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エネルギー・鉱物資源にとぼしい日本は、その需要量のほとんどを輸入に頼り、つねに資源の安定供給に不安をかかえています(「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」 参照)。そうした中で注目を集めているのが、日本の領海・排他的経済水域にひろがる、海洋エネルギー・鉱物資源です。これらの資源の開発や利用を促進する「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」が、2019年2月15日に改定されました。 中長期的に取り組むべき開発計画について、改定のポイントをご紹介します。

海洋エネルギー・鉱物資源に関する基本政策「海洋基本計画」

日本は、四方を海にかこまれている島国です。そこで、“海洋立国”の実現を目指そうと、2007年に「海洋基本法」が制定され、同基本法にもとづいて、翌2008年に「海洋基本計画」が策定されました。これは、海洋に関する施策の方向性を示しているもので、5年ごとに見直しがおこなわれています。計画の中では、日本の近海にある海洋エネルギー・鉱物資源の開発についての目標がさだめられており、その目標を達成するための計画として「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」が作成されています。同計画は、探査や開発の道筋、必要な技術開発などを、できるだけ具体的にさだめていることが特徴です。

ここで言う「海洋エネルギー・鉱物資源」とは、どのようなものが含まれているのでしょう?海洋エネルギーとしては、「メタンハイドレート」のほか、石油・天然ガスがあります。また海洋鉱物資源としては、「海底熱水鉱床」や「コバルトリッチクラスト」「マンガン団塊」「レアアース泥」などがあります。いずれも深い海の底にあり、これらを回収して利用するにはさまざまな技術や工夫が必要となります。

2018年5月には、「第3期海洋基本計画」が策定されました。そこで「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」についても、改定案を作成することになりました。改定された開発計画では、今後5カ年の計画を、それぞれの資源ごとにさだめています。次に、それぞれの資源の開発計画を見ていくことにしましょう。

「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の改定ポイント

メタンハイドレート:将来の商業生産を可能とするための技術開発を進める

メタンハイドレートは、エネルギー資源である「メタンガス」が水分子と結びつき、氷状の物質となったものです。温度が低く圧力が高い環境で存在するため、水深の深い海底や極地の凍土地帯に分布していて、日本の周辺海域にも存在しています。

おもに太平洋側に存在する砂層型(すなそうがた)メタンハイドレートは、長期にわたり安定的にガスを生産するための技術の開発や、メタンハイドレートがより多く集まっている場所を把握するための調査、海域の環境の調査などをおこないます。

おもに日本海側に存在する表層型(ひょうそうがた)メタンハイドレートは、海洋の環境を保全しつつガスを生産するための技術の開発や、メタンハイドレートの分布と海底の状況を把握するための調査、海域の環境の調査などをおこないます。

石油・天然ガス:新たな探査船により、詳細な地質情報取得をめざす

日本の周辺海域に存在する石油・天然ガスは、地政学的なリスクに左右されずにエネルギー供給できる重要な資源です。これらについては、高度な探査能力を持つ三次元物理探査船「資源」を使って調査がおこなわれてきました。「第3期海洋基本計画」では、引き続き国主導での探査をおこなうことが決定されています。

そこで、開発計画では、これからの10年間でおおむね50,000平方キロメートルの海域を新たな三次元物理探査船を活用して探査し、詳細な地質情報を取得することをさだめました。有望な海域では試掘の機会を増やすとともに、民間企業の参加もうながしていきます。

海底熱水鉱床:経済性を含む総合評価を実施

海底から噴き出す熱水に含まれている金属成分が、海水によって冷却されて沈殿するのが「海底熱水鉱床」です。銅、鉛、亜鉛、金、銀など、さまざまな金属成分が含まれており、日本周辺では、沖縄や伊豆・小笠原の海域に発見されています。

海底熱水鉱床の資源量については不明なことも多く、まずは質・量ともに経済価値の高い鉱床を確保するための調査が必要です。また、これまで開発してきた採鉱・揚鉱技術や選鉱・製錬技術について、商業化を見据えた効率化や汎用性の向上を進める必要があります。開発に伴う環境への影響の調査や、経済性の評価、法制度のあり方についても検討していく予定です。

コバルトリッチクラスト:2028年までに商業化の可能性を追求

「コバルトリッチクラスト」とは、海山斜面から山頂部をおおうマンガン酸化物です。コバルトはリチウムイオン電池に使われるため、自動車のEV・電動化を背景に、これから需要の増大が見込まれています。(「xEVに必須のレアメタル『コバルト』の安定供給にオールジャパンで挑戦」参照 )

南鳥島周辺の海域には、日本の排他的経済水域内や、国際海底機構(ISA)との契約により、日本が排他的探査権を得ている公海域に有望なコバルトリッチクラストの存在が確認されています。まずはこれらの海域の資源量調査や環境調査をおこない、採鉱や揚鉱の技術を確立していくことを目指します。さらに、こうした取り組みを通じて国際的なルールづくりへの貢献や、民間企業による商業化も模索していきます。

マンガン団塊およびレアアース泥:府省が連携して研究に取り組む

「マンガン団塊」は直径2~15センチの鉄・マンガン酸化物のかたまりで、銅、ニッケル、コバルトなどの有用金属を含んでいます。太平洋の深海に広く分布していて、このうちハワイ沖の公海域での探査契約をISAと結んでいます(2021年6月まで)。

「レアアース泥」は、海底に粘土状の堆積物として広く分布しており、日本の近海では南鳥島周辺の海域に存在しています。レアアースは先端産業に不可欠な素材ですが、産出する国が限られていることから、より安定的な供給源が求められています(「EV普及のカギをにぎるレアメタル」 参照)。

これら2つの資源については、SIP「革新的深海資源調査技術」において、各府省が連携して技術研究を推進していく体制をつくり、ISAのルールに従った調査をおこないながら、資源量の分析や、技術開発を進めていく計画です。

これらの海洋エネルギー・鉱物資源が利活用できるようになれば、エネルギーや資源の安定供給が実現できる可能性があります。ひとつひとつのステップを着実に進め、将来の利活用に向け官民連携して取り組んでいきます。

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