もっと知りたい!エネルギー基本計画⑧ 原子力発電(2)国民の理解を得ながら政策を進める

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日本のエネルギー政策の基本的な方向性を示す「第6次エネルギー基本計画」が2021年10月22日に策定されました(「2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな『エネルギー基本計画』」参照)。計画には、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた課題と対応、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服などを中心に、さまざまな方針が盛り込まれています。その内容について詳しくご紹介するシリーズの第8回は、第7回に続いて原子力発電に関する取り組みと今後の方向性について見ていきます。

核燃料サイクルなど政策の前進

日本の原子力政策は、東京電力福島第一原子力発電(福島第一原発)の事故に対する真摯な反省をもとに、いかなる事情よりも「安全性」をすべてに優先させ、国民の懸念を解消することに全力をあげることが前提となっています。

その前提のもと、「もっと知りたい!エネルギー基本計画⑦ 原子力発電(1)再稼働に向けた安全性のさらなる向上」でご紹介したとおり、2021年に発表された第6次エネルギー基本計画では原子力政策に関する大きな方向性は変更されず、2030年の原子力発電は電源構成比の約20~22%程度と、これまでと変わらない数値が示されました。第6回に続き、政策のポイントを見ていきましょう。

核燃料サイクルの確立に向けた取り組み

原子力発電で使い終えた燃料(使用済燃料)をもう一度使うことができれば、資源の有効利用に役立つのはもちろん、高レベル放射性廃棄物の量を減らしたり、その有害さの度合いを低くしたりすることもできます。

こうした理由から、資源の少ない日本では、使用済燃料の中からプルトニウムやウランといった燃料として再利用可能な物質を取り出し(再処理)、この取り出した物質を新たな燃料に加工して、もう一度発電に利用するという取り組みを行っています。これを「核燃料サイクル」といいます。

エネルギー基本計画では、「核燃料サイクル」の実現に向けた取り組みを着実に進めることがあらためて明記されています。

使用済燃料の再処理をおこなう「再処理工場」は、青森県六ヶ所村に建設されています。

2020年、この六ヶ所再処理工場が、原子力規制委員会より、「福島第一原発事故後に策定された厳しい審査基準(新規制基準)に適合している」という審査結果を得て、再処理事業をおこなう事業変更許可を取得しました。これは核燃料サイクルの実現に向けた大きな前進です。

六ケ所再処理工場のこれまでの経緯
六ケ所再処理工場について、1993年の着工からの歩みを示した年表です。

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またエネルギー基本計画では、原子力事業者が「2030年度までに少なくとも12基の原子力発電でプルサーマルの実施を目指す」計画を策定していることを示し、再処理だけでなく再利用についてもしっかりと進めていくことが言及されました。

ここでいう「プルサーマル」とは、六ヶ所再処理工場で取り出したウランやプルトニウムを混ぜ合わせてつくるリサイクル燃料である「MOX(モックス)燃料」を、原子力発電所(軽水炉)で利用することです。

プルサーマルを実施している/申請している原子力発電所の図
プルサーマルを実施あるいは申請している原子力発電所を日本地図で示したものです。

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日本は「平和的利用」を大前提に、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら核燃料サイクルの取り組みを着実に進めます。そのために、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持し、プルトニウム保有量の削減に取り組むこととしています。

これを実効性あるものとするため、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(2018年原子力委員会決定)をふまえてプルトニウムの回収と利用のバランスをじゅうぶんに考慮しつつ、2016年に新たに導入した「再処理等拠出金法」の枠組みに基づく国の関与などにより、プルトニウムの適切な管理と利用をおこなっています。

具体的には、どれだけの使用済燃料を再処理し、プルトニウムを“回収”するか、使用済燃料再処理機構が作成し、経済産業大臣が認可する計画で決められます。この実施計画は、六ヶ所再処理工場がどれだけの回収能力を持っているかを示す「暫定操業計画」と原子力発電所での「プルトニウム利用計画」をふまえて作成されており、日本原燃と電気事業連合会はそれぞれ毎年計画を更新しています。

高レベル放射性廃棄物の最終処分では「文献調査」が開始

原子力発電により生じる高レベル放射性廃棄物の「最終処分」は、原子力を利用するすべての国の共通の課題です。国際的には、地下深くの安定した岩盤に埋めるという処分方法が共通の考え方となっています。日本では、この最終処分をおこなう「処分地」は、法令にしたがって文献調査・概要調査・精密調査といった段階的な調査を経て選定されることとなっています。


そこでまず、火山や断層といった考慮すべき科学的特性に応じて日本全国を塗り分けた「科学的特性マップ」を公表し、この情報に基づいて全国で対話活動を実施。こうした対話活動を進めていった中で、2020年11月から、北海道の2自治体で文献調査を開始しています。なお、文献調査の結果をふまえて、その次の調査に進もうとする場合には、都道府県知事と市町村長の意見をじゅうぶんに尊重し、意見に反して先へ進まないこととなっています。

今後は、実施中の文献調査を着実に進めるとともに、全国のできるだけ多くの地域で文献調査を受け入れてもらえるよう、全国での対話活動に取り組んでいきます。

広く理解と協力を得て、原子力政策を進めていくために

第7回、第8回でご紹介したような原子力政策に取り組むうえでは、立地地域の協力を得ることに加えて、電力の消費地を含めた国民の理解も重要です。

今回のエネルギー基本計画でも、原子力に関するていねいな広聴・広報を進める必要があることがあらためて明記されました。国が前面に立ち、立地地域だけでなく、電力の消費地も含め、幅広い層から理解が得られるよう取り組んでいきます。全国での説明会や講演会の開催はもちろん、SNSやWebなどの広報手法も活用しながら情報を発信し、効果的な理解活動を推進していきます。

2022年の2月には、原子力も含め、多様なエネルギー源をバランスよく活用することの重要性を訴求するため、計2回の全国紙での政策広報に合わせて、特設ウェブサイトや解説動画を制作し、それらのコンテンツをSNSで周知・拡散を図る形での広報活動を実施しました。

特設Webサイト ※現在は公開を終了しています
「考えよう、エネルギーの未来」の特設サイトのトップページの画像です。

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SNS(Twitter)


※ツイート内に記載されている「特設サイト」は現在公開を終了しています

原子力が主要な産業のひとつである立地地域においては、東日本大震災後、原子力発電所の長期停止など、経済的な影響が生じており、将来への不安の声も出てきています。こうした状況に対し、立地地域とていねいな対話をおこない、信頼関係の構築に取り組むとともに、産業・雇用創出のサポートもおこなうなど、地域に応じた支援を進めています。

これからも、安全性の追求と、国民のみなさんへの情報提供に努めながら、原子力政策をていねいに進めていきます。

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