LED照明器具も「省エネ基準」の対象に~先進技術にも対応するトップランナー制度

LEDイルミネーションを使った商業施設

化石燃料に乏しい日本は、貴重なエネルギーを大切に使うため、エネルギー消費効率の向上に努めてきました。さまざまな取り組みを進めた結果、今では、世界でもトップクラスの省エネを達成しています。その省エネ政策の中心をになってきたのが、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」、いわゆる「省エネ法」です。1979年に制定されて以降、時代や状況の変化に応じて改正されており、直近では2018年12月に、改正省エネ法が施行されました。また、2019年4月には、省エネ法の「トップランナー制度」に、LED電灯器具などを対象とする新しい「省エネ基準」が発表されました。どのような変更がおこなわれたのか、詳しく見てみましょう。

時代に応じて変わる省エネ法とトップランナー制度

「省エネ法」は、工場・事業場の設置者などに対して、省エネの取り組みを実施する際の目安となる判断基準を示す法制度です。あわせて、エネルギー消費効率(エネルギー消費量を、工場の製品の生産数量などで割ったもの)について、中長期的に見て年平均1%以上低減することを目標として定め、省エネをうながしています。

1998年の省エネ法改正では、「トップランナー制度」が設けられ、エアコンやテレビのような家電製品、あるいは自動車などのエネルギーを消費する機械器具などが対象となっています。トップランナー制度とは、3~10年ほど先の年度を「目標年度」として定め、その目標年度までに、あらかじめ定められた「省エネ基準」を達成するように求めるものです。

省エネ基準となるのは、現在商品化されているそれぞれの製品の中で、もっともエネルギー消費効率に優れているもの、つまり「トップランナー」をベースにした数値です。具体的には、トップランナーの数値をベースに、今後想定される技術進歩の度合いを「効率の改善分」として加えて計算した値となります。メーカーなどの事業者は、目標年度までに、このトップランナー製品に自社製品の省エネルギー性能が追いつくよう、研究開発に取り組んでいくことになります。トップランナー制度の対象も時代や状況に応じて拡大されてきており、2013年には建築材料も対象に追加され、現在は32品目となっています。

2019年4月15日に施行されたのは、この32品目のうち、照明器具および電球を対象とした、新しい省エネ基準です。その背景にあるのは、「LED(発光ダイオード)」を使った照明器具や電球の利用拡大です。

「LED」の拡大を織り込んだ、新しい省エネ基準とは?

「照明器具」の新しい省エネ基準はLEDも対象に

LEDを使った照明器具や電球は、省エネ性にすぐれ、寿命が長いという特徴をもっています。このうちLEDを使った電球については、これまでも省エネ基準の対象となっていましたが、LED電灯器具については、省エネ基準の対象となっていませんでした。

それはなぜでしょう?LED電灯器具は、ほとんどが「光源」つまり光を放つ部分と器具が一体化した専用設計となっていて、多種多様な製品が存在します。LED電球を省エネ基準対象とした2013年時点では、LED電灯器具はまだ普及率が低く、LED電灯器具を規定する日本工業規格(JIS規格)や省エネ性能の評価方法が整備されていなかったこともあって、省エネ基準の対象とすることが見送られたのです。

蛍光灯器具の写真

蛍光灯器具

LED電灯器具の写真

LED電灯器具

今回、高効率照明の普及をうながすため、LED電灯器具の普及率が向上したことや、LED電灯器具の省エネ性能の評価方法が整備されたことを踏まえ、LED電灯器具も対象とした新たな省エネ基準が策定されました。目標年度は、2020年度となっています。

また、LED電灯器具を対象とするにあたって、エネルギー消費効率の定義を変更しました。LED電灯器具と蛍光灯器具それぞれの明るさを同じ基準で評価するために、これまでは消費電力量あたりの「照明器具の光源の明るさ(全光束)」としていたものを、消費電力量あたりの「照明器具の明るさ(照明器具全光束)」としたのです。これは、LED電灯器具は光源を器具から取り外した状態では発光させることができないものが多く、「照明器具の光源の明るさ(全光束)」を測ることができないものが存在するためです。

これにより、製品の表示についても、「照明器具の光源の明るさ(全光束)」ではなく「照明器具の明るさ(照明器具全光束)」の表示が義務付けられることとなります。なお、同じ蛍光灯器具であっても、「照明器具全光束」は照明器具の効率を含むため「全光束」より数値が小さくなります。

すでにLEDも対象だった「電球」は、白熱電球も対象に

一方で「電球」については、前述したように、2013年以降は蛍光ランプとLEDランプが対象となっていました。今回の新しい省エネ基準では、さらに白熱電球が対象に加わることとなります。目標年度は2027年度で、エネルギー消費効率はこれまでの基準と同じく「ランプの光源の明るさ(全光束)」となります。

今回、白熱電球が加えられたのはなぜでしょうか。イノベーションが進むLED電球ですが、まだ白熱電球と完全な互換性があるわけではありません。そのため私たちの身の回りには、一部用途で、どうしても白熱電球を使うことになる現状が残っています。そこで、白熱電球についてもトップランナー制度の規制の対象とし、メーカーなどの事業者に対して、出荷する電球全体の効率向上を求めることにしました。

なお、表示の見直しについては1年間の経過措置期間が設定されており、2020年3月31日までは引き続きこれまで通りの表示も認められています。

時代が進むにつれ、さまざまな新しい技術を使った製品が登場します。省エネ法やトップランナー制度には、そうした技術の進化を柔軟に織り込みながら、省エネの徹底を図っていくことが求められているのです。

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