「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?

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世界で進んでいる、CO2を始めとした温室効果ガス(GHG)排出削減の取り組み。特に、2016年に発効した「パリ協定」のもと、各締約国では、エネルギー供給と使用に関して、GHGの排出量を削減する「低炭素化」の政策が強力に進められています。では、各国の削減政策は、現在どのような進捗にあるのでしょうか。主要先進国の状況について、シリーズでご紹介しましょう。

パリ協定に基づいた長期目標と中期目標

温暖化対策は、世界中の国々にとって、全力で取り組むべき重要な課題です。そこで、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」が合意され、2016年11月に発効されました。

パリ協定では、世界全体で取り組む目標として、以下の2つが掲げられています。

リストアイコン 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
リストアイコン そのため、できるかぎり早く世界のGHG排出量をピークアウトし、21世紀後半には、GHG排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

パリ協定の締約国は、この目標を達成するため、GHG削減に関する国内措置をとることが求められています。具体的には、各締約国はGHG削減に関する「自国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution、NDC)」を決定し、策定した計画を「国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)」に対して5年ごとに提出・更新することが求められています。

現在は、パリ協定が採択される前に各国で策定されていた貢献案がそのままNDCとなっており、このNDCに基づいて、GHG削減に向けたさまざまな施策が進められています。では、各国では今どのような取り組みがおこなわれ、どのような状況になっているのでしょうか。主要な先進国の進捗を見てみましょう。

各国の目標の達成状況はどうなっているの?

エネルギーを起源とするCO2の排出量を削減していくためには、「エネルギー供給の低炭素化」と「省エネルギー」が必要です。

「エネルギー供給の低炭素化」では、再生可能エネルギー(再エネ)や原子力などのCO2排出量が少ない「非化石電源(石油やガスといった化石燃料以外のエネルギーを使って電気をつくる方法)」の比率をアップしていく、あるいは化石燃料を使う場合には、従来の石炭・石油から、ガスのような低炭素な燃料へと転換していくなどの取り組みが進められています。一方「省エネルギー」では、エネルギー消費効率の改善が必要となります。

次の図は、欧米諸国および日本のGHG削減に関する中期目標と、現在までの進捗状況について、各種資料をもとに資源エネルギー庁がまとめたものです。

主要国のGHG削減の進捗状況
日本、英国、米国、フランス、ドイツ、EUのGHG削減進捗状況をグラフで比べています。また、要因1として「非化石電源比率(再エネ+原子力)」、要因2として「エネルギー消費削減」もグラフで比較しています。

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それぞれの項目について詳しく見てみましょう。

「中期目標と進捗」の項目では、NDCにおける「削減目標水準」と「排出基準年」(排出量を測る場合に、比べる基準となる年)とを結んだ直線「目標ライン」に向けて削減が進展しているのは、日本と英国です。一方で、米国、フランス、ドイツは、目標ラインより上ぶれしており、排出削減の量やペースが目標ラインに追いついていないことがわかります。

●日本
「目標:2030年度に26%のGHG削減(2013年度比)」に対して、2016年度時点で7%の削減実績。目標ラインと同水準で、最近の動きは削減の傾向。
●英国
「目標:2030年度に57%のGHG削減(1990年比)」に対して、2016年時点で41%の削減実績。目標ラインと同水準で、最近の動きは削減の傾向。
●米国
「目標:2025年に26~28%のGHG削減(2005年比)」に対して、2016年時点で12%の削減実績。目標ラインから上ぶれ、最近の動きは削減の傾向。
●フランス
「目標:2030年に40%のGHG削減(1990年比)」に対して、2016年時点で18%の削減実績。目標ラインから上ぶれ、削減傾向は横ばい。
●ドイツ
「目標:2030年に55%のGHG削減(1990年比)」に対して、2016年時点で27%の削減実績。目標ラインから上ぶれ、削減傾向は横ばい 。

この目標ラインを達成していく上で、重要な「エネルギー供給の低炭素化」と「省エネルギー」の指標として、「要因1」では、各国の非化石電源(再エネ・原子力)の比率について示し、「要因2」では、エネルギー消費量の削減、つまり省エネルギーの状況について示しました。

●日本
「非化石電源比率」は、東日本大震災後の原子力発電所の停止によって12%まで低下したものの(2012年度)、2017年度には19%まで回復。「エネルギー消費」は過去も現在も削減傾向。
●英国
「非化石電源比率」は、一定の原子力発電比率を維持しつつ再エネ比率を伸ばしていることから、2010年比で約2倍(47%)に増加。火力も天然ガスへの転換を図っている。「エネルギー消費」は過去も現在も削減傾向。
●米国
「非化石電源比率」は、一定の原子力発電比率を維持しつつ再エネ比率を伸ばしていることから、2005年の28%から2016年の34%まで増加。火力はシェール革命によってガス価格が下がっており、天然ガスへの転換を図っている。「エネルギー消費」は過去も現在も横ばい。
●フランス
「非化石電源比率」については、すでに電力供給の約9割が非化石電源でおこなわれているため、エネルギー供給の低炭素化をはかる余地が限られている。そのため省エネルギーが必要となるが、「エネルギー消費」は現在横ばい傾向。
●ドイツ
「非化石電源比率」は、再エネ比率が2010年比で約2倍の30%に増加しているものの、原子力発電比率が低下しているため、現在は約4割と横ばい。「エネルギー消費」も現在横ばい傾向。

先ほどの進捗と合わせて見てみると、日本と英国は、電源の非化石化、ガスへの燃料転換、省エネルギーなどの取り組みをバランスよく進めていることから、目標ラインに向けて順調に進展できているということがわかります。

次回からは、各国の状況について、さらに詳しくご紹介していきましょう。

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