「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ④次世代の電力プラットフォームもにらんだ法改正

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近年増加している、自然災害による電力システムの被災。そこで今、電力インフラ・システムを強靱にすること(電力レジリエンス)が重要となっています。これを法制度の面でも促進しようと、2020年6月に国会で可決・成立したのが、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」、いわゆる「エネルギー供給強靱化法」です。法改正の狙いと各法制度のポイントを紹介するシリーズの第4回目では、「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ③被災に強く再エネ導入にも役立つ送配電網の整備推進」に続き、電気事業法の改正ポイントについてご紹介しましょう。

災害に強く、次世代型の電力網をめざして

今、日本の電力インフラ・システムは、「自然災害の頻発」「再エネの主力電源化に向けた対応」「地政学的リスクの変化」という課題を抱えています。これを解決するために今回おこなわれたのが、3つの法律のパッケージ改正でした。

改正された法律のひとつは、電気事業などに関するルールをさだめた「電気事業法」です。電気事業法の今回の改正ポイントには、(1)災害時の連携強化をはかること、(2)送配電網を強靱化することがあります。これは、2019年に台風15号・19号によって発生した広域的な送配電網の被災や長期化した停電など、近年の災害であきらかになった課題を解決するものとなっています。

さらに、もうひとつ注目すべきポイントとしてあげられるのが、災害に強い電力システムをつくるだけでなく、次世代の電力プラットフォームの構築を進めることにも役立つような制度の導入や改正です。「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ②被災からの学びを活かした電気事業法改正」でご紹介した、平時において電気使用状況などのデータを有効活用する制度の整備や、新たな託送料金制度の導入も、その一環と言えるでしょう。

また、次世代の電力プラットフォームでは、2018年に発表された日本のエネルギー政策の指針「第5次エネルギー基本計画」においても言及されたとおり、再生可能エネルギー(再エネ)が主力電源(電気をつくる方法)のひとつになります。この再エネは、電源が分散して設置されつつ互いに連携している「分散型エネルギーシステム」を拡大することにも役立ちます。この分散型エネルギーシステムは、次世代の電力プラットフォームの重要な要素であり、なおかつ災害に強い電力システムでもあります。

そこで、電気事業法の改正では、分散型エネルギーシステムの構築や拡大に役立つ、次のような方策が盛りこまれています。

分散型電源を活かすための法改正ポイント(3)災害に強い分散型エネルギーシステム

まず、改正法により、「配電事業」を新たに法律上に位置付けました。つまり、配電事業とはどのような事業なのか、それをおこなうにはどういった要件を満たすことが必要なのかといったことを、法律の中に明記したということです。

みなさんもご存じのとおり、これまでの日本では、各地域につきひとつの電力会社が、「発電」「送配電」「小売」という3部門を一貫して提供する形式がとられてきました。しかし、1995年以降進められてきた「電力システム改革」により、この3部門は分割され、発電部門と小売部門は新たな事業者の参入が自由化されました。これによって、再エネを使って発電をおこなう新しい発電事業者や、電気を住宅や工場などに販売する新しい小売電気事業者がたくさんあらわれました。一方で、送配電部門については、各地域につきひとつの旧来の電力会社がこの部門の分社化などをおこなった上で、「一般送配電事業者」として事業をおこなっています。

全国の各地域には、再エネのような分散型で小型の電源などを含む配電網をみずから設置し運営している事業者もいます。ある地域に災害などの緊急事態が起こった場合、この分散型の配電網を、一般送配電事業者が運営する地域全体の送配電網から切り離して、独立したネットワークとして運用することができたらどうなるでしょう?その配電網から電力供給を受ける需要家(電気を使う住宅やビルなど)は、停電などの影響を受けずに済む可能性があります。

地域全体の主要な送配電網と、配電事業者が運営する送配電網のしくみを図であらわしています。緊急時には相互の接続を切り離せるようになっています。

一方で、配電事業に新規参入する場合は、地域の配電網をみずから設置することは非常にコストがかかります。

そこで、災害に強い分散型電力システムの導入を拡大していくために、一般送配電事業者が運営していた配電網を新規事業者が借り受けたり譲り受けたりするなどして、配電事業に参入できるよう、「配電事業ライセンス」を創設することとなったのです。もちろん、配電事業者となるには、安定供給が確保できることが大前提ですが、これにより新規事業者が配電事業に参入すれば、IoTやAIなど先端技術を活用した運用や管理が進み、設備のコスト削減につながる可能性も考えられています。

また、新たに「指定区域供給制度」も創設しました。近年の災害では、配電線に飛来物が衝突して被害を受けることや、倒木などが道路をふさぎ山間部などへの立ち入りができなくなることで、山間部にある集落の送配電網復旧が長期化するといったケースが見られます。もし、普段から、集落に設置されている再エネなどの分散型電源と配電網を、主要な電力系統から独立して運用することができれば、こうしたケースでも電力供給を維持できます。

加えて、このような地域では、長距離の送配電線を維持するよりも、配電網を主要な電力系統から独立させた方が、安定供給にかかわるコストの面でもメリットがある場合が考えられます。そこで改正法では、効率的な運営に役立つ場合や、安定供給を阻害するおそれがない場合に、配電網の独立運用を可能にすることが明記されました。

環境を整備して分散型電源の導入を拡大

このように、災害時にも役立つ分散型電源の導入をうながしていくための環境整備も、今回の法改正でおこなわれました。

そのひとつは、新たに「アグリゲーター」の役割を明記し、電気事業法上に位置付けたことです。アグリゲーターとは、分散型電源をたばねて一定程度の電力供給量を確保し、「供給力」として小売電気事業者に提供する事業者のことです。改正法では、アグリゲーターとして事業を始める場合には、サイバーセキュリティ対策など事業環境が整っているか確認されるということが記されました。

さらに、一般家庭などに設置された太陽光発電や家庭用蓄電池などの分散型電源について、これらを利用した電力取引をさらに拡大するため、「電気計量制度」の合理化がおこなわれました。

たとえば、各家庭がアグリゲーターなどと、自宅にある分散型電源などについて電力の取引をおこなう際に、「EVの充放電量の取引をする場合に、EVの充放電器で計量した値を使用したい」、「第三者が各家庭の屋根に設置した太陽光発電設備から電力を購入する場合に、パワーコンディショナーで計量した値を使用したい」などのニーズがありました。しかし、現行の「計量法」に基づく電気計量制度では、厳格に定められたルールに基づいて検定などを受けた機器を別途設置しなければ、電力取引に使うことができる計量はできませんでした。

そこで、今回の改正ではこの制度を合理化し、計量法の検定などについて適用除外とする規定を創設しました。計量器の精度や消費者保護の確保など一定基準を満たしていれば、計量法の検定を受けていない計量器でも活用できることとしたのです。

次回からは、「エネルギー供給強靱化法」として改正された3つの法律のひとつ(「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味」参照)である「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」、いわゆる「再エネ特措法」について、その改正の狙いとポイントをご紹介しましょう。

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