2023年4月施行の「改正省エネ法」、何が変わった?

ロシアのウクライナ侵略を受け、世界のエネルギーを取り巻く情勢は一変しました。世界各国でエネルギー分野のインフレーションが顕著となり、日本でもエネルギー価格の高騰が生じるなど、極めて緊迫した事態に直面しました。こうした世界情勢もふまえ、エネルギー危機に強い経済・社会構造に変えていく観点から、省エネルギー(省エネ)の重要性がさらに高まっています。また、2050年カーボンニュートラルに向けては、引き続き徹底した省エネに努めるとともに、非化石エネルギーの導入拡大を進める必要があります。加えて、太陽光発電などの非化石電気の導入が増える中で、供給側の変動に応じて、電気の需要の最適化(ディマンド・リスポンス=DR)をおこなうことが求められます。このため、省エネ法が改正され、2023年4月から施行されています。その内容についてご紹介します。
省エネ法改正で、省エネに加えて非化石エネルギーの導入拡大
エネルギー資源が乏しい日本は、かねてから省エネに積極的に取り組み、世界でもトップクラスの省エネを達成してきました。東日本大震災以降の節電の取り組みに加えて、近年も省エネの取り組みが進んできています。
他方で、2050年カーボンニュートラル目標や2030年の野心的な温室効果ガス削減目標の達成に向けては、需要サイドにおいて、省エネの強化とともに、非化石エネルギーの導入拡大、さらに、電気需要の最適化を進めていくことが重要です。
需要側のカーボンニュートラルに向けたイメージと取り組みの方向性
そこで、省エネ法が大幅に見直されました。今回の改正省エネ法では、法律名も「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」と変わりました。改正においては、①省エネの取り組みを引き続き進めることに加えて、②エネルギー需要について、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換を図ることを掲げている点が、大きなポイントです。
非化石エネルギーへの転換を進めるには、自家消費型の再生可能エネルギー(再エネ)や、水素などの非化石エネルギーの導入を拡大していくことが重要です。
さらに、再エネ導入拡大を支える取り組みも重要です。具体的には、電力の供給量に応じて、需要側が使う量をコントロールすることで、電力の需給バランスを調整する「ディマンド・リスポンス(DR)」が挙げられます。再エネは、時間や季節、天候などによって、発電量が大きく変わるため、再エネの供給量が増加すると、電力需給のコントロールが必要になります。DRは、電力が多く使われる時間帯に電力を使う量を減らしたり、逆に発電量が需要量を上回る時間に、余った電気を蓄電するなどして電力の需要を生み出したりすることで、電力の需給バランスを需要家側が調整することができる取り組みです。
改正省エネ法の3つのポイント
このように、省エネに加えて、非化石エネルギーへの転換や、電気需要の最適化といった観点が追加された、今回の改正省エネ法の大きなポイントを、3つご紹介します。
ポイント①「エネルギーの使用の合理化」の対象範囲を拡大
従来の省エネ法では、「エネルギー」とは化石燃料のことを指していました。また、工場や事業所、運輸事業者などのエネルギー使用者について、一定規模以上のエネルギー使用者にはエネルギーの使用状況を報告させ、取り組みが不十分な場合には、指導・助言や合理化計画の作成指示などをおこなうものでした。
しかし、改正省エネ法では、「エネルギー」の定義を拡大し、化石エネルギーだけでなく、非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーの使用の合理化を求める枠組みに見直しました。
ポイント② 非化石エネルギーへの転換
一定規模以上のエネルギー使用者に対しては、これまでもエネルギーの使用状況についての報告が義務付けられていましたが、改正省エネ法では、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期計画の作成と、非化石エネルギーの使用状況などの定期報告をおこなうことが求められるようになりました。
具体的に、どのくらい非化石エネルギーに転換するかについては、セメント製造業・自動車製造業・鉄鋼業・化学工業(石油化学・ソーダ)・製紙業の5業種に対して、国が2030年度の定量目標の目安を設定しています。
ポイント③ 電気の需要の最適化
産業部門などの大規模需要者に対して、「電気の需要の最適化」をはかることが求められます。電気の需要の最適化とは、たとえば再エネの出力制御時への電力の需要シフトや、電力の需給ひっ迫時の電力の需要減少を促すため、電力の需給状況に応じたDRなどをおこなうことを指します。再エネの余剰時などに電力需要を増加させる「上げDR」、電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制させる「下げDR」など、DRの実績を報告します。
エネルギー需要の脱炭素化に向けた取り組みは、世界的なトレンドに
改正省エネ法の柱である、需要側における非化石エネルギーへの転換や電気の需要の最適化は、日本だけでなく、世界各国で取り組みが進んでいます。例えば、英国では、家庭用ガスボイラーの新設を段階的に禁止していくことを議論しています。
こうした動きをふまえ、2023年4月におこなわれた「G7気候・エネルギー・環境大臣会合(G7札幌)」では、合意文書において、2050年の温室効果ガスのネット・ゼロ排出に向けた世界的なエネルギー転換における重要な柱として「第一の燃料」としての省エネの役割が強調されたほか、「エネルギー需要の脱炭素化に向けたさらなる取り組みを活用していく」といった内容が盛り込まれました。
改正省エネ法の施行により、日本では大規模事業者の省エネ、そして非化石エネルギーへの転換が進むことが期待されますが、今後はさらに、家庭や中小企業も含めて、どのような取り組みが必要かを議論していきます。
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