国のひとつです(「2019年の今、『水素エネルギー』はどこまで広がっているの?」参照)。最近では、乗用車だけでなく、コンビニエンスストアがFCトラックを配送用に活用する実験がおこなわれるなど、さらなる利用拡大が模索されています。

日本以外にも、水素に注目している国は多くあります。たとえば次のような国々です(数値は、2019年10月1日時点のものです)。

FCVの普及が進む米国

米国では、2000年代初めから政府がFCVと水素エネルギーの普及に力を入れています。とりわけカリフォルニア州では取り組みが進んでおり、2019年10月現在で41カ所の水素ステーションが稼働しています。FCVの販売台数も2019年10月現在で7,570台となっており、乗用車だけでなくトラックやフォークリフト、バスといった乗り物にも燃料電池(FC)を活用する動きが加速しています。さらには船への燃料電池の活用も検討されています。

FC大型商用トラックのイメージです。

トヨタ自動車が米国で2017年夏から実証実験をおこなっているFC大型商用トラック(出典)Toyota Motor North America

大規模水素発電計画を発表したオランダ

オランダのマグナム(Magnum)発電所は、発電所にある3基のガスタービンを順次水素発電に切り替えるという計画を発表しました。100%水素を利用する「水素専焼発電」による発電所を実際に運転する取り組みは、世界初です。この計画により、年間約400万トンのCO2排出が削減される見込みです。同プロジェクトの実現に向けては、日本企業も協力しています。

いち早く水素利用計画を推進したドイツ

ドイツも、2004年からFCVと水素ステーションの実証プロジェクトを開始。また2007年からは「水素・燃料電池技術革新プログラム(NIP)」が始まり、技術開発への資金が投入されています。さらに、2009年にはFCVと水素ステーションの全国的な普及を目指したインフラ整備を検討する官民一体のプロジェクト「H2 Mobility」が発足。2019年11月時点で、水素ステーションの設置数は77カ所です。

水素エネルギーの輸出国を目指すオーストラリア

オーストラリアは再エネ輸出国を目指すという政府の方針のもと、クリーンエネルギーの導入が進んでいます。そのトップに水素エネルギーを位置づけ、再エネ由来の水素の輸出も視野に入れています。2018年12月には「国家水素戦略」を2019年に策定することを目指すと発表しました。首都のキャンベラでは1億8,000万ドルをかけて水素への投資を促進しているほか、ドイツのシーメンス社と進める水素発電の計画では、既存のプラントを活用した水素燃焼技術の導入が検討されています。

「エナジー・オブザーバー」号のイメージです。

トヨタ自動車がヨーロッパで支援している世界初の水素燃料電池船「エナジー・オブザーバー」号(出典)Toyota Motor Europe

このほかにも、2019年1月には韓国が「水素経済のロードマップ」を発表、2019年2月にはヨーロッパの燃料電池水素共同実施機構(FCHJU)が2050年までの道のりを描いた「欧州水素ロードマップ」を発表しています。

世界で取り組む「グローバル・アクション・アジェンダ」

このように、多くの国で水素利用の促進に向けた戦略が策定され、新たな水素の製造・利活用のプロジェクトが進められています。これまでのような家庭用燃料電池や乗用車だけでなく、トラックや船、飛行機といったより大型の乗り物への導入、あるいはさらに大規模な量を利用する水素発電など、水素利用先の多様化への検討が進み、世界中で水素に対する関心が高まる中で開催されたのが、第2回水素閣僚会議です。

2018年、各国の閣僚レベルが「水素社会の実現」を議論する場として世界で初めて開催された第1回の参加数を大きく超える35の国・地域・機関から約600人の参加がありました。アジアやアフリカなどからの参加が増え、水素エネルギーが先進国だけでなく新興国でも注目を集めていることがわかります。

閣僚セッションでは、それぞれの国や機関での取り組み状況を共有し、グローバルな水素の活用について議論を深めました。さらに、各国の水素・燃料電池に関する行動指針として、「グローバル・アクション・アジェンダ」を議長声明として発表しました。これは、前回の会議で示された「東京宣言」をさらに具体化したもので、さまざまな側面からの行動指針を示しています。

「グローバル・アクション・アジェンダ」のポイント
リストアイコン 世界目標(“Ten, Ten, Ten”など)の共有
リストアイコン 水素の海上輸送拡大に向けたルール整備、貯蔵・輸送のための技術開発
リストアイコン 水素発電や産業利用といった多様な分野での水素利用の促進に向けた技術の実証
リストアイコン 国際機関によるロードマップや水素需要見通しの策定
リストアイコン 今後の水素利用拡大に向けた情報共有や啓蒙活動

特に、世界全体で目指す目標として、「今後10年間で、水素ステーションを10,000カ所(10thousand)、燃料電池システムを1,000万台(10milion)設置する=“Ten, Ten, Ten”の取り組み」や「モビリティ分野におけるインフラの整備・市場の拡大」を目指すことが参加した国・地域・機関の間で共有されました。また、海上輸送のルール整備や水素発電技術の実証など、「水素の大量生産・大量消費」に向けた取り組みを進めることも示されました。

また、国際エネルギー機関(IEA)、国際水素・燃料電池パートナーシップ(IPHE)などの国際機関や世界のリーダー企業が参加したセッションでは、「分野横断」「モビリティ」「サプライチェーン」「セクターインテグレーション」の4つの分野に関する講演とパネルディスカッションがおこなわれました。各国閣僚レベルで発表された「グローバル・アクション・アジェンダ」をふまえて、各セクターが今後実行していくべき取り組みについて議論が深められました。

世界規模で水素社会を実現するため、国や企業と協力関係を構築

日本は、2018年のニュージーランドと覚書(MOC)締結に続き、2019年も会議に参加した各国や企業と個別に意見を交換し、二国間での協力関係を構築しました。

リストアイコン アルゼンチン財務省エネルギー政府事務局
再エネを使った水素製造、「水素戦略ロードマップ」の整備、中・長期的なコスト低減の方策などについて、専門家による情報交換、知見の共有などをうながしていくための協力覚書
リストアイコン オランダ経済・気候政策省
水素政策や水素の利活用に向けた取り組み、「水素戦略ロードマップ」、国際的な水素サプライチェーンの創出、技術開発などの分野において、政府、産業界、研究機関が協力していくための協力覚書
リストアイコン ロシアのロスアトム・オーバーシーズ社
水素サプライチェーンに関する実現可能性調査についての協力覚書

水素社会を世界規模で実現するために、今後もより一層の国際連携を強化していきます。

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