北欧の「最終処分」の取り組みから、日本が学ぶべきもの④

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原子力発電(原発)の運転にともなって発生する、「高レベル放射性廃棄物」。スペシャルコンテンツでは、「北欧の『最終処分』の取り組みから、日本が学ぶべきもの」と題し、高レベル放射性廃棄物を地下深くの安定的な地層の中に埋める最終処分方法「地層処分」について、世界の状況や先行する北欧の取り組み、それらを参考に日本で進められてきた取り組みについてご紹介してきました。シリーズ最終回となる今回は、さらに関心を広め、理解を深めていくために始められている、新しい取り組みについてご紹介しましょう。

SNSや関心グループ支援を通じて、より一層きめ細やかな情報提供を目指す

これまでの対話活動で見えてきた課題とはどのようなものでしょうか。たとえば、これまでの説明会スタイルでは、参加者の年代に偏りが見られ、現役世代や若者、女性の参加者が少ないという現状がありました。最終処分は国民みんなの課題ですから、今後はこうした層へも関心のすそ野を拡大していかなくてはなりません。

また、一定の関心の広がりが見られる中で、一般的な情報だけにとどまらず、事業について「より深く知りたい」と考えている関心の高い層も増えてきています。こうした関心の高いグループに向け、個別ニーズに応えるような、具体的で詳細な情報を提供していくことも求められています。

こうした課題について、経済産業省は、「総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループ」で検討・議論を実施。2019年11月に、以下のフェーズと取り組みを「複数地域での文献調査の実施に向けた当面の取組方針」として示しました。

複数地域での文献調査の実施に向けた当面の取組方針
フェーズ1を2019年内、フェーズ2を2020年めど、フェーズ3を2020年以降としてそれぞれの取り組み方針を図であらわしています。

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これまでの取り組みに加えて、まず実施が求められるのは、これまでの説明会の方式では十分にアプローチができていなかった現役世代や若者など、広い層からの関心を高めていく取り組みです(フェーズ1-①)。YouTubeの動画コンテンツやInstagramなどのSNSも活用して、初めてこの問題に触れる方にとってもわかりやすい情報を提供し、興味を持ってもらえるようなきっかけづくりを進めています。

それと同時に、全国での対話活動を通じて、この事業について「より深く知りたい」と考える人々に対する情報提供を強化していく取り組みも進めています(フェーズ1-②)。

2段階目は、現在全国各地に広がってきている、この事業について「より深く知りたい」と主体的な活動をおこなっている“関心グループ”についての取り組みです。こうした関心グループは、自らの地域に処分場を誘致するかどうかではなく、最終処分の問題を「社会全体で解決すべき課題」ととらえ、その観点から活動を進めています。2019年11月時点では50程度でしたが、2020年5月時点では80程度の関心グループが活動中です。たとえば、主婦層をターゲットとしたパンフレットや中学生向けの授業で活用できる教材などの勉強ツールを作成したり、それぞれの視点で地元のイベントで情報を発信したりするなど、全国で多様な取り組みをおこなっています。

諸外国でも、「より深く知りたい」というグループなどへ積極的に情報提供活動を行っている国があります。カナダでは、サイト選定プロセスを開始するにあたり、「Learn more」と呼ばれる活動が全国を対象におこなわれました。これは、「どのような事業なのか」、「選定プロセスはどのように進められるのか」などを知りたいと考える地域による主体的な学びに役立つような情報を届ける活動です。

この活動を通じて22の地域が、「より深く知りたい」という関心を示しました。「Learn more」の対象は「どのような調査が行われるのか」といった技術的なことから、「地域はどのように変わっていくのか」といった地域の将来に関わることまで広がってきています。原子力施設の見学、先行経験をもつスウェーデンの地域住民を招いた勉強会、ボーリング調査計画の説明会、地域の持続的発展に向けた長期ビジョンの策定など、調査で得られた情報と地域の関心に合わせた活動がおこなわれています。地域住民と最終処分を実施する主体が、ともに事業と地域の可能性を深く知り、考えあう良好な関係が築かれています。

日本でも、カナダのこうした活動も参考にしながら、“関心グループ”のニーズに応じて、地域の地質環境や、事業が地域におよぼす影響など、よりきめ細やかな情報提供を強化していきます。それとともに、各グループの活動内容を広く紹介することで、グループ同士の交流を深め、活動のさらなる拡大・深化につなげていくことで、2020年中を目途に、これらのグループを100程度に拡大していくことを目指しています。こうした多くの関心グループが全国でさまざまな活動を実施することで、経済団体や行政・議会関係者を含めた全国のより広い層に、この事業への関心を持ってもらうことができると考えられます。また、そのことが、今後の処分地選定調査につながっていくものと考えられます(フェーズ2-①)。

地域にあたえる影響を具体的にイメージできる情報をベースに、広く議論を進めていく

3段階目は、事業をさらに深く知ってもらうための取り組みの中で、最終処分事業が地域にあたえる影響についても、具体的にイメージできるような情報などを示していくことです(フェーズ2-②)。

その前提として、サイト選定プロセスにおける「文献調査」の位置づけに対して、正しい理解を広めていくことが重要です。文献調査とは、処分場の受け入れを求めるものではなく、現地での調査(概要調査)を実施するかどうかを検討してもらうための材料を集める、事前調査的な位置づけにあるものです。また、文献調査から概要調査に進む場合には、地元の意見を伺い、地元が反対する場合にはプロセスを先に進めないことなどを、政府がわかりやすく発信し、広く理解を得ていくことが重要です。

最終処分事業が地域にあたえる影響とは、たとえばどのようなものが考えられるでしょうか。まずプラスの影響としては、必要となる費用が約3.9兆円とも試算される大規模で長期的な処分事業にともなって、地域の雇用や経済に波及効果が見込まれるということがあります。また、建設資材、宿泊施設や食事サービスなどの分野で、地元企業が参入できる可能性があります。このようなプラスの影響により、最終処分事業が各地域のかかえる課題に対してどのように貢献できるのか?という観点などに基づいた情報提供をおこなうことが考えられます。スウェーデンなどの先行する国々で、地域の声を踏まえながら実施されている地域発展に向けた取り組みに関する情報を提供することが考えられます。

一方で、農業や観光業への風評被害といった、マイナスの影響への懸念もあります。そうした懸念やその対応策についても、地域で具体的な議論をおこなうことができるよう、フィンランドの海外事例や国内類似事例などの情報を提供します。

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原子力発電環境整備機構(NUMO)「お問い合わせ」(フォーム・電話)

今後も、国内外の経験・知見に学び、これまでおこなわれてきた対話活動に改善を加えながら、最終処分の実現に向けて、理解を広めるための取り組みを進めていきます。まずは、最初のステップである文献調査を複数の地域で実施できるよう、取り組みを強化しつつ丁寧に歩みを進めていきます。

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