ALPS処理水の海洋放出から1年。安全性の確認とモニタリングの状況は?
SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動
飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?
目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (後編)クリーンな水素の利活用へ
資源エネルギー庁では、毎年、さまざまなエネルギー関係の統計資料などをもとにして、エネルギー需給に関する統計情報を「総合エネルギー統計」としてまとめ、日本のエネルギーミックス(「今さら聞けない『パリ協定』~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)の動きを確認したり、毎年4月に国連へ報告する「温室効果ガス国内排出量」を計算したりといったことに活用しています。統計の速報値は翌年の11月に、確報値は翌々年の4月に、そのデータを使って分析した「エネルギー需給実績」とあわせて発表しており、2017年11月17日には、2016年度のエネルギー需給実績(速報)が発表されました。2016年度のエネルギーミックスには、どのような傾向が見られたのでしょう?分析の基となる総合エネルギー統計への理解を深めながら、 最近のエネルギーの動きを詳しく見てみましょう。
「総合エネルギー統計」は、1953年度(昭和28年度)から始まりました。日本に輸入されたエネルギー源、あるいは国内で生産され供給されたエネルギー源が、どのように転換され、最終的にどのような形態で消費されたか、また消費した部門や目的は何だったかを調べ、定量的にまとめたものです。石炭、石油、天然ガスから再生可能エネルギー(再エネ)まで、すべてのエネルギーが対象となります。このようなエネルギーの情報を発表することで、エネルギーや環境に関する政策の企画・立案や、政策を評価することに役立てていただきたいと考えています。そのため、資源エネルギー庁では、統計をより使いやすくするための改善を日々おこなっています。 2016年度の速報を発表した際には、初めて、主要な指標を時系列で見ることができる表(xlsx形式:161KB)をホームページで公開しました。こういった取り組みを通して、エネルギーミックスの動向を、よりわかりやすくお伝えし 、広く知っていただくことで、エネルギーへの理解を深めていただきたいと考えています。
2016年度のエネルギー消費量の総計をあらわす「最終エネルギー消費」は、2015年度に比べると1.0%減りました。これは6年連続の減少です。
大きい画像で見る
部門別で見ると、企業・事業所他部門が2015年度比1.4%減、運輸で同0.7%減など、一部門をのぞくすべての部門で、最終エネルギー消費量が減少しています。経済が成長するとエネルギー消費量は増えますが、この量を省エネの取り組みで相殺した結果、全体では減少になったものと見られます。唯一エネルギー消費量が増えた部門とは、家庭部門です。2015年度比で0.6%増えており、夏の猛暑と冬の厳しい寒さが影響したものと見られます。また電力消費で見ると、企業・事業所他部門は同1.9%増、家庭部門は4年ぶりとなる同0.7%増となっており、エネルギーでも電力に限っていえば、全体で同1.5%増と3年ぶりに増加に転じています。電力消費の増加の要因としては、今年度は気温の影響が大きそうですが、長期的には、EVの普及や、ロボットや新しいエレクトロニクス製品の普及などの影響も考えられます。このため、需要の増加を抑えるための徹底した省エネや、需要の増加に対応する供給力の確保を、引き続きしっかり行っていくことが重要と言えます。
需要の減少に伴って、石油や天然ガスなど自然から採れたまま使用できる「一次エネルギー」の2016年度の国内供給は、2015年度と比較して0.3%減少しています。需要と供給の変化率に違いが出ているのは、火力発電の高効率化といったようなエネルギーを転換する効率の変化や、燃料の在庫の増減が影響したためです。
需要の減少のうち、石炭は同年比0.5%ポイント減、石油は1.2%ポイント減と、「化石燃料」は3年連続で減少しています。一方、利用が拡大する再エネは同年比0.6%ポイント増加、再稼働が進む原子力は同年比0.4%ポイント増加するなど、非化石燃料は4年連続で増加しています。また、2015年度より2.1%増加した発電電力量のうち、再エネや原子力などCO2を排出しない「ゼロ・エミッション電源」の比率(ゼロエミ電源比率)は17.0%を占め、前年度比で1.6%ポイント増加しています。その結果、発電電力量の構成は、火力発電が83.0%(前年度比1.6%ポイント減)、再エネが15.3%(同0.8%ポイント増)、原子力が1.7%(同0.8%ポイント増)となりました。2030年度には、温室効果ガス削減目標の達成などのために、エネルギーミックスのうちゼロエミ電源比率を44%にまで引き上げることが目標とされています。それを考えると今の比率は、進展はしつつも、実現には道半ばであると言えます。さらに、ゼロエミ電源のほとんどは国産・純国産エネルギーでもあるため、エネルギー自給率は、2015年度の7.4%から8.4%となり1.0%改善しました。2030年度には、おおむね25%の水準とすることを目指しています。引き続きゼロエミ電源比率を引き上げていくことは、安定的なエネルギーの供給に取り組む「エネルギー安全保障」(「石油がとまると何が起こるのか? ~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク?」参照 )の観点からも大切です。
まだまだ道半ばではありますが、需要では省エネの取り組みが進むなど需要が減っていること、供給ではゼロ・エミッション電源が増えていることが、今のところ、エネルギーを起源とするCO2排出量にも良い影響を与えています。2015年度と比べると0.5%減で、3年連続の減少です。2013年度と比較すると、7.4%減少しています。電力にしぼると、電力の「CO2排出原単位」(1kWhの電気を発電した場合の排出量)は、前年度比で1.0%改善しています。
こうして2016年度のエネルギー需給を見ると、エネルギーからのCO2の排出量を少なくする「エネルギーの低炭素化」は、着実に進んでいるといえます。とはいえ、最近の電力需要の増加や、今後の経済成長にともなうエネルギー需要増加の可能性などを考えると、目標として掲げている「2030年度エネルギーミックス」を必ず達成し、国際的に日本が約束している「温室効果ガス削減目標」を達成していくためには、引き続き、さまざまな取り組みを、しっかり進めていくことが必要です。
長官官房 総務課 戦略企画室
長官官房 総務課 調査広報室
※掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。
従来の太陽電池のデメリットを解決する新たな技術として、「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。これまでの太陽電池との違いやメリットについて、分かりやすくご紹介します。