「使用済燃料」のいま~核燃料サイクルの推進に向けて

六ヶ所再処理工場の写真です。

六ヶ所再処理工場

これまでスペシャルコンテンツでは、「核燃料サイクル」に関して、理解に役立つ基本情報や、最新の情報などをご紹介してきました。今回は、そんな核燃料サイクルで再利用がおこなわれる「使用済燃料」について、現在どのような状況にあり、どんな管理・運用がされているのか、また課題を解決するため進められている対策などについてご紹介しましょう。

使用済燃料は今どのように管理・運用されているのか?

「核燃料サイクル」とは、原子力発電(原発)で使い終えた燃料(使用済燃料)から再利用可能なプルトニウムやウランを取り出して(再処理)、「MOX燃料」に加工し、もう一度発電に利用することで、

リストアイコン 資源を有効利用する
リストアイコン 高レベル放射性廃棄物の量を減らす
リストアイコン 高レベル放射性廃棄物の有害さ(放射能レベル)の度合いを低くする

ことに役立てようとするものです。

日本における核燃料サイクルは、以下のように進められています。

日本の核燃料サイクルの現状
日本の核燃料サイクルについて、英国・フランスへの再処理依頼や六ヶ所再処理工場での再処理の行程を示した図です。

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現在、日本国内で稼働している原発は9基です。このうち、MOX燃料を燃料として使うことのできる「プルサーマル炉(核燃料サイクルを軽水炉でおこなう「プルサーマル」を実施する炉)」は4基あります。

現状使用されているMOX燃料は、すべてフランスで加工されたMOX燃料です。かつては、イギリスにも再処理を依頼していましたが、MOX燃料加工工場が2011年に閉鎖されたため、現在はフランスで加工されたMOX燃料のみを使用しています。

※このMOX燃料は原発内で燃え終わると「使用済MOX燃料」となりますが、使用済MOX燃料の再処理については、今後の発生量の見通しや、再処理に関する国内外の技術の動向などをふまえながら、引き続き研究開発に取り組みつつ、検討を進めていきます(「資源エネルギー庁がお答えします!~核燃料サイクルについてよくある3つの質問」参照)。

今後、日本国内の原発から出た使用済燃料は、国内の「六ヶ所再処理工場」で再処理される予定です。六ヶ所再処理工場とは、青森県にある、日本原燃株式会社が運営する再処理施設で、2021年度上期の完成を予定して建設中です。2006年3月の試験では、技術的な問題が解決できず、試験がしばらく停止するなどの問題が発生しました。また、東日本大震災発生後の2013年にもうけられた、原子力施設に対する新しい規制基準(「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント」参照)が六ヶ所再処理工場にも適用されたことで、新規制基準に適合するための対策が必要となったなどの理由から、当初の予定よりも完成時期は遅れています。しかし、完成すれば、年に800トンの使用済燃料が処理できる能力を持つ見通しです(フル稼働時)。

六ヶ所再処理工場の概要
六ヶ所再処理工場の写真です。

  • 1993年4月:着工
  • 1999年12月:事業開始
  • 2006年3月:アクティブ試験開始→ガラス溶融炉の試験停止
  • 2013年5月:アクティブ試験完了
  • 2014年1月:新規制基準への適合申請
  • 2021年度上期:竣工予定(2017年12月公表)
  • 使用済燃料の処理能力:フル稼働時 800トン/年(40年間の計画、累計 32,000トン

再処理をおこなうまでの間、使用済燃料は、国内の原子炉建屋内にある「貯蔵施設(燃料プール)」で冷却し、そのまま引き続き燃料プールで貯蔵されるか、もしくは「乾式貯蔵」と呼ばれる方式で特殊な容器の中で貯蔵されます。

現在日本国内で貯蔵されている使用済燃料は18,000トンです。

再利用前の使用済核燃料に「貯蔵容量」の問題が

日本は、未来にむけたエネルギー政策の指針を示した「エネルギー基本計画」で、核燃料サイクルの推進を基本的方針と位置づけています。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が決定したことなどから(「『もんじゅ』廃炉計画と『核燃料サイクル』のこれから」参照)、核燃料サイクルに関する政策が変わったのでは?という報道もありましたが、高速炉の開発によって廃棄物の体積を減らし・放射能レベルを低減させることなどをめざすこともふくめ、核燃料サイクルを引き続き推進していく姿勢にはまったく変わりありません(「資源エネルギー庁がお答えします!~核燃料サイクルについてよくある3つの質問」参照)。また、 高レベル放射性廃棄物の最終処分(「『科学的特性マップ』で一緒に考える放射性廃棄物処分問題」参照)などの取り組みをおこなっていきます。

核燃料サイクルのしくみ(軽水炉サイクルと高速炉サイクル)
軽水炉サイクルと高速炉サイクルの違いを示した図です。

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こうした核燃料サイクルを進めていく上で、現在課題となっていることのひとつが、「使用済燃料の貯蔵」です。前述したとおり、現在、国内で貯蔵されている使用済燃料は18,000トンですが、これは国内の貯蔵容量約24,000トンの約75%をすでに占めています。

貯蔵容量約24,000トンのうち既に使用済燃料が約1,8000トンあることを示した図です。

今後は、六ヶ所再処理工場の早期完成を実現するとともに、使用済燃料の貯蔵能力の拡大が必要です。

そこで、2015年、政府の最終処分関係閣僚会議で「使用済燃料対策に関するアクションプラン」が決定されました。アクションプランでは、使用済燃料の貯蔵能力を拡大するための取り組みを強化するよう、官民が協力して推進していくことが掲げられ、「政府と事業者による協議会の設置」「事業者に対する『使用済燃料対策推進計画』」の策定要請」などが決められました。

「使用済燃料対策推進協議会」で貯蔵対策に官民連携で取り組む

これを受け、経済産業大臣、各原発事業者トップ、電気事業連合会会長などが集まって定期的に開催されているのが、「使用済燃料対策推進協議会」です。2018年11月20日に開催された第4回の協議会では、各電力会社から、貯蔵施設の拡大に関する報告などがおこなわれました。さらに、こうした取り組みをおこなうにあたっては、地元の人々の理解が大前提であり、丁寧な対話を通じて、理解を得られるよう力を尽くしていくことが、あらためて確認されました。また、大臣から、各原発事業者トップおよび電気事業連合会会長に対し、使用済燃料対策の取り組みを進めていくにあたり、国との連携、事業者間での連携を一層強化しながら、具体的な取り組みを着実に進めるように要請しました。

現在、各原発で予定されている貯蔵施設の拡大対策は、以下の通りとなっています。さらに、使用済燃料の貯蔵施設としては、青森県の「むつ中間貯蔵施設」が現在建設中です。

使用済燃料の貯蔵施設拡大に関する主な対策
伊方発電所は+500トン(余裕年数が11年から36年に)、玄海原子力発電所は+480トン(同3年が10年に)、東海第二発電所は+70トン(同3年が6年に)、浜岡原子力発電所は+400トン(同2年が8年に)の拡大を予定していることを示した表

※図表内にある丸で囲った数字は「●号機」を指す ※余裕年数は、左側にある数字が現在の年数、右側にある数字が貯蔵施設拡大後の年数
※図内の数字や文言は2019年1月22日時点のものです

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この記事公開後、数字や文言はアップデートされています。新しい情報については「使用済の核燃料を陸上で安全に保管する『乾式貯蔵』とは?」をご覧ください(2019年11月27日追記)。

また協議会では、大臣からプルトニウムの管理と利用について着実に推進していく旨の発言があり、2018年10月から日英政府の局長クラスでプルトニウムの管理政策に関する対話が始められていることも報告されました。

核燃料サイクルは、資源の少ない日本にとって非常に重要な取り組みであり、放射性廃棄物の減容化・有害の低減のためにも必要な取り組みです。今後も、官と民の力を結集し、核燃料サイクルに着実に取り組んでいきます。

お問合せ先

記事内容について

電力・ガス事業部 原子力立地・核燃料サイクル産業課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

2019/1/22に公開した際、『六ヶ所再処理工場の概要』の項で、使用済燃料の処理能力を「フル稼働時マイナス800トン/年(40年の計画、累計マイナス32,000トン)」としており、使用済燃料が減ることを「マイナス」と表現していました。処理量だけに着目すると「フル稼働時800トン/年(40年の計画、累計32,000トン)」という表現になるため、修正させていただきました。(2019/1/25 12:00)

※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。