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2017年9月1日、日本学術会議から、福島第一原子力発電所の事故発生以降の福島県に関する、ひとつの重要な報告書が発表されました。「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題」というタイトルが付けられたその報告書は、原発事故による子どもへの放射線被ばくの影響を科学的に評価したものとして、SNSで大きな話題となりました。今回の記事では、この報告書の注目すべきポイントについてご紹介します。
日本学術会議とは、日本の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の分野にかかわる約84万人の科学者を代表する機関です。独立した組織として、政策を提言したり、科学者のネットワークをつくったり、科学の役割について世の中に理解してもらうための活動などをおこなっています。この報告書は、日本学術会議の「臨床医学委員会 放射線防護・リスクマネジメント分科会」で議論された結果をまとめたものです。放射線や医療の専門家はもちろん、哲学者なども参加して、これまで発表された学術論文や国際機関の報告書を参考にしながら、議論を深めました。
報告書は、災害弱者であり、放射線が身体に影響をおよぼす度合い(放射線感受性)がおとなよりも高いと言われる、生後0歳~18歳の子どもにスポットを当てています。報告書では、子どもの健康に対する放射線の影響や線量評価に関して、これまでに発表されている科学的知見が整理されています。また、事故後に調査された健康影響に関するデータと、社会の受け止めかたについても分析されています。報告書は、これまでに積み重ねられた科学的調査とそのデータから、以下のことをまとめています。
胎児の健康影響については、これまでの調査により、次のことが実証されていると報告書は述べています。
福島県での原発事故は、1986年にソビエト連邦(当時)のチェルノブイリ原発事故と比較されることがありますが、報告書はこれについても述べています。
福島県では、子どもを対象とした甲状腺超音波検査をおこなっています。その結果、甲状腺がんが約0.037%の頻度で検出されています。この結果について、報告書は次のように述べています。
報告書では最後に、課題として、「こうした科学的事実の蓄積があり、実際の被ばく線量があきらかにされつつあるものの、子供への健康影響に関する不安がなかなか解消されない」ことを挙げています。防護方策の強化をおこなうことで、社会全体の健康不安はだんだん鎮まってはいるものの、その分、不安を抱える人々が孤立化し先鋭化してきていることも指摘しています。また、科学的に見れば容認できる程度の放射線リスクが、被災者に理解・容認されてはいない現状も明らかになっており、コミュニケーションの必要性が高まっているとしています。
資源エネルギー庁は、こうした不安を解消できるよう、今後も引き続き、被災者に寄り添った、丁寧できめ細やかなコミュニケーションをおこなうよう努めていきます。
長官官房 総務課 調査広報室
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