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特集記事「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」でもお伝えしたように、いまや鉱物資源は世界の産業に大きな影響を与える存在となっています。とりわけ今話題の 電気自動車(EV)にはさまざまなレアメタルが使われており、EVの普及のためには、鉱物資源に関する課題をクリアにしていく必要があります。EVと鉱物資源の関係を見てみましょう。
EVなどの次世代自動車は世界各国で広がっており、各国政府も普及に力を入れ始めています。なかでも中国やヨーロッパでは次世代自動車へのシフトが目立っています。各国では次世代自動車の販売目標を示しており、日本におけるEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせた目標台数は、累計で100万台です。
日本と諸外国の電気自動車(EV)普及目標
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次世代自動車の普及にともなって、今後大量に必要となるのが鉱物資源です。自動車はもともと多くの鉱物資源を必要とする産業ですが、電子部品の多いEVにはこれまで以上にたくさんのレアメタルなどが使われています。電気配線をまとめるワイヤーハーネスや駆動モーターには銅が必要で、これから銅の需要が大幅に増加すると考えられます。またリチウムイオンバッテリー(電池)にはリチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトなど数種類のレアメタルが使われています。
バッテリーなどに使われるレアメタルは、もともと市場がそれほど大きくありません。そのため急速な需要拡大に対応できず、これから価格高騰をまねく可能性があります。すでに供給が不足して価格が上がっているレアメタルもあります。EVの車体価格は、その3分の1がバッテリーによって占められるとされ、原材料となるレアメタルの価格が、車体価格そのものにも影響します。レアメタルの価格が高いとEVの量産ができない、あるいは製造そのものがむずかしくなるという問題があるのです。また、レアメタルは存在する国に偏りがあります。その中には、東南アジアや中南米、アフリカなど、政情不安などのカントリーリスクのある国や、輸入禁止などの資源ナショナリズムが顕在化している国が少なくありません(「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」参照)。
(出典)JOGMEC, Industrial Minerals, USGS等により経済産業省が作成
ほぼ100%の鉱物資源を輸入に頼る日本にとって、こうした国々からの輸入がとだえてしまうと、EVの生産や研究開発にも大きな打撃を受けてしまいます。
EV普及に大きな影響のある鉱物資源を安定的に供給するためには、官民が協力してさまざまな対策を行っていくことが必要です。そのため各鉱物資源の需給状況や市場動向をふまえて、より効果的な取り組みが考えられています。政府では資源国との関係を強化するため、首脳・閣僚レベルでの資源外交を進めています。これまで、チリやペルーでは鉱物資源開発協力のための覚書を交わしました。その他にも、様々な国と、日系企業が参画して鉱物資源を確保しやすい環境づくりに向けた話し合いを進めているところです。民間への支援策としては、リスクのある国で鉱山などの新規プロジェクトに参加する企業に対して、資金面のサポートを強化しています。このほか、リスクに備えた国内でのレアメタルの備蓄(「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」参照)では、備蓄量の増加や鉱種の追加など、備蓄の強化を検討しています。また、材料の省資源化や代替材料の開発、材料のリサイクルなどの対策についても、官民をあげておこなわれています。省資源化や代替材料の開発は日本が得意とする分野ですし、携帯電話やデジタルカメラが普及した日本では、廃棄される電子製品からのリサイクルも大きな可能性があります。
EV産業は、日本の高い技術力を活かせる産業でもあります。その成長は鉱物資源の安定供給と価格安定が大きなカギをにぎっているため、今後もさまざまな対策や取り組みを進めていきます。
資源エネルギー庁 資源・燃料部 鉱物資源課経済産業省 製造産業局 自動車課 電池・次世代技術・ITS推進室
長官官房 総務課 調査広報室
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