「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(前編)

六ヶ所再処理工場を含む「原子燃料サイクル施設」の写真

(出典)日本原燃株式会社

これまでスペシャルコンテンツでは、原子力発電所(原発)で使い終えた燃料を再度活用する「核燃料サイクル」についてご紹介してきました。この核燃料サイクルに必要な、使用済燃料の再処理をおこなう「再処理工場」の建設が、青森県六ヶ所村で進められています。“再処理”とはいったいどのようなことをするのでしょう?また、再処理工場ではどのような安全対策がとられているのでしょうか?現地の写真をまじえながらお伝えします。

あらためて知りたい、「六ヶ所再処理工場」とは?

原子力発電で使い終えた燃料(使用済燃料)には、ウランやプルトニウムといった再利用可能な物質が約95~97%含まれています。このウランやプルトニウムを使用済燃料の中から取り出して(再処理)、ほかの物質と混ぜ合わせ「MOX燃料」と呼ばれる燃料に加工して、もう一度発電に利用する取り組みが「核燃料サイクル」です。

使用済燃料の構成例を図で示しており、内訳は、プルトニウム1%・ウラン94~96%・核分裂などによりできた物質3~5%・金属構成物となっています。

使用済燃料の構成(例)

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これにより、現在の「軽水炉」と呼ばれるタイプの原発における核燃料サイクルでは、使用済燃料を再処理せずに直接処分する場合と比べて、以下のことが可能になります。

リストアイコン 1~2割の資源の有効利用をはかることができる
リストアイコン 高レベル放射性廃棄物の量を4分の1に低減できる
リストアイコン 高レベル放射性廃棄物の有害さの度合いが天然ウラン並まで低減するのに必要とする期間を、10万年から8千年に短縮できる
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核燃料サイクルの今

この中で重要な役割を果たすのが、ウランやプルトニウムを取り出す「再処理工場」です。現在、日本で使用されているMOX燃料は、すべてフランスで加工されたものですが、今後、使用済燃料の再処理を日本国内でおこなうべく、現在、青森県六ヶ所村で工場の建設が進められています。これが、日本原燃株式会社が運営する「六ヶ所再処理工場」です。

六ヶ所再処理工場の建設は、1993年から始まりました。2006年から開始した使用済燃料の試験的な再処理(アクティブ試験)では、ウランとプルトニウムを取り出した後に残る高レベル放射性廃液を、「ガラス溶融炉」内で溶かしたガラスと混ぜ合わせ、ステンレス製の容器に流し込み冷やし固める過程(ガラス固化)で、ガラスが流れにくくなり、「ガラス溶融炉」のノズルが詰まるなどのトラブルが発生して、試験がしばらく停止しました。しかし、2013年に日本原燃は「ガラス溶融炉」の運転管理方法を改善することで技術的な課題を克服し、安定してガラス固化作業をおこなうことができることを確認しました。

以降は、2013年に設けられた、原子力施設に対する新しい規制基準への適合審査に対応しており(「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント」参照)、「『使用済燃料』のいま~核燃料サイクルの推進に向けて」でもご紹介した通り、2021年度上期の竣工に向けて、現在、工事と審査が進められています。完成すれば、年に800トンの使用済燃料を処理できる能力を持つ見通しです(フル稼働時)。

「再処理」っていったい何をするの?

六ヶ所村には、万が一の時のために石油を貯めておく「国家石油備蓄基地」や、大規模風力発電など、さまざまなエネルギー関連施設が点在しています。その六ヶ所村の真ん中あたりに、六ヶ所再処理工場を含む「原子燃料サイクル施設」があります。

青森県内の六ケ所村の位置と、六ケ所村内の「原子燃料サイクル施設」の周辺を地図であらわしています

(出典)日本原燃株式会社

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敷地内には、再処理工場のほか、「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」(1995年操業)、「低レベル放射性廃棄物埋蔵センター」(1992年操業)、「ウラン濃縮工場」(1992年操業)があります。また、MOX燃料工場も2022年度上期竣工に向け建設中です。

再処理は、どのようなステップで進められるのでしょうか。まず、原発の使用済燃料が、「キャスク」と呼ばれる容器に入れられて、再処理工場に運ばれてきます。使用済燃料は、水中でキャスクの中から取り出され、プールで冷却・保管されます。

再処理工場では、プールから取り出した使用済燃料を約3~4cmほどに切り(せん断)、溶かして燃料と金属片などを分けます。その後、燃料が混じった溶液の中からウランとプルトニウムだけを分離します。さらにウランとプルトニウムを分け、それぞれ精製します。

次に、ウランは粉末の状態で「ウラン酸化物」として回収し、貯蔵します。また、プルトニウムは「核不拡散」の観点から核兵器の製造へ転用しにくくするため、同じ量のウランと混合・処理し、「ウラン・プルトニウム混合酸化物」として回収し、貯蔵します。この「ウラン・プルトニウム混合酸化物」を利用して、MOX燃料がつくられるのです。

一方、ウランとプルトニウムを分離した後に残る高レベル放射性廃液は、ガラスに溶かし固められ、「キャニスター」というステンレス製の容器に閉じ込めた「ガラス固化体」の状態で、六ヶ所再処理工場内でおよそ30年~50年間貯蔵した後、青森県外において、地下300mより深い安定した地層中に処分されることになっています。

「六ケ所原燃PRセンター」では、この工程を模型で再現したものを見ることができます。PRセンターは誰でも見学が可能です(スタッフによる案内や団体での見学を希望する場合は要予約)。

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「六ケ所原燃PRセンター」にある模型。使用済燃料は機械に入れられ、せん断される
(出典)日本原燃株式会社

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「六ケ所原燃PRセンター」にある模型。せん断された使用済燃料は硝酸溶液で溶かされたのち(左)、ウランとプルトニウムだけが分離されていく(右)
(出典)日本原燃株式会社

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「六ケ所原燃PRセンター」にある模型。高レベル放射性廃棄物は、ガラスに溶かし固められた上で「キャニスター」に格納される(左)。ガラス固化体の貯蔵部分の断面図(右)
(出典)日本原燃株式会社

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六ケ所原燃PRセンター

こうしたさまざまな工程を経て、使用済燃料の再利用が進められます。後編では、六ヶ所再処理工場では、どのような安全対策が取られているのか、津波や地震対策は?放射性物質による健康への影響はあるのか、といった気になるポイントを詳しくお伝えします。

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