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採鉱・揚鉱パイロット試験時の海上の様子
「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」でご紹介したように、日本は、銅や亜鉛などのベースメタル、xEV(電動車)にも必要なレアメタルなどの鉱物資源に乏しく、輸入に頼っています。そうした鉱物資源の安定供給を図るために、研究・開発が進められている取り組みのひとつが、日本を取り囲む海洋に広がる鉱物資源の開発です。2018年10月、海洋鉱物資源の一種である「海底熱水鉱床」の開発について、これまで実施された取り組みに対する総合評価がおこなわれました。海底熱水鉱床は、どのような可能性を秘めているのでしょうか?
日本は世界で6番目の大きさの領海・排他的経済水域(EEZ)を持っています。もしこのような海域で、海底に存在する鉱物資源を収益が見合うように開発することができれば、鉱物資源の安定供給に役立ちます。これらの海域には、それぞれが異なる金属を含む4つの海洋鉱物資源があり、水深や分布状態にあわせて、それぞれに適した技術の開発がおこなわれています。この海洋鉱物資源のうちの1つが「海底熱水鉱床」です。海底から噴出した熱水に金属成分が含まれており、その成分が周辺の海水によって冷却され、その過程でさまざまな金属が沈殿してできたことから、こうした名称で呼ばれています。
海洋鉱物資源の種類
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海底熱水鉱床の開発は、経済産業省の委託を受けた独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、2008年度から、国がさだめた「海洋基本計画」や「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」にもとづいて進めています。JOGMECがおこなっているのは、以下の各分野での取り組みです。
その結果、これまでに沖縄海域の「Hakureiサイト」では740万トンの資源量が、伊豆・小笠原海域白嶺鉱床では10万トンの資源量が確認されました。さらに沖縄海域では、複数の有望な新しい鉱床を発見しています。また、採鉱・揚鉱技術の開発については、掘削・破砕試験機や水中ポンプなどの水中機器の試験機を製作。海底での過酷な環境におけるさまざまな試験を実施し、数百時間におよぶ安定的稼動を実現しています。2017年には、世界で初めて、水深約1,600mの海底から掘削した鉱石を収集し、水中ポンプを使って洋上へと連続して揚げるという「採鉱・揚鉱パイロット試験」(揚鉱試験)に成功しました。2018年度は、海底熱水鉱床の鉱石から、「亜鉛地金」の製造に成功するなど、選鉱・製錬技術の開発も進んでいます。あわせて、環境影響に関する取り組みも着実に進められており、長年にわたって環境データを取得するとともに、周辺環境への影響を評価するための手法のとりまとめも進められています。
海底熱水鉱床の鉱石(左)および製錬所で製造した亜鉛地金(右)
(出典)JOGMEC
こうした要素技術の確立とともに必要なのは、「経済性」、つまり開発にかかるコストと収益のバランスを取り、事業として企業や組織が携わることのできるものにするという点です。2013年に改定された「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」では、「2018年度に経済性の検討を実施する」ことが計画として盛り込まれています。また、2018年5月に閣議決定された「第3期海洋基本計画」においても、2018年度以降の取り組みについて、国際ルールの策定作業の進捗や経済性・市況などの外的要因も考慮した上で「総合的な検証・評価」をすること、また「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定して明らかにすることが掲げられています。そこで経済産業省とJOGMECは、海底熱水鉱床について、「資源量評価」「採鉱・揚鉱技術」「選鉱・製錬技術」「環境影響評価」の4つの各分野におけるこれまでの取り組みの実績と成果をまとめた報告書を作成し、それらに対する技術的な観点からの評価と、まだ残っている解決すべき課題を整理しました。さらに、海底熱水鉱床の開発について、これまでの実績もふまえて、現時点で想定されているビジネス化のイメージを基にした経済性の検討もおこない、今後の提言も含めた「総合評価報告書」としました。
総合評価の結果、長期的な視点にもとづく取り組みによって、以下の点を含むいくつかの課題が解決された上で、一定の金属価格の上昇があれば、経済性を見出すことができると評価しました。
この総合評価報告書は、今後の「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の改定に活かされ、海底熱水鉱床についてこれからどのように取り組んでいくか、その方向性や具体的な計画が示される予定です。日本の鉱物資源の供給に大きな役割を果たす可能性のある、海底熱水鉱床。取り組みの進展が期待されます。
資源・燃料部 鉱物資源課
長官官房 総務課 調査広報室
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