「もんじゅ」廃炉計画と「核燃料サイクル」のこれから

「もんじゅ」の写真です

高速増殖原子炉「もんじゅ」(提供:日本原子力研究開発機構(JAEA))

2016年12月の原子力関係閣僚会議で廃止措置への移行が決定された、高速増殖原型炉「もんじゅ」。2017年12月から、原子力規制委員会による、廃止措置計画の審査が進められ、2018年3月に認可されました。「もんじゅ」の廃止措置計画とはどのようなものなのでしょう?また、「もんじゅ」の廃止措置によって、使用済燃料を有効活用する「核燃料サイクル」はどうなるのでしょうか。

「もんじゅ」が廃止措置にいたるまで

原子力発電所で使い終えた燃料(使用済燃料)をもう一度使うことで、資源を有効利用し、高レベル放射性廃棄物の量を減らしたり放射能レベルを低くすることに役立てる「核燃料サイクル」(「核燃料サイクルの今」参照)。この使用済燃料から取り出したプルトニウムとウランを用いて作られた「MOX燃料」を「高速炉」と呼ばれる原子炉で燃やして発電に利用する方法は「高速炉サイクル」と呼ばれますが、そのサイクルの研究開発の中核として位置づけられていたのが、「もんじゅ」です。

1994年4月に初めて臨界(原子炉内の核分裂が持続しはじめること)に達して以来、「もんじゅ」の運転や保守を通じてさまざまな知見や技術的成果が得られてきました。しかしその一方で、1995年12月のナトリウム漏えい事故などの問題も起こり、文部科学省の有識者会議「『もんじゅ』の在り方に関する検討会」では、人材育成やマネジメントに問題があったことをまとめました。

2016年12月、原子力関係閣僚会議において、「『もんじゅ』の取扱いに関する政府方針」(以下「もんじゅ政府方針」と呼びます)を決定し、「原子炉としての運転再開はせず、今後、廃止措置に移行する」こととしました。その後、「『もんじゅ』廃止措置推進チーム」(以下「推進チーム」と呼びます)が設置され、廃止措置を安全に、着実に、なおかつ計画的に実施するための取り組みが進められています。

2017年6月、推進チームは「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本方針」を決定。これをふまえて、「もんじゅ」を運営している日本原子力研究開発機構が「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本的な計画」をつくり、推進チームによって了承されました。また、2017年12月には「もんじゅ」の廃止措置計画の認可申請書が、原子力機構から原子力規制委員会へ提出され、2018年3月に廃止措置計画が認可されました。

「もんじゅ」廃止措置決定までの主な経緯
1994年
(平成6年)
初臨界
1995年
(平成7年)
40%出力試験中にナトリウム漏えい事故が発生
2010年
(平成22年)
試運転再開
炉内中継装置の落下トラブル発生
2012年
(平成24年)
日本原子力研究開発機構が、機器の点検漏れを原子力規制委員会に報告
2013年
(平成25年)
原子力規制委員会から日本原子力研究開発機構に対し運転再開準備の停止含む保安措置命令発出
2015年
(平成27年)
原子力規制委員会から文部科学大臣に対し勧告発出
2016年
(平成28年)
原子力関係閣僚会議において、「もんじゅ」の廃止措置移行が決定
2017年
(平成29年)
6月 「もんじゅ」の廃止措置に関する政府の基本方針を「もんじゅ関連協議会」において福井県知事、敦賀市長に説明

11月 「もんじゅ関連協議会」において、政府より廃止措置にかかる工程および実施体制、地域振興策などを説明

12月 日本原子力研究開発機構が福井県および敦賀市の間で安全協定を改定および廃止措置協定を締結
日本原子力研究開発機構が原子力規制委員会に対し廃止措置計画の認可申請
2018年
(平成30年)
3月 廃止措置計画認可

「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本方針」のポイント

「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本方針」では、どのようなことが定められたのでしょうか。概要を見てみましょう。

①政府としての責務
原子力規制委員会による廃止措置計画の認可から、おおむね30年で廃止措置作業を完了することを目指して、原子力機構まかせにすることなく、政府として主体的に検討・調整をおこなう。また、国内外の英知を結集した廃止措置体制の整備にむけた外部からの人材の確保や、適切な予算措置に努めるなど、責任を持って取り組んでいく。特に、使用済燃料、ナトリウムおよび放射性廃棄物の搬出および処理処分については、政府として責任を持って取り組む。

具体的には、
●使用済燃料については、安全に炉外に取り出した上で、当該使用済燃料の再処理をおこなうために県外に搬出することとする。再処理にむけた搬出の方法および期限などの計画については、燃料の炉心から燃料池(水プール)までの取り出し作業が終了するまでに(おおむね5年半)、検討をおこない結論を得て、すみやかに搬出する。

●ナトリウムについては、安全措置を確実にした上で、県外への搬出の方法および期限などの計画(再利用や売却を含む)について検討をおこない、燃料の炉心から燃料池(水プール)までの取り出し作業が終了するまでに結論を得て、すみやかに搬出する。これを踏まえ、原子力機構とともに、再処理施設への使用済燃料の搬出およびナトリウムの搬出および処理処分にむけて取り組んでいく。

●研究施設など廃棄物については、政府が原子力機構と一体となって、県外への搬出にむけて廃棄施設の整備に関わる取り組みなどを進め、当該廃棄施設などに廃棄する。
②廃止措置実施体制
原子力機構による安全かつ着実な廃止措置の実施にむけ、①政府一体となった指導・監督体制および、②国内外の専門家による第三者評価を受ける体制を整えるとともに、③原子力機構における廃止措置実証のための実施部門の創設により、「もんじゅ」の廃止措置のための特別な体制を構築する。

「もんじゅ」の廃止措置に関わる実施体制
「もんじゅ」の廃止措置に関わる実施体制を表した図です。

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「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本的な計画」のポイント

このような「基本方針」に基づいて、原子力機構が定めたのが「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本的な計画」です。

基本的な計画においては、ナトリウム冷却型高速炉の特徴などを踏まえ、海外も含めた先行する原子炉施設の廃止措置を参考に、「もんじゅ」の廃止措置方法を検討し、廃止措置計画の認可からおおむね30年での廃止措置作業の完了を目指すこととしています。また廃止措置作業は、段階に分けて作業を進めることとし、「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本方針」で原子力機構に求めた事項を反映し、主に以下の取り組みを進めるとしています。

「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本的な計画」の主なポイント
●外部からの人的支援や協力を得て、新たな「実証部門」を創設し、「もんじゅ」が立地する敦賀地区において迅速かつ柔軟に意思決定をおこない、円滑に廃止措置を進めるため、当該部門の長に人員、予算などの権限を集中する。

●政府一体となった指導・監督の下、廃止措置を安全、着実かつ計画的に実施し、国の確認、第三者の評価を受ける。

●使用済燃料、ナトリウムについては、推進チームの下、政府の基本方針に基づき、政府の県外への搬出についての検討に役立てるため、技術的な検討を着実に実施する。

●廃止措置のための技術開発など、廃炉実証を通じて得られるさまざまな知見を整理・蓄積する。

●地元経済に大きな影響を与えないよう、人員を当面維持するとともに、「エネルギー研究開発拠点化計画」に積極的に参画することで、地域振興の取り組みに貢献するとともに、立地地域ならびに国民の理解を得る取り組みをおこなう。

今後の廃止措置はどうなる?

2017年12月に日本原子力研究開発機構から原子力規制委員会に提出され、2018年3月に認可された「もんじゅ」の廃止措置計画では、廃止措置に必要な工程と期間を、以下のとおり定めています。

リストアイコン 「もんじゅ」の廃止措置は、おおむね30年間で実施。
リストアイコン 期間全体は、①燃料体を燃料池へと取り出す「燃料体取り出し期間」、②ナトリウム機器の解体準備などをおこなう「解体準備期間」、③ナトリウム機器の解体撤去などをおこなう「廃止措置期間Ⅰ」、④建物などの解体撤去をおこなう「廃止措置期間Ⅱ」の4つに区分する。

廃止措置の実施にあたっては、「もんじゅ」のナトリウムの抜き取りが困難であるとの報道もありました。しかし、ナトリウムの抜き取りについては、既存の設備と技術を活用すれば技術的に可能であると日本原子力研究開発機構により明らかにされており、今後具体的な方法などについてさらに詳細に検討し、決定していくこととしています。

なお、「もんじゅ」と同じナトリウム冷却高速炉である、フランスの実証炉「スーパーフェニックス」では、すべてのナトリウムの取り出しが完了しています。

もんじゅで得られた成果は?

廃止措置への移行が決定された「もんじゅ」。しかし、これまでの設計・建設・運転の経験を通して、高速炉の燃料や各種機器・システム、ナトリウムの取扱い技術をはじめとする、さまざまな技術的成果や知見を得ることができました。また「実証炉」(技術の実証などをおこなうためにつくられる実験的な原子炉)に続く「実用炉」(実用段階にいたった原子炉)など、将来の展開にむけて、高速炉の保守・修繕技術の獲得、高速炉関連技術や人材育成基盤の構築といった、多岐にわたる成果が得られています。

こうした点を考えても、高速炉開発については、将来の実用化を目指して引き続き研究に取り組み、前へと進めていく必要があります。「もんじゅ」の成果も活用した、具体的な高速炉開発の方向性を定めるため、「高速炉開発会議」を2016年10月に設置し、議論をおこないました。この「高速炉開発会議」では、経済産業大臣を議長として、文部科学大臣に加えて、日本原子力研究開発機構や電力事業者、原子炉メーカーといった、高速炉開発の担い手も参画し、議論をおこないました。

議論にあたっては、高速炉開発に取り組む米国やフランスからのヒアリングもおこないつつ、

●高速炉開発の意義
●「常陽」や「もんじゅ」など高速炉開発の経緯や教訓
●実用化にむけて必要となる技術
●高速炉開発の国際動向
●「ASTRID」(フランスの高速炉)をはじめとした国際協力のあり方

など、多角的な視点からの検討をおこなった上で、将来の高速炉の実現にむけ、開発にたずさわるすべての関係者の今後の指針として、「高速炉開発の方針」の案を取りまとめ、2016年12月の原子力関係閣僚会議で、正式に決定しました。

「もんじゅ」から得られた教訓を活かすためにも、「高速炉開発の方針」で示された4つの原則(国内資産の活用、世界最先端の知見の吸収、コスト効率性の追求、責任体制の確立)に沿って、高速炉の開発を進めていくこととしています。

核燃料サイクル政策を見直す必要はないの?

「もんじゅ」が廃止措置へと移行することは、核燃料サイクルの政策に影響を与えないのでしょうか。

「核燃料サイクルの今」でご紹介したように、日本では、エネルギーに関する政策の方向性を示した「エネルギー基本計画」で、核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に取り組むこととしています。その理由は、前述したように、核燃料サイクルは①資源の有効利用、②高レベル放射性廃棄物の量の減少、③放射能レベルの低減に役立つためです。そのような核燃料サイクルが持つ意義は、最近の状況の変化の中でも、何も変わることはありません。

高速炉サイクルが実現できると、「ワンススルー」と呼ばれる直接処分(使用済燃料を再利用せずに最終処分すること)と比べてはもちろん、現在取り組まれている使用済燃料の利用方法「軽水炉サイクル」と比べても、大きな効果を期待できるとされています。

廃棄物の量の減少、放射能レベルの低減の比較
直接処分、軽水炉サイクル、高速炉サイクルにおける資源の有効利用や高レベル放射性廃棄物の体積の低減などを比較した表です。

(出典)資源エネルギー庁ホームページ

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