水素社会の実現に向け、さらに具体的な取り組みを~新「水素・燃料電池戦略ロードマップ」

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水などさまざまな資源からつくることができ、エネルギーとして使用する際にCO2を排出しない新エネルギー「水素」(「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」参照)。そんな水素を次世代エネルギーとして利活用すべく、日本ではさまざまな施策や技術開発がおこなわれてきています。そこで、その技術開発目標や普及のステップなどを具体的に記し、取り組みを促進しようと策定されたのが、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」です。2019年3月、このロードマップが3年ぶりに改訂されました。どのような点が変更されたのか見てみましょう。

「水素・燃料電池戦略ロードマップ」で産学官の取り組みを促進

「水素・燃料電池戦略ロードマップ」は、水素の製造から貯蔵・輸送、利用に関わる様々な要素を包含している全体を俯瞰したロードマップとして、2014年6月に策定されました。策定にあたっては、産学官の有識者からなる「水素・燃料電池戦略協議会」を新たに立ち上げ、議論を進めました。

また、2016年3月には、家庭用燃料電池(エネファーム)の普及拡大や、燃料電池自動車(FCV)の市販開始、FCVに水素を供給する「水素ステーション(ST)」(「2019年の今、『水素エネルギー』はどこまで広がっているの?」参照)の整備拡大など、最新状況を反映して改訂がおこなわれました。改訂版では、家庭用燃料電池の将来的な価格目標の明確化や、燃料電池自動車の普及目標の設定、水素発電に関する記載の具体化など、新たな目標や取り組みの具体化が盛り込まれることとなりました。

こうした中、2017年には、2050年を視野に入れた将来目指すべきビジョンを示した「水素基本戦略」が策定され、各省にまたがる規制の改革や技術開発、インフラ整備などの政策が統合されました(「カーボンフリーな水素社会の構築を目指す『水素基本戦略』」参照)。2018年5月には「第5次エネルギー基本計画」が策定・発表され(「新しくなった『エネルギー基本計画』、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)、世界的なトレンドである「脱炭素化」(CO2を排出しないエネルギーを利用すること)に挑戦するためにも、水素や蓄電池などの技術開発を進めることが記載されました。さらに2018年10月には、各国の閣僚レベルが「水素社会の実現」に関して議論する世界初の会議「水素閣僚会議」が開催され、各国の協働が重要であることをかかげた「東京宣言(Tokyo Statement)」が発表されたのです(「世界初!水素社会の実現に向けて閣僚レベルで議論する『水素閣僚会議』」参照)。

このような水素に関する大きな動きを受けて、水素・燃料電池戦略ロードマップも、内容の大幅改訂をおこない、新たなロードマップを策定することとなりました。

FCVとHVの価格差を70万円に!新たな「水素・燃料電池戦略ロードマップ」が掲げる目標

2019年3月12日に発表された、新たな「水素・燃料電池戦略ロードマップ」は、「水素基本戦略」で掲げられた目標を確実に実現することを目指して、さまざまな取り組みを産学官連携でおこなっていくことが示されています。

新「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の注目すべきポイントは2つあります。1つは、目指すべきターゲットを新たに設定したことです。水素社会を実現するためには、さまざまな基盤技術の開発が必要となります。それらの技術のスペックや、コストについて目標をさだめました。

たとえば、自動車について見てみましょう。現在、FCVとハイブリッド自動車(HV)の価格差は約300万円ほど。ロードマップでは、この価格差を70万円に縮めることが目標とされています。また、FCVを構成する主要なシステム、たとえば燃料電池などについても、現在のコストをどの程度下げるべきかという目標値が明確に示されました。加えて、FCVには必須のインフラである水素ステーションの整備・運営費も目標値がさだめられています。

一方、水素の供給についても具体的な目標値がさだめられています。化石燃料から水素をつくり、その工程で出たCO2は「CCS」と呼ばれる技術で地中に貯蔵すれば(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」 参照)、つくる時から使う時までトータルでカーボンフリーなエネルギーが実現できます。あるいは、水から水素を製造する時に再生可能エネルギー由来の電気を使えば、これもトータルでカーボンフリーなエネルギーとなるでしょう。ロードマップでは、こうした水素の製造・供給にかかるコストを下げることも盛り込まれました。

このような具体的なターゲットの設定により、目標達成に向けて必要な取り組みの内容が明確にさだめられることとなりました。ロードマップでは、合わせて、「東京宣言」の実現を図るため、国際的な共同研究開発の推進や、国民の理解を促進するための教育・広報活動を推進することも掲げられています。

ポイントの2つめは、有識者による評価ワーキンググループを設置して、分野ごとのフォローアップをおこなうということです。水素の利活用を拡大するには、産学官の連携はもちろん、業種を超えた連携を図り、安全性の確保と低コスト化を同時に進めていくことが必要です。こうした取り組みを確実にするために、水素・燃料電池戦略協議会の下に、研究者・専門職・ジャーナリストなどの有識者で構成される「評価ワーキンググループ」を設置することが決められました。

ワーキンググループでは、「サプライチェーン」「水素の利活用」など分野ごとに、事業者からのヒアリングなどをおこない、現状の確認あるいは将来目標の再検討など、取り組みのフォローアップを年に1回程度おこないます。この定期的なフォローアップにより、もしも社会情勢や技術開発動向の影響などによって方針を転換する必要が生じた場合には、原因を検証し、方針の転換を含めた目標の再検討をおこないます。

この新たな「水素・燃料電池戦略ロードマップ」によって、「水素社会」実現への取り組みはますます加速するでしょう。水素エネルギーが皆さんの生活に欠かせないものになるのも、そう遠くないかもしれません。

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