北欧の「最終処分」の取り組みから、日本が学ぶべきもの②

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原子力発電(原発)の利用で避けて通れないのが、「放射性廃棄物」の問題です。特に、「高レベル放射性廃棄物」は、長期間にわたって人の生活環境から遠ざける必要があることから、地下深くの安定的な地層の中に埋める「地層処分」が最も適切であることが国際的な共通認識となっています。1966年から原発を利用してきた日本を含め、各国がその実現に向けて努力を続けており、いくつかの国では処分地の選定を終えている一方、処分を開始している国はまだありません。このため、各国のこれまでの経験や知見を取り込みながら、この課題に取り組んでいくことが重要です。「北欧の『最終処分』の取り組みから、日本が学ぶべきもの①」に続き、今回はスウェーデンの取り組みについてご紹介しましょう。

スウェーデン:年間約1万人が来訪した施設公開

スウェーデンの最終処分地に選定されたフォルスマルクは、ストックホルムの北、約120キロの所にあります。フォルスマルクのあるエストハンマル自治体の人口は約22,000人(2019年時点)、面積は約2,790平方キロメートルで、漁業・船舶業や鉄鋼業、農業がさかんです。また、スウェーデンに7基あり電力需要の4割をまかなっている原発も、そのうち3基がフォルスマルクに立地しています(2020年現在)。

最終処分の実施は、原発事業者4社の共同出資会社であるSKB社がおこない、施設を所有、運営します。また、エネルギー・環境省が監督をおこない、放射線安全機関(SSM)と呼ばれる組織が安全規制をおこなっています。処分施設は2031年頃に操業を開始し、2070年代後半に処分完了と閉鎖を予定しています。

スウェーデンの処分地選定は、先行したフィンランドと少し異なっています。SKB社は1992年に、①地層処分場の立地方法を研究する「総合立地調査」をスタートさせるとともに、②処分地候補となる地域を公募し、それに応じた自治体での処分場立地見通しを明らかにする「フィージビリティ調査」をおこなうという、2本立ての活動計画を打ち出しました。これら第1段階の取り組みは、いずれも文献ベースの研究・調査ですが、前者①は特定の自治体を対象とせずに国土を大きく見た“立地方法の研究”である一方、後者②は公募に応じた自治体を対象として地質、土地利用状況、社会経済などを見る調査です。2つの視点を組み合わせた進め方であることがポイントなのです。

1993年からSKB社は、公募に応じた2つの自治体において、日本の「文献調査」に相当する「フィージビリティ調査」を約2年間かけておこないました。しかし、いずれの自治体でも住民投票が行われ、その結果反対多数となったため、以降の調査は打ち切られることとなりました。

1995年にSKB社は総合立地調査の最初の結果を取りまとめ、その成果を活用して自治体へのフィージビリティ調査の申し入れをおこないました。SKB社は、フォルスマルクのような原子力施設立地自治体やその周辺に調査を申し入れ、新たに6つの自治体で調査を実施することとなります。

1995年当時、総合立地調査で作成された「全国マッピングは、地層処分場の立地に不適格なエリアを示した比較的シンプルなものでした。その後、1998~1999年にかけて、全国に21ある県域単位での地質文献を利用することにより、「おそらく適格」「おそらく不適格」「不適格」の3種類に区分した全国マッピングを行いました。フィージビリティ調査の受け入れに至った6自治体のうち、3つの自治体への申し入れ時には、このマッピングの情報提供がなされています。

その後、フォルスマルクとオスカーシャムの2地点で2002年から、日本の概要調査に相当するサイト調査が始まり、最終的にフォルスマルクに処分地が決定したのは2009年のこと。2011年には、処分地の立地・許可申請が実施されました。

さまざまな形で設けられた、人々が意見を表明できる場

スウェーデンでは、最終処分場が決定するまでに、どのような活動がおこなわれてきたのでしょうか?

SKB社は、自社のエスポ岩盤研究所やボーリング調査現場のほか、現地事務所が一般の人々にとって親しみやすい場となるよう、わかりやすい情報資料を展示するといった工夫を凝らして積極的に公開し、国民に情報を提供しました。2015年の1年間にSKB社が自社施設全体で受け入れた訪問者は、のべ9,750人以上となったそうです。一方的な情報提供活動ではなく、人々が情報を入手し、意見を表明できる場をさまざまなかたちで設けたことが、処分事業への理解を得ることにつながったといいます。

SKB社の輸送船を使用した展示
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(出典)SKB社年報

エスポ岩盤研究所見学ツアー
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(出典)SKB社提供資料

また、この事業が非常に長期に及ぶ事業であることを踏まえ、施設が立地する地元の社会や経済に貢献できるよう、SKB社や発電事業者は、エストハンマル自治体と、教育・インフラ・地元企業のイノベーション支援などに投資するという協力協定を結んでいます。さらにユニークなのは、第2段階の調査であるサイト調査と環境影響評価をエストハンマルと同じように受け入れたものの、最終的には処分地に選ばれなかったオスカーシャム自治体も、この協力協定に加わっていることです。協力協定では、新規施設立地による直接的な経済効果とは別に、地元中小企業の支援、道路の拡幅や港湾の改良等の追加的な自治体開発支援をSKB社と発電事業者がおこなうこととなっています。

エストハンマル自治体における処分場建設に対する意見は、サイト調査が開始された当初の2003年では支持が60%程でしたが、2010年には初めて80%を超え、その後その水準を保っています。背景には、SKB社などが、選定にあたっての情報提供や、国民・住民とのさまざまな対話を地道に進めたことがあったといいます。

SKB社と地域住民の対話の写真

北欧2カ国で長い年月をかけ地道に続けられてきた理解活動の取り組みから、日本が学ぶべきことはたくさんあると考えられます。次回は、日本で最終処分に関して進められている最近の取り組みについてご紹介しましょう。

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