放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて

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1.放射性廃棄物の概要

(高レベル放射性廃棄物)

日本では、1960年代から商業用に原子力発電を行ってきましたが、それに伴って、高レベル放射性廃棄物が発生しています。高レベル放射性廃棄物には、放射能レベルが十分に減衰するまでに非常に長い時間を要する放射性物質が含まるため、せいぜい100年しか生きない人間が、何世代にもわたって安全に管理し続けることができるとは限りません。そこで、人間による管理に委ねずに済むように処分すべきであるとした上で、その方法としては、地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境から隔離する方法が最適であると、国際的に考えられています。これを「地層処分」と呼び、日本では地下300m以深の地層に処分することになっています。

そもそも、高レベル放射性廃棄物はどのように発生するのでしょうか。

原子力発電では、ウランを核分裂反応させる過程で生じる熱を取り出して電気にしています。この過程を経て使用済燃料が発生します。資源の少ない日本では、この使用済燃料の中から、ウランやプルトニウムを化学的に抽出し(その過程を「再処理」といいます)、これらを再利用する「核燃料サイクル」を推進しています。

使用済燃料は、再処理により、重量にして95%が再利用可能ですが、残りの5%は再利用できない廃液になります。これをガラス原料と融かし合わせ、ステンレス製の容器に流し込んで冷やして固めたものが「ガラス固化体」、すなわち高レベル放射性廃棄物(high-level radioactive waste)です。

<高レベル放射性廃棄物の発生過程>
核燃料サイクルの説明図

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ガラス固化体は、直径が約40cm、高さが約1.3mの筒型で、総重量は約500kgです。製造直後は、表面の放射線量が1,500,000mSv/hと非常に高い値になります。これをオーバーパックという厚さ約20cmの金属容器に包み、50年が経過すると、放射線量はオーバーパックの表面で2.7mSv/h、1m離れれば0.37mSv/hまで低下します。さらに、オーバーパックに包まれた状態で1000年が経過すると、表面で0.15mSv/h、1m離れた場所では0.02mSv/hまで低下します。参考までに、胸のX線検診1回で受ける放射線量は0.06mSvです。

ガラス固化体は安定した物質で、それ自体に爆発性はなく、放射性物質が核分裂を起こして大きなエネルギーを発生する「臨界」を起こすこともありません。ガラス固化体からは、前述のとおり強い放射線が出ますが、約2mのコンクリートがあれば遮蔽できるため、安全に管理することが可能です。実際に、青森県六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(日本原燃株式会社)では、ガラス固化体が安全に貯蔵管理されています。

<高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター内>
高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター内の写真

(出典)日本原燃(株)

<高レベル放射性廃棄物の貯蔵管理の仕組み>
ガラス固化体貯蔵の仕組み

ただし、前述のとおり、高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが十分に下がるまでには、非常に長い時間を要するため、地層処分によって人間による管理に委ねずに最終的な処分を行うこととしています。

コラム
日本の原子力発電に伴って発生した使用済燃料は、現在、約18,000トン存在しています。これらの使用済燃料は、各原子力発電所や青森県六ヶ所村の日本原燃六ヶ所再処理工場において安全に管理されています。なお、使用済燃料を管理できる容量は、2017年5月末現在、合計で約24,000トンになります(うち、六ヶ所再処理工場が3,000トン)。原子力発電所の再稼働等により使用済燃料が増加しても、それを安全に管理できるよう、貯蔵能力の拡大に向けて取り組んでいます。

(低レベル放射性廃棄物)

原子力発電により、高レベル放射性廃棄物だけではなく、低レベル放射性廃棄物(low-level radioactive waste)も発生します。これは、原子力発電所の中でも、炉心に近い部分から発生するもので、放射能レベルの高い順に、L1、L2、L3と呼ばれています。

L1は、炉内から出る、比較的放射能レベルが高いもので、原子力発電所の解体物量のうち約0.04%(57基ベース、以下同じ)を占めます。制御棒やチャンネルボックス(燃料棒を束ねた燃料集合体を格納する箱)などがこれに該当します。L1を処分する場合には、日本では、地下70m以深に埋設する「中深度処分」を行うことになっています。

L2は、L1よりは炉心から遠い位置から出る、比較的放射能レベルが低いもので、解体物量のうち約0.32%を占めます。ポンプや配管の一部などがこれに該当します。L2を処分する場合には、浅い地中に設置したコンクリート製のピットに処分する「ピット処分」を行うことになっており、原子力発電の運転の際に生じる分については、青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて、既に処分が始まっています。

L3は、L2よりもさらに炉心から遠い位置から出る、極めて放射能レベルが低いもので、解体物量のうち約1.9%を占めます。コンクリートガラや金属などがこれに該当します。L3を処分する場合には、浅い地中にピットのような人工構築物を設置せずに処分する「トレンチ処分」を行うことになっています。

他にも、放射能レベルが極めて低く、人の健康への影響がほとんどない廃棄物(解体物量のうち約5%)が発生しますが、クリアランス制度と呼ばれる制度において原子力規制委員会の認可・確認を経れば、通常の廃棄物と同様に処理・処分が可能となります。また、放射性廃棄物ではない通常の産業廃棄物(解体物量のうち約93%)も発生します。

こうした低レベル放射性廃棄物等は、発生者である事業者の責任の下で処分されることになっています。

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2.放射性廃棄物の様々な処分方法(地層処分、海洋底処分、氷床処分、宇宙処分等)の検討

地下深部には、一般的に、① 酸素が少なく、ものが変化しにくい、② ものの動きが非常に遅い、③ 人間の生活環境や地上の自然環境から隔離されている、という特徴があり、これらを兼ね揃えた場所であれば、安全な地層処分が可能になります。

人間の手の届かない地下深くに埋設するよりも、人間の目に見えるところで管理した方が安心だ、と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、高レベル放射性廃棄物を生活環境から隔離しておかなければいけない長い期間を考えると、地震や津波などの自然災害のリスクは地下よりも地上の方が大きくなります。また、地上は地下よりも酸素が多く、ものが腐食しやすいため、地上に長期間保管することは、安全性の観点から問題があります。

世代責任の観点からも、地層処分を実現することは重要です。人間による管理を長期間にわたって続けると、将来世代がいつまでもその費用を負担し続けることになります。また、管理に必要な技術や人材を維持し続ける必要があり、もし維持できなくなってしまったら、将来、安全性が脅かされることになります。

これまで世界各国や国際機関などで、様々な処分方法が検討されてきました。

例えば、これまでに検討された処分方法として、海洋底処分があります。これは、廃棄物を海洋に投棄し、深海底の泥の中に埋めることで、地上や海中の環境から隔離しようとする処分方法です。これにより、深海底の堆積物が放射性物質を吸着し、さらに広い海の膨大な海水により希釈されると考えられます。しかし、海洋底は科学的に明らかになっていないことが非常に多く、不確実性が大き過ぎるため、現在、適切な処分方法とは考えられていません。こうした状況から、高レベル放射性廃棄物を海洋に投棄することは、ロンドン条約で国際的に禁止されています。

南極に処分すべき、という方もいらっしゃるでしょう。南極の平均4kmの厚さの氷の上に高レベル放射性廃棄物を置くと、自らが発する熱で氷が溶け、氷の底に沈んでいき、隔離が実現する、という考え方です。しかし、廃棄物の輸送等に非常に大きな費用がかかりますし、南極の氷の底がどのようになっているかは十分に明らかではありません。また、万が一、地球の温暖化などで氷が全て溶けてしまったら、放射性廃棄物が地上に露出することになってしまい、非常に危険です。こうした状況から、南極での処分は、南極条約で国際的に禁止されています。

宇宙に処分すべき、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、廃棄物を宇宙に打ち上げるには莫大な費用がかかる上、もしロケットが墜落してしまったら、地上や海洋で甚大な被害が発生します。全ての廃棄物を宇宙に処分しようとすると、何度もロケットを打ち上げる必要がある中で、現在の打上げ技術では、まだ失敗する可能性があります。こうした状況から、宇宙処分の実現可能性は認められていません。

<地層処分以外の処分方法>
イラストによる解説:地層処分以外の処分方法

こうした他の様々な処分方法も検討された上で、地下深部が本来持っている特徴を利用する地層処分が最適であるという認識が、国際的に共通の考え方になっています。実際、諸外国でも、高レベル放射性廃棄物の処分方法として地層処分が採用されており、一部の国では既に処分場の場所が決まっています。

コラム
いまは地層処分を行うとは決めずに、廃棄物を暫く保管し続け、より良い方法の実用化を待ったらどうかといった声を聞くこともあります。しかし、今のところ地層処分以外の現実的な選択肢は、どの国も持ち合わせていません。廃棄物を発生させてきた世代の責任として、いま最適と考えられている地層処分の実現を目指しながら、将来世代による再選択の余地を残し、より良い方法の開発に向けて努力を続けることが適当と考えられます。このため、地層処分を前提に取組を進めつつ、一度廃棄物を地下に運び込み定置した後でも、一定の期間は回収可能なようにしておく、いわゆる「回収可能性の確保」を政策に取り入れることとしました。現在、その具体化に向けた調査研究等に取り組んでいるところです。

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3.地層処分の仕組み

地層処分を行う際には、多重のバリアによって、放射性物質を閉じ込めます。

まず、ガラス固化体そのものがバリアとして機能します。前述のとおり、ガラス固化体は、使用済燃料を再処理する過程で生じる廃液をガラス原料と融かし合わせて固形化したものです。ガラスは水に溶けにくく、酸化などの化学反応が生じにくい性質があります。また、ガラスと溶け合うことで、放射性物質がガラスの緻密な構造の中に取り込まれますので、ガラスが割れてもすぐに放射性物質が溶け出すことはありません(ガラス瓶に液体を入れるというものではありません)。

次に、オーバーパックという分厚い金属容器に、ガラス固化体を封入します。オーバーパックには、ガラス固化体の放射能レベルが相当程度低減するまでの期間、地下水をガラス固化体に接触させないようにする機能が期待されます。オーバーパックの腐食速度は、一般的な地下環境では大きく見積もっても1,000年で3cm程度です。実際に処分場の場所が決まれば、その場所の地下水等の性質に最適な素材や厚さを設定することになります。

さらに、ベントナイトと呼ばれる粘土質の緩衝材で、オーバーパックに封入されたガラス固化体を囲います。ベントナイトには、① 粘土が水を吸って膨張することで、粘土の中の隙間を小さくし、水を通しにくくする、② 放射性物質を吸着することで、その移動を遅らせる、といった機能があります。こうした機能により、オーバーパックの腐食速度を遅くするとともに、オーバーパックの機能が損なわれ、地下水がガラス固化体と接触し、放射性物質が地下水に溶け出したとしても、放射性物質がベントナイト内に閉じ込められることになります。

このガラス固化体、オーバーパック、ベントナイトの3つを合わせて、「人工バリア」と呼びます。人工バリアで覆われた高レベル放射性廃棄物は、地下深くの岩盤に埋設されます。地下深くの岩盤の中では、地下水がほとんど動かないため、放射性物質を含む地下水がベントナイトの外側、つまり岩盤中に出てきたとしても、極めて遅い速度で動くことになります。さらに、岩盤は放射性物質を吸着するため、その移動速度をより遅くします。こうした機能を持つ岩盤のことを「天然バリア」と呼びます。

こうした「人工バリア」と「天然バリア」という多重のバリアによって、地下深部に埋設した高レベル放射性廃棄物が地上の生活環境に影響を及ぼすことを防ぎます。

<高レベル放射性廃棄物を閉じ込める仕組み>
人工バリアと天然バリアからなる多重バリアの存在により、地上の環境放射線の水準は、地層処分場の存在によっても変わりません。

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4.最終処分場の場所の選定

一般的に地下深部は安定的ですが、どこに埋めても問題がないわけではありません。例えば、火山活動や断層活動の影響があると、地下深部の安定性が損なわれてしまうことがあるため、そうならないよう、地下環境をしっかり調査した上で地層処分に適した場所を選ぶ必要があります。

そこで、2000年に成立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)という法律で、高レベル放射性廃棄物の処分施設の建設場所を選ぶために、「文献調査」、「概要調査」、「精密調査」の3段階の調査を行うことが定められました。

リストアイコン 文献調査では、既存の文献により、広域にわたる過去の火山活動の履歴等を調査します。
リストアイコン 概要調査では、文献調査より範囲を絞って、ボーリング等により地上から地下の状況を調査します。
リストアイコン 精密調査では、さらに範囲を絞り、地下施設を作った上で地下環境を詳細に調査します。

これら3段階の調査は、各段階で地層処分に適した場所であるかを確認した上で進めていくことになります。また、次の段階の調査に進むに当たっては、地元自治体の意見を聴き、十分に尊重することが最終処分法で定められており、地元自治体が反対している場合には、次の段階に進むことはありません。

こうした3段階の調査を行った上で地層処分に適した場所を選んでいくことになりますが、さらに、処分を行うに当たっては、独立した規制当局である原子力規制委員会により厳格な審査が行われます。こうしたプロセスを経て、安全性について一定の基準を満たしていることが確認され、また地元自治体の意見を踏まえた上で、はじめて処分が実現することになります。

<法律に基づく処分地選定調査>
図による解説:処分施設の建設場所を選ぶために、[文献調査][概要調査][精密調査]の3段階の調査を行うことが法律上求められています。

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2002年から、最終処分法で地層処分の実施主体として定められた原子力発電環境整備機構(NUMO:ニューモ)は、処分地選定のための調査を受け入れていただける自治体を公募してきましたが、今に至るまで文献調査に着手できていません。こうした状況を打開するため、国は最終処分に向けた政策を抜本的に見直し、2015年に、最終処分法に基づく基本方針を改定しました(閣議決定)。この新たな基本方針では、自治体から手が挙がるのを単に待つだけでなく、国民や地域の方々の理解と協力を得ていくために、国が前面に立って取り組むこととしています。具体的には、地層処分に関する地域の科学的特性を、全国地図を色分けする形で分かりやすく示す(科学的特性マップ)こととしています。

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5.科学的特性マップの提示 ~要件・基準について~

地層処分を実現していくためには、その仕組みや日本の地下環境などについて、一人でも多くの方に関心を持っていただき、理解を深めていただくことが重要です。科学的特性マップを見れば、地層処分を行う場所を選ぶために考慮する必要がある科学的特性や、そうした特性の日本全国における分布の状況などが俯瞰できるようになるため、関心や理解を深めていただくきっかけになると考えています。

科学的特性マップは、地層処分に関する地域の科学的特性について、既存の全国データに基づいて一定の要件・基準に従って客観的に色分けした全国地図をお示しするものです。ある場所が地層処分に相応しいかどうかを見極めるには、様々な科学的特性を総合的に検討するために、前述のとおり3段階の処分地選定調査を行う必要がありますが、既存の全国データからも多くのことが分かります。

科学的特性マップでは、9つの特性を考慮します。ここでは、火山、活断層、鉱物資源、輸送の4つについてご紹介します。

火山の近くに処分場を建設すると、高レベル放射性廃棄物が上昇してきたマグマと一緒に地上に出てきてしまうかもしれませんし、そうでなくても人工バリアや天然バリアの機能が低下してしまう可能性があります。こうした可能性を考慮し、火山の中心から15km以内等の領域を好ましくない範囲としています。

イラスト:マグマの噴火

大きな活断層は、ずれたときの衝撃が大きいため、その衝撃が処分施設を直撃すると人工バリアなどが破壊され、放射性物質の放射能レベルが十分に下がる前に岩盤に漏れ出す可能性があります。こうした可能性を考慮し、10km以上の長さの断層について、断層の長さの100分の1(断層の両側合計)の領域を好ましくない範囲としています。

イラスト:断層のズレ

地下に鉱物資源があると、遠い将来、人間による処分施設の管理が終わって、そこに処分場があることが忘れ去られてしまったときに、資源を求めた人間がその場所を掘削して、処分場が破壊されてしまうかもしれません。こうした可能性を考慮し、石炭、石油、天然ガス、金属鉱物が存在すると考えられる領域を好ましくない範囲としています。

イラスト:掘削等で廃棄物に接近

高レベル放射性廃棄物は、六ヶ所再処理工場等から処分場に輸送することになりますが、テロの危険性等を踏まえると、長距離の輸送は海上輸送を前提とした上で、処分場近くの港湾からの陸上輸送の距離は短い方が好ましいと言えます。こうした点を考慮し、海岸から20kmを目安とする領域を好ましい範囲としています。

イラスト:輸送

科学的特性マップでは、火山や活断層の近くなどの条件が1つでも当てはまる場所や、鉱物資源がある場所は、「好ましくない特性があると推定される地域」に分類します。こうした地域は、仮に調査を行ったとしても、安全な地層処分が成立すると確認できる可能性が相対的に低いと考えられます。なお、火山や活断層のような地下環境の安定性の観点と、将来掘削される可能性の観点は、リスクの性質が全く異なるため、別の色分けを行います。

これらの条件に1つも該当しない場合は、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」に分類します。こうした地域は、仮に調査を行ったとしたら、安全な地層処分が成立すると確認できる可能性が相対的に高いと考えられます。さらに、この中でも、海岸からの距離が短い範囲は、「輸送面でも好ましい地域」に分類します。

<科学的特性マップの要件・基準と地域特性の区分>
Alt	「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」をグリーン、「輸送面でも好ましい地域」をグリーン沿岸部と表します。

科学的特性マップを提示することで、全国各地の科学的特性が分かりやすく示されることになりますが、これはあくまで全国地図の形で手に入るデータに基づいて科学的な情報を客観的に提供するものであって、いずれの自治体にも処分場はもちろん、処分地選定調査の受入れに関する判断をお願いするようなものではありません。

科学的特性マップを提示したからといって、すぐに文献調査に入るわけではありません。提示後、全国各地で国民や地域の方々ときめ細かな対話活動を積み重ねていきます。そうした活動を通じて国民や地域の方々の理解が深まり、やがて調査を受け入れていただける地域が出てくれば、文献調査を進めていくことになります。その後、段階的に調査を進めていくプロセスは、科学的特性マップを提示したとしても何ら変わるものではありません。まだ見つかっていない断層があるのではないか、地下水の流れが予想外に速いこともあるのではないか、というご意見もありますが、そのような点についても、3段階の調査の中で詳細を明らかにしていきます。

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6.海外の取組事例

海外の先進的な取組の事例として、処分地を既に決めているフィンランドとスウェーデンについてご紹介します。

フィンランドでは、2001年に、エウラヨキ自治体のオルキルオトに処分地が決まり、規制当局による審査を経て、2016年末に処分場の建設が始まっています。

遡ること1983年に、処分地を選定するため、3段階の調査を行うことが決まりました。第1段階の調査は、1983年から開始されました。まず、大規模な亀裂帯を回避し、安定した基盤岩がある地域を選定するため、航空写真や地形図などを用いた全国的な文献調査が行われ、フィンランド全土から327ヶ所が選定されました。その後、基盤岩の大きさや地形などの地質学的観点、人口密度や廃棄物の輸送の観点から絞込みが行われ、102ヶ所まで絞り込まれました。第2段階の調査として、自治体から同意を得るプロセスを経て、5ヶ所でボーリング調査が行われました。その後、より適した場所と考えられたサイト(右図参照)で第3段階の調査が行われ、同時に処分場の地上施設と地下施設を建設・操業する場合の環境影響評価も実施されました。

1999年に、処分地選定調査を行ったポシヴァ社が報告書をまとめ、処分地としてオルキルオトを選定し、国に申請を行いました。2000年に、独立した規制当局であるSTUK(放射線・原子力安全センター)が、その申請に対する肯定的な見解を示したことを受け、オルキルオトがあるエウラヨキ自治体の議会で投票が行われ、処分場の受入れの意思を表明することを決定しました。翌2001年には、国会の承認を経て、処分地がオルキルオトに決定しました。

<フィンランドの第3段階の調査サイト>
処分地の地図。

スウェーデンでは、2011年にエストハンマル自治体のフォルスマルクという場所を処分場建設予定地とした使用済燃料の最終処分に関する許可申請が行われています。

地層処分の実施主体であるSKB社(スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社)は、1992年に取りまとめた研究開発計画で、2段階の調査を行うことにしました。まず、翌1993年から2000年にかけて、第1段階の調査が行われました。その1つである総合立地調査は文献ベースの調査です。この調査では、例えば1998~99年には、地域別の地質分布や土地利用状況などに関する既存情報が地図の形で取りまとめられました。総合立地調査と並行して、フィージビリティ調査が行われました。この調査は、事前に同意を得た自治体を対象に行われるものであり、環境や雇用面への影響についても調査されました。フィージビリティ調査では最初に、全国286の自治体を対象に公募が行われ、2つの自治体が応じましたが、調査結果を受けて実施された住民投票において反対多数となったため、調査が終了されました。その後、SKB社は6つの自治体に調査の申入れを行い、調査を経て、次の段階の調査に進む自治体を3ヶ所選定しています。

2001年には、国によりSKB社の選定結果が承認されました。その後、1つの自治体の議会で調査の受入れが否決されたため、第2段階の調査は2つの自治体で行われることになりました。2002年から2007年まで、空中物理探査やボーリング調査や環境影響評価などが行われ、2009年にSKB社は、より地質学的条件が有利であったフォルスマルクが処分地として選定しました。2017年5月末現在、国による地層処分の許可申請の審査が行われているところです。

<スウェーデンの地質分布や土地利用状況などに関する地図>
「おそらく適格/おそらく不適格/不適格」な基盤岩を表した地図。

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7.おわりに

高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題は、既に廃棄物が発生している以上、これまで原子力発電を利用してきた現世代の責任で、解決に向けた道筋をつけるべき重要な課題です。いたずらに先送りすることがあってはなりません。地層処分の実現に向け、国が前面に立ち、国民や地域の方々の理解を得るため、海外の先進的な取組も参考にし、一歩ずつ着実に進めてまいります。

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