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原子力発電(原発)の運転にともなって発生する、「高レベル放射性廃棄物」。「北欧の『最終処分』の取り組みから、日本が学ぶべきもの①」「北欧の『最終処分』の取り組みから、日本が学ぶべきもの②」では、これらの高レベル放射性廃棄物を地下深くの安定的な地層の中に埋める最終処分方法「地層処分」について、世界の状況や、北欧で続けられている取り組みをご紹介しました。今回は、この最終処分について、日本で現在進められている取り組みをご紹介しましょう。
高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原発を今後どのように利用するかにかかわらず、これまで利用してきたすべての国が、かならず向き合わなくてはならない重要な課題です。「北欧の『最終処分』の取り組みから、日本が学ぶべきもの①②」でご紹介したように、世界各国では、地層処分の実現に向けて、数十年にわたってたゆまぬ努力が続けられています。各国の進展状況は以下のようになっています。
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出典:「諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について」 経済産業省資源エネルギー庁(2019年)ほか
最終処分を実現するためには、各国のこれまでの経験や知見を互いに学び合い、取り組みを進めていくことが重要です。このような観点から、原子力を利用している国の政府が参加する「最終処分国際ラウンドテーブル」を立ち上げることが、2019年6月に軽井沢で開催された「G20エネルギー大臣会合」において合意されました。2019年10月と2020年2月に、ラウンドテーブルの会合が開催され、最終処分の実現に向けた政府の役割、これまでおこなわれた国民との対話活動における経験や知見を踏まえたベストプラクティスや教訓、また研究活動における国際協力を強化すべき分野などについて議論がおこなわれました。
「最終処分国際ラウンドテーブル」の共同記者会見(2019年6月16日、G20エネルギー大臣会合)
この他にも、日本はフィンランド政府と共同で、2018年4月にセミナーを開催。さらに2018年11月には、経済協力開発機構(OECD)およびNEA(原子力機関)と日本とが共同で、国際ワークショップを開催しました。こうした国際的な場を通じて継続的に諸外国の経験・知見を取り入れながら、日本でも、最終処分に向けた、理解を深めるプロセスを一歩ずつ前進させようと、さまざまな取り組みがおこなわれています。
「文献調査」など処分地選定プロセスに基づいた段階的な調査を円滑におこない、最終処分を実現するには、社会全体で、最終処分の必要性や意義に関して理解を深め、議論しながら考えていくことが不可欠です。そのための第一歩として、資源エネルギー庁は、処分地を選ぶ際にどのような科学的特性を考慮する必要があるのか、それらは日本全国にどのように分布しているか、といったことを示した「科学的特性マップ」(「『科学的特性マップ』で一緒に考える放射性廃棄物処分問題」参照)を2017年に公表しました。これをきっかけに、社会全体で理解を深めていくための取り組みが進められており、資源エネルギー庁と処分の実施主体であるNUMO(原子力発電環境整機構)による「対話型全国説明会」が全国で開催されています。2020年4月時点では、84会場で開催され、約1800名が参加しています。2018年10月以降は、都道府県県庁所在地以外の都市も含めたさまざまな都市で開催されています。対話型全国説明会では、海外の事例も参考にしながら、参加者の理解や議論が深まるようなさまざまな工夫がおこなわれています。参加者の関心や疑問はそれぞれ異なることから、主催側が一方的に説明をするのではなく、少人数による質疑を充実させ、参加者それぞれが聞きたいことを聞き、議論をするスタイルをとっているのがそのひとつです。また、参加者がふだん見ることができない地下環境を実感できるよう、バーチャル・リアリティ(VR)で地下空間を体験できる機器を用意したり、「ガラス固化体」という形状にした高レベル放射性廃棄物を「キャニスター」と呼ばれる容器に納めた実物大パネルが設置されるなどの工夫もほどこされています。
深地層研究所のバーチャル・リアリティー(VR)体験
理系女子ナビゲーター 黒田有彩さんと一緒に地下施設を体験
このほかにも、駅前広場など人が集まる場所での広報ブースの出展や、学校への出前授業、さまざまな意見を持つ参加者が集まって共有できる事実と意見の違う点を見出す「深層対話」などの取り組みも実施されています。次回は、これらの取り組みを通じて見えてきた課題と、それらの課題を解決していくために進められている現在の取り組みをご紹介します。
電力・ガス事業部 放射性廃棄物対策課
長官官房 総務課 調査広報室
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