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2019年9月25日~26日の2日間にわたり、日本でエネルギー関連の国際会議が集中的におこなわれました。2019年で8回目となる「LNG産消会議2019」、2018年から開催されている「水素閣僚会議」の第2回(「世界初!水素社会の実現に向けて閣僚レベルで議論する『水素閣僚会議』」参照)、そして2019年に初めて開催された「第1回カーボンリサイクル産学官国際会議」、の3つです。今回はその中の、「LNG産消会議2019」で議論された内容をご紹介します。
「LNG産消会議2019」は、経済産業省とアジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)の主催のもと、2012年から毎年、世界中の関係者を集めて開催されている国際会議です。産出国と消費国が、LNGに関する長期的な需給見通しを共有し、取引市場の透明化に向けて連携を図るためのプラットフォームとしての意味を持っています。
2019年は、過去最多となる世界32カ国・地域・機関から約1,200人が参加しました。カタールなどのLNG産出国やタイなどの新たな需要国の関係者のほか、国際エネルギー機関(IEA)事務局長、また民間のエネルギー会社など関係企業のトップといった多様な関係者がLNGの可能性について意見を交換しました。日本からは、経済産業大臣や国土交通省、日本エネルギー経済研究所、今回の民間幹事を担った東京ガスをはじめとした企業などが参加しました。
今年は、日本がLNG輸入を開始してから50年目にあたる記念の年です。LNGは、1940年代の米国で液化技術が確立し、日本には1969年に米国・アラスカから初めて輸入されました。それから50年が経過し、日本と世界のエネルギー事情は目まぐるしく変化しています。日本が輸入を開始した当初は、世界でもLNGを生産または輸入していた国はごくわずかでしたが、現在では18以上の国・地域がLNG輸出を、25以上の国・地域がLNG輸入をおこなっており、世界的にも重要なエネルギー資源のひとつとして認知されています。特に、近年では中国やインドなどアジアにおけるLNG需要が急増しており、相対的に日本のシェアが低下する現象が起きています。IEAや日本エネルギー経済研究所の調査によれば、今後もこの傾向は継続し、日本と韓国をのぞくアジアのLNG需要は、2030年には全体の40%以上まで増加すると想定されています。また、産出国の多様化もいっそう進んでおり、技術革新により米国でシェールガスの活用が進んだことによる、いわゆる「シェール革命」や、ロシアによる北極圏でのガス田開発など、世界中で大規模な開発が進められています。
世界のLNG輸出量見通し(IEAの「New Policy Scenario」を前提)
(出典)IEA World Energy Outlook 2015/2018, BP統計2019 より資源エネルギー庁作成
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LNG需要の今後の伸び
(出典)日本エネルギー経済研究所
日本は世界一のLNG輸入国として長期間、市場の拡大を牽引してきました。しかし、今後も日本にとって欠かせないエネルギーであるLNGの安定調達を確実にするためには、あたらしい産出国との関係性を構築し、また増加するアジアにおける需要についても日本企業が関わりを広げ、市場の柔軟性や透明性を高めていくなど、LNG政策をあらためて柔軟な視点で考えていく必要があります。
こうしたことから、8回目となった2019年のLNG産消会議でも、LNGの需給変化と、それに対応するための施策について議論がかわされました。LNG市場は、今後もさらなる変化が起きてくると予想されます。そのような中、次の50年に向けたLNG産出国とLNG消費国がおこなうべき連携として、日本は3つのコミットを発表しました。キーワードは「ファイナンスの提供」「人材育成」。そしてそれらを通した「LNG市場の発展」です。「ファイナンスの提供」については、すでに直近2年間で、日本は商社やJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)などが、さまざまな開発プロジェクトに100億ドルの資金を提供しました。ロシアと共同でおこなっている北極圏におけるLNGプロジェクト、アフリカ・モザンビーク共和国でのLNGプロジェクトなど、世界各国の開発プロジェクトなどに資金を提供しています。これらの投資実績をふまえ、今後もこの取り組みを加速させていきます。100億ドルの資金を追加で提供することをコミットするとともに、機関投資家からの投資をさらに呼び込むスキームをあらたに構築しました。「人材育成」としては、官民全体で500人のLNG人材の育成に向けた追加支援を掲げました。こちらもすでに2年で500人超のLNG人材を育成していますが、アジアを始めとしたあらたなLNG需要国側で受け入れ基地の運営などを担う人材育成もいっそう重要となります。これらの活動に日本政府としてコミットしていくことで、「LNGの市場の発展」に寄与していくとともに、同市場における日本の存在感を強化していきます。
「LNG産消会議2019」における日本のコミット
今回の会議で特筆すべきもうひとつのポイントとして、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成する手段としてもLNGに注目が集まったことです。特に、SDGsの「目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」でも言及されている「気候変動対策」として、石炭や石油にくらべてCO2排出量の少ないLNGを活用した“低炭素化社会”の実現について、活発に議論がかわされました。中でも、2020年から国際海事機関(IMO)の取り決めにより燃料油への規制が強化される船舶業界では、CO2や大気汚染物質の排出量が重油などよりすくないLNG燃料を活用した輸送手段を確立することが求められています。次の50年に向けて、LNGの存在感は高まるばかりです。日本はこれからも、あたらしい産出国とあたらしい需要を結びつけ、世界各国のパートナーとともにLNG市場を発展させていきます。
資源・燃料部 石油・天然ガス課
長官官房 総務課 調査広報室
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