節電される電気を価値化!?ディマンド・リスポンスの取引

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電力の需給バランスを調整する方法として、重要なカギを握るしくみが、需要側が電力の使用量をコントロールする「ディマンド・リスポンス(DR)」(「これからの需給バランスのカギは、電気を使う私たち~『ディマンド・リスポンス』とは?」参照)です。再生可能エネルギー(再エネ)の導入が進む新しい電力ネットワークの中で電力を安定的に供給するためには、より多くの需要家がDRに取り組むことが必要です。さらに、それによって生まれたエネルギーをたばねて最大限に活用する「アグリゲーター」(「電力の需給バランスを調整する司令塔「アグリゲーター」とは?」参照)など、DR実施事業者が今後さらに増えることや、そういった事業者が電力市場に積極的に参入することが大切になります。今回は、DRがどのように取引されているか、その取引量はどのくらいなのかなど、現状についてご紹介しましょう。

電力需給ひっ迫を未然に防ぐために重要なDRの役割

夏の猛暑日や冬の寒い日は、電力需要が高まる傾向にあります。電力は、需要量と供給量を常に一致させなければなりません。DRは、再エネがさらに普及する新しい電力ネットワークの時代において、これまでと同様に電力の需要と供給のバランスをとっていくため、需要家側の電力の需要量をコントロールすることで需要と供給のバランス確保に協力するしくみです。

このDRのしくみによって生み出された電力(節電された電力=ネガワットも含む)は、ほかの電源(電気をつくる方法)と同様、電力市場で取引することができます。どのようなときに、どのような市場で取引されるのでしょうか。

10年に一度の厳気象に備えた「電源Ⅰ´」におけるDRの割合は?

電力会社(一般送配電事業者)は、およそ10年に一度の厳気象(猛暑・厳寒)のときに、需要の急増に対応し、電力を確保するための「調整力」として稼働する電源(「電源Ⅰ´」)を、公募によって調達しています。この公募には、「アグリゲーター」などDR実施事業者も参入することができます。

2022年度の「電源Ⅰ´」の落札容量は、全体で約363.7万kW、そのうちDRは229.7万kWと落札容量全体の約6割を占めました。過去の落札容量を見ると、2020年度のDRの落札容量は128.9万kWで、全体の落札容量に占める割合が約3割、2021年度のDRの落札容量は175.9万kWで、全体の落札容量に占める割合が約4割と、年々増加しています。

電源Ⅰ´の応札容量・落札容量
2020年度から2022年度までの「電源Ⅰ´」の募集容量、応札容量、落札容量と件数を表で示しています。応札容量と落札容量は、電源とディマンド・リスポンスそれぞれの容量と件数が示されています。

(出典)電力・ガス取引監視等委員会  第68回制度設計専門会合(METI/経済産業省)資料

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電力需要が高まる時期に備えた「追加供給力公募」におけるDRの落札状況は?

夏や冬の電力の需要が高まる時期に備え、電力会社(一般送配電事業者)は事前に追加的な供給力を、公募によって確保することとしています(追加供給力公募)。この公募にも、発電事業者だけでなく、「アグリゲーター」などDR実施事業者も参入することができます。
2022年度は、夏の電力需要に備えるため、北海道と沖縄を除く全国8エリアで追加の供給力公募がおこなわれ、135.7万kWが落札されました。このうち、DRは0.4万kWでした。

2022年度夏季追加供給力公募落札結果
2022年度の夏の需要に備えておこなわれた追加供給力公募の落札結果を表で示しています。募集量、応札量、落札量それぞれのディマンド・リスポンスの割合も示されています。

(出典)第51回総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(METI/経済産業省)資料

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また、2022年度の冬も厳しい電力需給が想定されたため、北海道・沖縄を除く全国8エリアを東西2つのエリアに分けて、追加の供給力公募がおこなわれました。その結果、落札量は東日本エリアで77.9万kW、このうちDRは1.1万kW、西日本エリアでは、落札量が185.6万kW、このうちDRは8.9万kWとなり、応札量・落札量ともに夏季に比べ冬季の方が増えました。

2022年度冬季追加供給力公募落札結果
2022年度の冬の需要に備えておこなわれた追加供給力公募について、東日本エリアと西日本エリアの落札結果を表で示しています。募集量、応札量、落札量それぞれのディマンド・リスポンスの割合も示されています。

(出典)第53回総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(METI/経済産業省)資料

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未来の電気の供給力を取引する「容量市場」へのDRの参入も増えている

DR実施事業者が参入できる市場として、容量市場もあります。容量市場とは、電力をより長期的な視点で安定的に確保するという観点から、「4年後に供給が可能な状態にできる電源の供給力(kW)を募集して取引する」市場です(「くわしく知りたい!4年後の未来の電力を取引する『容量市場』」参照)。電力広域的運営推進機関(広域機関)がオークションをおこない、入札価格の安い電源から落札します。

2024年度に供給が可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年に初めてとなる第1回オークションがおこなわれました。このときの発動指令電源(下のグラフでは「発動指令電源」にDRが含まれる)の応札容量は415万kWで、全体の2.4%でした。2021年におこなわれた第2回オークションでは、発動指令電源の応札容量は566万kWで、全体の3.2%となり、前年よりも増加しています。

容量市場オークション結果(第1回) 電源などの応札容量
第1回の容量市場オークション結果について、安定電源、変動電源(単独)、変動電源(アグリゲート)、発動指令電源それぞれの応札容量を円グラフで示しています。

(出典)容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)の 公表について(電力広域的運営推進機関 ホームページ)

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容量市場オークション結果(第2回) 電源などの応札容量
第2回の容量市場オークション結果について、安定電源、変動電源(単独)、変動電源(アグリゲート)、発動指令電源それぞれの応札容量を円グラフで示しています。

(出典)容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2025年度)の 公表について(電力広域的運営推進機関 ホームページ)

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電力の需給バランスを維持する「需給調整市場」へのDRの参入も促進

容量市場のほかに、アグリゲーターなどDR実施事業者が参入できる市場として、2021年4月に開設された「需給調整市場」があります。需給調整市場とは、電力の需給バランスを維持したり、電気の周波数を安定させたりするための「調整力」を取引する市場です。

需給調整市場においては、全体の中ではまだ少ないものの、一定の割合でDR実施事業者も市場に参入しています。今後、一部の商品についてDRの参入要件が緩和される予定であり、さらなるDR実施事業者の参入が期待されています。

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