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自動車産業では、近年、大きな技術革新の波が訪れています。そんな大きな変化に対応すべく、日本でも、2018年4月から「自動車新時代戦略会議」が開催されています。自動車産業のトレンドと不確実性をしっかりと見据えつつ、世界のイノベーションをリードし、環境問題などの解決に積極的に貢献していくために、新たな戦略を打ち出そうとしています。自動車に起こっている劇的な変化のうち、エネルギー分野に大きく関わってくるのが、電力を動力源のすべてもしくは一部として利用する「電動化」です。さまざまなエネルギー問題の解決に役立つ可能性があることからも、大きな注目が集まり、世界中の国や企業が参入して開発競争が繰り広げられています(「電気自動車(EV)は次世代のエネルギー構造を変える?!」参照)。今回は、電気自動車(EV)をはじめとする自動車の電動化について、考える際のポイントを整理してみましょう。
いま自動車産業に起こっている変化の潮流は、大きくまとめると、「ツナガル化(Connectivity)」、「自動化(Autonomous)」、「利用シフト、サービス化(Shared&Service)」、「電動化(Electoric)」の4つです。この潮流は、自動車を新しい姿へと変化させるにとどまらず、自動車産業の構造をも大きく変えようとしています。
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このうち、動力源の電動化への期待が高まっているのには、たとえば以下の理由があります。
近年、電池の技術が急速に進化するなどの技術的変化、また「パリ協定」で示された「2℃目標」に基づく「脱炭素」を求める動きなどを受けて(「今さら聞けない『パリ協定』 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)、電動化に関する開発競争はさらに激化しています。
ただし、ひとくちに「自動車における動力源の電動化」といっても、完全に電気のみで走る車やほかの動力源と組み合わせて走る車、あるいは電気の供給方法などによって、「電動化」の種類は多様であることに注意する必要があります。
諸外国では、このような自動車をまとめて「xEV」という総称で表すようになっています(日本語では「電動車」)。BEVだけが「電動化された自動車」ではないのです。
「xEV」の種類
実は、このxEVという捉え方で各国における自動車の電動化の状況を見ると、日本は世界でもっとも電動化の進んだ国のひとつと言えます。新車販売台数の31.6%がxEVで占められており、各国のxEV率と比べてもとても大きな割合であることがわかります。これは、日本の自動車メーカーが、すぐれた環境性能と消費者のニーズを両立させた車両を開発・販売し、また早くからxEVの制度環境やインフラ整備にも取り組んできた成果だと言えるでしょう。
世界の電動化の状況(2017年)
(出典)IHS Markit
日本が自動車の新時代を考えるにあたっては、これら「xEV」全体をどのように推し進めていくのかということを考える必要があります。皆さんもご存知の通り、日本の自動車メーカーが世界市場で占めるシェアは大きなものです(2017年で29%)。そうした中で、日本には、電動化に関してこれまで培ってきた経験や技術力などを最大限に活かし、世界をリードし続け、世界規模での環境問題解決に貢献していくことが求められています。
もうひとつ、電動化を考える時に重要なキーワードとして、「Well-to-Wheel」があります。これは、自動車の環境負荷を語る際に用いられる概念です。「Well」は井戸の意味で、ここでは油田のことを指し、「Wheel」は車輪の意味で、ここでは自動車のことを指します。つまり「Well-to-Wheel」とは、自動車の燃料を手に入れる段階から実際に走行させる段階まで、全体を通して見た時の自動車の環境負荷を問うキーワードなのです。
たとえば、ガソリン自動車では、油田から石油をくみ上げる時、石油からガソリンを精製する時、そして実際に走行する時にCO2を排出します。では、電動化した自動車ではどうでしょう?「Well-to-Wheel」の観点で見た場合、外部から電気を充電するBEVやPHEVでは、その電気がつくられた方法がポイントになります。火力発電を使ってつくられた電気であれば、トータルではCO2を排出していることになるためです。特に石炭火力発電に大きく依存している国では、「Well-to-Wheel」のうち「Well-to-Tank」段階におけるCO2排出量が大きく、電動化の環境価値をじゅうぶんに発揮することができません。
「Well-to-Wheel」での各種自動車のCO2排出量の評価
(出典)IEA「World energy balance 2017」、エネルギー・経済統計要覧2017などを基に試算
燃料から走行まで、トータルで自動車の環境負荷を低減させていくためには、「自動車の低炭素化×電源の低炭素化」という一体的な取り組みが必要となるのです。新時代の自動車のあるべき姿は、こうしたポイントを抑えながら議論する必要があります。では、日本はこれからどのような取り組みを進めるべきなのでしょうか。次回は、「自動車新時代戦略会議」での論議と、そこから見えてきた日本が取り組むべき施策についてご紹介しましょう。
経済産業省 製造産業局 自動車課
長官官房 総務課 調査広報室
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