第3節 CCUS/カーボンリサイクル等の促進
1.CCUS/カーボンリサイクル等の技術開発と事業環境の整備
CCUSは、鉄、セメント、化学、石油精製等の脱炭素化が難しい分野や発電所等で発生したCO2を地中貯留・有効利用することで、電化や水素等を活用した非化石転換では脱炭素化が難しい分野において脱炭素化を実現できるため、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に不可欠となっています。
CCUの中でもカーボンリサイクルについては、技術の社会実装に向けて、広島県大崎上島にあるカーボンリサイクル実証研究拠点も活用しながら技術開発を進めるとともに、CO2サプライチェーンの構築の推進に取り組んでいます。また、「カーボンリサイクル産学官国際会議」等も通じたグローバルな普及展開や大学と連携した人材育成の取組も進めています。
また、CCSについては、2024年5月に成立した「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(令和6年法律第38号)」の一部が施行され、同法に基づき2025年2月に北海道苫小牧市沖の一部区域が特定区域として指定されました。このように事業環境の整備が進む中、将来の事業の普及・拡大に向けて、横展開が可能なビジネスモデルを確立するため、2030年までの事業開始を目標とした事業者主導による「先進的CCS事業」について、2024年6月に改めて9件のプロジェクトを採択し、これらのプロジェクトに対して、先進的CCS事業に係る設計作業等の支援を行いました。また、2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」において、事業者によるCCS事業への投資を促すための支援制度を検討していく方針が示されました。これを踏まえ、2025年2月から、「総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会カーボンマネジメント小委員会」の下に設置された「CCS事業の支援措置に関するワーキンググループ」において、CCS事業への支援制度の詳細設計について検討を実施しており、2025年夏頃に中間取りまとめを行う方針です。
将来的には、日本で回収したCO2を海外に輸送し、貯留することも有力な選択肢であり、「先進的CCS事業」においても海外にCO2を貯留するプロジェクトが4件採択されています。今後、「アジアCCUSネットワークフォーラム」などを活用した関係国との具体的な対話や、将来的な貯留権益確保を目指した相手国との共同調査を実施していきます。
<具体的な主要施策>
(1)先進的CCS支援事業
(再掲 第5章第1節 参照)
(2)カーボンリサイクル・次世代火力発電の技術開発事業
(再掲 第5章第1節 参照)
(3)CCUS研究開発・実証関連事業
【2024年度当初:87億円】
北海道苫小牧市で実施したCCS大規模実証試験においては、2016年4月から2019年11月にかけて、累計30万トンのCO2の圧入を達成しており、現在、圧入したCO2等のモニタリングに関する実証を継続しています。加えて、世界初となる低温・低圧条件での液化CO2船舶輸送の技術確立を目指し、舞鶴・苫小牧間の長距離輸送を行う実証実験を進めています。
(4)CCUS早期社会実装のための環境調和の確保及び脱炭素・循環型社会モデル構築事業
【2024年度当初:55億円】
2030年のCCUSの本格的な社会実装と環境調和の確保を目指し、CO2の分離回収・有効利用設備の実証等の運用・評価実績を基に、CCUSの実用展開のための実証拠点・サプライチェーンの構築を検討しました。また、CO2の資源化を通じた脱炭素・循環型社会のモデル構築、国際協調を踏まえたCO2輸送・貯留等の実現性検討を通じた関連技術・ノウハウの涵養等を行いました。さらに、苫小牧沿岸域において実証を行っている海底下CCS事業において、最新の知見や技術を活用した海洋環境保全の上、適正なモニタリングの在り方の実証を実施しました。
(5)CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発
(再掲 第2章第1節 参照)
(6)カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発事業
【2024年度当初:26億円】
ゲノム編集技術や微生物による物質生産等の先端バイオテクノロジーを取り入れたバイオ製造実証・人材育成拠点を整備し、化石由来化学品を代替可能なバイオ製品の社会実装の加速に取り組みました。
(7)バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進
【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,790億円】
バイオものづくりの中核を担う微生物等改変プラットフォーム事業者と、CO2を直接原料にして大規模発酵生産等を担う事業会社等の育成・強化を図るとともに、微生物等が持つCO2固定能力を最大限に引き出し、CO2を原料としたバイオものづくりによるカーボンリサイクルを推進する取組を開始しました。
(8)バイオものづくり革命推進事業
【2022年度補正:3,000億円】
廃木材や食品・農業残渣等の未利用資源の収集・資源化、微生物等の改変技術、生産・分離・精製・加工技術、社会実装に必要な制度や標準化等、バイオものづくりのバリューチェーンの構築に必要となる技術開発及び実証を一貫して支援し、CO2の排出量を抑えながら燃料や素材等を生産する技術の開発を開始しました。
(9)石油・天然ガス等の開発や権益確保に資する技術開発等の促進事業
【2024年度当初:78億円の内数】
日本の石油・天然ガスの自主開発比率の向上に資する技術開発として、国内フィールドにおけるCO2を用いた原油回収促進技術(CO2-EOR)の実証試験に向けた共同研究や、海外のCO2-EOR実施フィールドにおけるCO2圧入技術の実証等を行いました。
(10)合成メタン/メタネーションの導入拡大に向けた取組
2024年7月の「総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会ガス事業制度検討ワーキンググループ」(以下「ガスWG」という。)において、合成メタン等の導入目標を高度化法の判断基準等に位置付けるとともに、その導入コストのうち、ガスの一般的な調達費よりも割高になる部分を、託送料金原価に含めることができる仕組みを構築することなどが整理されました。また、2024年6月には、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会等において、同制度における合成メタン利用時のCO2カウントルールの整理を行い、令和7年度報告(令和6年度実績)から適用しました。
(11)グリーンLPガスの導入拡大に向けた取組
【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,685億円の内数】
グリーンLPガスは、現状ではバイオディーゼルとともに副生されるバイオLPガスが主流ですが、バイオディーゼルとバイオLPガスの生産比率は10:1と、大量生産が課題です。そのため、グリーンイノベーション基金を活用して、革新的触媒等の技術開発や生産プロセスの実証を進めています。今後、官民検討会等の場を活用しながら、内外のプレイヤーの連携の下、海外市場も視野に入れた生産・流通網を含むビジネスモデルの構築や、カーボンクレジットの利用拡大、rDME(バイオ由来のジメチルエーテル)を混入した低炭素LPガスの導入に向けた取組を後押ししていきます。
2.CCUS/カーボンリサイクル等の国際展開
<具体的な主要施策>
国際会議の開催
経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2024年10月に、「第6回カーボンリサイクル産学官国際会議」を開催しました。この会議は、2019年から行われており、今回は27の国・地域から、会場及びオンラインで約840人が参加しました。
経済産業省からは竹内経済産業大臣政務官が出席し、日本の優れた技術・取組等を発信するとともに、講演・パネルディスカッション、学生と専門家との交流会、ポスター展示等を通じて、カーボンニュートラルに向けたカーボンリサイクルの重要性や、技術開発の進展、新たな課題への対応の必要性等について確認しました。
また、経済産業省は、ERIAとともに、2024年8月にタイ王国・バンコクで「第4回アジアCCUSネットワークフォーラム」を開催しました。本会合は、アジア全域でのCCUS活用に向けた知見の共有や事業環境整備を目指して2021年から行われており、今回は、初めて日本以外で開催し、会場及びオンラインで400人以上が参加しました。経済産業省からは、齋藤経済産業大臣がビデオメッセージにて挨拶を行いました。また、CCUSの規制枠組み、カーボンリサイクル技術、加盟国におけるCCUSビジネスチャンス等について議論を行い、日本の今後のCCUS政策に、参加メンバーから高い関心が寄せられました。