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私たちの生活に欠かせない化学製品のひとつ、プラスチック。ペットボトル、医療機器、自動車部品、家電など、さまざまなもので使用されています。いま、廃棄による海洋汚染の観点からプラスチックが注目され、使用量を減らす取り組みが進められていますが、とはいえ“プラスチックを一切使わない”選択は難しいのが実情です。そこで、リサイクルをさらに進化させるなどの取り組みを同時に進めることも、また重要となります。一方、日本が2050年までの実現を宣言している「カーボンニュートラル」(「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」参照)のためには、プラスチックを中心とする化学品分野でもCO2削減の取り組みが求められています。今回は、プラスチックの環境課題を解決すべく進められている研究開発を、2回にわたって紹介しましょう。
プラスチックがどのような原料からどのようにつくられているか、みなさんはご存じですか?環境の課題を考える際には、「ライフサイクル」、つまりその製品が原料から廃棄まですべての工程で環境にどのような影響をあたえているのか見ることが大切です。そこで、まずはプラスチックの製造工程を詳細に見ていきましょう。
プラスチックの原料のほとんどは石油から作られており、石油を精製する過程で得られる「ナフサ(粗製ガソリン)」が主な原料となっています。現在、石油からつくられる製品(石油製品)のうち、12.4%が石油化学用、つまり化学産業で使用されるナフサです。
(出典)石油化学工業協会「石油化学工業の現状2020年」
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石油からつくられるさまざまな製品とその割合
資源エネルギー庁総合エネルギー統計
次に、この石油からつくったナフサを、約850℃という高温で分解します。これにより、「オレフィン」(エチレン、プロピレンなど)と総称される化合物や「BTX」と総称される化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン)などの「基礎化学品」がつくられます。
プラスチックは、これらの基礎化学品を組み合わせてつくられます。特にエチレンとプロピレンはほとんどのプラスチックで必要となります。
さまざまなプラスチック製品
ご存じのとおり、ペットボトルなどプラスチック製品の多くは廃棄される際にリサイクルされています。現在日本では、年間891万トン排出される廃プラスチックのうち、約84%がリサイクルされています(2018年のデータ)。リサイクルのうち、プラスチックをゴミとして焼却して発生した熱を発電や熱源に利用する、つまりエネルギー源として利用する方法を「サーマルリサイクル」といいます。一方、廃プラスチックを元のプラスチック原料に戻す「ケミカルリサイクル」、プラスチック素材に戻す「マテリアルリサイクル」という方法もあります。
こうしたプラスチックの製造工程における環境課題は2つあります。
まず、「2050年カーボンニュートラル」達成に欠かせない、CO2排出量削減という問題です。2019年における日本のCO2排出量11億794万トンを部門別で分類すると、産業部門・工業プロセスは3億2437万トンと、全体の29.3%を占めています。この3億2437万トンのうち、18.6%にあたる6018万トンが、化学分野からの排出なのです。
国立環境研究所温室効果ガスインベントリ
プラスチック製造でCO2が排出されるのは、まず「製造工程②ナフサの分解で基礎化学品をつくる」段階です。ナフサを分解する時に発生する「メタン」などのオフガスが高温を作り出すために有効利用されていますが、燃焼時にCO2が発生します。基礎化学品の製造により、年間3100万トンのCO2が排出されています(2019年のデータ)。
化学製品をつくる際に発生するCO2排出量とその内訳
たとえば「エチレン」製造の際には6018万トンの12.3%を占めるCO2が排出されるなど、C2~C8の基礎化学品の製造によって全CO2排出量のうち51.5%を占めるCO2が排出される※「化学品ハンドブック2020」国内生産量に 「IDEA v.2.3」CO2排出原単位を掛けて 石油精製時のCO2排出量を差し引いて算出
CO2が排出されるもうひとつの工程が、「製造工程④廃プラスチックをリサイクルする」段階です。日本におけるプラスチックリサイクル率約84%のうち、約57%が、エネルギー源としての利用であるサーマルリサイクルです(2018年のデータ)。サーマルリサイクルでは燃焼する際にCO2が排出され、単純焼却も合わせると最終的に年間1600万トンのCO2が排出されています。排出量削減のためには、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの技術を確立し、増やしていくことが必要となります。
プラスチック循環利用協会プラスチックリサイクルの基礎知識2020(PDF形式:7.16MB) ※一般廃プラスチックの排出係数2.77kg-CO2/kg-廃プラから算出
このように、2050年カーボンニュートラルに向けては、化学分野でもCO2排出量削減に向けた、抜本的な対策が必要なのです。
もうひとつは、原料に関わる問題です。前述したように、プラスチックの原料は、炭素を含む「化石燃料」のひとつである石油です。プラスチックのサーマルリサイクルでCO2が排出されるのは、プラスチック内に固定されていた石油由来の炭素が、燃焼によってCO2となり大気中へ排出されるのだと捉えることもできます。そこで、製法を変えていこうという動きがあります。CO2を回収し貯留して利用する「CCUS」(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)や、水素や廃プラスチックなどからプラスチックを製造する方法です。日本では特に、場所やコスト面での制約から、水素や廃プラスチック由来の製品の割合を増やしていく必要があります。*****こうした課題を解決すべく、プラスチックに関する技術研究の戦略が立てられました。ポイントとなるのは、「①熱源転換」「②原料循環」「③原料転換」です。後編で詳しく見ていきましょう。
製造産業局 素材産業課
長官官房 総務課 調査広報室
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