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脱炭素社会の実現に向けて、今、世界中でさまざまな取り組みがおこなわれています。そのうち、有効な手段のひとつが「カーボンプライシング」という方法です。欧州をはじめ世界で導入が広がりつつある「カーボンプライシング」とは、いったいどんな手法なのでしょうか。今回はそのしくみの概要や、各国でどのような制度が取り入れられているのかをご紹介しましょう。
「カーボンプライシング」とは、企業などの排出するCO2(カーボン、炭素)に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策手法です。有名な手法には「炭素税」や「排出量取引」と呼ばれる制度がありますが、それだけではありません。カーボンプライシングにはさまざまな手法があります。一般的に、政府によっておこなわれる主なカーボンプライシングには、
などが挙げられます。ほかにも、「石油石炭税」などエネルギーにかけられる諸税、法律による規制などもカーボンクプライシングに含まれます。政府主導のしくみ以外にも、企業が自社のCO2排出を抑えるために、炭素に対して独自に価格付けをし、投資判断などに活用する「インターナル(企業内)・カーボンプライシング」などの方法があります。
カーボンプライシングの分類
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カーボンプライシングには多くの手法があり、国や地域によって導入されている制度も異なります。また、対象者や負担する水準などの細かいしくみもそれぞれ違います。
EUをはじめ、中国や韓国なども導入しています。EUでは、2005年から世界で初めて「排出量取引制度(EU-ETS)」を開始。その取引量は、EU域内のCO2排出量の4割強をカバーしていると推計されます。
韓国では2015年から制度が開始されました。直近3年間平均のCO2排出量が12.5万トン以上の事業者など、約600社が対象となっています。これは韓国の年間排出量の約7割をカバーしています。また、世界でもっともCO2排出量の多い中国でも、2021年から電力事業者を対象に全国規模で制度を導入しています。現在、対象となっている企業で年間排出量全体の約4割をカバーしており、2025年までに石油化学や鉄鋼、製紙など対象領域を広げることが予定されています。
排出量取引制度導入国の例
(出典)「排出量取引の制度設計の論点について(EU ETSの変遷と現状を踏まえて)」(日本エネルギー経済研究所)、各国政府公表資料を基に作成。
炭素税は欧州を中心に導入が進んできました。EU諸国のうち、フィンランドやスウェーデン、フランス、英国、ドイツなどでは、排出量取引制度に加えて、炭素税を導入しています。ただし、EU-ETSの対象企業は基本的に炭素税が免除となっています。このほか、カナダなどでも州レベルで炭素税が導入されています。
炭素税導入国の例
(出典)平成29年7月環境省「諸外国における炭素税等の導入状況」・各国政府公表資料を基に、取得可能な直近の値をふまえて更新。※税収は取得可能な直近の値。換算レートは1€=136円等(基準外国為替相場・裁定外国為替相場(本年10月分適用))
カーボンプライシングをおこなうことで、CO2(炭素)の排出者の行動が変われば、CO2の排出量削減につながり、地球の温暖化対策に有効です。このほかにも、さまざまなメリットがあります。たとえば、クリーンエネルギーを使って作られた製品や事業の付加価値が向上し、投資の後押しが得られれば、脱炭素化に向けたさらなる取り組みがうながされます。また、これによって脱炭素技術が普及することも期待されます。その一方で、CO2排出のコストが増えれば、企業の生産活動に影響をおよぼす可能性もあります。たとえば、国際的な競争力が低下したり、CO2排出の規制がゆるやかな国へ生産拠点や投資先が移転したりするなど、経済に悪影響が生じるおそれもあります。そうした影響が出ないよう、バランスの取れた制度を設計し、積極的に取り組む企業にはインセンティブを与えるといったしくみも必要となります。
こうしたなか、日本では、2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され(「『GX実現』に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める」参照)、化石エネルギーからクリーンエネルギー中心に転換する「GX(グリーントランスフォーメーション)」を実現するために、「成長志向型カーボンプライシング構想」が打ち出されました。「成長志向型」とある通り、規制と先行投資支援を組み合わせることで、企業などがGXに積極的に取り組む土壌をつくり、排出削減と産業競争力強化・経済成長を実現していくためのしくみが示されています。日本でもいよいよ本格的に導入されるカーボンプライシング制度。この「成長志向型カーボンプライシング構想」の内容については、次回の記事でご紹介していきます。
資源エネルギー庁 長官官房 総務課産業技術環境局 環境政策課/環境経済室
資源エネルギー庁 長官官房 総務課 調査広報室
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