世界初!水素社会の実現に向けて閣僚レベルで議論する「水素閣僚会議」

水素閣僚会議の写真です。

2018年10月23日、「水素閣僚会議(Hydrogen Energy Ministerial Meeting、HEM)」が開催されました。これは、各国の閣僚レベルが「水素社会の実現」をメインテーマとして議論を交わす、世界で初めての会議です。今回は、そんな水素閣僚会議でどのようなことが議論されたのか見てみましょう。

脱炭素のためのキーテクノロジーのひとつ、水素

「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」でご紹介したように、水素は、①水や、化石燃料(石油、天然ガスなど)、メタノールや廃プラスチックなどのさまざまな資源からつくることができ、②酸素と結びつけて発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用したりすることが可能で、その際にCO2を排出しないという特徴を持っています。

たとえば、化石燃料から水素をつくり、その際に出てくるCO2は「CCS」と呼ばれるCO2を回収・貯留する技術で地中に埋めれば、CO2を抑えることができます。また、再生可能エネルギー(再エネ)由来の電気を使って、“CO2フリー”な水素を直接つくることも考えられるでしょう。水素は、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が目指す「脱炭素化」(「今さら聞けない『パリ協定』 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)を実現するためのキーテクノロジーのひとつなのです。

今、世界各国で、水素利活用に向けたさまざまな取り組みが進められています。日本では、2017年12月に世界で初めて、府省庁を横断する国家戦略である「水素基本戦略」が策定されました。再生可能エネルギーとならぶ新たなエネルギーの選択肢として、「水素社会」を実現するための取り組みを、供給・利用の両面で進めています(「カーボンフリーな水素社会の構築を目指す『水素基本戦略』」参照)。

水素の利活用をグローバルな規模で推し進めていくためには、各国が足並みをそろえて、さらなる連携をはかっていくことが重要です。そこで、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の主催で開催されたのが、「水素閣僚会議」です。この会議では、

リストアイコン 各国の革新的な取り組みと最新の知見
リストアイコン 国際連携の可能性
リストアイコン グローバルな水素利活用に向けた政策の方向性

について議論し、認識を共有することを目指しています。

水素社会実現をめざして、閣僚級や企業トップが集合

水素閣僚会議に集まったのは、米国、欧州、アジア各国など21の国・地域・機関から、各国閣僚クラスをはじめ、政府関係機関、民間企業のトップなど300名を超える関係者です。

水素閣僚会議の閣僚セッションの様子を映した写真です。

まず午前の部では、閣僚セッションがおこなわれました。セッションでは、国際的な水素社会の実現に向けて解決されるべき課題や、政策の方向性についての議論が交わされ、連携の重要性などについての認識が共有されました。この会議の成果は、議長を務めた世耕経済産業大臣から、「東京宣言(Tokyo Statement)」という議長声明として発表されました。「東京宣言」では、各国の協力が重要と確認された項目として、以下の4つが挙げられています。

リストアイコン ①水素供給コストおよび燃料電池自動車(FCV)などの製品価格の低減加速化に向けた技術のコラボレーション、基準や規制の標準化やハーモナイゼーションの必要性
リストアイコン ②水素ステーションや水素貯蔵に関する水素の安全性の確保や、さまざまな地域特性に応じたサプライチェーンの構築など、水素利活用の増大に向けて、各国が連携して取り組んでいくべき研究開発の推進
リストアイコン ③水素社会実現に向けた認識を醸成・共有することに役立つ、水素の可能性や経済効果およびCO2削減効果に関する調査・評価の意義
リストアイコン ④水素ビジネスの投資拡大などにつながる、社会受容性向上のための教育や広報活動の重要性

低炭素な「再エネ由来水素」で日・ニュージーランドが連携

また、午後は民間企業によるプレゼンテーションやパネルディスカッションが開催されました。基調講演では、国際エネルギー機関(IEA)や、水素・燃料電池にかかわる技術開発や政策情報交換などを促進するための枠組み「国際水素・燃料電池パートナーシップ(International Partnership for Hydrogen and Fuel Cells in the Economy、IPHE)」、グローバル企業によるイニシアチブ「水素協議会(Hydrogen Council)」などの国際機関・団体が、世界の最新動向などについて講演をおこないました。また、水素利活用に取り組む自動車メーカーやエネルギー企業など、世界の先進企業による、水素の利用拡大までのステップや、水素利活用の展望などについての講演がおこなわれました。

水素閣僚会議でおこなわれた講演の写真です。

さらに日本は、この会議に参加したニュージーランドのビジネス・イノベーション・雇用省のミーガン・ウッズ大臣と、水素に関する協力を推進することを目的とした覚書(MOC)を締結しました。ニュージーランドは地熱発電や水素発電など、豊富な再エネ資源を持つ国であり、水素をつくる際にこうしたエネルギー源を活用できれば、エネルギーの低炭素化が実現できます。

ニュージーランドとの覚書締結の写真です。

覚書では、人の交流や政策の情報交換の促進、再エネ由来の水素製造技術の開発における協力、再エネ由来水素の国際的なサプライチェーンの構築に向けた協力など、さまざまな連携をおこなうことが記されています。

今回の会議の成果をふまえ、2019年6月、日本で初めて開催される「主要20カ国・地域首脳会合(G20)」および「G20エネルギー・環境大臣会合」においても、「エネルギー転換」「脱炭素化」に向けた水素の役割の重要性について、議論がおこなわれる予定です。

温暖化対策に向けた大きなエネルギー転換の中で、クリーンエネルギーのひとつとして期待される水素。水素社会を世界規模で実現するために、今後も日本は旗振り役となって、各国の協力を推し進めていきます。

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