コンクリート・セメントで脱炭素社会を築く!?技術革新で資源もCO2も循環させる

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2050年カーボンニュートラル実現のカギを握る「カーボンリサイクル」技術。CO2を資源として活用するため、さまざまな研究開発が進められていますが、その注力分野のひとつがコンクリート・セメントです。スペシャルコンテンツでは、CO2を活用してつくったコンクリートが商品化されていることをお伝えしましたが(「CO2削減の夢の技術!進む『カーボンリサイクル』の開発・実装」参照)、そのほかにもセメント製造過程などのさまざまな段階で、CO2削減の取り組みが進められています。今回は、CO2も含めた究極の「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を実現し、脱炭素社会を目指すコンクリート・セメント産業の取り組みをご紹介しましょう。

コンクリート・セメント産業はカーボンリサイクルの重要分野

ダム、道路、ブロック、ビルなど、コンクリートは身の回りのいたるところで使われています。そのコンクリートの主な原料となるのがセメントです。

セメントは、その原料に都市廃棄物や災害廃棄物などを活用しています。国内の総廃棄物の5%(約3,000万トン)もの量を受け入れ、処理することで、自治体の災害復旧や機能維持にも大きく貢献しているのです。これらをセメント製造のプロセスで高温燃焼することにより、原料や燃料として活用できます。

その一方、セメント産業では国内で4,147万トン(2019年)ものCO2を排出しているため、CO2対策が必要です。そこで、CO2を資源としてとらえ活用していく「カーボンリサイクル」技術(「未来ではCO2が役に立つ?!『カーボンリサイクル』でCO2を資源に」参照)が重要であるとして、研究開発を進めることとなっています。コンクリート・セメント産業の分野で排出されるCO2をリサイクルすることができれば、日本の排出量削減に大きなインパクトをあたえることが見込めます。

では、どのようにCO2排出削減を進めているのか、まずはセメント分野から見ていきましょう。

セメントは、石灰石や粘土、また廃材や廃プラスチックといった廃棄物などの原料を調合し、高温で焼成した後に急速冷却し、それに石こうを加え粉砕してできあがります。高熱で加熱して冷却する過程で「クリンカ」という中間製品ができますが、このクリンカを生産する際に、石灰石から必然的にCO2が排出されてしまいます。

現行のセメント製造プロセス
現行のセメント製造プロセスを図であらわしています。

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ここで排出されるCO2を処理するには現在の技術では大規模な設備が必要となり、処理エネルギーなどのコスト面も含めて対応がむずかしいと考えられています。

そこで、新たな研究開発として、セメント製造プロセスでCO2を外に放出せず、効率的にCO2を回収する技術開発に取り組みます。セメント製造工程では、石灰石などの原料を「プレヒーター」とよばれる設備で仮焼きし、その上で「キルン」と呼ばれるセメント焼成炉で、1450度の高温で原料を熱します。セメント製造工程で発生する原料由来のCO2のほとんどは、このプレヒーターの内部で発生しています。このシステムに着目し、プレヒーターの部分だけを改造することで、セメント製造工程で発生する原料由来のCO2を80%以上も回収し、その上で既存のキルンなどの設備をそのまま活用可能とする、画期的な技術の開発を進めます。

こうしたプレヒーターでのCO2回収技術に加え、回収したCO2を原料として廃棄物をリサイクルしセメント原料を製造する新しい技術も開発中です。前述したとおり、従来から、セメントの材料にはリサイクル可能な廃棄物、たとえば、廃タイヤ、廃プラスチック、木くず、建設発生土、製鉄スラグ、下水汚泥など、社会で発生するさまざまな廃棄物・副産物が使われてきました。災害廃棄物も用いられており、実際に東日本大震災などの災害廃棄物もセメント製造に役立てられてきました。

廃棄物の受入量の推移/災害廃棄物の受入処理例
廃棄物の受入量の推移を棒グラフ、災害廃棄物の受入処理例を年表であらわしています。

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新たな技術開発では、さらに、廃コンクリートなどの廃材などからカルシウムを取り出し、それにセメント製造工程で排出されるCO2を吸着させて「炭酸塩(CaCO3)」にすることで、セメントの主原料である石灰石の代替(人工石灰石)を生成しようとしています。実現すれば、石灰石を使わずに生成する「カーボンリサイクルセメント」が新たに生まれ、普及すればさらなるCO2削減効果が期待できます。

CO2や廃棄物等をリサイクルしたカーボンリサイクルセメント製造等技術
CO2や廃棄物等をリサイクルしたカーボンリサイクルセメント製造等技術を図であらわしています。

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こうした技術を用いて、セメント分野では、石灰石に由来するCO2の全量近くを回収し、回収したCO2から炭酸塩をつくり、セメント原料などに利用する技術を2030年頃までに実用化できるよう取り組んでいきます。

CO2を最大限吸収するコンクリート技術を開発

次に、コンクリート分野でのCO2削減方法についてご紹介しましょう。コンクリートは、主原料であるセメントに、砂利や砕石などの骨材、水、コンクリートの品質や強度をあげる混和材を混ぜて製造されます。「CO2削減の夢の技術!進む「『カーボンリサイクル」』の開発・実装」でお伝えしたとおり、コンクリートにCO2を取り込み固定化させる技術はすでに開発され、舗装ブロックに使われるなど実用化が進んでいます。

今後はさらに、固定化させるCO2の量を最大化することが課題となります。同時に、できるかぎりコストを下げることも重要です。現在、一部商品化されているCO2を利用したコンクリート製品は、一般的なコンクリート製品の2〜3倍の価格のため、既存製品と同じかそれ以下のコストを実現し、市場への普及をはかっていくことが求められます(参考:プレキャストコンクリート(工場であらかじめ成形されたもの):30円/kg程度、生コンクリート:8円/kg程度)。

これらの課題を解決するため、CO2を最大限固定することができる材料(骨材、混和材)の開発、それらの材料を複合して利用する技術の開発、さらにCO2固定量を最大化するとともにコスト低減を実現するコンクリート製造手法の確立に向けた技術開発も進めていく必要があります。

CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの例
一般的なコンクリートと比較したCO2排出削減・固定量最大化コンクリートの例を図であらわしています。

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また、コンクリートは大きな構造物に使われ、強度や長期的な耐久性が求められる素材のため、長期にわたる安全性の確保が大前提です。CO2固定量を最大化したコンクリートにおいても同様で、品質管理の手法や、CO2固定量の評価手法も確立していく必要があります。現在は国内でも世界でもまだCO2固定量に関する基準が定まっていないため、今後は検証やデータ収集などをおこない、評価方法の標準化を目指します。CO2を吸収してつくるコンクリートについては、コストを低減し、品質管理手法や国際標準化を2030年までに実現していく計画となっています。

究極のサーキュラーエコノミーの実現を目指して

コンクリート・セメントの全体像
今後目指しているコンクリート・セメントの製造工程などを図であらわしています。

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セメント製造時に排出されるCO2を回収して大気中への排出を抑えることに加えて、回収したCO2と廃コンクリートなどからカルシウムを抽出し、セメント原料として再利用することができれば、CO2を出さないしくみが構築できます。また、セメント製造工程で回収したCO2やカーボンリサイクルセメントを、CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの原料として利用し、そのコンクリートを用いた建造物が解体される際には、それを原料として再利用すれば、無駄なく資源を活用することも可能となります。

将来的には、コンクリート・セメント産業のみならず、広く建設業全体の一連のしくみとなるよう関係者と連携していくことで、廃棄物などが循環するシステムの構築を目指します。これにより、カーボンニュートラル社会の実現とともに、持続的な資源循環システムが実現できると考えています。

このように、資源もCO2も循環する、究極の「サーキュラーエコノミー」がこの分野で実践できれば、脱炭素社会実現への重要な取り組みとなります。まずは2030年の実用化に向けて、各技術や製品の開発を産学官一体となって進めていきます。

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