日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか

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2018年9月6日(木)未明、北海道胆振東部を最大震度7の地震が襲いました。地震そのものの大きさもさることながら、その後に起きた北海道全域の停電、“ブラックアウト”は大きな問題となり、TVや新聞などでも広く報じられました。今回は、その原因究明と、再発防止に向けた取り組みの現状をご紹介します。

検証委員会の中間報告で明らかになった、ブラックアウトの原因とは

北海道で最大震度7の地震が起こったのは、2018年9月6日3時7分。この地震にともない、北海道エリアにおいて、3時25分、日本で初めてとなるエリア全域におよぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生してしまいました。

“ブラックアウト”とは、大手電力会社の管轄する地域のすべてで停電が起こる現象(全域停電)のことを意味します。大きな自然災害にともなって大規模停電が発生することはこれまでにもありましたが、今回の北海道のケースでは、北海道全域で停電が起こりました。なお、海外においては、ある地域全域での停電ではないものの、非常に規模の大きな停電についても、ブラックアウトと呼ばれることがあります。

今回のブラックアウトの原因究明にあたっては、国の関連機関である「電力広域的運営推進機関」(「電力システム改革の鍵を握る『広域機関』」参照)に第三者委員会(検証委員会)が設置され、専門的な観点から、データに基づいた検証がおこなわれました。2018年10月25日、検証委員会は、国の審議会に中間報告をおこないました。現時点でどのようなことが明らかになったのでしょうか。

「停電」のメカニズム

そもそも、何が停電を引き起こすのでしょうか。これには「電気の性質」が関係します。北海道のブラックアウトの背景を知るには、まず、この電気の性質を知る必要があります。

電気は、電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が常に一致していないと、電気の品質(周波数)が乱れてしまいます。供給が需要を上回る場合は周波数が上がり、その逆の場合は周波数が下がります。これがぶれてしまうと、電気の供給を正常におこなうことができなくなり、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、場合によっては大停電におちいってしまいます。

ここでポイントとなるのは、需要と供給は『常に』一致していなくてはならないという点です。北海道でも、通常は、50Hz(ヘルツ)という周波数の水準が維持されていました。しかし大地震の後、需要に対する供給がバランスを崩し、電気が足りなくなって周波数が下がったことから、大停電が実際に起きてしまったのです。

電気の安定供給の考え方
需要と供給を一致させる必要がある電気の性質を天秤で表した図です。

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今回の地震発生直後からブラックアウトにいたるまでに何が起きたのか?

地震発生直後からブラックアウトにいたるまでの17分間には、何があったのでしょうか。検証委員会で、そのメカニズムが解明されました。

検証委員会で明らかになったのは、さまざまな原因が複雑にからみあって、ブラックアウトが発生したということです。

地震発生の直後、当時北海道で動いていた、もっとも大きな発電所である「苫東厚真火力発電所」が停止したことは、大きなニュースになりました。では、苫東厚真火力発電所が停止したから、ブラックアウトになったのかというと、それだけではありません。実は、この17分の間に、水力発電所や、風力発電所も大量に停止してしまっているのです。大まかに言うと、以下のような順番で発電所が停止してしまいました。

リストアイコン ① 苫東厚真火力発電所(2号機・4号機)の停止(116万kW)
リストアイコン ② 風力発電所の停止(17万kW)
リストアイコン ③ 水力発電所の停止(43万kW)
リストアイコン ④ 苫東厚真火力発電所(1号機)の停止(30万kW)
リストアイコン ⑤ ブラックアウトの発生

このように、供給力がだんだん失われていき、最後にはブラックアウトが起きてしまったのです。

苫東厚真火力発電所が止まってしまったのは、地震の震源地と近かったために、機器の一部が壊れたことが原因でした。一方、水力発電所は、その発電所とつながる複数の送電線がすべて切れてしまったことが、電気を供給できなくなる原因となりました。さらに風力発電は、前述した周波数が低下してしまったために停止してしまいました。このように、それぞれの発電所は、それぞれ異なる理由で停止してしまっていたのです。そこで、検証委員会から提言された再発防止策には、こうしたさまざまな発電所に対する対策が盛り込まれました。

ブラックアウトからの復旧はうまくいったのか?

今回の検証委員会でもうひとつの論点となったのは、ブラックアウトが発生してから復旧するまでの対応が適切だったかということです。

委員会による検証の結果、北海道電力は事前に定めていた手順にしたがって復旧作業をおこなっており、手順については、「おおむね妥当な対応がおこなわれた」という評価が示されました。実際、地震発生後には最大約295万戸が停電していましたが、発生後から約2日でそのうちの約99%が停電から復旧しており、今年、ほかの自然災害事例で発生した停電が解消するまでにかかった時間と比較すると、かなりの早さで復旧作業が進んだことがわかります。

各災害時における停電戸数の推移
北海道地震、台風21号、台風24号、西日本豪雨の際の停電戸数と復旧の推移を示したグラフです。

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復旧から需給安定化まで

このように、北海道電力の努力もあり、供給力は早い段階で回復しましたが、それでもなお9月8日(土)の時点では、地震前日の電力の最大需要(383万kW)と比較すると、約1割の供給が不足している状態となっていました。平日は工場などが稼働するため休日よりも大きな需要が発生することが見込まれ、このまま平日を迎えると需要と供給のバランスがふたたび崩れ、大規模な停電にいたる危険性がありました。

そこで、北海道内全域の家庭・業務・産業の各部門に対して、需要が増加する平日8:30~20:30の間(節電タイム)に、約2割の節電をお願いしました(「北海道のみなさまへの節電のお願い」参照)。

北海道の皆さんの協力により、この節電の目標は達成することができ、停電の危機は回避されました。また、9月19日(水)には苫東厚真火力発電所1号機という大規模火力発電所が復旧し、北海道の電気の需給を安定化させることができました。

需要と供給のバランス(現時点)
現時点における北海道の電力の需要と供給のバランスを示したグラフです。

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より災害に強い電力インフラへ

2018年10月9日、経済産業省が開催する総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会と、産業構造審議会 電力安全小委員会の下に、新たに「電力レジリエンスワーキンググループ」が設置されました。これは、検証委員会の中間報告もふまえ、災害に強い電力の供給体制を構築するための課題や対策について、工学、法律、防災分野などの識者が集い、議論するための会議です。10月25日に開催された第2回では今回の中間報告が紹介されましたが、ワーキンググループでの議論でも、北海道電力の設備形成や発災当時の対応などについて、適切でない点は見当たらなかったということが確認されました。

今後、こうした大規模停電の発生を未然に防ぐため、政府は、各電力会社に火力発電所などのインフラ設備が安全であるかどうかの総点検を実施するよう指示しました。また、これから実施すべき対策について、その報告をふまえて講ずることとしています。

「電力レジリエンスワーキンググループ」は、2018年11月中旬にも議論の取りまとめをおこない、11月末をめどにおこなわれる政府の重要インフラ総点検およびその対策にも報告・反映する予定です。このような取り組みを通じて、電力インフラの安全性を高め、より災害に強い電力の供給体制を構築していきます。

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記事内容について

電力・ガス事業部 電力基盤整備課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

2018/11/2に公開した際、『検証委員会の中間報告で明らかになった、ブラックアウトの原因とは』の項で、北海道胆振東部地震の起こった時間を「2018年9月6日3時6分」としておりましたが、正しくは「2018年9月6日3時7分」でした。お詫びして訂正いたします。(2018/12/19 13:00)

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