北欧の「最終処分」の取り組みから、日本が学ぶべきもの①

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ポシヴァ社(フィンランド)と地域住民との対話活動

原子力発電(原発)の利用で避けて通れないのが、「放射性廃棄物」の問題です。特に、「高レベル放射性廃棄物」は、長期間にわたって人の生活環境から遠ざける必要があることから、地下深くの安定的な地層の中に埋める「地層処分」が最も適切であることが国際的な共通認識となっています。1966年から原発を利用してきた日本を含め、各国がその実現に向けて努力を続けており、いくつかの国では処分地の選定を終えている一方、処分を開始している国はまだありません。このため、各国のこれまでの経験や知見を取り込みながら、この課題に取り組んでいくことが重要です。処分地の選定を終え、処分場の建設・操業に向けて一歩先へと踏み出したフィンランドとスウェーデンの北欧2カ国での事例は、良いお手本と言えるでしょう。今回は、その取り組みについてご紹介しましょう。

世界各国における「最終処分」のいま

最終処分地を決定するステップについて、日本では2000年に成立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)という法律で、高レベル放射性廃棄物の処分施設の建設場所を選ぶために、段階的な調査を行うことなどがさだめられました。2017年には、地層処分を実現する上で国民の議論の土台となる「科学的特性マップ」(「『科学的特性マップ』で一緒に考える放射性廃棄物処分問題」参照)を国が公表し、現在は、国民理解を得るための対話活動が進められています。

世界各国の最終処分に関する状況を、このステップに当てはめて見てみましょう。2020年3月時点では、英国やドイツ、韓国などは日本と同様、「調査段階前」にあります。カナダ、スイス、中国は「概要調査」の段階です。フランスでは、ビュールという地域の近辺が候補地となっており、「ビュール地下研究所」が建設され、「精密調査」に入っています。これらのステップを経て、すでに処分地を選定しているのが、スウェーデンとフィンランドです。

フィンランドで選定されたのは「オルキルオト」という地域で、すでに最終処分施設の建設が開始されています。スウェーデンは「フォルスマルク」という地域が建設予定地となっており、現在安全審査中です。

では、これらの処分地はどのような経緯で選定されたのでしょうか?その道のりは決して平坦なものではなく、長い年月をかけて取り組んできた、たえまない地道な活動により得られたものです。日本ではあまり知られていない、フィンランドとスウェーデンの取り組みにフォーカスして、詳しく見てみましょう。

フィンランド:地域グループとの密なコミュニケーション

フィンランドですでに建設が始まっているのは、世界で唯一の、高レベル放射性廃棄物に関する最終処分施設です。建設地となるオルキルオトは、フィンランドの南西部に位置し、人口は約9,400人(2019年時点)、面積は約1500平方キロメートルのエウラヨキ自治体にある小さな島です。フィンランドに4基あり発電電力量の約3分の1をまかなっている原子力発電の2基が、ここオルキルオトにあります。また、現在もう1基が建設中です。

フィンランドで処分地選定が始まったのは1983年のこと。1985年には、岩盤の大きさ・地形、そのほか人口密度などの社会的な要因も「全国マッピング」して調査した結果を公表し、その後の調査候補地域のしぼり込みに活用されました。地質的な特徴を全国マッピングの形で示したという点では、日本の「科学的特性マップ」に近いものでした。

その後、調査候補地域として102カ所が抽出され、そのうち「調査に応じる」と回答するなどした5つの自治体で、日本の「概要調査」にあたるボーリング調査が実施されました。より詳細なボーリング調査が4地点で実施されたものの、候補地域間の地質条件には差がなかったため、最終的には、自治体の受け入れ姿勢や高レベル放射性廃棄物の輸送などの面から、処分の実施主体であるポシヴァ社は1999年にオルキルオトを処分施設のサイトとして選定しました。その後、2000年の政府による決定、2001年の国会承認により、オルキルオトが正式に処分施設のサイトとして決定されました。

2004年には地下特性を調査する施設の建設を開始。ここからは日本における「精密調査」にあたる調査を実施しています。2015年11月に最終処分施設の建設が許可され、翌2016年12月には、建設が始められました。

最終処分の実施は、原発事業者2社の100%子会社であるポシヴァ社がおこない、施設を所有、運営します。監督官庁は雇用経済省、安全規制は放射線・原子力安全センター(STUK)が実施しています。2020年代に操業を始め、2120年ごろに処分完了と閉鎖をおこなう計画です。

透明性のあるコミュニケ―ションで信頼を獲得

一見スムーズに進んだように見えるフィンランドにおける最終処分ですが、処分地選定の初期の段階から国民に広く受け入れられていたわけではありません。フィンランドにおける成功は、①長期にわたる原子力産業の健全な事業活動、②独立性と信頼性のある規制当局の存在、および③地域グループなどとの透明性のあるコミュニケーションによる信頼獲得が、大きな役割を果たしたといいます。

フィンランドでは、処分を実施する主体が処分施設の立地サイトを選定し、政府に対して選定したサイトでの処分施設の建設事業計画を申請するという制度となっています。また、政府が判断するにあたっては、地元自治体の賛成が必要とされていました。そのほか、環境影響評価の中で、実施主体がサイトを選定する前に、情報開示や意見聴取を通じて、住民の意思や意見を反映する手続きが求められていました。そこで、ポシヴァ社は、1997年から1999年にかけて、地域住民向けの対話集会、地元のワーキンググループとの会合など、情報提供とコミュニケーションを精力的におこない、理解を求めました。

特に、自治体からの代表者とポシヴァ社からの代表者をメンバーとする「協力/フォローアップグループ」との会合は、ほぼ2カ月に1度の頻度でおこないました。このような地道な活動を通じて、最終的には処分施設が受け入れられることとなりました。受け入れを支持する人々の中には、雇用や人口増、税収増が期待できるという声があったといいます。

ポシヴァ社が処分地を選定する直前である1999年におこなわれた、処分地候補となった自治体を対象とした住民アンケートにおいて、エウラヨキ自治体では約6割の住民が賛成を表明しました。

処分地決定直前(1999年)の住民アンケート結果(自治体内への受け入れについて)
処分地決定直前(1999年)の住民アンケート結果をグラフで示しています。エウラヨキは「認める」が59%となっています。

他方、フィンランド全体で見ると、処分の安全性を懸念する声が相当程度存在するのも事実です。国民を対象にしたアンケートでは、選定プロセス当初に、地層処分の安全性に肯定的意見を持つ人の割合は1割程度でした。その後、処分地が決まった時点では3割程度に、そして直近では4割程度に増えて、否定的意見を持つ人とほぼ同じ割合になっています。

これは、30年以上にわたって国民との間で透明性のある議論を積み重ねていくとともに、処分地が決まってからも地域の理解を深めてもらえるよう政府や実施主体が精力的に活動してきた結果といえますが、一方で、現時点においても、処分の安全性に否定的意見を持つ人々が同程度存在することも踏まえる必要があります。このため、フィンランド政府や実施主体は、今後も情報提供などの取り組みを不断に継続していく方針です。

フィンランドエネルギー協会調査「フィンランドの岩盤への処分は安全である」
フィンランドエネルギー協会調査の結果をグラフで示しています。1983年から2018年にかけて、否定的意見は減少しており、肯定的意見は増加しています。

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次回はスウェーデンの取り組みについてご紹介しましょう。

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