日本の新たな国際資源戦略 ②LNGセキュリティの強化に向けて

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2020年3月に策定された、日本の新しい「国際資源戦略」についてお伝えしているシリーズ。エネルギー政策の原則である、「安全性」をベースとした上で「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」のバランスをとる「3E+S」の方針のもと、日本はどのような対策を取ろうとしているのでしょうか。石油に関する戦略をご紹介した「日本の新たな国際資源戦略 ①石油の安定供給基盤をさらに強化する」に続き、第2回では液化天然ガス(LNG)に関する戦略をご紹介しましょう。

LNGを安定的に確保するため、調達先を多角化する

液化天然ガス(LNG)は、温室効果ガス(GHG)の排出が少なく、クリーンなエネルギーとして、その役割がますます注目されつつあります。日本でも一次エネルギー源の約23%を占めており、重要な存在となっています。しかし、LNGは石油のように備蓄を保持していくことが難しいため、万が一のときに供給が途絶えることがないようにする必要があります。

そこで、「新戦略」では、LNGの安定供給を確保するために、調達先が特定の国や地域に偏らないよう多角化し、セキュリティを強化することが掲げられました。

現在の世界のLNG供給量を見ると、その半分以上を中東とオーストラリアが担っていることがわかります。しかし、今後は資源開発が進む米国、ロシア、アフリカにおいて生産が拡大する見通しです。

世界のLNG純輸出量の変化
世界のLNG純輸出量を2018年と2040年(予測)の円グラフで比較しています。

(出典)IEA World Energy Outlook 2019

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また、日本にとっては、今後、ロシアからの供給も拡大すると見込まれます。北極圏に豊富な資源を持つロシアは、日本から地理的に近く、中東や北米に比べて輸送日数が短いなどの利点があるためです。そこで、今後は日本企業も北極圏の資源開発に積極的に参加できるように支援していくことが必要になります。

加えて、北極圏から海氷の厚い北極海航路を通じて日本まで、安定的にLNGを供給するためには、「積替基地」の存在が非常に重要です。北極圏で生産されたLNGは、氷を砕きながら進む「砕氷LNG船」で輸送されますが、それをカムチャツカなどの積替基地にある貯蔵設備にいったん貯蔵した後、通常のLNG船に積み替えて各地へ輸送すれば、輸送コストの低減をはかることができるからです。さらに、日本企業が積替基地の建設にかかわることで、基地をLNG流通の拠点として新たなビジネスの可能性も開けます。

これまでも、ガス田の開発や天然ガスの液化事業に関しては、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が出資や債務保証をおこなうことを通じて、日本企業を支援してきました。今回の「新戦略」を受けて、JOGMECの業務範囲を規定するJOGMEC法(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法)を改正し、LNGの積替基地の建設や操業をおこなうプロジェクトに関しても、日本企業が事業へ参画する際に、JOGMECが出資や債務保証をおこなうことを可能としました。

北極圏におけるLNG開発と北極海航路
北極圏におけるLNG開発と北極海航路の位置を世界地図上で示しています。

(出典)新・国際資源戦略の方向性

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さらに、近年では、こうした天然ガス市場の拡大につれて、新たなLNG事業モデルがあらわれてきています。従来はガスが産出した場所(ガス田開発地)で天然ガスの液化までおこない、LNGにして出荷する事業モデルが主流でした。しかし現在では、ガス田開発地からパイプラインでガスを輸送し、遠隔地で別の事業者が天然ガスの液化事業をおこなうというように、ガス田開発事業者と天然ガスの液化事業者が分かれているケースも増えつつあります。こうした事業モデルの変化に柔軟に対応し、日本企業が事業に参画できるよう支援していきます。

ガス田開発事業者と天然ガスの液化事業者が一体のケース、事業者が分かれているケースの事業の流れを図であらわしています。

(出典)新・国際資源戦略の策定に向けた論点

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拡大するアジア需要を取り込んだ市場をつくる

世界のLNG需要は2040年までに倍増が見込まれています。しかし、輸入国の内訳は現在と大きく変わってくることが予想されます。2018年は日本と韓国で純輸入量の47%を占めていましたが、2040年には中国、インド、その他アジアなどが増え、日本の占める割合が大幅に減ることが見込まれているのです。

世界のLNG純輸入量の変化
世界のLNG純輸入量を2018年と2040年(予測)の円グラフで比較しています。

(出典)IEA World Energy Outlook 2019

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今後も引き続き、市場への日本の影響力を維持し、LNGの安定調達を確保するためには、拡大しつつあるアジア需要を積極的に取り込んで、厚みのある国際市場の形成を主導していくことが必要です。(「LNGを安定的に供給するための取り組み」参照)。そのために、「新戦略」では、以下のような取り組みをおこなうことが掲げられました。

第三国向けの取引を強化する

従来はJOGMECが、ガス田の開発や天然ガスの液化事業に関して出資や債務保証をおこなうことを通じて、日本向けに出荷されるLNGの開発、生産事業への日本企業の参画を支援してきました。今後はそれだけでなく、LNGの生産から受け入れまでのバリューチェーン全体を視野に入れ、第三国向けに供給される取引についても日本企業が関与できるようにしていきます。たとえば、アメリカで生産されたLNGを東南アジアや南アジア諸国などに運ぶ事業を、日本主導でおこなうなどです。

そのためにJOGMEC法を改正し、第三国におけるLNGの受入基地の建設や操業をおこなうプロジェクトに関しても、日本企業が事業へ参画する際に、JOGMECが出資や債務保証をおこなうことを可能としました。

LNGの第三国貿易の推進
LNG産出国から日本向けの従来の供給ルートと、第三国へ向けたこれからの供給ルートを地図上で示しています。

(出典)新・国際資源戦略の方向性

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日本企業のLNG取扱量の目標を年間1億トンに設定

アジア市場を拡大していくためには、50年にわたる日本のLNG輸入の知見を活かし、新規のLNG発電所をつくるなどアジアの需要を積極的に開拓し、新たな供給プロジェクトの立ち上げを促進していくことも重要です。そのために、日本企業のLNG取扱量を増やし、2030年度には、第三国向けの取引を含め1億トンにすることが目標に定められました。今後も、日本が世界最大のLNG需要国として主導していくことを目指します。

新たな人材を育成する

市場の拡大や新しい事業モデルに対応する人材を育成すべく、アジア諸国に向けてLNG協力をおこなうJOGMECなどの諸機関が協力して「LNG人材研修実施団体協議会」を政府が仲立ちとなって開催する予定です。また、米国をはじめ各国と協力してワークショップなどもおこなっていきます。

仕向地条項の撤廃に向けて努力する

今後も引き続き、日本がLNGの取扱量を維持していくためには、「仕向地(LNG船の目的地)」の自由化も重要な課題です。多くのLNG取引契約には、仕向地を指定する「仕向地条項」という条件がついており、LNG船が向かうことのできる基地が限定されています。そのため、LNGの転売によって需給を調整することが困難になり、ビジネスの柔軟性が失われがちです。

こうした状況を改善するために、従来から、産出国と消費国が連携して、仕向地制限の緩和・撤廃に向けた話し合いが続けられてきました。今後も引き続き撤廃に向けた政府レベルでの対話・協力を進め、EUなどとも協力してアジアでの理解促進や、さらなる消費国連携を推進していくこととしています。

次回は重要性を増すレアメタルについて紹介します。

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