LPガスの契約を透明化!私たちにも影響する、法制度改正の中身とは?

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「LPガス料金に影響?訴訟になるリスクも?知っておきたい、『LPガス』の商慣行」でご紹介したように、LPガスには昔から続いている商慣行があり、これを背景として、消費者が不利益をこうむっている現状があります。LPガス業界と不動産業界の連携により、賃貸住宅に入居する前の消費者へのLPガス料金情報の開示など、いくつかの対応策がとられているものの、制度改正をおこなうことで商慣行そのものの見直しを図ろうと、「液化石油ガス流通ワーキンググループ」での議論がおこなわれています。今回は、LPガスの商慣行を是正するため進められている制度改正の概要をご紹介しましょう。

LPガスの商慣行が引き起こす問題

問題の背景となっているLPガスの商慣行とは、

リストアイコン ①賃貸集合住宅:LPガス事業者から住宅オーナーへさまざまなモノの「無償貸与」がおこなわれ、その金額が入居者のLPガス料金に上乗せされる
リストアイコン ②一軒家:建設時にガス管を設置したLPガス事業者が、ガス管の所有権を持ったままガスを供給する「貸付配管」がおこなわれる

の2つです。

賃貸集合住宅におけるLPガスの商慣行
LPガスの商慣行①を図にしたものです。

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これらの商慣行は、LPガス料金の不透明さにつながっているほか、賃貸集合住宅の入居者や一軒家の家主、つまりLPガスの消費者がLPガス事業者を変更することを難しくする状況にもつながっています。

問題を議論している「液化石油ガス流通ワーキンググループ」は、「総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 石油・天然ガス小委員会(2024年1月に資源開発・燃料供給小委員会に改称)」の下部組織として立ち上げられました。有識者、業界団体や事業者、消費者団体、オブザーバーと関係省庁で構成されています。2023年7月には、LPガスに関する法制度である「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液化石油ガス法)」に関する制度改正案を提示しました。

どのような改正案が提示されたのか、具体的なポイントを見ていきましょう。

LPガスの契約に関する透明性を高め、消費者を守るための制度改正案

改正案のポイントは、以下の3点です。このうち「過大な営業行為の制限」と「三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)」と入居希望者から直接要請があった場合における「LPガス料金などの情報提供」に関わる規律については、罰則規定のある条文として位置づけることが提案されています。

過大な営業行為の制限

まず、無償貸与などの過大な利益供与といった、過大な営業行為を是正するためのルールです。これまでの商慣行そのものを根っこから正していこうというもので、改正省令が交付されてから3か月後(2024年夏ごろ)に施行予定とされています。

リストアイコン 正常な商慣行を越えた利益供与を禁止する
リストアイコン 消費者がLPガス事業者を選ぶ際にハードルとなるおそれがある、LPガス事業者の切り替えを制限するような「条件付き契約」の締結などを禁止する

三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)

2点目は、料金の透明性を高めるためのルールです。LPガス料金に関する説明責任を求めていこうというもので、改正省令が交付されてから1年後(2025年度)に施行予定とされています。

リストアイコン 「基本料金」「従量料金」「設備料金」からなる「三部料金制」を徹底し、設備にかかる費用は外に出して表示する
リストアイコン 電気エアコンやWi-Fiなど、LPガス消費と関係のない設備費用をLPガス料金に計上することを禁止する
リストアイコン 賃貸住宅向けのLPガス料金については、上記に加え、ガス器具などの消費設備に関する費用も計上することを禁止する(LPガス料金の算定の基礎となる項目を「基本料金」「従量料金」「設備料金」とした上で、「設備料金」については「該当なし」と記載する)

なお、上記のうち、2つめと3つめについては、施行後に新たに締結されるLPガス料金契約について適用されるものです。これにより、新しい契約から徐々に、LPガス料金としての費用回収のあり方を適正なものにしていこうというものです。

LPガス料金などの情報提供

3点目は、賃貸物件に入居する消費者を守るためのルールです。改正省令が交付されてから3か月後(2024年夏ごろ)に施行予定とされています。

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リストアイコン 賃貸物件への入居希望者が賃貸契約を締結する前にLPガス料金などの情報を提示する(入居希望者にオーナー・不動産管理会社・不動産仲介業者などを通じて、または入居希望者から要請された場合は直接提示する)

改正した制度をLPガス事業者に確実に実効させるための方策案も

法令が改正された後、どのように実効性を確保するかについても、ワーキンググループで議論されています。方策案としては、たとえば以下のようなものが提案されています。

LPガス商慣行通報フォームなど、監視・通報体制の整備

まず、監視・通報体制の整備をおこないます。これに先がけて、2023年12月1日には、資源エネルギー庁ホームページに、匿名による投稿も可能な通報フォームが開設されました。これは、改正法令施行前に駆け込み的な営業行為がおこなわれていることを懸念する声が寄せられたことを踏まえたものです。ここで寄せられた情報も参考にしながら、施行後の監視体制を構築します。なお、情報提供者が不利益をこうむることのないよう、情報管理を徹底します。

国土交通省と連携した改正制度の周知徹底

LPガスの商慣行は、LPガス事業者と不動産関係者・建設業者との取引関係に起因するものです。このため、「過大な営業行為の制限」や「三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)」について、LPガス事業者のみならず、取引先である不動産関係者・建設業者に対しても、制度改正の周知徹底を図ります。

「LPガス料金などの情報提供」については、これまでも、入居後におけるLPガス料金を巡るトラブル防止のため、令和3(2021)年6月、経済産業省・国土交通省から、関係業界に対し、入居希望者へのLPガス料金の情報提供を依頼する通知を発出するなどの取り組みを実施してきています。転居などが増える3月よりも前を目途として、経済産業省・国土交通省が連携して、業界団体宛てに改めて周知を行います。

業界による自主的な取り組みの推進

商慣行是正を更に推し進めていく取り組みとして、各LPガス事業者みずからが改正制度を順守することを宣言する「商慣行見直しに向けた取り組み宣言」についても議論されています。宣言は資源エネルギー庁が集約してホームページで公表することで、宣言済みの事業者であるかどうか消費者が確認できるようにします。

改正法令施行後の取り組み

今回の改正案は罰則などの対象となります。違反の疑いがあった場合は立ち入り検査を実施。三部料金制やLPガス料金などの情報提供に関しては、通常の立ち入り検査時に実施状況を確認します。また、違反があった場合、登録抹消や罰金を科すといった処置をおこないます。
あわせて、施行前から施行後にかけて、LP事業者に対するフォローアップ調査も実施します。

効果検証も実施

施行後には、公開モニタリングで効果検証も実施します。通報フォームから集約した内容や、「商慣行見直しに向けた取り組み宣言」の取り組み状況、大手事業者の商慣行是正に向けた取り組み状況の公開ヒアリング、フォローアップ調査の結果などを確認・議論し、改善へとつないでいきます。

不動産事業者も巻き込みながら、「安心できるLPガス契約」を実現

こうした案を取りまとめるにあたって、ワーキンググループでは、たとえば次のような議論がおこなわれました。

●どのような行為や契約条件などが違反行為となるかについては、さまざまな要素を総合的に判断することが必要となる。個別判断が蓄積されていない現段階では、その内容や解釈を具体的に示すことで、かえって法の網をくぐる行為をうながしてしまうおそれもある。

●他方、多数のLPガス事業者に改正法令の遵守を促し、抜け駆け行為により制度改正がなし崩しにならないようにするためには、あらかじめ違反のおそれのある行為について、具体例や考え方を示していくことが必要。改正制度の施行に間に合うよう、ガイドラインなどを整備していく。

●なお、個別事例の蓄積がない現段階においては、ガイドラインなどの内容も抽象的とならざるを得ない面もある。基本姿勢として、「LP事業者は、個々の営業行為が過大ではないなど、対外的に根拠を持って説明でき、それが第三者から妥当であると評価されるようにしておく」「規制当局による立ち入り検査などでは、LP事業者からその考え方をヒアリングした上で、妥当性や違法性を判断していく」といった方向で対応することが求められる。その上で、事例蓄積を重ね、ガイドラインなどを進化させていく。

また、改正法令の実効性を確保していく上では、不動産業界といった関係者による対応も必要となるため、国土交通省をはじめとした関係各省との連携が必要であるという指摘も多数なされています。そこで、国土交通省も協力し、2023年11月以降、不動産関係団体向けの説明会を順次実施しています。一方、消費者向けの説明も必要となるため、消費者庁と連携した取り組みも予定されています。さらに、LPガス事業者による競争を健全なものとし、消費者利益を確保するため、公正取引委員会とも連携して今後の市場監視・モニタリングにあたります。

転居などで新しいLPガス販売契約が増える春。制度を改正し、事業者や消費者向けに周知を徹底することで、LPガスの取引をめぐるトラブルの発生を防ぎ、消費者を守るしくみづくりを進めていきます。

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