企業が連携して取り組む、これからの省エネ

イメージ画像

「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」、いわゆる「省エネ法」。エネルギーを効率的に利用することを目的として制定されたこの法律は、時代の変化に応じて改正を重ねてきました。2018年12月1日に施行された改正法でも、新しいビジネスモデルにおけるエネルギー消費や、企業の新たな省エネの取り組みをきちんと評価できるよう、いくつかのポイントが改正されました。今回は、そんな改正省エネ法の中でも、新しく創設された「連携省エネルギー計画の認定制度」について、先日開かれたシンポジウムの模様を交えながら、詳しくご紹介しましょう。

企業間連携による省エネの取り組みを評価する、新しい認定制度

省エネ法は、工場や事業所、貨物・旅客輸送事業者、荷主、機械器具などを製造・輸入している事業者、家電の小売事業者やエネルギー供給事業者などを規制の対象として、省エネ努力を促しています。1979年に省エネ法が制定されて以来、日本では、経済成長やビジネスモデルの変化などを伴いながら、長年にわたって省エネの取り組みがおこなわれてきました。

「時代にあわせて変わっていく『省エネ法』」でもご紹介したように、2018年の改正でポイントとなるのは以下の点です。

2018年省エネ法改正のポイント
リストアイコン ①連携省エネルギー計画の認定制度の創設
リストアイコン ②認定管理統括事業者の認定制度の創設
リストアイコン ③「荷主」の定義の見直し、「準荷主」の位置づけ
リストアイコン ④中長期計画の提出頻度の軽減

このうち、省エネに役立つ新しい取り組み事例があらわれることが期待されているのが、①の「連携省エネルギー計画の認定制度の創設」です。

これは、複数の企業など事業者が連携して省エネの取り組みをおこなう場合には、その計画の認定を受ければ、省エネ法の定期報告書で連携(これを「連携省エネルギー措置」と言います)によって実現した省エネの量を事業者間で分配して報告することができる、という制度です。

例をひとつ見てみましょう。たとえば、同業であるA社とB社が連携して、製品をつくる行程の一部をB社に統合・集約することにしたとします。結果、A社は工場や事業所の一部を廃止することができ、エネルギー消費量が減ります。一方、A社の分の製造も引き受けることになったB社は、エネルギー消費量が増えます。

同一業界の事業者間の設備集約のケース
同一業界の事業者間で、行程の一部を統合・集約したケースの図解です。

大きい画像で見る

これまでの省エネ法では、エネルギー使用状況などは企業単位で報告することとなっていたため、上記のようなケースでは、A社はエネルギー消費効率が向上したと見なされ、B社はエネルギー消費効率が悪化したという評価を受けることとなってしまっていました。しかし改正法では、「連携省エネルギー計画」を作成して認定を受ければ、A社とB社が連携して削減した省エネ量を、A社とB社間で分配して報告することができるようになり、B社も省エネを実現したと評価されるようになります。

シンポジウムやセミナーで具体的なケースを紹介

資源エネルギー庁では、これら改正省エネ法のポイントについて、企業の担当者に直接説明するため、2019年1月10日~11日に東京都で、「分かれば簡単!改正省エネ法シンポジウム」を開催しました。

資源エネルギー庁 省エネルギー課の制度設計担当者による制度説明では、「連携省エネルギー計画」の認定制度について、計画作成のポイントや、定期報告への反映方法について具体的な数値例を示しつつ解説されました。

「連携省エネルギー計画」には、連携省エネルギー措置によってエネルギー消費原単位(一定の生産活動に対するエネルギーの使用量)が連携前と比べて改善すること、連携をおこなうすべての事業者が、目標達成に直接的な貢献をしていること、省エネ量の分配方法が各事業者の貢献の実態に即していることなどが求められます。この連携省エネルギー計画が認定されると、省エネ量を分配して報告できる措置や、計画に基づいて取得などがおこなわれる設備について税制優遇などが受けられるようになります。

「分かれば簡単!改正省エネ法シンポジウム」でおこなわれた資源エネルギー庁による制度説明

また、シンポジウムでは、事例紹介として、東京ガス株式会社から、ガスを使って電力をつくりその際に出てくる熱を利用する「ガスコージェネレーションシステム」に複数企業の熱源を集約し、省エネに役立てるという例が紹介されました。

「分かれば簡単!改正省エネ法シンポジウム」での東京ガス株式会社の事例紹介

たとえば、宇都宮市にある清原工業団地では、“工場間一体省エネ事業”として、カルビー株式会社、キヤノン株式会社、久光製薬株式会社の3事業者7事業所が、1ヵ所に集約したガスコージェネレーションシステムからの電力と熱を利用する計画です。

清原工業団地における電力と熱の供給概要図
清原工業団地における、電力と熱を集約したガスコージェネレーションシステムの図解です。

大きい画像で見る

また、日産自動車株式会社の横浜工場と株式会社J-オイルミルズの横浜工場では、異なる業種間でのエネルギー連携がおこなわれています。ここでは、電力需要の大きな日産自動車がコージェネレーションシステムからの電気を使用し、この時に出てきた熱を、道路の下を通した配管を通じて、熱需要の大きいJ-オイルミルズが使用しています。

日産自動車横浜工場とJ-オイルミルズ横浜工場における電力と熱の供給概要図
日産自動車横浜工場とJ-オイルミルズ横浜工場がおこなっている、電力と熱の供給を図解したものです。

大きい画像で見る

今回の改正省エネ法により、このような異業種の企業間での連携で得られた省エネ量を、連携した企業間で合意したかたちで分配することが可能となります。

シンポジウムでは、そのほかにも、東京電機大学名誉教授の高村淑彦氏の講演や、グループ企業が一体となっておこなう省エネ活動の事例などが紹介されました。シンポジウム後には、一般財団法人省エネルギーセンターと関東経済産業局による個別の相談会も開催されました。

今後も、改正省エネ法のポイントや省エネ政策を分かりやすくお伝えするシンポジウムを、各地で開催していきます。シンポジウムを通じて制度への理解が深まり、企業間連携による新しい省エネの取り組みが促進されることを期待しています。

お問合せ先

記事内容について

省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。