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2011年3月、東日本大震災にともなって起こった東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故により、多くの住民が避難することを強いられ、財産的・精神的な損害をこうむりました。事故が発生してすぐの避難指示対象者は約8.1万人(2017年4月現在は約2.4万人)、損害賠償額は約6.4兆円(約260万件)となっています。この事故から得た教訓を活かして、原子力発電所(原発)で万が一の事故が起こった時のオフサイト(原発施設外)における避難について、地域防災計画・避難計画の充実や強化がはかられています。
原発は、現在、福島第一原発の事故後につくられた新しい規制基準に基づいて、よりいっそう厳しい安全対策が実施されています。たとえば、原子力規制委員会は、福島第一原発の事故のように放射性物質が大量に放出されることを防ぐような安全対策を事業者に求めています。さらに、各原子力事業者は、こうした新しい規制基準について、さまざまな安全対策を実施しています。
しかし、原発周辺に住む人々の生命や財産を守るためには、こうした安全対策だけでなく、万が一の事態を想定して平時から防災を考え、地域防災計画・避難計画を整備しておくことが求められます。今、原発立地自治体やその周辺地域では、福島の事故から得た教訓を活かし、また国際基準もふまえて策定された「原子力災害対策指針」などに基づき、原子力防災体制の充実や強化に取り組んでおり、政府も一体となってその取り組みを支援しています。
現在、日本の原子力防災体制は以下のような構成となっています。
この原子力防災会議で、2013年9月3日、「関係自治体による避難計画の作成などに、関係省庁が全面的に取り組む」という方針が決定されました。これを受けて、原発のある全国13の地域において「地域原子力防災協議会」が設置され、内閣府や国のすべての関係省庁と、避難計画を策定する関係自治体などが参加しています。この「協議会」の枠組みの下で地域防災の課題について平時から話し合い、一体となって地域防災計画・避難計画の策定や、充実化の取り組みを進めています。福島第一原発の事故以前は、避難計画が自治体任せだったのではないかという批判がありました。そこで、地域原子力防災協議会では、国も計画の策定にかかわり、地域が抱える原子力防災の課題をともに解決しているのです。
これら原子力防災の実務に国側で取り組んでいるのが、内閣府の原子力防災担当です。2014年に新しく発足した組織で、内閣府特命担当大臣などが任命され、職員約70名が地域の原子力防災体制を強化する取り組みにたずさわっています。その主な業務としては以下の3つがあります。
地域防災計画・避難計画の策定と支援の体制
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福島第一原発の事故を経て、オフサイトの避難についての考え方も見直しがはかられました。まず、原子力災害に特有な対策をおこなっておくゾーン(原子力災害対策重点区域)の見直しです。これは、事故前の避難計画は8~10km圏内を対象として避難が考えられていたものの、現在では、国際原子力機関(IAEA)の基準をふまえて、原発からどのくらいの距離であるかによって以下のように大きく2つのゾーンに分けた避難方法が考えられています。
オフサイトでの避難の考え方(原子力災害対策指針)
また、現在の避難計画では、福島第一原発事故の教訓を元に、要支援者に配慮した対応をとるとの考え方が盛り込まれています。要支援者とは、病院の入院患者や社会福祉施設の入所者など、避難に時間がかかり、特別な移動手段や避難先が必要となる人々です。各地域ではその避難手段の確保や要支援者数の把握に努めています。要配慮者が域外退避する際に、福祉車両、受け入れ先などの準備がととのって円滑に避難ができるようになるまでの間、被ばくのリスクを下げながら、安全に一時的に避難するための「放射線防護施設」の整備も進めています。
放射線防護施設のイメージ
要配慮者や住民などの屋内退避施設、緊急時の現地の対策拠点施設などに対する放射線防護対策は、施設の形態、規模などにより異なるが、主な放射線防護対策の内容は上図のとおり。
この考え方については、県と国が協力して各自治体へと説明をおこなっているほか、内閣府で作成したチラシや、各自治体の広報などを通じて各地域の住民に知らせています。
各地域では、このような考え方の下に、地域防災計画(原子力災害対策編)を策定しています。避難では、要支援者も含め、輸送手段をどうするか、避難先をどう確保するかなど、きめ細やかな対応が必要となってきます。防災の課題は地域によって異なりますが、次のようなポイントは共通の課題となっており、避難計画にもその対策が盛り込まれています。
各地域では、さらに、自治体の避難計画や国の対応を盛り込んだ「緊急時対応」の策定にも取り組んでいます。この「緊急時対応」は、地域原子力防災協議会で確認した後、最終的には原子力防災会議に報告、了承を得ることとなっています。これまで、川内地域(鹿児島県)、伊方地域(愛媛県)、高浜地域(福井県)、泊地域(北海道)、玄海地域(佐賀県)、大飯地域(福井県)で「緊急時対応」を確認、了承済みとなっています。緊急時対応の内容については、内閣府のWebサイトで閲覧することができます(スマートフォンにも対応)(括弧内の県は原発所在県)。重要なことは、避難計画も緊急時対応も、一度策定すれば終わりではないということです。策定された後も、その実効性の確認や検証をおこない、PDCAサイクルをまわすことで、さらなる充実化をはかっています。たとえば、訓練から得た気付きを元に避難ルートの複数化をはかるなど、計画は適宜改訂がおこなわれています。また、全国知事会からの要望など、各地域からのフィードバックも原子力防災体制の充実化に活かされています。国はそれらの要望を受けて、関係省庁での調整をおこなったり、バス会社などの民間事業者と各自治体の協定を結ぶためのサポートなどを進めています。今後も、国と関係自治体が一体となって、原子力防災の具体化・充実化をはかっていきます。
電力・ガス事業部 原子力立地政策室
長官官房 総務課 調査広報室
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