2019年の今、「水素エネルギー」はどこまで広がっているの?

水素ステーションの写真

水素ステーション(出典)(C)岩谷産業株式会社

「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」でもご紹介したように、水素エネルギーは、さまざまな資源からつくることができ、エネルギーとして利用する際にCO2を出さないという2つの特徴を持っています。現在の主な利用先としては、燃料電池自動車(FCV)の燃料として使われているほか、家庭用燃料電池(エネファーム)では水素と空気中の酸素の化学反応により生じた電気と熱が家庭に供給されているなど、次世代エネルギーとして注目されています。今回は、そんな水素エネルギーの可能性が体感できる2つの施設と、水素に関連するさまざまな企業が一堂に会した「水素・燃料電池展(FC EXPO)」の様子をご紹介しましょう。

都内にも続々と増えている「燃料電池バス」や「水素ステーション」

水素を動力源として利用する「燃料電池自動車(FCV)」や「燃料電池バス(FCバス)」は、自動車の新時代を担う電動車(xEV)のひとつです(「『電気自動車(EV)』だけじゃない?『xEV』で自動車の新時代を考える」)。日本の自動車メーカーや部品メーカーも、このFCVやFCバスの開発・製造に参入しています。東京都交通局ではすでにFCバスを数台導入しており、静かで快適な乗り心地を体感することができます。

このような水素を使った自動車に欠かせないのが、ガソリンスタンドのように自動車やバスに水素を充填できる「水素ステーション」です。すでに実用化されており、2019年3月末時点で全国に103カ所整備されています。

スタンドには、水素を車両に供給するためのノズルを備えたディスペンサー、水素を蓄えておく蓄圧器、水素を適切な圧力に昇圧するための圧縮機(コンプレッサー)、水素を冷却するプレクーラーなどが設置されています。水素製造設備が設置されている場合もあります。充填にかかる時間は3分程度であり、ガソリンスタンドとそれほど変わりはありません。

FCバスの写真

水素ステーションで充填するFCバス

こうして見るとガソリンスタンドと同じようですが、大きく異なるポイントは、水素の充填作業は、基本的には水素ステーションの従業員が担当することになっているという点です。そこで、水素ステーションに常駐している従業員が、安全を確認した上でFCVやFCバスへ充填します。

なお、2018年5月に業界団体によって制定された「セルフ水素スタンドガイドライン」に基づき、現在では、保安教育を受けて事業者と契約を結んだ場合であれば、一般のFCVユーザーがセルフ充填をおこなうことが可能となりました。

今後はさらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに、遠隔監視による無人の水素ステーションの運用を目指し、法的・技術的課題の検討や、必要となる安全対策の整理が進められています。

水素・燃料電池の展示会で水素エネルギーの先端を知る

水素ステーションがだんだんと増加しているように、水素エネルギーに関する市場は盛り上がりを見せており、2019年2月27日~3月1日まで東京ビッグサイトで開催された「水素・燃料電池展(FC EXPO)」にも、たくさんの関連企業がブースを並べました。

出展者は、部品・材料メーカー、評価・測定・検査をおこなう機器メーカーやサービス事業者、水素製造装置メーカーや水素貯蔵機器メーカー、燃料電池システム・製品メーカー、海外企業や各国政府機関などさまざまです。

水素製造プラントや水素ステーションを展開する岩谷産業は、「燃料電池フォークリフト」用の水素充填装置を展示。また、エネルギー関連事業のシステムなどを取り扱う東芝エネルギーシステムズは、福島県浪江町で建築中の福島水素エネルギー研究フィールドの模型も展示しました(「福島生まれの水素をオリンピックで活用!浪江町の『再エネ由来水素プロジェクト』」参照)。

「燃料電池フォークリフト」用水素充填装置の写真

岩谷産業による、燃料電池フォークリフト用の水素充填装置の展示

川崎重工業などの複数の企業で構成される「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」がオーストラリアで実施中の、褐炭(水分を多く含む石炭)を使った水素製造・運搬・輸入実証実験に関するPRもおこなわれました(「石炭が水素を生む!?『褐炭水素プロジェクト』」参照)。

液化水素運搬船の模型写真

「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」の液体水素運搬船の模型展示

また、さまざまな自動車メーカーによるFCVの展示、家庭用燃料電池の展示など、水素技術の今を一覧できる展示会となりました。この展示会は、東京・大阪で年に1度ずつ開催されており、次回は大阪で2019年9月25日~9月27日に、東京では2020年2月26日~2月28日に実施される予定です。

家庭用燃料電池の展示写真

新型のエネファームなども展示

FCVの展示写真

燃料電池自動車の中身が分かる展示も

水素について学ぶことができる「水素情報館 東京スイソミル」

このような水素エネルギーについて改めて学びたいと考える人にうってつけなのが、公益財団法人東京都環境公社が運営する「水素情報館 東京スイソミル」です。東京スイソミルは、「水素社会の意義、安全性、将来像などについて『見る・触る・体験する』」をコンセプトに、さまざまな展示をおこなっている施設です。

館の外には、TOYOTAのFCV「MIRAI」が展示されており、最新の水素エネルギーの可能性を実感できます。1階は「水素エネルギーの可能性」や「水素社会のしくみ」など6つのゾーンで構成。キャラクターと一緒に体験やタッチパネルによるクイズをしながら、水素エネルギーについて学ぶことができます。

東京スイソミル内の展示写真

街で水素がどのように使われているかがよく分かる展示

また、日々技術革新が起こっている水素エネルギー開発の現状がわかる「水素ニュース」掲示板もあります。最新のニュースや東京都が掲げる「水素社会」のロードマップについても展示され、水素社会が到来した際、私たちの社会がどう変わるのか学ぶことができます。

2階には、水素ステーションで実際に使用されている製品を使って充填体験ができるデモ展示もあります。また、水素エネルギーの研究開発をおこなっている各企業の最新技術や製品を紹介する展示ブースも備えられています。

デモ展示の写真

充填体験ができるデモ展示

ほか、自転車を使って自ら水素を作る実験装置も設置、週末はほぼ毎日イベントを実施しているなど、子どもから大人まで、さまざまな形で体感的に水素の可能性を感じられる施設です。

今度の週末には、ぜひFCバスに乗って街を巡り、水素エネルギーの“今”を体感してはいかがでしょうか?

街を走るFCバスの写真

お問合せ先

記事内容について

省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課 水素・燃料電池戦略室

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。