第1節 各部門における省エネルギーの取組
1.業務・家庭部門における省エネルギーの取組
業務・家庭部門は、産業部門と比べると、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が小さく、省エネによる金銭的メリットが必ずしも多くないこと等から、需要家にとっては省エネを推進するインセンティブが弱く、省エネが進みにくい部門です。そのため、「トップランナー制度」により、自動車や家電等のエネルギー消費機器や、断熱材や複層ガラス、サッシ等の建材の高効率化・高性能化を製造事業者や輸入事業者に対して求めるとともに、エネルギー消費効率の表示等によって高効率製品の普及を促進することで、省エネを一層推進しています。
また、住宅・建築物の外皮(壁・窓等)の高断熱化を進めることは、空調をはじめとしたエネルギー消費機器の効率の向上につながります。さらに、住宅の高断熱化は省エネのみならず、高血圧症等からの健康の改善や、ヒートショックリスクの低減等にも効果的であることが注目されています。このように、省エネだけでなく健康にも寄与する住宅の断熱化を進めるため、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(平成27年法律第53号)」(以下「建築物省エネ法」という。)に基づき、新築時の断熱化を含む省エネ基準への適合を施主に対して求めるとともに、予算等を通じた省エネ住宅・建築物の普及拡大支援を進めています。
<具体的な主要施策>
(1)省エネ法に基づくベンチマーク制度による業務部門の省エネの推進
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準1を示すとともに、一定規模以上の事業者2には、エネルギーの使用状況及び非化石エネルギーへの転換の取組状況等の報告を求め、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、既に省エネの取組を進めてきた事業者の省エネの状況を踏まえ、エネルギー消費効率を中長期的に見て年平均で1%以上低減していくこととは別に、業種・分野別に中長期的に目指すべき水準(ベンチマーク)3を設定し、その達成を促す「ベンチマーク制度」を、2009年度から導入しています。ベンチマーク制度については、2022年度から新たにデータセンター業が対象業種に加わっており、2025年3月時点で、10業種11分野を業務部門ベンチマーク制度の対象業種とし、対象となる事業者の省エネの取組を促しています。
(2)省エネ法に基づくトップランナー制度による機器・建材の効率・性能改善
省エネ法に基づくトップランナー制度を通じて、製造事業者及び輸入事業者に対し、機器・建材の効率・性能改善を促した結果、多くの機器・建材において、基準の策定当初の見込みを上回る効率・性能改善が達成されています。
トップランナー制度については、個別機器・建材の更なる効率・性能改善を図るため、基準の見直し等について検討を行っています。2024年4月より、ガス温水機器の新たな省エネ基準の審議を開始しました。
なお、トップランナー制度の対象機器等は、2025年3月時点で、32品目(うち3品目は建材)となっています。
(3)省エネ機器に関する情報提供
家電製品やガス石油機器等について、省エネ機器の更なる普及を促進すべく、小売事業者表示制度(省エネルギーラベル4及び統一省エネルギーラベル5)を活用し、消費者に対して省エネ情報の提供を行いました。制度をより効果的に実施するため、家電製品や機器のデータの整理を行うとともに、小売事業者等が容易に各機器のラベルを表示・印刷できるウェブサイト(省エネ型製品情報サイト)を運営しています。
(4)業務・家庭部門における省エネを促進するための情報提供事業
省エネへの理解や関心度を高めることによって省エネ行動を促し、業務・家庭部門における省エネを促進することを目的に、一般消費者及び事業者等に対して、省エネに関する客観的な情報や省エネ対策事例等の情報を提供しました。
具体的には、夏季・冬季における省エネの呼びかけ、家庭や企業で実践できる効果的な省エネ行動をまとめた「省エネメニュー」の作成・周知、省エネ関連のイベント・メディア等を活用した省エネ施策の紹介や省エネ機器・省エネ支援サービスの周知等を行いました。
(5)ZEH・ZEBなどの省エネ性能が高い住宅・建築物の実現・普及に向けた支援
【2023年度補正:62億円(ZEB:環境省)、111億円(脱炭素ビルリノベ事業:環境省)、2024年度当初:57億円の内数(経済産業省)、447億円の内数(国土交通省)、47億円の内数(ZEB:環境省)、110億円の内数(ZEH:環境省)、2024年度補正:2,250億円の内数(子育てグリーン住宅支援事業:国土交通省、環境省)、2024年度補正:48億円(ZEB:環境省)、112億円(脱炭素ビルリノベ事業:環境省)】
「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」(以下「ZEH」という。)、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」(以下「ZEB」という。)とは、大幅な省エネと再エネにより、消費エネルギー量正味ゼロを目指した住宅・建築物であり、家庭・業務部門のエネルギー消費改善が期待されています。
2030年度以降に新築される住宅・建築物で、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指す政府目標に向け、経済産業省では大規模建築物を対象に、エネルギー消費性能の計算プログラムでは評価できない先進的な技術の導入によるZEB化の実証及び21層以上のZEH-M(ゼッチ・マンション)の実証を支援しました。環境省では民間や地方公共団体の建築物におけるZEBの普及拡大、建築物のライフサイクルを通じて脱炭素化を目指すZEBに対する支援事業(LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業)の新設、またZEH、ZEH+及び20層以下のZEH-M普及支援を実施するとともに、ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する住宅(GX志向型住宅)に対する支援事業を創設しました。国土交通省ではZEH基準の水準の省エネ性能を有する長期優良住宅や中大規模の木造住宅等への支援を行いました。引き続き3省で連携し、ZEH・ZEBの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
(6)高性能建材等の実証・普及に向けた支援
【2023年度補正:14億円(環境省)、2024年度当初:57億円の内数(経済産業省)、110億円の内数(環境省)、2024年度補正:9.4億円(環境省)】
既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、経済産業省では、工期短縮が可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援しました。環境省では、高性能建材による戸建住宅及び集合住宅の断熱リフォーム支援事業を実施し、断熱改修の一層の普及を支援しました。
(7)3省連携による住宅の省エネリフォームへの支援強化
【2023年度補正:580億円(給湯省エネ2024事業:経済産業省)、185億円(賃貸集合給湯省エネ2024事業:経済産業省)、2,100億円の内数(子育てエコホーム支援事業:国土交通省)、1,350億円(先進的窓リノベ2024事業:環境省)、2024年度補正:580億円(給湯省エネ2025事業:経済産業省)、50億円(賃貸集合給湯省エネ2025事業:経済産業省)、2,250億円の内数(子育てグリーン住宅支援事業:国土交通省・環境省)、1,350億円(先進的窓リノベ2025事業:環境省)】
住宅内の熱の多くが失われている窓の断熱改修と、家庭部門における最大のエネルギー消費源である給湯器の効率化等を促進するため、経済産業省・国土交通省・環境省が連携した住宅省エネ化支援制度について、予算規模を拡大した上で継続するとともに、給湯器に関しては賃貸集合住宅向けの支援事業を創設しました。
(8)住宅・建築物の省エネ基準への適合の確保
2022年6月に公布された改正建築物省エネ法を踏まえ、2023年9月に「建築物のエネルギー消費性能に関し販売事業者等が表示すべき事項及び表示の方法その他建築物のエネルギー消費性能の表示に際して販売事業者等が遵守すべき事項」等が公布され、2024年4月に施行されました。また、2025年4月からの原則全ての新築住宅・建築物への省エネ基準適合義務化に向け、住宅・建築物の関連事業者等に対して、全国各地域で改正内容等についての講習会を実施しました。
(9)環境・ストック活用推進事業
【2024年度当初:56億円】
住宅・建築物の省エネ対策を促進するため、先導的な省CO2技術を導入する住宅・建築物リーディングプロジェクト、建築物の省エネ改修に対して支援を行いました。
(10)住宅に係る省エネルギー改修税制【税制】
既存住宅において一定の省エネ改修(高断熱窓への取替や内窓の新設等)を行った場合で、当該改修に要した費用が一定額以上のものについては、所得税の税額控除及び固定資産税の特例措置が講じられています。
(11)優良住宅整備促進等事業
【2024年度当初:226億円の内数】
住宅金融支援機構が行う証券化支援事業の枠組みを活用し、ZEH等の省エネ性能に優れた住宅を取得する際の融資金利の引き下げを行う【フラット35】Sを実施しました。
(12)住宅性能表示制度等の効果的運用
住宅の性能について、消費者等の選択を支援するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)」に基づき、省エネ性能を含む住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」の普及に加え、建築物を室内等の環境品質・性能の向上と省エネ等の環境負荷の低減という両面から総合的に評価し、わかりやすく表示するシステムである「建築環境総合性能評価システム(CASBEE)」の開発及びその普及を推進しました。
また、省エネ性能が市場において適切に評価されるよう、建築物省エネ法に基づき、建築物の販売・賃貸時における省エネ性能の表示を推進しており、2024年4月に当該制度が施行されました。また、省エネ性能の詳細な評価が困難な既存住宅については、省エネ性能の向上に資する改修等を行った部位を表示する省エネ部位ラベルを新たに設定し、2024年11月より運用を開始しました。
(13)低炭素住宅・建築物の認定
「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」に基づき、省エネ基準より高い省エネ性能を有し、低炭素化に資する措置等が一定以上講じられている認定低炭素建築物の普及促進を図りました。
(14)「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)
【2024年度当初:38億円の内数】
①「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業
2050年カーボンニュートラル等の実現に向けて、国民・消費者の行動変容やライフスタイル転換を促すため、環境省では「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)を展開しています。
また、デコ活応援団(官民連携協議会)には、2,200者を超える自治体・企業・団体等が参画しており、国民・消費者の豊かな暮らしを後押しするため、デコ活応援団とともに、90以上の連携実践プロジェクトの組成・実施・検討を進めています。
さらに、組織、個人単位でデコ活宣言を呼びかけており、これまでに12,000件以上のデコ活宣言がなされています。
暮らしの全領域(衣食住・職・移動・買物)を大きく7つの分野に分け、国民目線の課題・ボトルネックを構造的に解消する仕掛け(取組・対策)を明らかにした「くらしの10年ロードマップ」について、取組実施状況に関する消費者アンケート調査を実施し、進捗を毎年フォローアップするとともに、自治体・企業・団体等の連携協働を後押ししています。
②ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進
行動科学の理論に基づくアプローチ(ナッジ(そっと後押しする)等)により、国民の行動変容を直接促進し、ライフスタイルの自発的な変革・イノベーションを創出する、対象者にとって自由度のある新たな政策手法を検証しています。エネルギーの使用実態や環境配慮行動の実施状況等を客観的に収集、解析し、ナッジ等の知見とAI/IoT等の先端技術を組み合わせた「BI-Tech」により、一人一人に合った快適でエコなライフスタイルを提案することで、行動変容を促しています。
具体的には、ディマンドリスポンスを通じて、家庭の電力消費を、再エネの比率の高い晴れた昼間の時間帯にシフトすることでCO2排出量を削減する取組について、スマートフォンのアプリを通じて、過去1年分のデータ等に基づく日々の予測電力消費量を示して省エネを依頼することや、日々の環境配慮行動を記録し、実施数、炭素強度に基づいたスコアやランキングを表示すること等により、節電や昼シフトに関する意識が統計的に有意に高まることが実証されました。
(15)エネルギー小売事業者の省エネガイドラインの検討
一般消費者が家庭において適切に省エネを進めることができるようにするため、省エネ法では、エネルギー供給事業者に対して、一般消費者へ省エネに資する情報を提供することを求めています。2016年4月からは電力、2017年4月からは都市ガスの小売全面自由化が始まったことで、エネルギー供給事業者がより多様なサービスを提供するようになっており、家庭におけるエネルギーの使用状況も大きく変化しています。そのため、エネルギー小売事業者に対して、省エネ等の情報の提供に関する指針やガイドラインを提示しています。
2022年度からは、エネルギー小売事業者の省エネ等の情報提供の取組状況を評価して公表する「省エネコミュニケーション・ランキング制度」の本格運用を開始し、2024年度は204事業者から取組状況の報告がありました。
2.運輸部門における省エネルギーの取組
運輸部門の更なる省エネに向けては、乗用車やトラック等の輸送機器単体のエネルギー消費効率の改善を進めるとともに、貨物輸送事業者や貨物を貨物輸送事業者に輸送させる者(以下「荷主」という。)等がAI/IoT等の技術を活用して連携する取組を推進していく必要があります。
<具体的な主要施策>
(1)自動車等の燃費基準
乗用車やトラック等の燃費改善については、省エネ法に基づくトップランナー制度(自動車メーカー等に対し、目標年度までに販売車両の平均燃費値を基準値以上にすること等を求める制度)による規制と、エコカー減税等の支援策の実施により、トップランナー制度の基準策定当初の見込みを上回って進展し、特に乗用車の燃費は大幅に改善してきました。この結果、ガソリン乗用車の平均燃費は、2023年度には19.8km/L(WLTCモード)まで改善しました。2030年度を目標年度とする燃費基準の下、さらにエネルギー消費効率を高めつつ、通常の燃費試験では反映されない省エネ技術を評価する制度の導入を進めています。また、重量車全体の省エネを着実に推進するため、重量車の2025年度を目標年度とする燃費基準に関して、製造事業者等に対し電気自動車等の普及促進のインセンティブを与えるため、電気自動車等を達成判定において評価する制度を策定しました。重量車の更なる燃費向上等を図るため、電動車の普及促進を見据えた新たな燃費基準の検討を開始します。
(2)自動車重量税の軽減措置【税制】
2023年度税制改正において、自動車重量税のエコカー減税については、半導体不足等の状況を踏まえ、制度を2023年12月末まで維持した上で、電動車の一層の普及促進を図る観点から、2024年1月からは、減免区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げ、適用期限を3年延長することとなりました(2026年4月末まで)。
(3)自動車税・軽自動車税の減免措置【税制】
2023年度税制改正において、自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、半導体不足等の状況を踏まえ、税率区分を2023年12月末まで維持することとなりました。その上で、電動車の一層の普及促進を図る観点から、税率区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げるとともに、次回の見直しは3年後(2025年度末)とされました。
また、自動車税及び軽自動車税の種別割のグリーン化特例については、環境性能割の税率区分の次回の見直し期限等も勘案し、3年延長することとなりました。
(4)クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
【2023年度補正:1,291億円、2024年度補正:1,100億円】
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、環境性能に優れた電気自動車やプラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車といったクリーンエネルギー自動車の購入費を支援し、国内市場における車両の普及を促進することで、CO2排出削減と産業競争力強化を図りました。
(5)クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金
【2023年度補正:400億円、2024年度当初:100億円、2024年度補正:360億円】
クリーンエネルギー自動車の普及に向け、車両と表裏一体にある充電・水素充てんインフラの整備を進めるため、充電設備の購入費及び工事費や、水素ステーションの整備費及び運営費を支援し、さらに、災害による停電等の発生時などに電動車から電気を取り出すためのV2H充放電設備や外部給電器の導入を支援しました。
(6)商用車等の電動化促進事業
【2023年度補正:409億円、2024年度補正:400億円】
2050年カーボンニュートラルの実現及び2030年度の温室効果ガス削減目標の達成に向け、運輸部門におけるCO2排出量の約4割を占める商用車のうち、トラック・タクシー・バスの電動化及び車両の電動化に必要な充電設備の導入に対し支援しました。また、2024年度補正予算より、GX建設機械の導入に対する支援を追加しました。
(7)スマートモビリティ社会の構築
【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,148億円】
商用車のカーボンニュートラル化に向け、委託事業において、商用車の走行データや外部環境データの連携、充電・充てんインフラ整備の最適化や社会全体での最適化の取組を目指したシステムの開発を進めるとともに、助成事業において、電動車の順次導入、運行とエネルギー利用の最適化を行うシステムの開発を進めました。
(8)道路におけるカーボンニュートラルの取組
道路の脱炭素化の具体的な取組について、国土交通省において2024年12月に「道路分野の脱炭素化政策集Ver.1.0」を取りまとめ、LEDの道路照明への導入、再エネの活用、低炭素な材料の導入促進、自転車の利用促進、渋滞対策の推進、ダブル連結トラックの導入促進を、協働による2030重点プロジェクトとして位置づけました。今後、本政策集をたたき台として、政府計画等の改定等を踏まえながら、道路管理者協働のもとでの脱炭素の取組をブラッシュアップしていきます。
(9)自動走行の実現に向けた取組の推進
自動走行技術の社会実装により走行の効率化を図り、省エネを推進するため、2024年度は、公道交差を含む専用道区間等におけるレベル4自動運転サービスを実現しました。
(10)道路交通情報提供事業の推進
交通管制システム等で収集した道路交通情報を積極的に提供することに加え、民間事業者が行う道路交通情報提供サービスの多様化・高度化を支援することにより、渋滞緩和及び環境負荷低減を図りました。
(11)交通安全施設等の整備
【2024年度当初:177億円】
交通管制システムの高度化、信号機の改良等を推進し、交差点における発進・停止回数を減少させること等により、道路交通の円滑化等を図るとともに、消費電力が電球式の約6分の1以下であるLED式信号灯器の整備を推進しました。
(12)モーダルシフト、物流の効率化等
「モーダルシフト等推進事業」による複数事業者が協力して行う事業への支援や、「グリーン物流パートナーシップ会議」において複数事業者の連携による物流分野における環境負荷の低減等に資する取組の表彰を行うとともに、モーダルシフトの推進に向けて、「エコレールマーク」・「エコシップマーク」の普及、貨物駅における施設整備への支援、フェリー・RORO船ターミナルの機能強化、中長距離フェリー等のトラック輸送に係る積載率の動向の調査・公表等を行いました。
また、物流の効率化に資するよう、ダブル連結トラックの導入促進、自動物流道路(Autoflow Road)の社会実装に向けた検討、国際コンテナ戦略港湾政策等の推進、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)」による支援等を通じて、効率的な物流体系の構築を推進しました。
(13)カーボンニュートラルポートの形成
港湾においてはカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進しており、港湾管理者が作成する港湾脱炭素化推進計画に対する支援を行うとともに、水素を燃料とする荷役機械の現地実証の準備、メタノールバンカリング拠点の形成に向けた検討会の開催による知見の取りまとめ、LNGバンカリング拠点の整備、停泊中船舶に陸上電源を供給する設備の導入や低炭素型荷役機械の導入を推進しました。また、これらの取組を見える化し港湾のターミナル全体の脱炭素化を促進するため、CNP認証を創設しました。さらに、水素等サプライチェーンの構築を促進するため、水素・アンモニアの受入環境整備に関するガイドラインの作成等に取り組みました。加えて、洋上風力発電の導入、ブルーカーボンの活用等を推進しました。
(14)ゼロエミッション船等の導入・促進に向けた取組
国際海運分野においては、国際海事機関(IMO)で2023年に採択した「2050年頃までに温室効果ガス(GHG)排出ゼロ」等の目標を達成するための検討が進んでいるところ、日本は各国と協力し具体的な条約改正案を提案するなど、議論の着実な進展に貢献しました。
加えて、2021年度から、グリーンイノベーション基金を活用して、水素・アンモニア等を燃料とするゼロエミッション船の開発を行っており、2024年8月には世界初の商用アンモニア燃料船(タグボート)が竣工しました。
内航海運分野においては、荷主等と連携した離着桟・荷役等の運航全体で省エネとなる連携型省エネ船、LNG燃料船、メタノール燃料船等の導入・実証を推進しています。さらに、既存船舶にも利用可能なバイオ燃料をはじめとする代替燃料の利用に向けた環境整備を図る等、関係省庁と連携して一層の低・脱炭素化を推進しています。
造船・舶用工業分野においては、2024年度から、ゼロエミッション船等の建造に必要となるエンジン、燃料タンク、燃料供給システム等の生産設備及びそれらの機器等を船舶に搭載するための設備等の整備への支援を実施しています。
(15)航空の脱炭素化推進の取組
航空機運航分野においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、管制の高度化等による運航の改善、機材・装備品等への環境新技術の導入等に取り組んでいます。SAFについては、2030年時点で本邦航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標を設定しており、国際競争力のある価格で安定的にSAFを供給できる体制の構築等に取り組んでいます。
空港分野においては、2025年3月末時点で48空港の空港脱炭素化推進計画が策定され、空港施設・車両等からのCO2の排出削減、空港の再エネの導入等に取り組んでいます。
(16)鉄道分野の更なる環境性能向上に資する取組
鉄道分野においては、省エネに資する車両や設備の導入を補助制度や税制により促進するとともに、関係者間における知見の共有等を通じて、鉄道アセットを活用した再エネの導入を推進しました。また、鉄道車両におけるバイオディーゼル燃料の実証や、社会実装を目指す水素燃料電池鉄道車両の安全性を確保するための技術基準の検討を進め、2025年4月の制定に向け「鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年国土交通省令第151号)」の改正及びそれに基づく告示の公布を行いました。
(17)公共交通機関の利用促進
鉄道・バス等の公共交通機関については、混雑緩和、輸送力増強、速達性向上等を図ることが重要です。鉄道については、三大都市圏において、混雑緩和や速達性向上のための都市鉄道新線等の整備を推進しました。また、駅施設の改良やバリアフリー化を支援することによる利用者の利便性の向上に向けた施策を講じました。一方、バスについては、公共車両優先システム(PTPS)の整備、バス専用・優先レーンの設定等により、定時運行の確保を図るとともに、バスロケーションシステムの整備等に対する支援措置による利用者の利便性の向上に向けた施策を講じました。
加えて、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化をさらに促進するため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進しています。今後は、バスタ新宿や品川駅、神戸三宮駅等をはじめとして、官民連携を強化しながら、道路事業による戦略的な集約型公共交通ターミナル「バスタプロジェクト」の整備を全国で展開していきます。
(18)エコドライブの普及・推進
警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成する「エコドライブ普及連絡会」において、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムや全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行いました。あわせて、エコドライブ普及連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めました。
(19)運輸部門におけるエネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金
【2024年度当初:62億円】
トラック事業者と荷主等による高度なデジタル技術を活用したサプライチェーン全体の効率化や輸送計画と連携したEVトラック等の充電タイミング等の最適化に向けた取組や、配車計画・予約受付と連携した高度な車両管理や輸送機器の活用等を通じた輸送効率化を図る取組に対して、その実証に必要な経費を支援しました。また、省エネ化に資する革新的なハード技術(高効率エンジン、高効率プロペラ等)及びソフト技術(最適な運航計画や配船計画等を可能とする技術等)を組み合わせた内航船による省エネ効果の実証や、非化石エネルギーを使用する内航船による実証に対して支援を行いました。
(20)省エネ法に基づく運輸分野の省エネ措置
省エネ法では、輸送事業者及び荷主を規制対象としており、輸送事業者及び荷主に対して、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(省エネに資する輸送用機械器具の使用、省エネに資する輸送方法の選択、エネルギー消費効率の改善目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定水準以上の輸送能力を有する輸送事業者及び一定量以上の輸送を行わせる荷主には、エネルギーの使用状況及び非化石エネルギーへの転換の取組状況等を毎年度報告させ、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
(21)電気自動車用革新型蓄電池開発事業
【2024年度当初:24億円】
電気自動車等の普及に向け、安価で供給リスクの少ない材料を使用し、高エネルギー密度化や安全性等が両立可能な革新型蓄電池(ハロゲン化物電池及び亜鉛負極電池)を実用化するため、電池の材料・電極の開発やセル化技術等の技術開発を行いました。
(22)蓄電池の製造サプライチェーン強靱化支援事業
【2022年度補正:3,316億円、2023年度補正:2,658億円、2024年度当初:2,300億円、2024年度補正:1,778億円】
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、蓄電池は、自動車の電動化や再エネの主力電源化等を推進する上で重要です。日本が競争力を持った形で、蓄電池の製造サプライチェーンを確立するために、2030年に国内で年間150GWhの製造能力を確保することを目的に、経済安全保障推進法に基づき特定重要物資に蓄電池を指定しており、2024年度も引き続き、大規模な生産拡大投資を計画する、又は、現に国内で生産が限定的な部素材や固有の技術を有する蓄電池・蓄電池部素材・製造装置の製造事業者に対し、設備投資や生産技術開発の支援を行いました。
(23)次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術の開発事業
【2024年度当初:18億円】
全固体リチウムイオンバッテリーの早期社会実装と普及に向け、電池材料の製品化に必要なセルの作成、評価を実施するための標準電池モデルや分析・解析技術の開発、材料評価共通基盤の構築に取り組みました。
3.産業部門等における省エネルギーの取組
産業部門においては、省エネ法に基づく規制措置や、省エネ設備の導入支援等の支援措置等を通じ、事業者の省エネの取組を進めてきました。製造業のエネルギー消費原単位は、1990年代に上昇傾向が見られたものの、近年は再び改善傾向にあります。また、中小企業も含めた徹底した省エネを進めるため、省エネ設備への更新や、省エネ診断などを通じて、事業者の省エネの取組を促すことが重要です。
<具体的な主要施策>
(1)省エネ法に基づくエネルギー管理の徹底
事業者が自らの省エネの取組の立ち位置を把握するとともに、省エネの進捗状況に応じたメリハリのある省エネの取組を促進するため、特定事業者等のエネルギー使用状況等の報告に基づき、「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」を実施しており、全ての特定事業者等を、当該報告の結果を踏まえて、S・A・B・Cの4段階にクラス分けしています。Sクラス事業者については、経済産業省のホームページ上で事業者名等を公表し、Bクラス事業者については、注意喚起文書を送付しています。また、Bクラス事業者のうち、立入検査や現地調査等を経て省エネの取組が不十分と認められた事業者については、Cクラス事業者に分類した上で、省エネ法に基づく指導・助言等を行っています。
さらに、定期報告等に係るデータを特定事業者等にフィードバックするための検討を行い、事業者が同一業種内における自らの省エネの取組状況を確認できるツールや、業種別の省エネ取組ファクトシートを2024年11月に公開しました。また、省エネ法の定期報告情報を事業者の同意に基づき開示できる仕組みを新たに導入することで、事業者の省エネや非化石エネルギー転換等の取組に関する情報発信を促しており、2024年度は11月に速報版の開示シートを公表し、事業者から提出される定期報告の内容に不備がないかを確認の上、確報版の開示シートを2025年3月に公表(1,670者)しました。
(2)省エネ法に基づく産業部門ベンチマーク制度
事業者の省エネの取組状況を、業種共通の指標を用いて評価するため、産業部門ベンチマーク制度を運用しています。2025年3月現在、鉄鋼や化学等のエネルギー使用量の大きい製造業をはじめ、7業種12分野を産業部門ベンチマーク制度の対象業種としており、対象となる事業者の省エネの取組を促しています。
(3)先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金
【2024年度当初:110億円】
工場・事業場におけるエネルギー消費効率の改善を促すため、省エネ性能の高い特定のユーティリティ設備や生産設備、先進的な省エネ設備等の導入等を行う事業者に対する支援を行いました。
(4)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
【2023年度補正:910億円、2024年度補正:300億円】
工場・事業場における省エネ性能の高い設備・機器への更新や複数事業者の連携、脱炭素につながる電化・燃料転換を伴う設備更新、非化石エネルギーへの転換にも資する先進的な省エネ設備・機器の導入等を行う事業者に対する支援を行いました。
(5)省エネルギー投資促進支援事業費補助金
【2023年度補正:250億円、2024年度補正:300億円】
工場・事業場における省エネ性能の優れたユーティリティ設備や生産設備等への更新を行う事業者に対する支援を行いました。
(6)工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)
【2023年度補正:40億円、2024年度当初:33億円】
工場・事業場におけるCO2削減計画の策定や当該計画に基づく高効率設備への設備更新、電化・燃料転換、企業間で連携したCO2排出量削減に向けた設備更新等に対する支援を行いました。
(7)低炭素社会実行計画の推進・強化
産業界は、主体的な温室効果ガス削減に継続して取り組んでおり、2013年度以降は、日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)加盟の個別業種や経団連に加盟していない個別業種による「低炭素社会実行計画」に基づき、取組を進めてきました。
2021年6月に経団連は、「経団連低炭素社会実行計画」を「経団連カーボンニュートラル行動計画」へと改め、取組を強化していく旨を表明しました。この計画については、2025年2月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」において、産業界における対策の基盤として位置づけられており、2030年度の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、産業界による自主的かつ主体的な削減貢献の取組を進めていくこととしています。
(8)脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム
【2024年度当初:60億円】
事業者等の持つ有望な省エネ技術の研究開発から実用化に向けた取組までを効果的に推進するため、2040年に大きな省エネ効果が見込まれる省エネ技術について、シーズ発掘から事業化まで一貫して支援を行う提案公募型研究開発事業を実施しました。「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」に掲げる重要技術を軸に、個別課題推進スキームでは、技術開発の段階に応じて、FS調査フェーズ3件、インキュベーション研究開発フェーズ7件、実用化開発フェーズ9件、実証開発フェーズ2件の計21件を新規採択しました。また、重点課題推進スキームでは、1件を新規採択しました。
(9)高効率・高速処理を可能とする次世代コンピューティングの技術開発事業
【2024年度当初:48億円】
IoT社会の到来により増加した膨大な量の情報を効率的に活用するため、新原理によって高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術(量子コンピュータ、脳型コンピュータ等)等の開発を実施しました。
(10)省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業
【2024年度当初:24億円】
産業のIoT化や電動化が進展し、それを支える半導体関連技術の重要性が高まる中、日本が保有する高水準の要素技術等を活用し、エレクトロニクス製品のより高性能な省エネ化を実現するため、新世代パワー半導体や半導体製造装置の高度化に向けた研究開発を実施しました。
(11)グリーン購入及び環境配慮契約の推進
国等における環境物品等の率先的な調達や環境に配慮した契約の実施は、日本全体の省エネ等の推進に資するものです。国等は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)」(以下「グリーン購入法」という。)及び「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)」を踏まえ、照明や空調設備等の物品等を調達する際には、率先して省エネ機器・設備を導入するとともに、電力の供給を受ける契約や建築物に係る契約等においては、環境配慮契約の推進に取り組みました。
また、2024年度は、グリーン購入法において、ガス温水機器、石油温水機器のエネルギー消費効率基準を強化し、乗用車、バス等、トラック等、トラクタの燃費基準値を引き上げました。
(12)国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費
【2024年度当初:4.2億円の内数】
省エネ・再エネ設備の導入、森林整備等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証するJ-クレジット制度について、新たな算定・モニタリング方法等の策定、クレジット創出に向けた中小企業等への説明会の実施、審査費用への支援等を行いました。
(13)省エネルギー設備投資利子補給金助成事業費
【2024年度当初:13億円】
新設・既設事業所における省エネ設備の新設・導入等を行う際に民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、融資に係る利子補給事業によって支援するとともに、更なる利用拡大のために金融機関と連携した制度利用の推進を行いました。
(14)中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費
【2023年度補正:21億円、2024年度当初:9.9億円、2024年度補正:34億円】
中小企業等に対して省エネ診断事業を実施するとともに、自治体や学校が実施する省エネ関連セミナーに講師を派遣しました。また、多くの診断事業で得られた優良事例や省エネ技術に関する情報を、様々な媒体を通じて発信しました。
加えて、全国47都道府県で活動する自治体、金融機関、中小企業団体等と連携する「省エネお助け隊」(地域プラットフォーム)を構築し、きめ細かな省エネ診断や省エネ支援を通じて省エネの取組を促進しました。
また、2023年度補正予算事業では、エネルギー価格の高騰等の影響を受ける中小企業等に対して、設備単位の省エネ診断等を実施し、中小企業等が診断を希望する設備のエネルギーに関する無駄や、すぐにできる省エネに関するアドバイス等を行いました。
(15)省エネ・地域パートナーシップの促進
2024年7月に省エネ・地域パートナーシップを立ち上げ、地域の金融機関や省エネ支援機関と連携した省エネの支援体制の構築を自治体等とも協力して全国規模で進めています。また、体制構築に向けては省エネ専門人材の裾野拡大にも取り組んでいます。本枠組みを通じて、259のパートナー機関に対し、省エネ施策やベストプラクティス等の情報共有、ドアノックツールの配布などを実施しました。
(16)先端計算科学等を活用した新規機能性材料合成・製造プロセス開発事業
【2024年度当初:21億円】
これまで、機能性化学品及びファインセラミックスの合成・製造は、経験や勘、ノウハウに基づいて行われてきましたが、少量多品種オンデマンド生産等への対応が可能となるよう、計算科学等を活用した革新的なプロセス開発に取り組みました。
(17)CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発
【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,540億円】
熱源のカーボンフリー化によるナフサ分解炉の高度化技術や、廃プラ・廃ゴム、CO2、アルコール類等からの化学品製造技術の開発を進めました。これらのプラスチック原料製造技術を活用して、CO2排出削減を目指します。
(18)未来社会創造事業(大規模プロジェクト型)
【2024年度当初:86億円の内数】
環境中の熱源(排熱や体温等)をセンサ用独立電源として活用可能にする革新的熱電変換技術の研究開発を推進しました。
4.部門横断的な省エネルギーの取組
各部門における徹底した省エネだけでなく、部門横断的に省エネを促していくことも重要です。そのため、事業者や消費者といった対象を特定せず、広く積極的な省エネを促す取組を行いました。
<具体的な主要施策>
(1)省エネルギー促進に向けた広報事業委託費
【2024年度当初:2.1億円】
多くの方々から省エネに対する理解と協力を得て、積極的な省エネを実践いただくため、省エネに関する客観的な情報提供を行いました。また、省エネ行動や効果に関する情報収集と、それらを周知するための広報用データ・コンテンツの作成・周知等を行いました。
(2)地域裨益型・地域共生型で地方創生に資する地域脱炭素の推進
2050年カーボンニュートラルの達成に向けては、地方公共団体が主導する地域脱炭素の取組が重要です。地域脱炭素政策については、「地域脱炭素ロードマップ」(2021年6月9日国・地方脱炭素実現会議決定)及び2025年2月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」に基づき、地域脱炭素の取組に関わるあらゆる政策分野において、脱炭素を主要課題の1つとして位置づけ、必要な施策の実行に全力で取り組んでいくこととしています。また、「地域脱炭素政策の今後の在り方に関する検討会」の取りまとめ(2024年12月)において示された今後の施策の方向性を踏まえ、環境省をはじめとする関係府省が緊密に連携しつつ、2026年度から2030年度までの5年間を新たに実行集中期間として位置づけ、必要な施策の実行に取り組むこととしています。
また、2025年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン」においても、地域ポテンシャルや地域特性に応じた再エネを地域で創り、貯めて、賢く使うことは、足下のエネルギー価格の高騰や需給ひっ迫にも強い地域への転換につながり得るものであること、また、脱炭素電源の整備を進めることは、地域の企業立地や投資上の魅力を高め、地域の産業の競争力を維持向上するなど、地方創生にとっても重要であることから、地域裨益型・地域共生型で地方創生に資する地域脱炭素の推進が「地域GX」として位置づけられています。
環境省では、脱炭素と地域課題解決の同時実現のモデルとなる「脱炭素先行地域」を、2025年度までに少なくとも100か所選定し、その取組を2030年度までに実現する方針です。2024年度までに5回の募集を行い、計81の地域を選定したほか、全国の脱炭素の基盤となる重点対策等の取組を行う地方公共団体や事業者等を「地域脱炭素推進交付金」により、複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援していきます。
国土交通省では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素に資する都市・地域づくりを推進していくため、「まちづくりGX」に取り組んでいます。具体的には、都市のコンパクト・プラス・ネットワーク等の「都市構造の変革の促進」、エネルギーの面的利用等による「街区単位での取組支援」、グリーンインフラの社会実装や改正都市緑地法に基づく緑地の保全及び緑化の推進等による「緑とオープンスペースの確保による良好な都市環境の形成」の3つの柱の取組に加え、「猛暑の中でも安全・快適に暮らせる都市環境の形成」の取組を進めています。
(3)株式会社脱炭素化支援機構による資金供給
株式会社脱炭素化支援機構(JICN)は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国の財政投融資と民間株主からの出資金を活用し、多額の投融資を必要とする環境スタートアップや脱炭素プロジェクト等を積極的に支援することにより、脱炭素化はもとより、企業価値の向上や地域の活性化に貢献しています。
(4)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例(地球温暖化対策のための税)【税制】
日本で排出される温室効果ガスの8割以上は、エネルギー利用に由来するCO2(エネルギー起源CO2)となっており、今後温室効果ガスを抜本的に削減するためには、中長期的にエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化していくことが重要です。このため、2012年10月から施行されている地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例の税収を活用して、省エネ対策、再エネの普及、化石燃料の脱炭素化・効率化等のエネルギー起源CO2の排出抑制の諸施策を着実に実施しています。
(5)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業
日本の経済・社会の持続的発展を伴う、科学技術を基盤としたカーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、人文社会科学系を含めた幅広い研究者の知見の取り込みや研究人材の育成を図り、望ましい社会の実現に至る道筋を示す社会シナリオ研究を推進しました。
- 1
- 判断基準では、設備管理の基準やエネルギー消費効率の改善目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等を示しています。
- 2
- 年度で原油換算1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」を指し、2025年3月時点で約12,000者を指定しています。
- 3
- 業種ごとに上位1~2割の事業者が達成している省エネ基準を水準(ベンチマーク)として設定しています。
- 4
- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器を中心に、トップランナー制度に基づく省エネ基準の達成率等を表示し、基準を達成している機器であることを消費者にわかりやすく表示するためのJISに基づくラベルです。2025年3月時点で、特定エネルギー消費機器29機器のうち、テレビジョン受信機、エアコンディショナー等をはじめとする22機器が対象となっています。
- 5
- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用され、エネルギー消費が大きい9機器(エアコンディショナー、照明器具、テレビジョン受信機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座、温水機器(ガス、石油、電気))について、省エネルギーラベルや、市場における製品の省エネ性能を1.0から5.0で表示した多段階評価点、年間目安エネルギー料金等を表示したラベルです。