「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み④ ~豊富なエネルギー資源を持つ米国

イメージ画像

「パリ協定」(「今さら聞けない『パリ協定』 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照 )に基づいて掲げた目標に向け、各国の温室効果ガス(GHG)排出削減の取り組みを紹介するシリーズ。4回目は、米国のGHG排出削減に向けた施策や進捗状況についてご紹介しましょう。

エネルギー自給率は高いが、エネルギー起源CO2の年間排出量は主要国で最多

米国は、国内に石油、天然ガス、石炭などあらゆる化石資源を持っています。加えて、原子力発電は2019年4月現在、世界でもっとも多い98基の原子炉を保有しており、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー(再エネ)についても、広大な国土に加え、風況(風の吹き方)や日照などの点で立地条件に恵まれています。そのため、米国のエネルギー自給率は約90%と、主要国でもっとも高く、かつ、電気料金はもっとも低い水準となっています。

自給率・国産資源の比較
日、仏、中、印、独、英、米の自給率・国産資源の比較を表にしています

(出典)「エネルギー白書2019」(図【第122-4-1】)

大きい画像で見る

電気料金の各国比較
日、英、米、仏、独の家庭用・産業用電気料金を折れ線グラフで示しています

(出典)IEA「Energy Prices and Taxes」を基に資源エネルギー庁作成

大きい画像で見る

しかし、燃料の燃焼や、供給された電気や熱の使用にともなって排出されるCO2(エネルギー起源CO2)の年間排出量は48億トンと、主要国でもっとも多く、ひとり当たりの排出量ももっとも多くなっています。

米国は、前オバマ大統領時代には、GHGを2020年に17%削減、2025年に26~28%削減(いずれも2005年比)という目標を掲げました。その後、トランプ大統領は、2017年8月にパリ協定からの脱退を国連に通告しましたが、パリ協定の脱退が手続き上有効になるのは早くても2020年11月のため、現時点では目標はまだ有効といえます。

目標に向けた進捗状況は、2016年時点で、2005年に比べ12%の削減実績となっています。直近の3年間を見ると削減の傾向にはあるものの、2025年の目標ラインより上ぶれしており、削減目標の達成のためにはさらなる努力が必要です。

米国のGHG削減の進捗状況
米国のGHG削減進捗状況をグラフで示しています。また、要因1として「非化石電源比率(再エネ+原子力)」、要因2として「エネルギー消費削減」もグラフで示しています。

大きい画像で見る

では、米国におけるGHG排出の構造は、どのようになっているのでしょうか。米国のエネルギー起源CO2が占める割合は83%であり、そのうちの39%が発電にともなう排出です。このため、CO2を削減するには、再エネや原子力といった非化石電源(石油やガスといった化石燃料以外のエネルギーを使って電気をつくる方法)の比率を増加する「電源の非化石化」と、「省エネルギー」をバランスよく進めていく必要があります。非化石電源の比率は、再エネの増加により徐々に増えていますが、最終的に消費者が使用するエネルギー(最終エネルギー消費)の削減状況は横ばいとなっています。

米国の中期目標と進捗
米国の中期目標とその推移を表とグラフでそれぞれ示しています。

(出典)IEA World Energy Balancesなどを基に資源エネルギー庁作成

大きい画像で見る

原子力と再エネによって、エネルギー供給の低炭素化を推進

次に、GHG削減のために必要な、電源の非化石化や低炭素燃料への転換など「エネルギー供給の低炭素化」について、進捗状況を見ていきましょう。米国は、約2割の原子力発電比率を維持しつつ再エネ発電の比率も増やしており、それにより電源の非化石比率は2005年の28%から2016年には34%に増加しています。それにともなって、火力発電の比率がゆるやかに低下しています。

米国の電源構成(発電電力量:430万GWh ※2016年)
米国の電源構成の割合をグラフで示しています

(出典)IEA World Energy Balancesなどを基に資源エネルギー庁作成

大きい画像で見る

① 再エネ

米国は、国全体としての再エネの導入目標は明示しておらず、再エネの施策は州単位でおこなわれています。また、再エネなどで発電した電気を国が決めた価格で買い取るよう電力会社に義務づけた「固定価格買取制度(FIT)」などによる導入支援も、全土を対象としたものは基本的にありませんが、州によっては導入促進を実施しています。こうした状況のなか、米国の再エネ発電の比率は、2010年の10%から2016年には15%に増加しています。

州ごとに進む取り組み
州単位での導入促進策の例として、50州のうち29州はRPS制度(Renewables Portfolio Standard。一定の再エネ由来の電力の調達を小売事業者に求める制度)を導入しています。たとえば、カリフォルニア州では、販売電力量のうち再エネに由来する電力が占める割合を2030年までに60%とすることを小売事業者に求めているところ、2016年の州全体の比率は40%となっています。また、ニューヨーク州も2030年までに再エネ由来の電源比率を50%とすることを小売事業者に求めていますが、2016年の州全体の実績は25%となっています。

② 原子力

世界でもっとも多くの原子炉を保有する米国では、2019年4月現在、国内60の発電所で98基が稼働しています。米国政府は、今後の原子力発電比率について見通しを明示していませんが、従来から、原子力発電の比率は約2割を維持しています。2017年6月、トランプ大統領は「原子力の再興と拡大」を表明しました。2018年9月に、議会は前年比10%増となる13億ドルの原子力関連予算を承認、さらに同月に、民間の原子力研究開発・実証を促進する法律が成立しています。

③ 火力

米国では、電源の約5割が石炭火力発電によって供給されており、その燃料のほぼ全量が国産石炭によってまかなわれています。前オバマ政権は、火力発電所からのCO2排出を2030年までに2005年比で32%削減する施策を進めていましたが、トランプ政権下では廃止提案がなされています。

火力発電の燃料については、2006年以降、シェール革命(「2018年5月、『シェール革命』が産んだ天然ガスが日本にも到来」参照)によって安価な天然ガスが生産されるようになったため、天然ガスへの転換が進みました。ガスによる火力発電の比率は、2005年の18%から2016年には33%まで増加し、石炭による火力発電の比率は、2005年の51%から2016年には32%へと低下しています。

なお米国は、CO2削減のため、発電所などで排出されたCO2をほかの気体と分離して集め、地中深くに貯留・圧入する技術「CCS」(Carbon dioxide Capture and Storage)や、分離・貯留したCO2を利用する技術「CCUS」(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)にも力を入れています。(「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)

最終エネルギー消費は、2005年から横ばい状態

米国は、省エネルギーについての目標・見通しを基本的に明示していません。実際の消費の動向を見ると、最終エネルギー消費は、2005年以降、ほぼ横ばいとなっています。

部門別に見ると、運輸部門の効率が主要国の中でも特に低いうえに、最近では運輸部門のエネルギー消費量が増加傾向にあります。前オバマ政権下で2012年に策定された「自動車燃費基準(Corporate Average Fuel Economy ※現在の乗用車・ライトトラックの燃費・CO2 排出規制)」では、2025年までに2016年比50%の乗用車の燃費改善をおこなうこととされていましたが、この施策はトランプ政権による見直しが検討されています。

次回は、EUの状況についてご紹介します。

お問合せ先

記事内容について

長官官房 総務課 戦略企画室

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室