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環境にやさしい資源、「バイオマス」。FIT制度導入後、エネルギーとしての利用も大きく進んでいます。今回は、新エネルギーとして期待されるバイオマス・エネルギーについて、現状と支援策を見ていきましょう。
「バイオマス」とは、生物から生まれた資源のこと。森林の間伐材、家畜の排泄物、食品廃棄物など、さまざまものが資源として活用されています。これらのバイオマスは、燃料にして発電したり熱を供給するなど、エネルギーとして利用することもできます。バイオマス・エネルギーは、使用すればCO2を排出するものの、CO2を吸収して成長する木材などを材料として使っていることから、全体で見れば大気中のCO2の量に影響を与えない「カーボンニュートラル」なものです。さらに、バイオマス・エネルギーは、地域活性化に役立つ可能性も持っています。間伐材や家畜の排泄物のような資源は、その多くが地域の農村や漁村に存在しているためです。これらをエネルギーとして利活用できれば、エネルギー関連の新しい産業を地域に生み出すことができます。このような理由から、バイオマス・エネルギーは、新エネルギーとして拡大が期待されています。
バイオマスの活用状況
地域が主体となって取り組んだバイオマスの活用事例
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資源エネルギー庁では、エネルギー施策の一環として、バイオマス・エネルギーの利活用に関するさまざまな支援をおこなっています。たとえば、バイオマス発電は、再エネでつくった電気を固定価格で買い取る「FIT制度」( 「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)の対象となっています。FIT制度により運転が開始されたバイオマス発電の導入量は、制度開始年度の2012年度末時点では1.7万kW(9件)であったのに対し、2016年度末時点では85万kW(218件)と大きな伸びを示しています。
また、熱利用に関する支援政策や、地域の自立したエネルギー活用モデルの構築を支援する政策などでも、 バイオマス・エネルギーの利活用を推進しています。
バイオマス・エネルギーの利用を拡大するためには、その燃料となる資源を安定的かつ安く確保できる状況をつくることが必要です。たとえば、木材(木質バイオマス)を利用したバイオマス発電のコストは、燃料費が約7割を占めるとされており、発電のコストダウンの方法をよく考えていくことが必要です。また、木材の有効活用を図るためには、1本の木をすべてエネルギーに利用するのではなく、建材などのマテリアル(材料)として利用できる部分はそれぞれの用途に利用し、利用できない部分は燃料としてエネルギー源とすることが求められます。そのため、木材の需要拡大をはかり、持続的で安定的な供給の実現につなげていくという課題を解決することは、林業の産業としての成長や、森林のある中山間地域の産業振興につながるだけでなく、バイオマス・エネルギーの燃料の安定供給にもつながります。バイオマス・エネルギーの推進施策は、林業施策と連携して取り組んでいくことが重要となるのです。
そこで経済産業省では、さまざまな省庁と連携し、取り組みを実施しています。FIT制度であれば、国内材を使用する木質バイオマス発電事業者がFITの認定を受けるにあたって、その燃料使用計画は持続可能な内容となっているかどうかを都道府県がチェックしたり、林野庁も必要に応じてヒアリングできるしくみを構築しています。また、林業を管轄する農林水産省とは、「木質バイオマスの利用推進に向けた共同研究会」を実施し、森林資源を地域内で持続的に活用していく「地域内エコシステム」の構築を検討してきました。報告書においては、地域の森林資源を再びエネルギー供給源として見直し、集落内で完結する、比較的小規模で、集落の維持・活性化につながる低コストなエネルギー利用をどのように進めていくかという観点から、新たな施策を検討した内容をとりまとめています。2013年度からは経済産業省、農林水産省を含む7府省が連携して、「バイオマス産業都市」を推進しています。この取り組みは、バイオマスを活用した地域の産業創出と地域循環型のエネルギーの強化に向けた取り組みをおこなう自治体を、事業者と連携することなどを条件として、「バイオマス産業都市」に認定するものです。2017年は、新たに11市町村をバイオマス産業都市として選定しました。こうした官民一体となった取り組みを通じて、資源となるバイオマスの安定的な供給やバイオマス・エネルギーの利用拡大を積極的に進めていきます。
省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課
長官官房 総務課 調査広報室
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