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(出典)国際石油開発帝石株式会社
天然ガスを約マイナス162℃まで冷却して液体にした「LNG(Liquefied Natural Gas)」。日本語では「液化天然ガス」と呼ばれるこのLNGは、火力発電の燃料として、あるいは都市ガスの原料として利用されています。「LNGを安定的に供給するための取り組み」でご紹介したように、日本はこのLNGの世界最大の消費国であり、LNGは日々の生活や企業活動を支えるエネルギーのひとつとなっています。そうした中、日本企業が初めて主導し進めていた大型LNG開発プロジェクトで、ついにLNGの生産がスタート。10月には出荷も始まりました。今回は、そんな「イクシスLNGプロジェクト」についてご紹介しましょう。
近年、LNGの需要はアジアを中心に増しており、重要なエネルギーとしてのLNGの存在感は、世界的に増すばかりです。一方、供給側にもさまざまな変化が生まれています。産出国が中東に多く集中している石油にくらべて、LNGはさまざまな国で産出しているのが特徴です。これは、エネルギーの輸入元がかたよることで生じてしまうエネルギー安全保障上のリスクを防ぐことができるということを意味します。日本も、オーストラリア、東南アジア、ロシアなどから輸入をおこなっており、2018年5月には、米国からシェールガス由来のLNGの輸入も始めました(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」参照)。2018年10月には、日本で、産出国と消費国が望ましい市場の姿を議論する「LNG産消会議」が開催され、持続可能なLNG市場に向けた国際的な取り組みが始まっています(「産出国と消費国がともに議論する、LNGの今とこれから~『LNG産消会議2018』」)。
イクシスLNGプロジェクトとは、このようなLNGについて、オーストラリア北西部の沖合にある「イクシス ガス・コンデンセート田」を開発し、準州ノーザンテリトリーの州都・ダーウィンで生産するというプロジェクトです。
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実施しているのは、日本の石油・天然ガス開発企業で、中東やアフリカ、米国などで油田などを開発している「国際石油開発帝石(INPEX)」。このような大型LNGプロジェクトで、日本企業が主導しオペレーター(操業主体)を務めるのは初めてのことです。このイクシスLNGプロジェクトがどれほど大規模なものであるかは、施設の大きさを見てもわかります。洋上に浮かんでいる「沖合生産・処理施設」の高さは210m、「沖合生産貯油・出荷施設」の高さは140mと、高層ビル並の大きさです。また、このガス田からダーウィン港そばにある「陸上ガス液化プラント」まで、890kmにもおよぶ長さの海底パイプラインでガスが輸送されていますが、これは東京都から福岡県までの直線距離とほとんど同じ距離です(約880km、国土地理院調べ)。
イクシスLNGプロジェクトが鉱区を取得したのは、1998年でした。そこから探鉱(ガスのある地層を探すこと)や掘削を開始して、20年という長い年月かけて開発をおこない、2018年7月27日、ついに生産井からのガス生産が始められました。そしていよいよ10月から、日本に向けたLNGの出荷が開始されています。
今後は年間で約890万トンのLNGを生産し、そのうち年間で約570万トンを日本買主向けに輸出する予定です。この量は、日本におけるLNG需要の約7%にあたります。販売契約を結んだ先には、JERA(東京電力グループと中部電力が合弁でつくった火力発電会社)や東京ガスなど、日本のエネルギー会社がずらりと並んでいます。
イクシスLNGプロジェクトにおけるLNG販売契約
日本企業が主導して開発するLNGが手に入るようになることは、LNGの安定供給に大きな意味をもたらします。また、イクシスLNGプロジェクトの成功は、LNG産出国であるオーストラリアとの協力関係を、さらに次のステージへと押し進めることにもつながります。さらに、今後、日本企業が製造したLNGを第三国向けに販売するLNGビジネスを展開するようになれば、アジアにおけるLNG市場の拡大も促進されます。日本企業のLNG分野における新たな挑戦への期待が高まります。
資源・燃料部 石油・天然ガス課
長官官房 総務課 調査広報室
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