第2節 部門別エネルギー消費の動向
1.企業・事業所他部門のエネルギー消費の動向
(1)企業・事業所他部門のエネルギー消費の動向
企業・事業所他部門とは、産業部門(製造業4、農林水産鉱業建設業)と業務他部門(第三次産業)5の合計であり、1965年度から2016年度までの全期間において最終エネルギー消費で最大のシェアを占める部門です。2016年度は企業・事業所他部門が最終エネルギー消費全体の62.2%を占めました。1965年度から2016年度まで企業・事業所他部門の中では製造業が最大のシェアを占め、2016年度には69.7%を製造業が占めました(第212-1-1)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。非エネルギー利用分については、1990年度以降は各業種の消費量の内数となっている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
(2)製造業のエネルギー消費の動向
製造業のエネルギー消費は第一次石油ショック前の1965年度から1973年度まで年平均11.8%で増加し、実質GDPの伸び率を上回りました。その後、1973年の第一次石油ショック以降は減少傾向を示し、1973年度から1983年度までの10年間では実質GDPが増加する一方で、エネルギー消費は年平均2.5%減少しました。しかし、1987年度から再び増加に転じ、1994年度には1973年度を上回りました。2008年度以降は世界的な経済の低迷や東日本大震災以降の省エネルギーの更なる進展により、製造業のエネルギー消費は1973年度の水準を下回っています。2016年度は、素材系産業である鉄鋼業及び化学工業などのエネルギー消費が減少し、全体では前年度比で1.8%減少しました。1973年度と2016年度を比較すると、経済規模は2.5倍になり、製造業全体の生産も1.6倍に増加していますが、製造業のエネルギー消費は0.9倍まで低下しました(第212-1-2)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 1993年度以前のGDPは日本エネルギー経済研究所推計。
- 出典:
- 内閣府「国民経済計算」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、経済産業省「鉱工業指数」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
このように、石油ショック以降、製造業において生産量が増加しつつもエネルギー消費が抑制された主要因として、省エネルギーの進展(原単位要因)及び素材産業から加工組立型産業へのシフト(構造要因)が考えられます(第212-1-3)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 生産指数要因は生産指数の変化による要因で、生産指数の増加がエネルギー消費の増加要因となる。構造要因は産業構造の変化による要因で、エネルギー多消費型産業に移る場合はエネルギー消費の増加要因、素材産業から加工組立型産業に移る場合はエネルギー消費の減少要因となる。原単位要因は生産量1単位当たりのエネルギー消費量の変化による要因であり、省エネルギーが進めばエネルギー消費の減少要因となる。
- (注3)
- 要因分解において、製造業を食品飲料製造業、パルプ・紙・紙加工品製造業、化学工業、窯業・土石製品製造業、鉄鋼業、非鉄・金属製造業、機械製造業とその他製造業に分類する。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、経済産業省「鉱工業指数」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
製造業は、生産コスト低減の観点から、エネルギー効率向上に対する関心が高い業種です。1973年の石油ショックによるエネルギー価格の高騰を契機に、省エネルギーに積極的に取り組んだ結果、製造業部門では生産1単位当たりに必要なエネルギー消費を表す「鉱工業生産指数(IIP)6当たりのエネルギー消費原単位」は急速に下がりました(第212-1-4)。しかしながら、1980年代後半から、国際原油価格の低迷により、IIP当たりのエネルギー消費原単位に若干の上昇傾向が見られました。2000年以降、企業の環境保護意識が高まり、再び省エネルギーへの努力が一層強まったことにより、省エネルギー効果が現れました。しかし、2008年の世界金融危機によって日本経済が低迷し、設備稼働率が低下したことなどの影響でエネルギー消費効率が悪化しました。2011年度以降、製造業全体のエネルギー消費の4割ほどを占める化学産業のエネルギー消費原単位の低下などもあり、再び製造業全体のエネルギー消費効率の改善が見られました。製造業のエネルギー消費は、依然として最終エネルギー消費全体の4割強を占めていることからも、引き続き省エネルギー対策が必要とされています。
- (注1)
- 原単位は製造業IIP(付加価値ウェイト)1単位当たりの最終エネルギー消費量で、1973年度を100とした場合の指数である。
- (注2)
- このグラフでは完全に評価されていないが、製造業では廃熱回収などの省エネルギー努力も行われている。
- (注3)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、経済産業省「鉱工業指数」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
次に製造業で消費されるエネルギー源を見ると、1973年度の第一次石油ショックまでは石油の消費の伸びが顕著でしたが、その後は素材系産業を中心に石炭などへの燃料転換が進み、石油からの代替が進展しました(第212-1-5)。さらに、第二次石油ショック以降には、都市ガスの消費も増加しています。また、電力消費量は産業構造の高度化や製造工程の自動化などにより、第一次石油ショック以降の43年間で25.6%増加しました
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。 (注2)石油は原油と石油製品の合計を表す。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
製造業は素材系産業と非素材(加工組立型)系産業に大別できます。前者の素材系産業とは、鉄鋼、化学、窯業土石(セメントなど)及び紙パルプの素材物資を生産する産業を指し、エネルギーを比較的多く消費する産業です。一方、後者の非素材系産業とは、それ以外の食品煙草、繊維、金属、機械、その他の製造業(プラスチック製造業など)を指しています。2016年度のエネルギー消費の構成を見ると、素材系産業である前述の4つの業種が製造業全体のエネルギー消費の8割以上を占めました(第212-1-6)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 化学のエネルギー消費には、ナフサなどの石油化学製品製造用原料を含む。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
(3)業務他部門のエネルギー消費の動向
業務他部門は、事務所・ビル、デパート、ホテル・旅館、劇場・娯楽場、学校、病院、卸・小売業、飲食店、その他サービス(福祉施設など)の9業種に大別されます。これら9業種のエネルギー消費を見ると、1975年度までホテル・旅館のエネルギー消費が最大シェアを占めていましたが、1976年度以降、事務所・ビルが最も大きなシェアを占め、1979年度から卸・小売業のシェアが2位になりました。2000年代前半では、卸・小売業のシェアは一時的に事務所・ビルを抜き、最大となりましたが、その後再び事務所・ビルが1位になりました(第212-1-7)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
業務他部門のエネルギー消費量の推移を見ると、1965年度から1973年度までは、高度経済成長を背景に年率15%増と顕著に伸びましたが、第一次石油ショックを契機とした省エネルギーの進展により、その後しばらくエネルギー消費はほぼ横ばいで推移してきました。しかし、1980年代後半からのバブル経済期には再び増加傾向が強まりました。その後は2000年代後半からのエネルギー価格の高騰や2008年の世界金融危機を背景に、業務他部門のエネルギー消費量は減少傾向に転じました(第212-1-8)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 1993年度以前のGDPは日本エネルギー経済研究所推計
- 出典:
- 内閣府「国民経済計算」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
業務他部門のエネルギー消費を用途別に見た場合、主に動力・照明、冷房、給湯、暖房、ちゅう房の5用途に分けられます。用途別の延床面積当たりエネルギー消費原単位の推移を見ると、動力・照明用のエネルギー消費原単位は、OA化などを反映して高い伸びを示しました。その結果、動力・照明用の業務他部門のエネルギー消費全体に占める割合は、2016年度では46%に達しました。一方、冷房用のエネルギー消費原単位は空調機器普及により拡大しましたが、2000年代後半から空調機器の普及が一巡したこと及び機器のエネルギー消費効率の上昇により減少傾向に転じました。また、暖房用のエネルギー消費原単位は、ビルの断熱対策が進んだことや「ウォームビズ」に代表される様々な省エネルギー対策が進展したことなどから減少傾向で推移し、2005年度から2016年度までの11年間で年平均4.2%の減少を示しました(第212-1-9)。
- (注)
- 「総合エネー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
また、業務他部門のエネルギー消費では、電力の割合が増加傾向にあります。ガスの割合も、発電時の排熱を給湯や空調に利用するコージェネレーションシステムなどの普及拡大に伴い増加傾向を示しています。一方、主として暖房用に利用される石油の割合は減少傾向にあります(第212-1-10)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。ガスは天然ガス、都市ガスの合計である。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
業務他部門における省エネルギーを実現するためには、建物の断熱性強化や冷暖房効率の向上、照明などの機器の効率化を行うとともに、更なるエネルギー管理の徹底が必要であるといえます。
2.家庭部門のエネルギー消費の動向
家庭部門は、自家用自動車などの運輸関係を除く家庭での最終エネルギー消費を対象とします。2016年度の最終エネルギー消費全体に占める家庭部門の比率は14.4%でした(第212-2-1)。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
家庭部門のエネルギー消費は、生活の利便性・快適性を追求する国民のライフスタイルの変化、世帯数増加などの社会構造変化の影響を受け、個人消費の伸びとともに、著しく増加しました。第一次石油ショックがあった1973年度の家庭部門のエネルギー消費量を100とすると、2000年度には216.9まで拡大しました。その後、2010年度までは個人消費や世帯数が伸びましたが、トップランナー制度などによる省エネルギー技術の普及と国民の環境保護意識の高揚に伴って、家庭部門のエネルギー消費量はほぼ横ばいとなりました。東日本大震災以降は国民の節電など省エネルギー意識の高まりにより、個人消費や世帯数の増加に反して低下を続け、2016年度には194.1まで低下しました。近年は省エネルギー機器の普及とともに、個人消費とエネルギー消費の相関が弱まってきています(第212-2-2)。
- (注1)
- 1993年度以前の個人消費は日本エネルギー経済研究所推計。
- (注2)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 内閣府「国民経済計算」、日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、総務省「住民基本台帳」を基に作成
家庭部門のエネルギー消費量は、「世帯当たり消費量×世帯数」で表すことができます。したがって、世帯当たり消費量の増減(原単位要因)及び世帯数の増減(世帯数要因)が、家庭部門のエネルギー消費の増減に影響を与えます。世帯当たりの消費量は、エネルギー消費機器の保有状況・効率、所得、エネルギー価格、世帯人員、省エネルギー行動などに左右されるほか、短期的には気温変動の影響も大きく受けます。1973年度から2005年度までのエネルギー消費増加の合計は1,199×1015Jであり、そのうち世帯数要因によるものは736×1015J、原単位要因は463×1015Jでした(第212-2-3)。世帯数の増加と家電製品などの普及による世帯当たり消費量増がともに増加に寄与していました(第212-2-4)。一方、2005年度から2016年度までの間はエネルギー消費は270×1015J減少し、そのうち世帯数要因によるものは243×1015Jの増加、原単位要因は512×1015Jの減少でした。省エネルギー技術の普及や世帯人員の減少などに加え、東日本大震災後には省エネルギーへの取組の強化が、増加し続ける世帯数の増加寄与を上回り、家庭部門のエネルギー消費量を抑えたことが分かります(第212-2-5)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 完全要因分析法で交絡項を均等配分する。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、総務省「住民基本台帳」を基に作成
- (注)
- カラーテレビのうち、ブラウン管テレビは2012年度調査で終了。
- 出典:
- 内閣府「消費動向調査(二人以上の世帯)」を基に作成
- (注1)
- エアコンは冷房・暖房期間中の電力消費量。冷暖房兼用・壁掛け型・冷房能力2.8kWクラス・省エネルギー型の代表機種の単純平均値。
- (注2)
- 電気冷蔵庫は年間消費電力量。定格内容積400lとする場合。定格内容積当たりの年間消費電力量は主力製品(定格内容積401~450l)の単純平均値を使用。2015年度以降JIS規格が改訂されている。
- (注3)
- テレビは年間電力消費量。ワイド32型のカタログ値の単純平均値。
- 出典:
- 資源エネルギー庁、省エネルギーセンター「省エネ性能カタログ」等を基に作成
用途別に見ますと、家庭用エネルギー消費は、冷房、暖房、給湯、ちゅう房、動力・照明他(家電機器の使用等)の5用途に分類することができます。1965年度におけるシェアは、給湯(33.8%)、暖房(30.7%)、動力・照明他(19.0%)、ちゅう房(16.0%)、冷房(0.5%)の順でしたが、家電機器の普及・大型化・多様化や生活様式の変化などに伴い、動力・照明他用のシェアが増加しました。また、エアコンの普及などにより冷房用が増加し、相対的に暖房用・ちゅう房用・給湯用が減少しました。この結果、2016年度におけるシェアは動力・照明他(35.9%)、給湯(28.3%)、暖房(24.1%)、ちゅう房(9.3%)、冷房(2.3%)の順となりました(第212-2-6)。
【第212-2-6】世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移(xls/xlsx形式:136KB)
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 構成比は端数処理(四捨五入)の関係で合計が100%とならないことがある。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、総務省「住民基本台帳」を基に作成
我が国の高度経済成長が始まったとされる1965年度頃までは家庭部門のエネルギー消費の3分の1以上を石炭が占めていましたが、その後主に灯油に代替され、1973年度には石炭はわずか6%程度になりました。この時点では、灯油、電力、ガス(都市ガス及びLPガス)がそれぞれ約3分の1のシェアでしたが、その後の新たな家電製品の普及、大型化・多機能化などによって電気のシェアは大幅に増加しました。また、オール電化住宅の普及拡大もあり、2015年度には電気のシェアは初めて50%を超え、2016年度には50.6%となりました(第212-2-7)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- (注2)
- 構成比は端数処理(四捨五入)の関係で合計が100%とならないことがある。
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、総務省「住民基本台帳」を基に作成
なお、家庭において電力を多く消費しているのはエアコンなどの空調機器、冷蔵庫や洗濯機などを動かすための動力や照明器具、テレビなどです。また、待機時消費電力7は近年減少傾向にありますが、2012年度において家庭の世帯当たり全消費電力の5%以上も占め、まだ削減する余地があります。8
3.運輸部門のエネルギー消費の動向
(1)運輸部門のエネルギー消費の動向
運輸部門は、乗用車やバスなどの旅客部門と、陸運や海運、航空貨物などの貨物部門に大別されます。2016年度の最終エネルギー消費全体に占める運輸部門の比率は23.4%であり、旅客部門のエネルギー消費量が運輸部門全体の59.2%、貨物部門が40.8%を占めました(第212-3-1)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
1965年度における運輸部門のエネルギー消費量は約800×1015J(最終エネルギー消費全体の18%)であり、その構成は、旅客部門が41.5%、貨物部門が58.5%でした。1965年度から1973年度までの8年間にエネルギー消費量は運輸部門全体で2.3倍(年率10.8%増)となり、二度の石油ショックを経て伸び率は鈍化したものの、1973年度から2001年度までの28年間でさらに2.1倍(年率2.8%増)に拡大しました。一方、2000年代以降は輸送量の低下と輸送効率の改善などで、運輸部門のエネルギー消費量は減少に転じています。2016年度のエネルギー消費は1965年度からの51年間で見ると3.9倍、年率2.7%の増加となりました。このうち旅客部門は5.6倍(年率3.4%増)、貨物部門は2.7倍(年率2.0%増)と、旅客部門は貨物部門以上に増加しています。1974年度に旅客部門が貨物部門を上回り、2016年度には貨物部門の1.45倍となっています(第212-3-2)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降の数値について算出方法が変更されている。
- (注2)
- 1993年度以前のGDPは日本エネルギー経済研究所推計。
- 出典:
- 内閣府「国民経済計算」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
2016年度の運輸部門におけるエネルギー源別の構成比を見ると、ガソリンが54.8%、軽油が31.4%、ジェット燃料油が4.8%、重油が4.4%を占めました(第212-3-3)
【第212-3-3】運輸部門のエネルギー源別消費の推移(xls/xlsx形式:132KB)
- (注)
- 「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
(2)旅客部門のエネルギー消費の動向
旅客部門のエネルギー消費量は、自動車の保有台数の増加もあり、GDPの伸び率を上回る伸びで増加してきましたが、2002年度をピークに減少傾向に転じました。2016年度にはピーク期に比べて20%縮小しました(第212-3-4)。これには、自動車の燃費が改善したことに加え、軽自動車やハイブリッド自動車など低燃費な自動車のシェアが高まったことが大きく影響しています(第212-3-5、第212-3-6)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
- (注)
- 2003年度から「ハイブリッド」と「その他」の定義が変更されている。
- 出典:
- 自動車検査登録情報協会 「自動車保有車両数」を基に作成
- (注)
- 日本エネルギー経済研究所推計
- 出典:
- 日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」を基に作成
旅客部門のエネルギー消費の内訳を見ますと、1967年度以降は自家用乗用車が半分以上を占め、堅調に拡大してきました。自家用乗用車のエネルギー消費量は2001年度をピークに減少傾向を示しているものの、依然として旅客部門全体の約8割を占めています。
旅客部門におけるエネルギー源は、2016年度では76.7%が主として乗用車に使われるガソリン、7.3%が軽油、7.0%が航空に使われるジェット燃料油、3.3%が主として鉄道に使われる電力でした(第212-3-7)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
(3)物部門のエネルギー消費の動向
貨物部門のエネルギー消費量は、第二次石油ショック後の1980年度から1982年度まで前年度実績を割り込むことがあったものの基本的に拡大し続け、1996年度にピークに達しました。それ以降は、減少傾向に転じ、2016年度にはピーク期に比べて24%縮小しました。貨物部門は経済情勢、燃料価格の変動、産業構造の変化及び省エネルギー技術の普及などに影響されやすく、そのエネルギー消費量は旅客部門に比べ、伸びが穏やかで、より早い時期に減少局面に転じ、その減少幅がより大きいのが特徴でした。
貨物部門のエネルギー消費の内訳を見ると、そのほとんどが自動車で占められています。1990年度は、自家用トラックのエネルギー消費は貨物部門全体の半分以上を占めましたが、1995年度をピークに減少に転じ、全体に占める比率も低下しました。一方、営業用トラックのエネルギー消費は1990年代にかけて増加し、2002年度から自家用トラックを上回るようになりましたが、2007年度にピークに達し、その後は下降傾向に転じました。
船舶のエネルギー消費は、高度経済成長期を通じて増加したものの、1980年度から減少に転じました。そして、1990年代ではほぼ横ばいか、やや増加傾向にありましたが、2002年度から再び減少傾向に転じました。航空のエネルギー消費量は、輸送能力の増大や輸送コストの低廉化などによって、1990年代半ばまで輸送量の急増とともに伸びましたが、その後、経済の停滞とともに伸び悩みました。鉄道のエネルギー消費は、1987年度まで急速に縮小しましたが、その後ほぼ横ばいで推移した後、1990年代中期以降再び減少傾向となりました(第212-3-8)。
- (注1)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。また、それまで1つであった自動車によるエネルギー消費量は1990年度以降、自家用トラックによるものと営業用トラックによるものの2つに区分されている。
- (注2)
- 自家用トラックとは事業者が自社の貨物を輸送する目的で保有するもの、営業用トラックとは依頼された貨物を輸送する目的で保有するものを言う。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
2016年度の貨物輸送のエネルギー源は66.5%が主として大型トラックで消費される軽油、23.0%が主として配送用の小型貨物車で消費されるガソリン、残りが主として船舶に使われる重油や航空用のジェット燃料油などでした(第212-3-9)。
- (注)
- 「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
- 出典:
- 資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
- 4
- 石炭・石油製品製造業などのエネルギー産業は転換部門に含まれます。
- 5
- ここでの第三次産業は運輸関係事業、エネルギー転換事業を除きます。
- 6
- 鉱工業生産指数(IIP:Indices of Industrial Production)は、鉱工業全体の生産水準の動きを示す代表的な指数であり、ある時点への鉱業・製造業の生産量について、生産量と基準年の付加価値額を基準に指数化したものです。
- 7
- 待機時消費電力とは、リモコンやマイコンなどを組み込んだ家電機器が、その機器を使っていないときでもコンセントにつながっていることで消費される電力のことを言います。
- 8
- 資源エネルギー庁省エネルギー対策課「平成24年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書概要」によると、全体の消費量4,432kWh/年のうち228kWh/年が待機電力であり、電力消費の5.1%を占めています。