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水資源に恵まれた日本では、発電への利用も昔から盛んで、国内でまかなうことのできる、貴重なエネルギー源となっています。水力発電といえば大きなダムを想像しますが、近年は中小水力発電の建設が活発化しています。水力発電の今と、これから期待されている中小水力発電について見ていきましょう。
水力発電は明治期よりおこなわれている発電方法で、大きな特徴は、一度発電所をつくれば、安定した長期間の運転が可能なことです。長い発電の歴史を通じて技術やノウハウも蓄積されていて、低コストで一定量の電力を安定的に供給できる「ベースロード電源」として重要な役割をになっています。また、水力発電は再生可能エネルギー(再エネ)のひとつで、発電時CO2を排出しないクリーンなエネルギーでもあります。太陽光や風力など他の再エネが気象条件に左右されるのに比べて、渇水のリスクをのぞけば、自然条件によらず安定して発電ができること、発電量の調整ができることも特徴です。2030年のエネルギーの見通しを示した「エネルギーミックス」では、再エネの比率は総発電電力量の22~24%ですが、そのうち3分の1程度の8.8~9.2%、電力量では939億~981億kWhを水力とすることが目標とされています。
長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)
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水力発電は大規模水力と中小水力にわけることができます。大規模水力発電はダムなどの大型施設を建造して、大量の水を利用して発電する方法で、大きいものになると100万kWを超える発電能力があります。これまでの日本の成長を支えてきた大規模水力ですが、すでに多くの場所で開発が進められ、新たなダムを建設できる場所は限定的で、ダムの建設には巨額の資金と長い時間を必要とするといった短所もあります。こうしたことを踏まえ、2014年に策定された「エネルギー基本計画」では、発電に利用されていない既存のダムに発電設備を設置したり、古くなった発電設備を新しいものに取り替えて、発電効率や出力をアップさせるなどの方法を進めることが掲げられています。今後2030年までには、進行中の設置案件や経済性のある設置案件のみで開発が進んだ場合には862億kWh、技術開発などによって既存の発電所の出力向上なども進めば904億kWhに達することが想定されます。
大規模水力発電にかわって増えているのが3万kW未満の中小水力発電です。中小水力はさまざまな規模があり、河川の流水を利用する以外にも、農業用水や上下水道を利用する場合もあります。すでに開発ずみの大規模水力に比べて、まだまだ開発できる地点が多く残されています(未開発地点は2016年3月末時点で約2700地点、約1000万kW)。また中小水力は、再エネで発電された電気を一定価格で電力会社が買い取る「固定価格買取制度(FIT)」の対象にもなっていて、2012年のFIT導入後は順調に認定量が増えてきました。認定後、建設に着手してから運転開始までには時間がかかりますが、最近は運転開始量も増加傾向にあります。2017年3月末時点で、112万kW(598件)の中小水力発電設備がFIT認定を取得し、そのうちの24万kW(285件)が運転を開始しています(リプレース含む)。運転開始済量は、認定された容量のうちの約21.4%に相当します。
水力発電の認定量(2017年3月時点)
FIT認定の申請を計画している中小水力発電は、今後3年間で約100カ所、約20万kWになります。
2030年のエネルギーミックスを実現するためには、前述した既存発電所の出力向上などに加えて、このような、未開発地点が多く残されている中小水力を積極的に開発していく必要があります。ただし、中小水力にもいろいろな課題が残されています。まず、未開発地点は河川の上流や山間部にあり、しかも小規模なため、開発済み地点とくらべてどうしても建設コストが高くなってしまうという課題です。また流量調査や環境への影響など長期にわたる調査が必要で、時間がかかるという課題もあります。このため、開発がじゅうぶんに進んでいません。そこで、長期にわたる調査などに対する補助金や支援事業などを展開しています。また、2017年4月から施行されている「改正FIT法」では( 「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)、開発に時間のかかる中小水力発電のリスクをおさえるため、複数年度分の買取価格を決定しています。こうして中小水力の拡大を進めていく一方で、リスクが低く、コスト効率がいい中小水力発電については、中長期的にFIT制度からの自立を図っていく方針です。
電力・ガス事業部 電力基盤整備課省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課
長官官房 総務課 調査広報室
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