成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(後編)動きだす産官学パートナーシップ
SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?
CO2の排出量が多いことから嫌われモノになりがちな「石炭」。けれど、限りある資源を有効に活用していくためには、今ある資源をかしこく使うことが重要です。そこで考えられている方法のひとつが、石炭から「水素」を生み出すプロジェクト。石炭から次世代クリーンエネルギーとして注目される水素をつくるとは、はたしてどんな取り組みなのでしょうか?
水素の材料として考えられているのは、「褐炭(かったん)」です。「褐炭」とは、水分や不純物の多い石炭のことです。いわば“低品質な石炭”なのですが、世界で採取できる可能性のある石炭の埋蔵量(可採埋蔵量)10,350億トンのうち、別の低品質石炭と合わせて約3分の1を占めます。品質が低いため価格はとても安いのですが、問題は、「発熱量」つまり燃やした時に発生する熱の量が低く、さらに乾燥すると自然発火する危険性がともなうこと。そのため、発電効率や輸送効率が悪くなってしまい、これまでは採掘地近くの火力発電所で限定的に利用されるぐらいでした。この「褐炭」のような、安価でいながら利用が進まないエネルギー源は「未利用エネルギー」と呼ばれます。埋蔵量の豊富さを考えると、今後なんらかの方法で有効活用することが期待されます。一方の水素は、エネルギーとして利用する時にCO2を排出しないクリーンな資源です。さらにもうひとつの特徴として、さまざまな物質からつくり出せるという点があげられます。水素は、水からはもちろん、石油・天然ガス・石炭などの化石燃料、メタノールやエタノール、さらには下水の汚泥や廃プラスチックなどからもつくりだすことができます。
大きい画像で見る
そこで、褐炭のように未利用な資源から水素を取り出すことができれば、排出削減と資源の有効活用の両方につながると考えられているのです。
ただしここで重要となるのは、水素をつくるプロセスで排出されるCO2もゼロにすること。褐炭から水素をつくる製造プロセスで出てくるCO2については、CO2を回収して地中に埋める「CCS」と呼ばれる技術を使い(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)、また製造に必要な電気は再生可能エネルギーでつくれば、製造プロセスでもCO2が排出されない“CO2フリーの水素”をつくることができます。褐炭を使った水素製造プロジェクトは、今まさに日本とオーストラリアの協力で進められています。オーストラリア・ビクトリア州には褐炭が大量に存在していると見られており、そこからの水素の製造、日本への輸送(長距離・大量輸送)に関する技術が研究されているのです。今後の進展に期待しましょう!
資源エネルギー庁 長官官房 総務課 調査広報室
※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。
従来の太陽電池のデメリットを解決する新たな技術として、「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。これまでの太陽電池との違いやメリットについて、分かりやすくご紹介します。