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近年増加している、自然災害による電力システムの被災。そこで今、電力インフラ・システムを強靱にすること(電力レジリエンス)が重要となっています。これを法制度の面でも促進しようと、2020年6月に国会で可決・成立したのが、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」、いわゆる「エネルギー供給強靱化法」です。法改正の狙いと、各法制度のポイントを紹介するシリーズの第2回目では、電気事業法の改正ポイントについてご紹介しましょう。
「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味」でご紹介したように、電気の供給体制を強く持続的なものにする「エネルギー供給強靱化法」には、以下の3つの法律の改正が含まれています。
今、日本の電力インフラ・システムは、「自然災害の頻発」「再エネの主力電源化に向けた対応」「地政学的リスクの変化」という課題を抱えていますが、これを解決するためには、3つの法律をパッケージにして改正することが必要でした。このため、「電気事業法」の改正内容は、これらの課題と呼応したものになっています。課題と照らし合わせながら、改正ポイントを具体的に見ていきましょう。
皆さんの記憶にもあるとおり、2019年に日本を襲った台風15号・19号では、広域的に送配電網が被災し、停電が長期化するといったことが起こりました。長期化した原因には、倒木や飛来物による電柱の破損や倒壊、それにともなう断線、倒木で一部地域の立ち入りが困難となったことなどがあります。立ち入りの難しさは被害確認や復旧作業に時間がかかることにもつながり、復旧見通しの公表遅れや度重なる訂正といった問題も起こりました。さらに、電力会社の発表では「停電解消エリア」となっているのに、個別住居を詳細に見ると解消されていないという、いわゆる「隠れ停電」の問題も起こりました。
「隠れ停電」の背景には、現在の停電情報システムが「高圧線」の復旧情報を認識しており、個別の住宅などへとつながる「低圧線」や「引き込み線」の損傷を認識できないことがありました。各住宅に設置されたスマートメーターであれば個別の電力使用状況をつかむことができますが、データが活用できていませんでした。また、電力会社によって復旧手順が異なるなどの理由で、応援にかけつけた全国の電力会社と効率的に連携できなかったこと、復旧作業をになう自衛隊や地方自治体など多くの関係機関とうまく連携できなかったことが、効率的な復旧の壁となりました。
こうした問題を受け、改正電気事業法では、まず、①一般送配電事業者に「災害時連携計画」の策定を義務づけることとなりました。事前に計画をつくっておくことで、災害時における関係機関との連携をスムーズにすることが狙いです。策定した計画は、経済産業大臣に届け出ることが求められます。また、近年の災害の激甚化により、復旧にかかわる応援規模・期間が大規模化・長期化し、停電からの早期復旧を優先するためのコストも増加しています。そこで、②送配電事業者間で災害への対応にそなえて資金をあらかじめ積み立てておき、被災した際には積立から交付される「相互扶助制度」を創設することとなりました。この積立金は、被害を受けた電気設備に応急処置をおこなって復旧する「仮復旧」の費用にあてられることで、早期の復旧をうながします。ほかの電力会社から電源車などを派遣してもらう場合にも使われるため、被災したエリアからの応援要請がしやすくなります。
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さらに、③万が一被災して復旧活動をおこなう場合には、経済産業大臣からの要請に基づき、送配電事業者が自治体などに、戸別の通電状況などの情報提供をおこなうことも義務づけられました。
災害復旧時の自治体への電力データの提供イメージ
あわせて、平時において電気使用状況などのデータを有効活用する制度も、今回の改正で整備されました。こちらは、「2019年、実績が見えてきた電力分野のデジタル化③~電力データ編」でご紹介しているような、電力データにさまざまなデータを組み合わせることで、より多様なサービスを提供することを目指したものです。本人の同意を得た上で、高齢者の見守りサービスなどの事業者にデータを提供することができるようになります。災害や中東情勢の変化など、有事に民間事業者による調達が困難になった際には、④経済産業大臣がJOGMECに対して発電用燃料の調達を要請できる規定も盛り込まれました。JOGMEC法の改正でもJOGMECみずからが調達を実施できる規定が追加されています。次回も、電気事業法の改正ポイントについてご紹介しましょう。
電力・ガス事業部 電力産業・市場室電力・ガス事業部 電力基盤整備課
長官官房 総務課 調査広報室
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