第3節 一次エネルギーの動向

1.化石エネルギーの動向

(1)石油

①供給の動向

我が国における一次エネルギーとしての石油の供給は、石油ショックを契機とした石油代替政策や省エネルギー政策の推進により減少しましたが、1980年代後半には取り組みやすい省エネルギーの一巡や原油価格の下落に伴って増加に転じました。1990年代半ば以降は、石油代替エネルギー利用の進展などにより減少基調で推移しました(第213-1-1)。

我が国の原油自給率11 は2013年度で0.3%であり、新潟県、秋田県及び北海道に主要な油田が存在しています(第213-1-2)。このように自給率が低いため、我が国は2013年度において原油の99.7%を海外からの輸入に依存しており、輸入先も中東地域が8割以上を占めました。2013年の米国の中東依存度12 は25.7%、欧州OECDは15.5%であり、我が国の中東依存度は諸外国と比べて高くなっています。2013年度の輸入先を国別に見ますと、サウジアラビアが30.7%でトップにあり、以下、アラブ首長国連邦(22.7%)、カタール(13.0%)、クウェート(7.2%)の順となりました(第213-1-3)。

【第213-1-1】日本の石油供給量の推移

213-1-1

【第213-1-1】日本の石油供給量の推移(xls/xlsx形式:61KB)

(注)
石油(原油+石油製品)の一次エネルギー国内供給量
(出典)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
(出典)
資源エネルギー庁「資源・エネルギー統計年報・月報」、石油連盟「石油資料月報」を基に作成

【第213-1-3】原油の輸入先(2013 年度)

213-1-3

【第213-1-3】原油の輸入先(2013 年度)(xls/xlsx形式:57KB)

(出典)
経済産業省「資源・エネルギー統計年報」を基に作成

我が国は、二度の石油ショックの経験から原油輸入先の多角化を図り、中国やインドネシアからの原油輸入を増やし、1967年度に91.2%であった中東地域からの輸入の割合を1987年度には67.9%まで低下させました。しかし、近年、我が国の中東依存度は再び上昇し、2009年度は89.5%と非常に高くなりました。2013年度はサハリンや東シベリア・太平洋石油パイプライン(ESPO)経由の輸入拡大によりロシアからの原油輸入が増加するなどして、中東依存度は2009年度と比べると低下しましたが、それでも83.6%という割合でした(第213-1-4)。

アジアの産油国について、石油需給の動向を見ると、石油需要が増加し、これまで輸出していた原油を自国の需要に振り向けた結果、輸出向けが減少する傾向にあります(第213-1-5)。

【第213-1-4】原油の輸入量と中東依存度の推移

213-1-4

【第213-1-4】原油の輸入量と中東依存度の推移(xls/xlsx形式:72KB)

(出典)
経済産業省「資源・エネルギー統計年報・月報」を基に作成

【第213-1-5】原油生産に占める国内向け原油、輸出向け原油の割合

213-1-5

【第213-1-5】原油生産に占める国内向け原油、輸出向け原油の割合(xls/xlsx形式:63KB)

(出典)
IEA「Energy Balances of Non-OECD Countries 2014 Edition」を基に作成

②消費の動向

我が国では原油のほとんどが蒸留・精製により石油製品に転換されて販売されており、石油製品については輸入と輸出が行われています。2013年度の石油製品販売量は、燃料油合計で2013年度に1億9,352万klであり、2000年代に入り減少傾向になりました。油種別販売構成を見ると、B・C重油13販売量が第一次石油ショック以前の1971年度までは5割以上を占めていましたが、その後、ガソリン、ナフサ、軽油などの消費が増加し、白油化が進みました。2013年度の販売構成を見ると、B・C重油販売量の割合は11.3%まで減少しました(第214-4-1「燃料油の油種別販売量の内訳」参照)。

③原油価格の推移

日本に到着する原油価格(CIF価格14)は、世界的な原油価格の急落と円高方向への為替の動きによって、2008年9月以降下落し、2009年1月に1kl当たり2万円台(1バレル当たり43.1ドル)の水準にまで低下しました。しかし、その後各国による景気刺激策を背景に原油需要の回復期待が高まる中、CIF価格は2009年5月に1kl当たり3万円台まで上昇し、同年7月には同4万円台、2011年3月には同5万円台へと上昇しました。2011年度以降は総じて上昇傾向にあり、2014年1月には7万円を大きく上回る価格になりました。2013年度は、ドル建て原油価格が前年度比4%下落したにもかかわらず、為替が21%円安方向へ推移したことにより、円建て原油輸入価格は17%上昇しました。しかし、2014年秋以降はドル建て原油輸入価格の低下もあり、下落傾向にあります(第213-1-6)。

【第213-1-6】原油の円建て輸入価格とドル建て価格の推移(2008年1月~ 2015年3月)

213-1-6

【第213-1-6】原油の円建て輸入価格とドル建て価格の推移(xls/xlsx形式:59KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」を基に作成

また、日本の総輸入金額に占める原油輸入金額15の割合を見ると、石油ショック以降、減少基調が続き、1986年度以降はおおむね10%程度で推移してきました。石油ショック以後の石油代替政策、省エネルギー政策などを反映して、輸入全体に占める原油の割合が低下し、石油ショック時と比べて原油価格高騰による日本経済への影響は小さくなりました。ただし、2000年代半ばより、国際的な原油価格高騰を受けて、総輸入金額に占める原油輸入金額の割合は再上昇し、2008年度には20%近くになりましたが、依然として第二次石油ショックの半分程度の水準でした。2009年度には原油価格の急落により、15%台にまで低下しましたが、2011年度以降は原油価格の上昇と原子力発電停止による発電用需要の増加により、総輸入金額に占める原油輸入金額の割合は再び上昇傾向にあります。2013年度の総輸入金額に占める原油輸入金額の割合は17.5%となり、3年連続で増加しました(第213-1-7)。

【第213-1-7】原油の輸入価格と原油輸入額が輸入全体に占める割合

213-1-7

【第213-1-7】原油の輸入価格と原油輸入額が輸入全体に占める割合(xls/xlsx形式:52KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」、石油連盟「内外石油資料」を基に作成

(2)ガス体エネルギー

ガス体エネルギーの主なものとしては天然ガスとLPガスがあります。天然ガスは、油田の随伴ガスや単独のガス田から生産され、メタンを主成分としています。常温・常圧では気体であるため、気体のままパイプラインにより輸送するか、マイナス162℃まで冷却して液体にし、液化天然ガス(LNG、Liquefied Natural Gas)としてタンカーで輸送するか、いずれかの方法がとられています。天然ガスは、化石燃料の中では相対的にクリーンであるために利用が増えています。また、LPガスは液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas)のことで、油田や天然ガス田の随伴ガス、石油精製設備などの副生ガスから取り出したブタン・プロパンなどを主成分としています。簡単な圧縮装置や冷却により常温で容易に液化できる気体燃料であるため、液体の状態で輸送、貯蔵、配送が行われています。

①天然ガス

(ア)供給の動向

我が国において、1969年の液化天然ガス(LNG)の導入以前の天然ガス利用は国産天然ガスに限られ、一次エネルギー国内供給に占める割合は1 ~ 2%に過ぎませんでした。しかし、1969年の米国(アラスカ)からの導入を皮切りに東南アジア、中東からの輸入が開始され、我が国におけるLNGの導入が進み、2013年度の一次エネルギー国内供給に占める天然ガスの割合は24.2%に達しました。2013年度における天然ガス供給における輸入の割合は、石油と同様に極めて高い97.6%であり、全量(8,773万トン)がLNGとして輸入されました。なお、主に新潟県、千葉県、北海道などで産出されている国産天然ガス生産量は、2013年度においてLNGに換算すると215万トンであり、天然ガスの総供給量の2.4%を占めました(第213-1-8)。

【第213-1-8】天然ガスの国産、輸入別の供給量

213-1-8

【第213-1-8】天然ガスの国産、輸入別の供給量(xls/xlsx形式:23KB)

(出典)
経済産業省「エネルギー生産・需給統計年報」、「電力調査統計月報」、財務省「日本貿易統計」、経済産業省「ガス事業統計月報」を基に作成

我が国に対するLNGの供給先は、2013年度において、オーストラリア、マレーシア、ロシアなどのアジア大洋州地域を始めとする中東以外の地域がその70.2%を占めており、中東依存度は29.8%と石油と比べて低く、地政学的リスクも相対的に低いといえます(第213-1-9、第213-1-10)。なお、2013年において、世界のLNG貿易の36.6%を日本の輸入が占めました(第2章 国際エネルギー動向 p.112第222-1-21「世界のLNG輸入」参照)。

(イ)消費の動向

我が国では、天然ガスは発電用に約63%、都市ガス用に約29%が使われ(第213-1-11)、約8%はその他工業用燃料などに用いられています。天然ガスは、一次エネルギーの供給源多様化政策の一環として、その利用が増加しました。都市ガスの用途別販売量としては、2000年頃までは家庭用が最大のシェアを占めていましたが、近年は工業用が急増しており、最大のシェアを占めています(第214-2-2「用途別都市ガス販売量の推移」参照)。

【第213-1-9】LNG の輸入先(2013 年度)

213-1-9

【第213-1-9】LNGの輸入先(2013年度)(xls/xlsx形式:26KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」を基に作成

【第213-1-10】LNG の供給国別輸入量の推移

213-1-10

【第213-1-10】LNGの供給国別輸入量の推移(xls/xlsx形式:27KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」を基に作成

【第213-1-11】天然ガスの用途別消費量の推移

213-1-11

【第213-1-11】天然ガスの用途別消費量の推移(xls/xlsx形式:27KB)

(出典)
経済産業省「エネルギー生産・需給統計年報」「資源・エネルギー統計」、資源エネルギー庁「電力調査統計月報」「ガス事業統計月報」を基に作成
(ウ)LNG価格の動向

我が国向けのLNG輸入価格は、1969年の輸入開始以来、原油価格に連動してきました。1970年代の二度の石油ショックで原油価格が高騰すると、LNG価格も上昇し、1980年代後半に原油価格が下落すると、LNG価格も低下しました。日本のLNG輸入量の大半を占める長期契約におけるLNG価格は日本向け原油の輸入平均CIF価格に連動しているため、近年の原油価格の高騰につれて、日本向けLNG価格も上昇してきました(第213-1-12)。ただし、一部の日本向けLNG価格は、原油価格変動の影響を緩和するために、S字カーブと言われる調整システムを織り込んだ価格フォーミュラにより決定されています。2004年度以降の原油価格急騰の環境下では、この価格フォーミュラの影響などもあって、LNG価格の変化は原油に比べると緩やかになっています。

2011年度から2013年度までの間は、原油輸入CIF価格が3年連続で年平均1バレル当たり100ドル超の水準が続いたため、LNG輸入価格も2013年度に過去最高の価格水準を更新しました。

(出典)
財務省「日本貿易統計」を基に作成

また、日本の総輸入金額に占めるLNG輸入金額の割合を見ると、1980年代の後半からはLNG価格の低下に伴い、7%を下回る水準で推移してきました。ただ、2008年度以降は原油価格の上昇によりLNG価格も上昇したことに加え、特に、東日本大震災以降の原子力発電所の稼働停止に伴う、発電用途のLNG輸入量の増加により、LNG輸入金額の割合は5%を上回るようになり、2013年度は8.7%まで上昇しました(第213-1-13)。

【第213-1-13】LNG の輸入価格とLNG 輸入額が輸入全体に占める割合

213-1-13

【第213-1-13】LNG の輸入価格とLNG 輸入額が輸入全体に占める割合(xls/xlsx形式:20KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」、石油連盟「内外石油資料」を基に作成

②LPガス

(ア)供給の動向

LPガスは、天然ガス生産からの随伴ガス、原油生産からの随伴ガス、さらに石油精製過程などからの分離ガスとして生産されています。LPガスの供給は1960年代までは、国内の石油精製の分離ガスが中心でしたが、年々輸入の比率が高まり、2013年度には供給量の72.3%(1,200万トン)が輸入されました(第213-1-14)。

2013年度における我が国のLPガスの主な輸入先は、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、クウェートなどの中東諸国及び米国、オーストラリアで、そのうちカタールから26.8%を輸入するなど、輸入量の76.0%を中東諸国に依存していました(第213-1-15)。

また、2013年には、米国から、シェールガス・シェールオイル開発に随伴して生産されるLPガスの輸入が開始されました。そのシェアはまだ1割程度ですが、LPガス全体の輸入量が減少傾向にある中で、輸入量を最も伸ばしています。

【第213-1-14】LPG の国産、輸入別の供給量

213-1-14

【第213-1-14】LPG の国産、輸入別の供給量(xls/xlsx形式:71KB)

(出典)
経済産業省「エネルギー生産・需給統計」「資源・エネルギー統計」、財務省「日本貿易統計」を基に作成

【第213-1-15】LPガスの輸入先(2013年度)

213-1-15

【第213-1-15】LPガスの輸入先(2013年度)(xls/xlsx形式:21KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」を基に作成
(イ)消費の動向

2013年度のLPガスの消費は、用途別に見ると、家庭業務用の消費が全体の42.7%を占めました。次いで工業用のシェア(19.1%)が大きいですが、省CO2化に向けた省エネ設備導入によって、そのシェアは向上し2000年代前半に比べ減少しています。また自動車用のシェアは、LPガス全体消費の7.6%を占めました(第213-1-16)。

【第213-1-16】LP ガスの用途別消費量の推移

213-1-16

【第213-1-16】LP ガスの用途別消費量の推移(xls/xlsx形式:77KB)

(出典)
日本LPガス協会ホームページ
(ウ)LPガス輸入価格の動向

日本のLPガス輸入価格は、サウジアラビアのサウジアラムコ社が決定する通告価格16に大きく左右される構造となっており、現在も不安定な状況にあります。近年の原油価格高騰とともに上昇基調にあり、2013年度のLPガス輸入(CIF)価格(年度平均)は過去最高の93,177円/トンという高値圏で推移しました(第213-1-17)。

また、日本の総輸入金額に占めるLPGの輸入金額の割合を見ると、二度の石油ショックを契機に2%を上回る水準にまで上昇しましたが、1985年度以降下落し、1990年代からはほぼ1%強の水準で推移しています(第213-1-18)。

(3)石炭

①供給の動向

2013年度、我が国は、石炭の国内供給のほぼ全量(99%以上)を海外からの輸入に依存しました(第213-1-19)。

我が国の国内石炭生産量は、1960年代には石油への転換の影響、さらには1980年代以降、割安な輸入炭の影響を受けて減少を続けました。1991年度から国内原料炭17の生産がなくなり、国内一般炭18は2010年度には115万トンまで減少しました。近年、大規模な商業生産はないものの、ほぼ横ばいとなっています。2013年度には国内一般炭は125万トンが生産され、ほとんどが発電用で消費されました。

【第213-1-17】LPガス輸入(CIF)価格の推移

213-1-17

【第213-1-17】LPガス輸入(CIF)価格の推移(xls/xlsx形式:68KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」、経済産業省「資源・エネルギー統計年報」「資源・エネルギー統計月報」を基に作成

【第213-1-18】LPGの輸入価格とLPG輸入額が輸入全体に占める割合

213-1-18

【第213-1-18】LPGの輸入価格とLPG輸入額が輸入全体に占める割合(xls/xlsx形式:46KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」、経済産業省「資源・エネルギー統計年報」「資源・エネルギー統計月報」を基に作成

海外炭の輸入量は1970年度には国内炭の生産量を上回り、1988年度には1億トンを突破しました。その後も、一般炭を中心に増加し、2014年度は輸入原料炭が7,253万トン、輸入一般炭が1億1,150万トンとなり、合わせて過去最高の1億9,013万トンに達しました。同年度の一般炭の輸入先はオーストラリアが74.0%を占めており、次いでインドネシア(13.8%)、ロシア(7.5%)、カナダ(2.4%)からの輸入がこれに続きました(第213-1-20)。原料炭の輸入先はオーストラリアが51.0%を占めており、次いでインドネシア(27.1%)、カナダ(11.0%)、米国(6.0%)からの輸入がこれに続きました。

こうした中で、日本企業は、探査から開発、操業の各段階において、海外炭鉱の開発に積極的に参加しました。

【第213-1-19】国内炭・輸入炭供給量の推移

213-1-19

【第213-1-19】国内炭・輸入炭供給量の推移(xls/xlsx形式:72KB)

(注)
国内一般炭には国内無煙炭19、輸入一般炭には輸入無煙炭をそれぞれ含める。
(出典)
2000年度までは経済産業省「エネルギー生産・需給統計年報」、2001年度より財務省「日本貿易統計」、JCOAL「炭鉱別石炭生産月報」を基に作成

②消費の動向

我が国の石炭消費(産業別石炭販売量)の推移を見ると、1965年度の6,978万トンから1984年度には1億トンを、2000年度には1億5,000万トンを超えました。2013年度は前年度に比べて1,308万トン増加し、1億8,392万トンとなりました。主な業種における石炭消費は、電気事業が8,370万トンと最も多く、次いで鉄鋼業が6,610万トンで、この2つの業種で全消費の81.4%を占めました(第213-1-21)。

電気事業における石炭消費量は、1960年代後半は2,000万トンを上回っていましたが、石炭火力発電の他電源への転換が進んだことから1979年度には701万トンにまで低下しました。しかし、第二次石油ショック以降は、石油代替政策の一環としての石炭火力発電所の新設及び増設に伴い、石炭消費量は再び増加に転じ、現在では電気事業が最大の石炭消費部門となりました。2009年度は世界的不景気により、鉄鋼業とともに減少しました。さらに、2009年度以降の「みなし措置」20満了で、従来から卸電気事業にかかわる許可を受けていた共同火力が電気事業者から外れたことによって、2010年度も減少しました。2011年度には一部の石炭火力発電所が震災で被災したことが影響し、減少しました。電気事業における石炭消費量は2012年度まで7,000万トン台でしたが、2013年度は被災石炭火力が復旧し、さらに2013年12月に2つの石炭火力が営業運転を開始したため、前年度より956万トン増加して、8,000万トンを超えました。

【第213-1-20】一般炭(左)、原料炭(右)輸入先(2014年度)

213-1-20

【第213-1-20】一般炭(左)、原料炭(右)輸入先(2014年度)(xls/xlsx形式:24KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」を基に作成

【第213-1-21】石炭の用途別消費量の推移

213-1-21

【第213-1-21】石炭の用途別消費量の推移(xls/xlsx形式:50KB)

(出典)
2000年度までは経済産業省「エネルギー生産・需給統計年報」、2001年度以降同「石油等消費動態統計年報」、「電力調査統計年報」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成

③石炭価格の動向

我が国の輸入石炭価格(CIF価格)は、1990年度以降、原料炭が4,000 ~ 10,000円/トンの価格帯で、一般炭は3,500 ~ 8,000円/トンの価格帯で推移してきました。2000年代半ば以降は原油価格の上昇を受けて、石炭の採炭コスト、輸送コストも上昇し、世界的な石炭需要の増大とも相まって石炭価格が上昇しました。2011年度以降、原料炭価格は低下傾向にあり、2014年8月に10,873円/トンまで下落した後、2014年12月以降は12,000円/トン台で推移しています。一般炭も2012年6月以降は10,000円/トン前後で推移しています。なお、国内炭は1980年代後半から輸入炭との価格差が拡大し、競争力を失って生産量が減少しました(第213-1-22)。

また、日本の総輸入金額に占める石炭の輸入金額の割合は1970年度に7%を超えていましたが、1980年代後半からは3%を下回る水準で推移してきました。2008年度以降は再び3%を上回る状況となりましたが、2012年度には3%を切りました。2013年度は原油やLNGの輸入価格が大きく上昇する一方で、輸入炭価格はほぼ横ばいで推移したことから2.7%まで減少しました(第213-1-23)。

【第213-1-22】国内炭・輸入炭価格(CIF)の推移

213-1-22

【第213-1-22】国内炭・輸入炭価格(CIF)の推移(xls/xlsx形式:127KB)

(注)
輸入炭は月次平均データ、国内原料炭、国内一般炭は年度平均データ。国内原料炭は1991年度で生産が終了。国内一般炭の価格は、2002年度以降公表されていない。
(出典)
輸入炭については財務省「日本貿易統計」、国内炭については資源エネルギー庁「コール・ノート2003年版」を基に作成

【第213-1-23】原料炭、一般炭の輸入額と総輸入額に占める割合

213-1-23

【第213-1-23】原料炭、一般炭の輸入額と総輸入額に占める割合(xls/xlsx形式:53KB)

(出典)
財務省「日本貿易統計」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成

2.非化石エネルギーの動向

(1)原子力

①原子力発電の現状

原子力は、エネルギー資源に乏しい我が国にとって、技術で獲得できる事実上の国産エネルギーとして、1954年度以降、各電気事業者による原子力発電所の建設が相次いで行われ、2011年2月末時点で、日本国内では、54基の商業用原子力発電所が運転されていました。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後の同発電所1 ~ 6号機の廃止に伴い、原子力発電所数は48基となりました。2015年4月には、民間事業者が適切かつ円滑な廃炉判断を行うことができるよう、政府として財務・会計上の措置を講じたことを踏まえ、高経年炉7基のうち5基(日本原子力発電敦賀発電所1号機、関西電力美浜発電所1、2号機、中国電力島根原子力発電所1号機、九州電力玄海原子力発電所1号機)について、各事業者が廃炉の判断を行い、2015年4月に運転を終了しました。

我が国は、米国、フランスに次ぎ、世界で3番目の設備能力を有しており(2015年3月現在の原子力発電設備容量)、ロシア、韓国、中国がこれに続いています(第213-2-1)。

【第213-2-1】世界の原子力発電設備容量(2015年3月現在)

213-2-1

【第213-2-1】世界の原子力発電設備容量(2015年3月現在)(xls/xlsx形式:50KB)

(出典)
IAEA-PRIS資料を基に作成

東日本大震災の影響により原子力発電所が順次停止し、2012年5月に北海道電力泊発電所3号機が定期検査のため停止したことで、1970年以来、42年ぶりに国内全ての原子力発電所が発電していない状態となりました。その後、2012年7月から2013年9月にかけて、関西電力大飯発電所3・4号機が稼働しましたが、2015年5月現在、国内の全ての原子力発電所が停止しています。 原子力発電電力の電気事業者発電電力量に占めるシェアは、2010年度に28.6%でしたが、2011年度に10.7%、2012年度に1.7%となり、2013年度に1.0%となっています。また、原子力の設備利用率は、2010年度は67.3%でしたが、2013年度には2.3%に低下しています(第213-2-3)。

原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会が新規制基準(2013年7月8日施行)に基づいて判断することとなっており、2015年5月現在、15原発24基が新規制基準への適合性審査を申請中です。原子力規制委員会は2014年9月に九州電力川内原子力発電所1・2号機について、2015年2月には関西電力高浜発電所3・4号機について、新規制基準へ適合していることを確認し、原子炉設置変更許可を行いました。その後、九州電力川内原子力発電所1・2号機については、工事計画認可および保安規定変更認可も行いました。さらに、原子力規制委員会は、2015年5月に四国電力伊方発電所3号機について、新規制基準に適合している旨の審査書案を公表しました。引き続き、同委員会により、法令上の審査が進められます。

【第213-2-3】世界の原子力発電設備利用率の推移

213-2-3

(注)
日本は年度
(出典)
原子力安全基盤機構「原子力施設運転管理年報 平成25年版」、IAEA-PRIS(Power Reactor Information System)データ、資源エネルギー庁「電源開発の概要」を基に作成

【第213-2-4】BWRとPWR

213-2-4

我が国で主として採用されている原子炉は、軽水炉と呼ばれるものであり、軽水21を減速材・冷却材22に兼用し、燃料には低濃縮ウランを用いるものです。軽水炉は、世界の原子力発電の中心となっており、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類に分類されます。このうち、BWRは原子炉の中で蒸気を発生させ、それにより直接タービンを回す方式であり、PWRは原子炉で発生した高温高圧の水を蒸気発生器に送り、そこで蒸気を作ってタービンを回す方式です(第213-2-4)。

2015年3月現在の日本国内のBWRとPWRはそれぞれ24基、その他の形式の原子炉としては、日本原子力研究開発機構(JAEA)の「もんじゅ」や、大学やJAEAが所有する「常陽」などの試験研究用原子炉などがあります。なお、「もんじゅ」は、2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」の中で、「廃棄物の減容・有害度の低減や核不拡散関連技術などの向上のための国際的な研究拠点と位置付ける」と明記されています。

②核燃料サイクル

核燃料サイクルは、原子力発電所から出る使用済燃料を再処理し、未使用のウランや新たに生まれたプルトニウムなどの有用資源を回収して再び燃料として利用するものです。

我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウムなどを有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としています。

(ア)使用済燃料問題の解決に向けた取組

原子力利用に伴い確実に発生する使用済燃料については、将来世代に負担を先送りしないよう、対策を総合的に推進します。高レベル放射性廃棄物については、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進めます。また、最終処分に至るまでの間、使用済燃料を安全に管理するため、使用済燃料の貯蔵能力の拡大へ向けた取組が必要です。あわせて、将来の幅広い選択肢を確保するため、放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの技術開発を進めます。

(ⅰ)放射性廃棄物の処分

原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物の処分については、発生者責任に基づき、原子力事業者などが処分に向けた取組を進めることとしています。放射能レベルに応じて、処分する深さや放射性物質の漏出を抑制するためのバリアの違いにより、人工構造物を設けない浅地中埋設処分(浅地中トレンチ処分)、コンクリートピットを設けた浅地中への処分(浅地中ピット処分)、一般的な地下利用に対して十分余裕をもった深度(地下50 ~ 100m)への処分(余裕深度処分)、地下300mより深い地層中への処分(地層処分)のいずれかの方法により処分することとしています(第213-2-5)。

【第213-2-5】放射性廃棄物の種類と概要

213-2-5

各原子力施設の運転及び解体により発生する低レベル放射性廃棄物は、2014年3月末、全国の原子力発電所内の貯蔵施設全体で容量200Lドラム缶に換算して約67万本分の貯蔵となりました。また、日本原燃(株)は、青森県六ヶ所村において1992年12月に低レベル放射性廃棄物埋設施設の操業を開始し、2015年3月末現在まで、約27万本のドラム缶を埋設処理してきました。加えて、日本原子力研究所(現(独)日本原子力研究開発機構)動力試験炉(JPDR)の操業・解体に伴い発生したものについては、茨城県東海村の同機構敷地内の廃棄物埋設実地試験施設において、約1,670トンの浅地中トレンチ処分が行われています。

再処理施設やMOX燃料加工施設から発生した低レベル放射性廃棄物である長半減期低発熱放射性廃棄物(TRU廃棄物)は、2014年3月末現在で、(独)日本原子力研究開発機構と日本原燃(株)において、200Lドラム缶に換算して約14.7万本の廃棄物が保管されました。また、ウラン濃縮施設やウラン燃料成型加工施設から発生した低レベル放射性廃棄物であるウラン廃棄物については、2014年3月末現在で、民間のウラン燃料加工業者に容量200Lドラム缶に換算して約4.4万本、日本原燃(株)に約0.7万本、(独)日本原子力研究開発機構に約5.0万本、合計で約10万本が保管されました。なお、原子力発電所などから発生する低レベル放射性廃棄物の余裕深度処分やウラン廃棄物の処分については、安全規制の策定に向けた検討が進められてきています。

一方、発電によって発生した使用済燃料は、高レベル放射性廃棄物としてガラス固化され、冷却のため30 ~ 50年間程度貯蔵した後、地下300mより深い地層に処分されます。

国内では、(独)日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所の再処理施設において、国外では、フランス、英国の再処理施設において再処理が行われてきました。使用済燃料の再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体として、2015年3月末現在で、国内で処理されたもの、海外から返還されたものを合わせて2,167本が国内(青森県六ヶ所村、茨城県東海村)で貯蔵されてきました。高レベル放射性廃棄物は、同月末までの原子力発電の運転により生じた使用済燃料を全て再処理しガラス固化体にした本数に換算すると、約24,800本相当が発生しました。この高レベル放射性廃棄物及び一部のTRU廃棄物については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成12年法律第117号)」に基づき、地層処分を行うべく、原子力発電環境整備機構(NUMO)が、処分地選定に向け調査を受け入れる自治体を公募していましたが、実際に調査を実施したケースはありませんでした。このため、経済産業省は、2013年から最終処分政策の見直しに向けた検討を行い、2015年5月、最終処分法に基づく基本方針を改定(閣議決定)し、国から科学的有望地を提示するなど、国が前面に立って取組を進めることとしました。

(ⅱ)使用済燃料の中間貯蔵

使用済燃料の中間貯蔵とは、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的調整を図るための措置として中間的に貯蔵・管理することをいいます。

我が国では、青森県むつ市において、リサイクル燃料貯蔵(株)の中間貯蔵施設が2010年8月に貯蔵建屋の建設工事を着工し、2013年8月に完成しました。

2014年1月、リサイクル燃料貯蔵(株)は、新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請し、2016年10月の事業開始を目指しています。

(ⅲ)放射性廃棄物の減容化・有害度低減に向けた取組

原子力利用に伴い発生する放射性廃棄物の問題は、世界共通の課題であり、将来世代に負担を先送りしないよう、その対策を着実に進めることが不可欠です。

高速炉は、燃料の増殖が可能であるだけでなく、マイナーアクチニドなどの長寿命核種を燃焼させることができるなど、放射性廃棄物の減容化・有害度の低減を可能とする有用な技術であり、フランス、ロシア、中国などの諸外国においては、その開発が進められています。

このような国際動向のもと、二国間の国際協力として、2014年5月の安倍総理大臣訪仏の際に、日本側の経済産業省と文部科学省、仏側の原子力・代替エネルギー庁が、 仏国のナトリウム冷却高速炉の実証炉開発計画である第4世代ナトリウム冷却高速炉実証炉(ASTRID)計画及びナトリウム冷却炉の開発に関する協力取決めに署名し、日仏間の研究開発協力を開始しました。また、多国間協力としては、高い安全性を実現することをねらいとして、国際的な枠組(第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF))において、ナトリウム冷却高速炉に関する安全設計の基準の構築を進めると同時に、その基準を国際的な標準とするべく専門家間での議論を実施しています。

(イ)核燃料サイクルの工程(プルサーマルの場合)

原子力発電の燃料となるウランは、最初、ウラン鉱石の形で鉱山から採掘されます。ウランは、様々な工程(製錬→転換→濃縮→再転換→成型加工)を経て燃料集合体に加工された後、原子炉に装荷され発電を行います。発電後には、使用済燃料を再処理することにより、有用資源であるプルトニウムなどを回収します。

(ⅰ)製錬

ウラン鉱山からウラン鉱石を採掘して、ウラン鉱石を化学処理してウラン(イエローケーキ、U3O8)を取り出す工程です。我が国では、ウラン鉱石をカナダ、オーストラリア、カザフスタンなどから調達してきました。現在、国内ではこの工程は行われていません。

(ⅱ)転換

イエローケーキを次の濃縮工程のためにガス状(UF6)にする工程であり、我が国ではこの工程を海外にある転換会社に委託してきました。

(ⅲ)濃縮

ウラン濃縮は、核分裂性物質であるウラン235の濃縮度を、天然の状態の約0.7%から軽水炉による原子力発電に適した3 ~ 5%に高めることをいい、我が国では、日本原燃(株)が青森県六ヶ所村のウラン濃縮施設において遠心分離法という濃縮技術を採用しました。

日本原燃(株) は、1992年3月から年間150トンSWUの規模で操業を開始し、1998年末には年間1,050トンSWU規模で操業を行っていましたが、2010年末に操業を停止し、2011年末に新型遠心分離機への置き換え工事を開始しました。2000年度から新型遠心分離機の開発を行い、遠心分離機を順次新型遠心分離機に置き換えており、初期導入の前半分は2012年3月に年間37.5トンSWU規模で生産運転を開始しました。後半分は2013年5月から年間37.5トンSWU規模で生産運転を開始しました。

2014年1月、日本原燃(株)はウラン濃縮工場の新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請しました。

(ⅳ)再転換

成型加工工程のためにUF6をパウダー状のUO2にする工程であり、我が国では、三菱原子燃料(株)(茨城県東海村)のみが再転換事業を行っています。なお、それ以外の分については、海外の再転換工場に委託してきました。

(ⅴ)成型加工

UO2粉末を焼き固めたペレットにした後、燃料集合体に加工する工程で、我が国ではこの工程の大半を国内の成型加工工場で行ってきました。

(ⅵ)再処理

使用済燃料の再処理とは、原子力発電所で発生した使用済燃料から、まだ燃料として使うことのできるウランと新たに生成されたプルトニウムを取り

【第213-2-6】核燃料サイクル

213-2-6

(出典)
電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集(2012年版)」を基に作成

出すことをいいます。青森県六ヶ所村に建設中の日本原燃(株)再処理事業所再処理施設(年間最大処理能力:800トン)では、2006年3月から実際の使用済燃料を用いた最終試験であるアクティブ試験を実施してきました。

使用済燃料からプルトニウム・ウランを抽出する工程などの試験は既に完了しており、高レベル放射性廃液をガラス固化する工程の確立に時間を要していましたが、2012年6月から試験を再開し、安定運転に向けた最終段階の試験を実施しました。最大処理能力での性能確認などを実施し、2013年5月に事業者が行うすべての試験を終了しました。

2014年1月、日本原燃(株)は、六ヶ所再処理工場の新規制基準(2013年12月施行)への適合性審査を原子力規制委員会に申請し、2016年3月のしゅん工を目指しています。

(ⅶ)MOX燃料加工

MOX燃料加工は、再処理工場で回収されたプルトニウムをウランと混ぜて、プルサーマルに使用される混合酸化物(MOX)燃料に加工することをいいます。我が国では、日本原燃(株)が青森県六ヶ所村においてMOX燃料加工工場を2016年3月にしゅん工すべく2010年10月に工事着工しました。その後東日本大震災の影響により一時中断していましたが、2012年4月から建設を再開しました。

2014年1月、日本原燃(株)はMOX燃料加工工場の新規制基準(2013年12月施行)への適合性確認を原子力規制委員会に申請し、2017年10月のしゅん工を目指しています。

(ⅷ)プルトニウムの適切な管理と利用

我が国は、プルトニウム利用の透明性向上のため、1994年より毎年、内閣府が「我が国のプルトニウム管理状況」を公表しています。また、1998年からは国際プルトニウム指針に基づき、国際原子力機関(IAEA)を通じて、我が国のプルトニウム保有量を公表しています。

また、回収したプルトニウムを既存の原子力発電所(軽水炉)で利用するプルサーマルについて、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」(2003年8月、原子力委員会決定)を受け、更なるプルトニウム利用の透明性の向上を目的として、電気事業者などは2006年より、「プルトニウム利用計画」を公表しており、原子力委員会がその利用目的の妥当性の確認を行ってきました。東日本大震災前の2010年9月17日に電気事業者が示したプルトニウム利用計画では、2015年度までに16 ~ 18基の軽水炉でプルサーマルを順次実施することとしていました。その後、電気事業者は、2013年3月26日に、今後、六ヶ所再処理工場がしゅん工し、新たなプルトニウムの回収が開始されるまでに、プルトニウム利用計画を策定・公表することを示しました。

さらに、2014年3月、日本と米国は日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置から高濃縮ウランと分離プルトニウムを全量撤去し処分することで合意し、両国の声明により、「この取組により何百キロもの核物質が削減されることになり、世界にある高濃縮ウランと分離プルトニウムを最小限まで減らすという共通の目標を更に推進することになる」と説明しました。また、同月オランダ・ハーグで開催された第3回核セキュリティ・サミットにおいて、安倍総理は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持する旨表明するとともに、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮すること、プルトニウムの適切な管理を引き続き徹底することを表明しました。

③原子力施設の廃止措置

原子力発電所の廃止措置について、我が国では、「安全貯蔵-解体撤去」方式を標準的な工程として採用しました。運転を終えた原子力発電所は、営業運転を終了すると国の認可を受けて廃止措置が開始されます。廃止措置では、「洗う」、「待つ」、「解体する」の3ステップを基本としています。燃料搬出後、まず配管内などに付着している放射性物質を除去し(系統除染:「洗う」)、その後5 ~ 10年ほど放射能の減衰を待つため安全に貯蔵し(安全貯蔵:「待つ」)、最終的に解体します(解体撤去:「解体する」)。解体撤去が完了した跡地は、地域社会と協調をとりながら、原子力発電所用地として引き続き有効に利用することを基本的な方針としました(第213-2-7)。

【第213-2-7】原子力発電所廃止措置の流れ

213-2-7

1950年代に始まった我が国の原子力利用から既に50年以上が経過し、一部の原子力施設では施設の廃止や解体が行われ、所要の安全確保の実績が積み上げられてきました。一方、これらの経験を踏まえ、安全確保のための制度上の手続面の明確化や、原子力施設の廃止や解体に伴って発生する様々な種類の廃棄物などから、放射性物質として管理する必要のあるものと、汚染のレベルが自然界の放射性物質の放射線レベルと比べても極めて低く、管理すべき放射性物質として扱う必要のないものを区分するための制度(クリアランス制度)の創設が必要とされていました。こうした状況を踏まえ、2005年5月に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」を改正して、廃止措置及びクリアランス制度などの導入が行われました。

原子力発電所の廃止措置に伴い発生する解体廃棄物の総量は、110万kW級の軽水炉の場合、約50 ~ 54万トンとなり、これらの廃棄物を適正に処分していくことが重要です。

運転中・解体中に発生する廃棄物の中には、安全上「放射性物質として扱う必要のないもの」も含まれています。これらは、放射能を測定し安全であることを確認し、国のチェックを受けた後、再利用できるものはリサイクルし、できないものは産業廃棄物として処分することとしています。この制度をクリアランス制度といいます。国によるチェックが行われた後、放射性廃棄物として適切に処理処分する必要がある低レベル放射性廃棄物の量は、1万トン前後(総廃棄物重量の3%以下)と試算されました。この中には炉内構造物などの「放射能レベルの比較的高いもの」が200トン前後(総廃棄物処分の0.1%以下)、また、堀削した土壌中への埋設処分(浅地中トレンチ処分)が可能な「放射能レベルが極めて低いもの」が1万トン以下(1 ~ 2%程度)含まれていると試算されました。

我が国では1998年に日本原子力発電東海発電所が営業運転を停止し、廃止措置段階に入っており、試験研究炉では、日本原子力研究所(現在の(独)日本原子力研究開発機構)の動力試験炉(JPDR)の解体撤去が、1996年3月に計画どおり完了し、2002年10月に廃止届が届けられました。また、研究開発段階にある発電用原子炉では、2003年に運転を終了した(独)日本原子力研究開発機構の新型転換炉ふげん発電所の廃止措置計画の認可が2008年2月に行われました。同発電所は、原子炉廃止措置研究開発センターに改組され、廃止措置のための技術開発を進めてきました。

2009年1月、中部電力(株)は浜岡原子力発電所1号機と2号機を廃止し、11月に廃止措置計画の認可が行われました。また、2011年3月に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後、同発電所1 ~ 6号機が廃止となっています。さらに、2015年4月には、日本原子力発電敦賀発電所1号機、関西電力美浜発電所1・2号機、中国電力島根原子力発電所1号機、九州電力玄海原子力発電所1号機の5基について、各事業者が廃炉の判断を行い、2015年4月に運転を終了しました。

(2)再生可能エネルギー

①全般

再生可能エネルギーとは、化石燃料以外のエネルギー源のうち永続的に利用することができるものを利用したエネルギーであり、代表的な再生可能エネルギー源としては太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが挙げられます。

我が国の再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取組は、石油代替エネルギー法に基づく石油代替政策に端を発しました。1970年代の二度の石油ショックを契機に、我が国では石油から石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーなどの石油代替エネルギーへのシフトを進めてきました。

法制度については1980年に、「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(昭和55年5月30日法律71号)(石油代替エネルギー法)が制定されました。

石油代替エネルギーの技術開発については、1974年に通商産業省工業技術院(現・独立行政法人産業技術総合研究所)において「サンシャイン計画」を開始しました。この計画は、将来的にエネルギー需要の相当部分を賄い得るエネルギーの供給を目標として、太陽、地熱、石炭、水素エネルギーの4つの石油代替エネルギー技術について重点的に研究開発を進めるものでした。

また、1980年に設立された新エネルギー総合開発機構(現・独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))において石炭液化技術開発、大規模深部地熱開発のための探査・掘削技術開発、太陽光発電技術開発などが重点プロジェクトとして推進されました。

1993年、「サンシャイン計画」は、「ムーンライト計画」と統合され、「ニューサンシャイン計画」として再スタートすることとなりました。「ニューサンシャイン計画」は、従来独立して推進されていた新エネルギー、省エネルギー及び地球環境の三分野に関する技術開発を総合的に推進するものでしたが、2001年の中央省庁再編に伴い、「ニューサンシャイン計画」の研究開発テーマは、以後「研究開発プログラム方式」によって実施されることとなりました。

また、国内外のエネルギーを巡る経済的・社会的環境の変化に伴い、石油代替エネルギー供給目標の達成のために、石油代替エネルギーのうち、経済性における制約から普及が十分でない、新エネルギーの普及促進を目的として、1997年に「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」(平成9年4月18日法律第37号)(新エネルギー法)が制定されました。新エネルギー法は、国や地方公共団体、事業者、国民などの各主体の役割を明確化する基本方針の策定や新エネルギー利用などを行う事業者に対する財政面の支援措置などを定めたものです。

こうした取組の結果、一次エネルギー国内供給に占める石油の割合は、1973年度の75.5%から、2013年度には42.7%にまで低下しました。しかし、天然ガス、石炭なども含めた化石燃料全体の依存度は、1998年度には80%となったものの、東日本大震災後の火力発電の増加により2013年度に92.1%まで上昇しました。

一方、近年の世界のエネルギー需要の急増などを背景に、今後は従来どおりの質・量の化石燃料を確保していくことが困難となることが懸念されています。このような事態に対応し、また、低炭素社会の実現にも寄与すべく、2009年7月に、石油への依存の脱却を図るというこれまでの石油代替施策の抜本的な見直しが行われました。この結果、研究開発や導入を促進する対象を「石油代替エネルギー」から、再生可能エネルギーや原子力などを対象とした「非化石エネルギー」とすることを骨子とした石油代替エネルギー法の改正が行われ、同法の題名も「非化石エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」に改められました。また併せて「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年7月8日法律72号)(エネルギー供給構造高度化法)」が制定され、エネルギー供給事業者に対して再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーの利用を一層促進する枠組みが構築されました。

また、2003年からは、「電気事業者による新エネルギー電気等の利用に関する特別措置法」に基づき、RPS制度23を開始し、電気分野における再生可能エネルギーの導入拡大を進めてきました。さらに、2012年7月からは、このRPS制度に替えて、固定価格買取制度(FIT)を導入し、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大を進めています。固定価格買取制度の導入により、再生可能エネルギーに対する投資回収の見込みが安定化したこともあり、2015年3月までに再生可能エネルギーの導入量は制度開始前と比較して約9割増加しています。

②太陽光発電

太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により直接電気に変換する発電方法です。日本における導入量は、近年着実に伸びており、2013年度末累積で1,766万kWに達しました。企業による技術開発や、国内で堅調に太陽光発電の導入が進んだことにより、太陽光発電設備のコストも着実に低下しています(第213-2-8)。

太陽電池の国内出荷量は、政府の住宅用太陽光発電設備に対する補助制度が一時打ち切られた2005年度をピークに伸び悩んでいましたが、2009年11月に、太陽光発電の余剰電力買取制度24が開始されたことや、2009年1月に補助制度が再度導入され、地方自治体による独自の補助制度も合わせると設置費用が低減したことを受けて、2009年度から大幅な増加基調に転じています。また、2012年に開始した固定価格買取制度の効果により、非住宅分野での太陽光発電の導入が急拡大しており、同月以降の太陽電池の国内出荷量も急増しています(第213-2-9)。

【第213-2-8】太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移

213-2-8

【第213-2-8】太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移(xls/xlsx形式:63KB)

(出典)
経済産業省資源エネルギー庁資料及び太陽光発電普及拡大センター資料を基に作成

【第213-2-9】太陽電池の国内出荷量の推移

213-2-9

【第213-2-9】太陽電池の国内出荷量の推移(xls/xlsx形式:43KB)

(出典)
太陽光発電協会資料を基に作成

世界的に見ると、日本は2004年末まで世界最大の太陽光発電導入国でしたが、ドイツの導入量が急速に増加した結果、2005年にはドイツに次いで世界第2位となりました。IEAPVPSによると、2013年末時点では、日本はドイツ、中国、イタリアに次ぐ世界第4位の累積導入量となっています25(第213-2-10)。また、日本は太陽電池の生産量でも2007年まで世界でトップの地位にあり、日本企業が世界の太陽電池(セル)生産量に占める割合は24.6%でした。しかし、中国と台湾の企業が生産を拡大した結果、2013年時点では、生産量としては着実に増加しているものの、世界第3位となっています。日本企業が世界の太陽電池(モジュール)生産量に占める割合は2013年に6.1%となりました。第1位の中国は64%、第2位のマレーシアは6.3%を占めています(第213-2-11)。日本における太陽電池の国内出荷量に占める国内生産品の割合を見ると、2008年度まではほぼ100%でしたが、国内出荷量が大幅な増加基調に転じた2009年度から低下しており、2014年度(12月まで)は38%となりました(第213-2-12)。

【第213-2-10】世界の累積太陽光発電設備容量(2013年)

213-2-10

【第213-2-10】世界の累積太陽光発電設備容量(2013年)(xls/xlsx形式:48KB)

(出典)
IEA「Trends in Photovoltaic Applications(2014)」を基に作成

【第213-2-11】世界の太陽電池(モジュール)生産量(2013年)

213-2-11

【第213-2-11】世界の太陽電池(モジュール)生産量(2013年)(xls/xlsx形式:50KB)

(出典)
GTM RESEARCH「PVNews, Volume33, Number 5(2014)」を基に作成

【第213-2-12】太陽電池国内出荷量の生産地構成の推移

213-2-12

【第213-2-12】太陽電池国内出荷量の生産地構成の推移(xls/xlsx形式:18KB)

(出典)
太陽光発電協会資料を基に作成

一方で、太陽光発電には他電源と比較して導入のためのコストが高いという課題や、天候や日照条件などにより出力が不安定であるという課題も残されています(第213-2-13)。今後の更なる導入拡大のためには、低コストに向けた技術開発や系統安定化対策を進めることが重要です。

【第213-2-13】太陽光発電の天候別発電電力量の推移

213-2-13

(出典)
資源エネルギー庁調べ

③太陽熱利用

太陽エネルギーによる熱利用は、古くは太陽光を室内に取り入れることから始まっていますが、積極的に利用され始めたのは、太陽熱を集めて温水を作る温水器の登場からです。太陽熱利用機器はエネルギー変換効率が高く、新エネルギーの中でも設備費用が比較的安価で費用対効果の面でも有効であり、現在までの技術開発により、用途も給湯に加え暖房や冷房にまで広げた高性能なソーラーシステムが開発されました。

【第213-2-14】太陽熱温水器(ソーラーシステムを含む)の新規設置台数

213-2-14

【第213-2-14】太陽熱温水器(ソーラーシステムを含む)の新規設置台数(xls/xlsx形式:33KB)

(出典)
経済産業省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計年報」、ソーラーシステム振興協会自主統計を基に作成

太陽熱利用機器の普及は、1979年の第二次石油ショックを経て、1990年代前半にピークを迎えましたが、1990年代の石油価格の低位安定、円高方向への為替の変化、競合するほかの製品の台頭などを背景に新規設置台数が年々減少してきました(第213-2-14)。

【第213-2-15】日本における風力発電導入の推移

213-2-15

【第213-2-15】日本における風力発電導入の推移(xls/xlsx形式:40KB)

(出典)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ホームページ

【第213-2-16】風力発電総設備容量に占める各地域別の割合(2013年度末)

213-2-16

【第213-2-16】風力発電総設備容量に占める各地域別の割合(2013年度末)(xls/xlsx形式:36KB)

(出典)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ホームページ

④風力発電

風力発電は風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こす発電方法です。

1997年度に開始された設備導入支援を始め、1998年度に行われた電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン26の整備や2003年度のRPS法の施行を通じて着実に導入が進み、2012年に開始した固定価格買取制度により、今後更に風力発電の導入が拡大することが見込まれます。

2013年度末時点での導入量は、1,934基、出力約271万kW(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)調べ:設備容量10kW以上の施設で稼働中のもの)(第213-2-15、第213-2-16)であるとともに、環境アセスメント手続中のものが80件存在しており、今後こうした案件が順次運転開始していくことが見込まれています。

他方、日本の風力発電導入量は、2013年12月末時点で世界第18位であり、(第213-2-17)これは、日本は諸外国に比べて平地が少なく地形も複雑なこと、電力会社の系統に余力がない場合があること等の理由から、風力発電の設置が進みにくいといった事情があります。また、出力の不安定な風力発電の大規模導入が電力系統に及ぼす影響を緩和すべく、出力の安定化や系統の強化27が課題となっています。

また再生可能エネルギーの中でも相対的にコストの低い風力発電の導入を推進するため、電力会社の系統受入容量の拡大に向けた対策や、2012年より一定規模以上の風力発電に適用されることとなった環境影響評価の迅速化・簡素化に取り組んでいます。

【第213-2-17】風力発電導入量の国際比較(2014年末時点)

213-2-17

【第213-2-17】風力発電導入量の国際比較(2014年末時点)(xls/xlsx形式:94KB)

(出典)
Global Wind Energy Council「Global Wind Statistics 2014(2015)」を基に作成

⑤バイオマスエネルギー

バイオマス(生物起源)エネルギーとは、化石資源を除く、動植物に由来する有機物で、エネルギー源として利用可能なものを指します。特に植物由来のバイオマスは、その生育過程で大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長するため、これらを燃焼させたとしても追加的な二酸化炭素は排出されないことから、「カーボンニュートラル」なエネルギーとされています。

バイオマスエネルギーは、原料の性状や取扱形態などから廃棄物系と未利用系に大別されます。利用方法については、直接燃焼のほか、エタノール発酵などの生物化学的変換、炭化などの熱化学的変換による燃料化などがあります(第213-2-18)。

我が国において2013年度に利用されたバイオマスエネルギーは原油に換算すると1,216万klであり、一次エネルギー国内供給量54,233万klに占める割合は2.2%でした。ここで計上されたバイオマスエネルギーは廃棄物の焼却によるエネルギーが主であり、製紙業などのパルプ化工程で排出される黒液や製材工程から排出される木質廃材、農林・畜産業の過程で排出される木くずや農作物残さ、家庭や事務所などから出るゴミなどを燃焼させることによって得られる電力・熱を利用するものなどがあります。特に黒液や廃材などを直接燃焼させる形態を中心に導入が進展してきました。

生物化学的変換のうちメタン発酵については、家畜排せつ物や食品廃棄物からメタンガスを生成する技術は確立されているものの、普及に向けては、原料の収集・輸送やメタン発酵後の残さ処理などが課題となっています。一方、下水処理場における収集が容易な下水汚泥は、一部の大規模な下水処理場を中心に、メタンを生成することでエネルギー利用を図ってきました。

【第213-2-18】バイオマスの分類及び主要なエネルギー利用形態

213-2-18

(出典)
資源エネルギー庁「新エネルギー導入ガイド 企業のためのAtoZ バイオマス導入」

バイオマスエネルギーを活用した発電については、2012年に開始した固定価格買取制度により、導入が進んでいます。また、2015年度より新たに2,000kW未満の未利用木質バイオマス発電について別個の買取区分を設けることとしており、より小さい事業規模でも木質バイオマス発電に取り組めるようになり、更なる木質バイオマスの利用推進につながることが期待されます。他方で、いずれの類型・原料種についても、原料バイオマスを長期的かつ安定的に確保することが共通の課題です。

また、輸送用燃料であるバイオエタノールやバイオディーゼルは、生物化学的変換により、その大部分を製造しています。これまで一般的にバイオエタノールは、サトウキビなどの糖質やトウモロコシなどのでん粉質等で製造されてきましたが、我が国としては食糧競合を避けるため、稲わらや木材などのセルロース系バイオマスを原料として商業的に生産できるよう研究開発を推進しています。利用方式としては、ガソリンに直接混合する方式と、添加剤(ETBE28)として利用する方式の2とおりがあります。一方、バイオディーゼルは、ナタネやパームなどの植物油をメチルエステル化して、そのまま若しくは軽油に混合した状態でディーゼル車の燃料として利用され、欧米等では大規模な原料栽培から商業的に取り組まれていますが、我が国では、使用済みの植物油(廃食用油等)を回収・再利用する形でのバイオディーゼル製造が主流です。

また、近年では、新たなバイオ燃料製造技術として、炭化水素を生産する微細藻類を活用した燃料製造技術や、これまで燃料化が難しかった樹皮などを活用する熱化学的変換技術、いわゆるBTL(Biomassto liquid)に関する技術開発が活発に行われており、軽油代替・ジェット燃料代替の製造技術として早期の実用化が期待されています。

⑥水力

水力発電は、高所から流れ落ちる河川などの水を利用して落差を作り、水車を回し発電するものです。利用面から流れ込み式(水路式)、調整池式、貯水池式、揚水式に分けられ、揚水式以外を特に一般水力と呼んでいます。揚水式は、夜間などに下池の水を上池に揚げ、必要時に放流して発電するため、他とは区別されています。

2013年度末の時点で、我が国の一般水力発電所は、既存発電所数が計1,946、新規建設中のものが39に上りました。また、未開発地点は2,703地点(既開発・工事中の約1.4倍)であり、その出力の合計は1,206万kW(既開発・工事中の約2分の1)に上りました。しかし、未開発の一般水力の平均発電能力(包蔵水力)は4,460kWであり、既開発や工事中の平均出力よりもかなり小さなものとなっています。開発地点の小規模化が進んだことに加えて、開発地点の奥地化も進んでいることから、発電原価が他の電源と比べて割高となり、開発の大きな阻害要因となっています。今後は、農業用水などを活用した小水力発電のポテンシャルを活かしていくことが重要になります。小水力発電は、地域におけるエネルギーの地産地消の取組を推進していくことにもつながります。2012年に開始した固定価格買取制度の効果により、2014年12月時点で4.4万kWが新たに運転開始しており、今後も開発が進むことが見込まれます。

なお、一般水力及び揚水を含む全水力発電の設備容量は2013年度末で4,893万kWに達しており、年間発電電力量は849億kWhとなりました(第213-2-19)。

【第213-2-19】日本の水力発電設備容量及び発電電力量の推移

213-2-19

【第213-2-19】日本の水力発電設備容量及び発電電力量の推移(xls/xlsx形式:42KB)

(出典)
電気事業連合会「電気事業便覧(平成26年版)」を基に作成

また、国際的に見ると、水力発電導入量の日本のシェアは5%程度となりました(第213-2-20)。

【第213-2-20】水力発電導入量の国際比較(2012年)

213-2-20

【第213-2-20】水力発電導入量の国際比較(2012年)(xls/xlsx形式:57KB)

(注)
世界計、カナダ、インド及びトルコは2011年の値。
(出典)
海外電力調査会「海外電気事業統計2014年版」を基に作成

【第213-2-21】主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量

213-2-21

(出典)
JICA作成資料(平成22年)及び産業総合技術研究所作成資料(平成20年)等より抜粋して作成
After R. Bertila(2015) Geothermal Power Generation in the World 2010-2014 Update Report, roceedings World Geothermal Congress 15,Melbourne, Australia, April 2015

⑦地熱

地熱発電は、地表から地下深部に浸透した雨水などが地熱によって加熱され、高温の熱水として貯えられている地熱貯留層から、坑井により地上に熱水・蒸気を取り出し、タービンを回し電気を起こすシステムです。低廉で安定的な発電が可能なベースロード電源である地熱発電は、世界第3位の資源量(2,347万kW)を有する電源として注目を集めています。

【第213-2-22】地熱発電開発の進捗状況

213-2-22

(出典)
経済産業省資源エネルギー庁作成

地熱発電の導入にあたっては、温泉事業者をはじめとする地域の方々や、開発から発電所の稼働に至るまでに10年を超える期間を要するといった課題が存在しています。

こうした課題を解決するために、特に近年、様々な支援措置が講じられています。例えば、地域の理解促進のための支援として、①地熱利用によるハウス栽培事業や道路の融雪事業のほか、②地域の方々が地熱発電に対する理解を深めるための専門家を呼んだセミナーや見学会を実施する事業など、地熱を有効利用して地域の地熱利用促進に資する事業を支援しています。

また、開発期間の短縮のため、通常は3、4年程度かかるとされる環境アセスメントの手続期間を半減させることを目標に、国の審査期間を短縮するとともに、2014年度から、実地での環境影響調査を前倒しで進める場合の課題の特定・解決を図るための実証事業を実施しています。2012年7月に開始された固定価格買取制度による支援もあり、地熱発電の開発機運はますます高まっています。実際に、開発の初期段階で必要となる地熱資源量の調査が、今年度23件行われており(うち、2014年度からの新規事業は10件)、着実に地熱開発が進んでいます。このほかにも、温泉井などを活用した小規模地熱発電(バイナリー発電)についても、固定価格買取制度の開始により、全国の温泉地などで開発の計画が複数進行しています。

また、国際的に見ると、地熱発電導入量の日本のシェアは5%程度となっており、アイスランドに次いで世界第8位の規模となります(第213-2-23)。我が国の地熱発電プラントメーカーは、三菱日立パワーシステムズ、東芝、富士電機で世界シェアの約7割を占めており、日本メーカーが圧倒的な優位を誇っています(第213-2-24)。

⑧未利用エネルギー

「未利用エネルギー」とは、夏は大気よりも冷たく、冬は大気よりも暖かい河川水・下水などの温度差エネルギーや、工場などの排熱といった、今まで利用されていなかったエネルギーのことを意味します。

具体的な未利用エネルギーの種類としては、①生活排水や中・下水・下水処理水の熱、②清掃工場の排熱、③変電所の排熱、④河川水・海水・地下水の熱、⑤工場排熱、⑥地下鉄や地下街の冷暖房排熱、⑦雪氷熱、などがあります。

特に、雪氷熱利用については、古くから、北海道、東北地方、日本海沿岸部を中心とした降雪量の多い地域において、生活上の障害であった雪氷を夏季まで保存し、雪室や氷室として農産物などの冷蔵用に利用してきました。近年、地方自治体などが中心となった雪氷熱利用の取組が活発化しており、農作物保存用の農業用低温貯蔵施設、病院、老人介護保険施設、公共施設、集合住宅などの冷房用の冷熱源に利用されています。

また、清掃工場の排熱の利用や下水・河川水・海水・地下水の温度差エネルギー利用は、利用可能量が非常に多いことや、比較的に都心域の消費に近いところにあることなどから、今後更なる有効活用が期待される未利用エネルギーであり、エネルギー供給システムとして、環境政策、エネルギー政策、都市政策への貢献が期待されている地域熱供給を始めとしたエネルギーの面的利用と併せて、更に導入効果が発揮できるエネルギーです(第213-2-25)。

【第213-2-23】地熱発電導入量の国際比較(2012年5月時点)

213-2-23

【第213-2-23】地熱発電導入量の国際比較(2012年5月時点)(xls/xlsx形式:39KB)

(出典)
Geothermal Energy Association, Geothermal Basics: Q&Aを基に作成

【第213-2-24】地熱発電用タービンの世界シェア

213-2-24

【第213-2-24】地熱発電用タービンの世界シェア(xls/xlsx形式:15KB)

(出典)
Bertani, R., 2010,「Geothermal Power Generation in the World,2005-2010 Update Report」を基に作成

【第213-2-25】未利用エネルギーの活用概念

213-2-35

3.エネルギーの高度利用

(1)クリーンエネルギー自動車

クリーンエネルギー自動車には、燃料電池自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車、クリーンディーゼル自動車、天然ガス自動車、LPガス自動車などがあります。

我が国において、運輸部門のエネルギー消費の大半は、ガソリンと軽油の使用を前提とする自動車によるものであり、これを消費しない、あるいは使用を抑制するクリーンエネルギー自動車の導入は環境面への対応などの観点から非常に有効な手段です。クリーンエネルギー自動車は、その導入について価格面を中心に様々な課題がありますが、いわゆるエコカー補助金・減税などのインセンティブの効果などもあり、ハイブリッド自動車を中心に普及台数が拡大しています。さらに、2009年には電気自動車・プラグインハイブリッド車の市販が開始され、2014年12月には燃料電池自動車の市販も開始されました。

(2)燃料電池

燃料電池は、水素と空気中の酸素を化学的に反応させることによって直接電気を発生させる装置です。燃料電池は、①燃料となる水素を天然ガス・LPガス、石炭、石油などの化石燃料の改質、化学工業や製鉄、石油精製などの工業プロセスで生じる副生ガスとして得ることができ、さらには、水の電気分解など、多様な方法での製造が可能であること、②発電効率が30 ~ 60%と高く、さらにコージェネレーションシステム(熱電併給システム)として利用した場合には総合効率が90%以上とエネルギー効率が非常に高いシステムであること、③また、発電過程で二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物を排出せず、環境特性に優れるクリーンなエネルギーシステムであることから、エネルギー供給構造のぜい弱な我が国においては、エネルギーの安定供給の確保の観点のみならず、地球環境問題の観点からも極めて重要なエネルギーシステムであると考えられます。

【第213-3-1】燃料電池の原理

213-3-1

(出典)
新エネルギー財団ホームページ

政府は、「定置用燃料電池大規模実証事業」として、2005 〜 2008年度まで累計3,000台以上の家庭用燃料電池を全国各地の一般家庭に設置し、実使用条件下における実証を行いました。この実証を通じ、それまで課題とされていたエネルギー変換効率のみならず、機器の耐久性の向上を確認することができました。

この結果を受け、我が国では2009年5月に世界に先駆けて一般消費者向けとして家庭用燃料電池の市場での本格的な販売が開始され、2014年12月末時点までに約11.3万台が導入されています。

(3)ヒートポンプ

ヒートポンプは冷媒を強制的に膨張・蒸発、圧縮・凝縮させながら循環させ、熱交換を行うことにより水や空気などの低温の物体から熱を吸収し高温部へ汲み上げるシステムであり、従来のシステムに比べてエネルギー利用効率が非常に高いことが特長です。そのため、民生部門での二酸化炭素排出削減に大きく貢献することが期待されています。

高効率ヒートポンプの初期費用は、比較的高くなることから、市場化・普及までの期間短縮を図ることが必要です。また、欧米ではヒートポンプによる熱利用を再生可能エネルギーとして評価する動きもあります。エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行令では、「大気中の熱その他の自然界に存在する熱」が再生可能エネルギー源として位置付けられました。

日本における空気熱ヒートポンプは近年給湯用でも導入が拡大していますが、保有の大半が空調用となっています。なお、2012年時点では空調用で1億5,200万台程度が保有されていたものと推計されており、そのうち家庭用エアコンが96%程度で、業務用空調機が残りの4%を占めました。

(4)コージェネレーション

コージェネレーション(Cogeneration)とは熱と電気(または動力)を同時に供給するシステムです。消費地に近いところに発電施設を設置できるため、送電ロスが少なく、また、発電に伴う冷却水、排気ガスなどの排熱を有効に回収利用できるため、エネルギーを有効利用することができます。排熱を有効に利用した場合には、エネルギーの総合効率が最大で90%以上に達し、省エネルギーや二酸化炭素排出の削減に貢献できます。我が国におけるコージェネレーションの設備容量は、産業用を中心として着実に増加してきました(第213-3-3)。

民生用では病院、ホテルなどの熱・電力需要の大きい業種、産業用では、化学、食品などの熱多消費型の業種を中心に導入されてきました。また、近年では、家庭向けの家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの設置も盛んに行われています。

【第213-3-2】ヒートポンプの原理

213-3-2

(出典)
ヒートポンプ・蓄熱センターホームページ

【第213-3-3】日本におけるコージェネレーション設備容量の推移

213-3-3

【第213-3-3】日本におけるコージェネレーション設備容量の推移(xls/xlsx形式:20KB)

(注)
民生用には、戸別設置型の家庭用燃料電池やガスエンジンなどを含まない。
(出典)
コージェネレーション・エネルギー高度利用センター「コージェネ導入実績報告」を基に作成。

(5)廃棄物エネルギー

廃棄物エネルギーについては、再利用及び再生利用がされない廃棄物を廃棄物発電などの熱回収により有効利用したり、木質チップの製造など廃棄物から燃料を製造したりすることができるものです。再生可能エネルギーの1つであるバイオマス系の廃棄物エネルギーはもちろん、化石燃料に由来する廃棄物エネルギーについても有効活用などの意義があります。

廃棄物エネルギーの利用方法としては、廃棄物発電、廃棄物熱供給、廃棄物燃料製造が挙げられます。2013年度末時点の我が国の廃棄物発電(一般廃棄物に限る)の施設数は328で1,173に上る全一般廃棄物焼却施設の28.0%を占めました。また、発電設備容量は合計で177.0万kWに達しました。

11
ここでの原油自給率は、日本の海外における自主開発原油は含まれず、日本の原油供給のうち国内で産出された原油の割合を示します。
12
米国及び欧州OECDの中東依存度については、天然ガス液(Natural gas liquids)を含まない原油(Crude oil)のみの数値を示します。
(出典)IEA「 Oil Information(2014)」
13
B重油は船舶のディーゼルエンジン用などに使用されていましたが、C重油などに需要がシフトし、ほとんど生産されなくなっています。C重油は火力発電や船舶などの大型のディーゼルエンジン用などに使用されています。
14
Cost, Insurance and Freightの略で、引渡し地までの保険料、運送料を含む価格を意味しています。
15
原油輸入金額は、「原油」の輸入額の合計を示しています。
16
サウジアラムコ社の通告価格とはコントラクトプライス(CP)と呼ばれ、サウジアラムコ社が、原油価格やマーケット情報を参考にしながら総合的に判断し、決定します。日本を含めた極東地域に輸入されるLPガスについては、サウジアラビア以外の産ガス国も大多数がこのCPにリンクしています。
17
原料炭は、主に高炉製鉄用コークス製造のための原料として用いられています。
18
一般炭は、主に発電所用のボイラ燃料として用いられています。
19
無煙炭は、石炭の中でも最も炭化が進んだ石炭で、燃焼の際にほとんど煙を出さず、また、火力が強いという特徴があります。
20
1995年の電気事業法改正を受けて、共同火力及び公営電気事業は、卸電気事業から卸供給へ移行することとなりましたが、経過措置により2010年3月までは「みなし卸電気事業者」として位置付けられていました。
21
軽水とは普通の水のことを指し、軽水炉の減速材、冷却材などに用いられます。これに対し、重水素(水素原子に中性子が加わったもの)に酸素が結合したものが重水であり、重水炉に用いられます。
22
核分裂によって新しく発生する中性子は非常に高速であり、これを高速中性子と呼びます。このままでも核分裂を引き起こすことは可能ですが、この速度を遅くすると次の核分裂を引き起こしやすくなります。この速度の遅い中性子を熱中性子と呼び、高速中性子を減速し熱中性子にするものを減速材と呼びます。軽水炉では、熱中性子で核分裂連鎖反応を維持するために減速能力の高い軽水(水)を減速材として用います。また、核分裂によって発生した熱を炉心から外部に取り出すものを冷却材と呼びます。軽水炉では水を冷却材として用いるので、冷却材が減速材を兼ねています。
23
電気事業者に毎年度、一定量以上の再生可能エネルギーの発電や調達を義務付ける制度。
24
余剰電力購入とは新エネルギーなどの導入促進の観点から、各一般電気事業者が太陽光発電や風力発電などから生ずる余剰電力の購入条件を、各一般電気事業者が各社の需給状況などに応じて余剰電力の購入条件をあらかじめ設定し、これをメニューの形で示しているものです。
25
IEA、Photovoltaic Power Systems Programme(PVPS)によります。
26
電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドラインとは経済産業省が作成・公表(1998年3月改訂)している新エネルギー、コージェネレーションなどの分散型電源の導入促進に資するために発電設備を商用電力系統に連系する際の技術的指標です。
27
系統の強化とは電力需給状況の変化などにより、電力流通設備(送配電線、変圧器など)の容量が不足する又は構成を見直す必要が出た場合に実施される設備的対応のことです。需給状況の変化には、需要規模・消費パターンの変化、新規大規模発電所の立地などがありますが、近年特に欧米では電力自由化に伴い、想定されていた電気の流れ(潮流)と異なる国際取引が増加する傾向にあること及び再生可能エネルギー電源(風力など)の導入促進により、設備的な対策が求められるようになってきています。
28
ETBEとは、Ethyl Tertiary-Butyl Etherの略で、エタノールとイソブテンにより合成され、ガソリンの添加剤として利用されています。